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2026年4月16日放送の『風、薫る』第14回は、りん(見上愛)の側でも直美(上坂樹里)の側でも、嘘や見栄や打算のようなものが前面に出ていて、正直かなりしんどい回だった。物語として「生きるためにはきれいごとだけでは済まない」ということを描きたいのだろうとは思う。けれど、今回に関しては、その苦しさや泥くささが、まだ人物の成長や希望に結びついて見えてこないぶん、見ていて「なんだかなぁ」という気持ちの方が強く残った。
りんはようやく働き口を得たのに、美津(水野美紀)は店主の身元や家柄を気にし、しかも最後は卯三郎(坂東彌十郎)にもらった物で機嫌を良くする。直美は直美で、嘘を重ねて小日向栄介(藤原季節)との距離を縮めていく。誰もが何かを得ようとして動いているのに、その努力がまっすぐな形で見えにくく、今のところは「いかに上手く寄生先を見つけるか」を見せられているような気分になってしまった。
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第14回のポイント
- 美津と安(早坂美海)も東京でりんと暮らすことになり、亀吉(三浦貴大)は仕送りを止める。
- 美津は瑞穂屋の店や卯三郎のことを警戒するが、実際に会うと態度を大きく変える。
- りんは働きながら英語の勉強を続け、「社会」という言葉を手がかりにしている。
- 直美は小日向との距離を縮め、ついに告白まで受ける。
個人的に印象に残ったこと
今回まず思ったのは、亀吉が本当に諦めたのかどうか、ということだった。何度も美津のところへ来ていたのに、こんだけ探して見つからないなら好きにしたらいい、と言って仕送りを止める。表面上は手を引いたように見えるが、あまりにも急で、逆に不気味でもあった。愛情があって探していたわけではないはずなのに、そこまで執着していた相手が急に引くというのも妙な感じがする。
そして、美津がりんに謝られて、自分がりんに甘えて意に添わぬ結婚をさせたのが悪いのだと言う場面は、ようやくそこを認めたのかという思いはあった。ただ、その後の美津を見ていると、反省がりんの生きやすさにちゃんとつながっているかというと、まだ微妙だった。りんの暮らしぶりを見て驚き、まずは店のことや卯三郎の出自を気にする。東京で働いて生きていくということを、まだ家柄や体裁のフィルター越しにしか見られていないのだと思う。
りんが夜、英語の勉強をしていて、「社会」の項目を辞書の中に見つけて喜ぶ場面はよかった。信右衛門から受け取った学びの種が、今もちゃんとりんの中で生きているのだと感じるし、自分の置かれた状況を超える言葉を少しずつ手に入れようとしている感じがあった。寝たふりをしている美津がそれを見ているのも印象的で、娘が変わりつつあることに何かを感じてはいるのだろうと思う。
ただ、その翌日に美津が瑞穂屋へ来てからの展開は、かなり「なんだかなぁ」だった。文(内田慈)や松原(小倉 史也)と話し、卯三郎と奥で話したあと、急に「ここは素晴らしいお店ですね」と出てくる。しかも手にはチョコレート、首には首飾り。さらに自分が筆頭家老の奥方だということまで明かしている。あまりにも分かりやすく物で懐柔されたように見えてしまって、正直かなり拍子抜けだった。
もちろん、美津にも警戒心はあったのだろうし、卯三郎の人柄や店の空気に納得した部分もあるのかもしれない。でも、視聴者として見えているのは、結局チョコレートや首飾りをもらって機嫌を良くしたような姿の方だ。しかも、筆頭家老の妻だと自分から名乗るあたりに、やはり「私は物乞いではない」というプライドも見えてしまう。結果としてりんがもっと一生懸命働くしかなくなっているだけにも見えて、母として何かを支えた感じがあまりしないのがつらかった。
一方、直美のパートもかなり割り切っていた。小日向にどうして海軍に入ったのかを聞き、自分も少し分かる気がすると共感する。この場面だけ見れば、閉塞感を抱えた二人の自然な出会いにも見える。でも、その土台には直美の嘘がある。家を見せられないから送迎は断るし、相手がいい条件の男かどうかをかなり冷静に見ている。しかも最後には告白まで勝ち取る。ここまで来ると、直美のしたたかさというより、かなり危うい綱渡りに見えてくる。
小日向:「直美さん、私とお付き合いしていただけませんか?」
え……?🙈直美と小日向、明日どうなる??
