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2026年8月27日放送の『風、薫る』第109回は、覚悟していたとはいえ、かなりつらい回だった。
小川吾郎(甲斐翔真)は、生きて帰ってくることができなかった。
日清戦争は終わった。
直美(上坂樹里)は、吾郎が帰ってくると信じていた。
明も無事に生まれた。
あとは吾郎が帰ってきて、明の顔を見るだけだった。
しかし、届いたのは帰還の知らせではなく、死亡の報告だった。
台湾での戦闘中に岩場から転落して負傷し、広島の陸軍予備病院に後送されたが、そこで亡くなったという。
吾郎は、明の顔を見ることなく死んでしまった。
これが戦争のリアルなのか。
直美が手にした幸せは、あまりにももろく崩れてしまった。
前回の記事はこちらです。

第109回のポイント
- 明治28年4月、吾郎が出征して1か月が経過する。
- 直美は、明を無事に出産している。
- 新聞には「帝国と清国との平和条約」が結ばれたことが載っている。
- りん(見上愛)は、日本が勝って戦争が終わったことを直美に伝える。
- 直美は、吾郎が帰ってくると喜び、明に話しかける。
- 終戦後もしばらく吾郎は帰らず、近衛師団はそのまま台湾へ行っていると手紙に書かれている。
- 直美は、吾郎に明の成長や、一ノ瀬家に助けられながら育てていることを手紙に書く。
- 広島の陸軍予備病院に負傷兵が運ばれ、多江(生田絵梨花)はその顔を見て顔をしかめる。
- 宮川家では、佳枝が外を歩きたいと希望する。
- りんは佳枝を支えながら丸山(若林時英)の店へ連れていく。
- 佳枝は小豆味の蒸し麺包を注文し、気分がいいと喜ぶ。
- 一ノ瀬家に軍人の堀内が訪れ、吾郎が広島の陸軍予備病院で死亡したことを直美に伝える。
- 吾郎は台湾での戦闘中、岩場から転落して負傷し、広島に後送されたが病院で亡くなったという。
- 直美は吾郎の遺品として風呂敷包みを受け取る。
- 遺品の軍服は、いつものように上から2番目のボタンが取れてなくなっていた。
- 直美は、翌日から仕事に戻ろうと思うと話す。
- 美津(水野美紀)は休むように言うが、りんは直美が本当に働きたいならいいのではないかと受け止める。
- 恵風看護婦会では、直美が明をそばに寝かせて事務仕事をしている。
- ツル(うらじぬの)は、直美の復帰が早すぎるのではないかと心配する。
- りんは、佳枝の看護を通じて、仕事をする方が痛みを逃がせることもあるのではないかと考える。
- その時、多江が恵風看護婦会にやって来る。
個人的に印象に残ったこと
今回は、明治28年4月から始まった。
吾郎が出征して1か月。
直美は、明を無事に出産している。
明は無事に生まれた。
それだけでも本来は大きな喜びである。
しかも、明治28年4月18日の新聞には「帝国と清国との平和条約」が結ばれたことが載っている。
りんは直美に、日本が勝って戦争が終わったことを教える。
直美は喜ぶ。
吾郎が帰ってくる。
そう信じる。
「明、お父さん帰ってくるって、うれしいね。」
直美は明にそう話しかける。
この時点では、直美は希望を持っていた。
明は無事に生まれた。
戦争も終わった。
吾郎もきっと帰ってくる。
吾郎が明の顔を見る。
吾郎と直美と明の三人で暮らす。
前回、二人が名付けた「明るい未来」に、ようやくたどり着けるのではないかと思える場面だった。
しかし、終戦してしばらく経っても、吾郎は帰ってこなかった。
直美は、戦争は終わったけれど、近衛師団はそのまま台湾に行っていると手紙に書かれていることを説明する。
ただ、詳しいことは書けないようだ。
直美は吾郎に手紙を書く。
明はぐんぐん大きくなっている。
泣き声もぐんぐん大きくなっている。
寝不足ではあるが、一ノ瀬家の力を借りて何とか育てている。
早く明の顔を見てほしい。
無事の帰りを心から祈っている。
その手紙の内容が、あまりにも普通で、あまりにも切ない。
直美は、吾郎が戻る前提で日々を過ごしている。
明の成長を伝える。
泣き声の大きさを伝える。
父親として早く会ってほしいと願う。
でも視聴者には、もう不穏な空気が見えている。
広島の陸軍予備病院には、負傷兵が運ばれてくる。
負傷兵を迎える多江は、患者の顔を見て顔をしかめる。
この時点で、多江は誰を見たのか。
嫌な予感がした。
一ノ瀬家では、美津が明を抱いている。
直美に明を渡し、腰を伸ばす美津。
美津も体は楽ではない。
それでも、直美と明を支えている。
直美は一人ではない。
一ノ瀬家が、当たり前のように直美を支えている。
宮川家では、りんが佳枝の運動を手伝っている。
手の指の運動のあと、足を動かしましょうとりんが指示する。
すると佳枝は言う。
「それなら……出かけたい。外を歩きたい。」
これはとても大きな希望だった。
佳枝はロイマチスで、体の自由が少しずつ失われている。
自分でできないことが増えていく。
でも、その中で外を歩きたいと思う。
家の中で運動するだけではなく、外に出たい。
気持ちの良い空気を感じたい。
りんは佳枝を支えながら歩く。
そして、丸山の店にたどり着く。
嬉しそうな佳枝は、丸山におすすめを聞き、小豆味の蒸し麺包を注文する。
佳枝は、わがままを言ってごめんなさいと謝る。
りんは、歩くのはいい足の運動になると答える。
佳枝は息を吐く。
「はあ〜、気持ちいい。今日はとても気分がいいわ。」
りんが、またお散歩に来ましょうと伝えると、佳枝は笑顔で喜ぶ。
この場面はすごく良かった。
佳枝の病気は治らない。
でも、外に出ることで気持ちが変わる。
歩くことは運動にもなる。
そして、店で好きなものを選ぶこともできる。
これは看護の大事なところだと思う。
体を治すだけではない。
生きる気持ちを少し取り戻す。
気分がいいと思える時間を作る。
佳枝にとって、この散歩は大きな意味があった。
そしてこの経験が、後の直美への向き合い方にもつながっていく。
一ノ瀬家の朝。
環は明を見ていて遅刻しそうになる。
台所では、りんと直美が後片付けをしている。
環が家を出ていくと、入れ替わりに軍人の堀内がやって来る。
直美とりんが片付けをしていると、玄関の外から声が聞こえる。
「朝早くに失礼いたします。連隊から参りました。」
直美が玄関を出る。
堀内は、改めて正式の通知をするが、上官の命により急ぎ知らせに来たと説明する。
そして、吾郎が広島の陸軍予備病院で死亡したことが知らされる。
直美はすぐには受け入れられない。
夫は台湾にいるはずだから、人違いではないかと食い下がる。
しかし堀内は説明する。
吾郎は、台湾での戦闘中、岩場から転落して負傷した。
広島に後送されたが、病院で亡くなった。
直美は遺品だと言われ、風呂敷包みを受け取る。
無表情のまま、
「ご苦労様でございました。」
と頭を下げる。
軍人は敬礼して去っていく。
この直美の無表情がつらかった。
泣くことも、叫ぶこともできない。
あまりにも突然すぎて、感情が追いついていない。
戦争は終わった。
吾郎は台湾にいると思っていた。
もうすぐ帰ってくるはずだった。
なのに、死亡の知らせが来る。
直美には、理解できなくて当然である。
りんが、呆然とする直美に声をかける。
その時、明が泣き出す。
直美は明を抱き、庭に立つ。
そばに来たりんに、直美は戦争が終わったのに死んでしまったことを受け入れがたいと話す。
でも、吾郎らしいとも言う。
この「吾郎らしい」は、少し分からなかった。
戦闘で受けた直接の傷ではなく、岩場から転落して負傷し、病院に運ばれたが亡くなってしまったことが吾郎らしいのか。
戦争が終わったのだから、あと少しの辛抱で帰れたのに死んでしまったことが吾郎らしいのか。