😍なシーンを見逃した方はこちらから👇https://t.co/SaKAUnYuGo#上坂樹里 #藤原季節 pic.twitter.com/aDIwVO3vDO
— 朝ドラ「風、薫る」公式 (@asadora_nhk) April 16, 2026
直美の行動原理は分かる。このままではまともな結婚はできない、自分の生まれでは日本にいても未来がない、だったら鹿鳴館でチャンスをつかむしかない。理屈は分かる。でも、それが「自分の力で生きる」こととして見えるかというと、今のところはまだそうは見えない。どちらかというと、自分の器量や嘘を使って、より条件のいい寄生先を探しているように見えてしまう。もちろん、これを寄生と切って捨てるのも乱暴かもしれないが、少なくとも今の段階では、そう見えてしまうような描かれ方になっていると思う。
今回の全体を通してしんどかったのは、誰もが生きるために必死なのは分かるのに、その必死さがあまり気持ちよく伝わってこないことだった。りんは働いている。でもその周りでは、美津が物に弱く、卯三郎の店への評価もあっさり変わる。直美はチャンスをつかもうとする。でもそこには嘘と計算がまとわりつく。視聴者として「頑張れ」と素直に言いにくい状態が続いている感じがある。
美津は結局、古い価値観からまだ抜けきれていないのだと思う
今回の美津を見ていると、りんに対する罪悪感はあっても、自分の価値観そのものはまだ大きく変わっていないのだと思う。働く店の家柄や素性を気にし、卯三郎に会えばすぐに態度を変え、自分が筆頭家老の妻だと名乗る。その行動の端々に、やはり「自分たちはそういう家なのだ」という意識が残っている。
それは美津の弱さでもあり、生き方でもあるのだろう。でも今のりんに必要なのは、そういう古い物差しではなく、今の暮らしをどう支えるかだと思うと、どうしてももどかしい。
りんは少しずつ前へ進んでいるのに、周囲がその歩みを濁してしまう
りん自身は、今回かなり真面目に前へ進んでいたと思う。英語を勉強し、「社会」という言葉に喜び、働くことを続けている。この姿勢はちゃんと評価されていいはずだ。だからこそ、美津の振る舞いや店の外野的な空気が、その前向きさを濁してしまうのが惜しい。
りんの物語として見たいのは、本来はこういう学びや変化の方だと思う。ここがもっと芯として見えてくると、かなり面白くなるはずなのに、まだ周囲の見栄や打算の方が目立ってしまっているのが今の苦しさなのかもしれない。
直美は「結婚のための鹿鳴館」という発想から抜け出せるのか
直美のパートで気になるのはここだ。今のところ直美は、鹿鳴館を自分の人生を変える場として見ているけれど、それはまだ「条件のいい結婚相手を見つける場」という意味合いが強い。捨松(多部未華子)が見ているものとは、明らかに違う。
だから今後、直美がどこかでこの考え方を越えられるのかが大事になってきそうだ。器量や嘘や立ち回りで相手をつかまえるのではなく、自分自身が何をしたいのか。その問いに向かえない限り、メアリーに胸を張って報告できる生き方にはならないのだろうと思う。
物語が「何を見せたいのか」がまだ散って見えるのがしんどさの原因かもしれない
今回感じた「何を見せられているのか分からない」という感覚は、人物たちの行動がそれぞれ別々の欲望や打算で動いていて、それがまだ一本の芯としてつながって見えないからなのかもしれない。女の生きづらさ、何者でもなくても生きていいこと、社会という言葉、結婚による上昇志向。言いたいことは分かるのに、それが少し散らばっていて、視聴者としてどこに気持ちを置けばいいのか迷う感じがある。
ここが今後、一つの線としてまとまってくれば面白さになるのかもしれないが、現時点ではまだ身構えてしまう部分がある。
まとめ
2026年4月16日放送の『風、薫る』第14回は、りんも直美も生きるために動いているのに、その動き方があまり気持ちよく見えず、正直「なんだかなぁ」がかなり残る回だった。美津は物に懐柔されたように見え、直美は嘘を重ねて小日向に近づいていく。誰もが必死なのは分かるが、その必死さが今のところ爽快さにはつながっていない。
ただ、りんが英語を学び続けていることや、直美が捨松の存在から何かを受け取り始めていることには、まだ先への可能性がある。ここからどう巻き返していくのか。第14回は、かなり不満やもどかしさを抱かせる回ではあったが、そのぶん今後の立て直しに期待したくなる回でもあった。
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