それとも、直美にしか分からない、何か吾郎らしさがあったのか。
はっきりとは分からない。
ただ、直美は直美なりに、吾郎の死を受け止めようとしているようにも見えた。
一人になった部屋で、直美は風呂敷包みをほどく。
中には軍服が入っている。
いつものように、上から2番目のボタンが取れてなくなっている。
直美は小さく微笑む。
「あんなにギュウギュウに縫い付けたのに何で……?」
前回、直美は戦地で絶対に取れないようにと、吾郎の軍服のボタンをしっかり縫い付けていた。
そのボタンがまた取れている。
吾郎らしいと言えば、ここが吾郎らしいのかもしれない。
直美が何度付けても取れるボタン。
吾郎と直美の日常の象徴だったボタン。
そのボタンが、遺品の軍服でも取れている。
直美は泣き崩れるのではなく、小さく微笑む。
この微笑みが、かえって痛かった。
りんたちと夕食を食べる直美は、明日から仕事に戻ろうと思うと話す。
美津は、こんな時なのだから働かず休めと言う。
当然である。
夫を亡くしたばかりで、産後間もない。
普通なら休むべきだ。
しかし直美は、働いているほうがいいと言う。
美津は納得できない。
でも、りんが助け船を出す。
「いいんじゃない? 直美さんが本当に働きたいなら。」
ここは難しい。
直美は無理をしているのかもしれない。
働くことで悲しみから逃げようとしているのかもしれない。
でも、家にいて悲しみだけを見つめている方がつらいこともある。
佳枝の看護で、りんは学んだのだと思う。
家に籠っているだけでは元気を取り戻せないこともある。
外を歩くことで、少し気分が変わることもある。
痛みがなくなるわけではない。
でも、痛みから少し目をそらせる時間が必要なこともある。
直美にとって、仕事がその役割を果たすかもしれない。
だからりんは、直美が本当に働きたいならいいのではないかと言ったのだと思う。
部屋で直美は写真を見る。
その写真には、軍服姿の吾郎と、お腹の大きな直美が写っていた。
吾郎は、明の顔を見ることができなかった。
でも、明がお腹にいた時の直美とは一緒に写真に残っている。
そのことが、少しでも直美の支えになるのだろうか。
恵風看護婦会では、直美が明をそばに寝かせて事務仕事をしている。
ツルがりんを表に出し、直美は大丈夫なのか、復帰は早くないかと気にする。
その心配もよく分かる。
直美は夫を亡くしたばかりで、赤ん坊もいる。
無理をしているようにも見える。
りんは、佳枝の看護をしていて、家に籠るより仕事をする方が痛みを逃がせるかもしれないと思ったと伝える。
やはり佳枝の散歩が、直美への考え方につながっている。
りんは、気づき、学んだことを他者にも活かしている。
これは、りんの成長だと思う。
そして、その時、多江が恵風看護婦会までやって来る。
おそらく、広島の陸軍予備病院で吾郎を看取ったのは多江なのだろう。
多江は、何かを伝えるために来たのだと思う。
吾郎の最期。
吾郎が直美や明に何か残した言葉。
それを持って来たのかもしれない。
りんは佳枝の看護から直美への寄り添いを学んだ
今回のりんは、佳枝の看護で得た気づきを、すぐに直美への寄り添いに活かしていた。
佳枝は、外を歩きたいと言った。
外を歩き、丸山の店で蒸し麺包を食べ、気分がいいと笑った。
病気は治らない。
でも、家に籠っているだけではない時間が、佳枝の気持ちを少し軽くした。
直美も、夫を亡くした悲しみが消えるわけではない。
でも、働くことで、その痛みを少し逃がせるかもしれない。
りんはそれを感じたのだと思う。
看護で学んだことを、別の人にも活かす。
りんは着実に成長している。
夫を失った直美のそばに、りんがいてくれて本当に良かった。
吾郎に明の顔を見せたかった
吾郎は、明の顔を見ることなく亡くなってしまった。
これは本当にきつい。
前回、直美と吾郎は「明」という名前を決めた。
明るい未来。
明と三人で、どんな時も明るく暮らしていきたい。
そう願った。
しかし吾郎は、その明を抱くことも、顔を見ることもできなかった。
終戦後の台湾で負傷し、広島の病院で亡くなる。
戦争が終わったのに死んでしまう。
これが戦争のリアルなのかもしれない。
勝った、負けたという話の裏で、帰ってこない人がいる。
生まれた子どもの顔を見ることもできない父親がいる。
吾郎には、明の顔を見せてやりたかった。
直美の幸せはあまりにももろく崩れた
直美は、みなしごとして幸せとは無縁に生きてきた。
鹿鳴館で裕福な男を捕まえようとしたこともあった。
嘘をつかなければ生きられなかった。
そんな直美が、吾郎と出会い、結婚し、母になることを喜べるようになった。
やっと手にした幸せだった。
その幸せが、戦争によってもろく崩れた。
吾郎が亡くなった今、明を授かったことがいいことだったのかどうかは、簡単には言えない。
直美にとって明は生きる支えになるかもしれない。
でも同時に、吾郎を失った悲しみをずっと思い出させる存在にもなるかもしれない。
ただ、今の直美は昔の直美ではない。
自分で生きていく力を得た直美なら、明を捨てることなく、一人でも育てていくだろう。
もちろん、本当の意味で一人ではない。
一ノ瀬家がいる。
りんがいる。
美津がいる。
環がいる。
だから直美には、何とか踏ん張ってほしい。
「吾郎らしい」は直美にしか分からない言葉だった
直美が、戦争が終わったのに死んでしまったことを「吾郎らしい」と言ったのは、少し引っかかった。
戦闘で受けた傷ではなく、岩場から転落して亡くなったことが吾郎らしいのか。
あと少しで帰れたはずなのに死んでしまったことが吾郎らしいのか。
はっきりとは分からない。
でも、夫婦には夫婦にしか分からない感覚があるのだと思う。
直美にしか分からない吾郎らしさ。
その言葉の中に、怒りでも悲しみでもない、直美だけの受け止め方があったのかもしれない。
直美は無理していないのか
直美は、翌日から仕事に戻ろうとした。
働いている方がいいと言った。
りんは、それを認めた。
家に籠るより仕事をする方が、痛みを逃がせることもある。
それは分かる。
ただ、直美は本当に無理していないのだろうか。
夫を亡くしたばかりで、産後間もない。
明もいる。
悲しみもある。
働くことが支えになるのか。
それとも、悲しみを感じないように無理やり動いているだけなのか。
その答えはまだ分からない。
りんがそばにいるから大丈夫だと思いたいが、直美の心はかなり心配である。
多江は何を伝えに来たのか
ラストに多江が恵風看護婦会へやって来た。
広島の陸軍予備病院に運ばれてきた負傷兵を見て、多江は顔をしかめていた。
おそらく、その負傷兵が吾郎だったのだろう。
多江は吾郎の最期を知っている。
だから、直美に何かを伝えに来たのだと思う。
吾郎は最期に何を言ったのか。
明のことを知っていたのか。
直美への言葉はあったのか。
次回、多江が何を語るのか、とても気になる。
まとめ
第109回は、吾郎の死が告げられるつらい回だった。日清戦争は終わり、明も無事に生まれ、直美は吾郎が帰ってくると信じていた。その直後に届いた死亡の報告は、あまりにも残酷だった。
吾郎は明の顔を見ることなく亡くなった。前回、直美と吾郎が「明るい未来」を願って名付けた明。その明を一度も抱けなかったことが本当につらい。
一方で、りんは佳枝の看護を通じて、家に籠るより外に出たり働いたりすることで痛みを逃がせることもあると学び、それを直美への寄り添いに活かしていた。りんの成長も感じる回だった。
直美はこの悲しみから立ち直れるのか。吾郎を看取ったと思われる多江は、何を伝えに来たのか。戦争が奪ったものの大きさを感じる回だった。
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