朝ドラ再放送『どんど晴れ』第154回感想(ネタバレ)──営業中止の危機を救ったのは秋山だった そして東京で突きつけられる勝ち負けの論理

どんど晴れ

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2026年4月16日に放送された『どんど晴れ』第154回。

第154回は、加賀美屋がついに営業中止と経営権喪失の土俵際まで追い詰められながら、秋山の5%によって辛うじて踏みとどまる回だった。環は従業員を守るためにいったんワイバーン側の条件を受け入れようとし、それでも最後に一日だけ加賀美屋としてのおもてなしをさせてほしいと土下座で頼み込む。その姿と、「来る者帰るが如し」という言葉が、ついに秋山の心を決定的に動かした。一方その頃、東京では聡の正体がついに明かされ、岸本会長という新たな巨大な壁が立ちはだかる。今回は、秋山の改心という大きな転換がありながらも、それで全て解決とはならず、むしろ最後の局面がさらに資本と価値観のぶつかり合いとして深まっていく回だったと思う。

※この回は、前日の展開を踏まえて見ると、より重みが増します。

👇 前回(第153回)の感想はこちら

朝ドラ再放送『どんど晴れ』第153回感想(ネタバレ)──戻ってきた仲居たち、残したい加賀美屋の姿、そして秋山失脚の衝撃
2026年4月15日に放送された『どんど晴れ』第153回。第153回は、加賀美屋がようやく再建の形を整え始めたところへ、ワイバーン側が真正面から強硬策を仕掛けてきた回だった。一度辞めた仲居たちも戻り、板場も仲居も少しずつ持ち直し、環はその“...

  1. 「来る者帰るが如し」が秋山を止めた――加賀美屋が土俵際で踏みとどまった場面
    1. 個人的感想
      1. この場面で大きいのは、環が“誇りを守るため”ではなく“従業員を守るため”にいったん負けを受け入れたことだと思う
      2. 土下座の場面は、屈服ではなく“最後まで加賀美屋のやり方を通そうとした抵抗”だったんだと思う
      3. 「来る者帰るが如し」が秋山に効いたのは、“帰る場所を失った人間”だからこそなんだろうなと思う
      4. 株の説明の細部には少し揺れがあるけど、ドラマとしては“秋山の5%が最後の鍵だった”という結論を強く出したかったんだろうなと思う
      5. 残り47%を誰も手放さない、という環の返答は、“加賀美家の和”が初めて株主構成の面でも意味を持った瞬間でもある
      6. 秋山の裏切りは、ワイバーンへの復讐というより“もうこれ以上は自分をあちら側に置けない”ところまで来た結果なのかもしれない
      7. “秋山が加賀美屋を救った場面”であると同時に、“秋山自身がようやく自分の立ち位置を選び直した場面”としてかなり重要だった
  2. 岸本会長の価値観と、聡の過去――“勝ち負け”の論理が突きつけられた場面
    1. 個人的感想
      1. この場面で大きいのは、聡の正体が明かされたことで、“加賀美屋を救うかもしれない力”が、情ではなく資本と権力の側にあるとはっきりしたことだと思う
      2. 第31回からあった聡の“サラリーマン嫌悪”が、ついに出自と結びついたのはかなり気持ちいい回収だった
      3. 岸本会長が“話の分かる大人”ではなく、かなりはっきり“勝ち負けの論理”を口にするのがいい
      4. 「法に触れていない」と「正しい」は別だという聡の違和感は、かなりこの終盤全体のテーマにも重なっている
      5. 柾樹たちが岸本会長に何を頼みに来たのかが少しぼんやりしているのは、逆に“加賀美屋一軒の問題ではなくなっている”ことの表れかもしれない
      6. “心で動く加賀美屋”と“勝敗で世界を見る岸本会長”が真正面からぶつかった場面としてかなり重要だった
  3. まとめ

「来る者帰るが如し」が秋山を止めた――加賀美屋が土俵際で踏みとどまった場面

  • 西田(池内万作)は、ワイバーンのもとで再建の道を選ぶのか、それとも従業員を路頭に迷わせるのか、環(宮本信子)に決断を迫る。
  • 環は「あなたたちの言う通りにします」と答え、いったん相手の条件を受け入れる。
  • 家族や従業員たちはその決断に異を唱えるが、環は、もう加賀美屋は自分たちだけのものではないと語る。
  • そのうえで環は、今日予約しているお客様だけは迎えさせてほしいと願い出る。
  • しかし西田は、今すぐ営業を中止してほしいと改めて要求する。
  • 環は、最後に加賀美屋としてのおもてなしをさせてほしいと土下座して頼み込む。
  • ほかの家族や従業員たちも、全員そろって土下座してお願いする。
  • その異様な光景に、アーサー(セインカミュ)たちは驚く。
  • 夏美(比嘉愛未)が「来る者帰るが如し」の意味を説明する。
  • その言葉を聞き、秋山(石原良純)は平治(長門裕之)と交わした会話を思い出す。
  • 秋山は環たちに「ここまでにしましょう。茶番劇はこれまでです」と告げ、アーサーたちには「自分たちの負けだ」と言う。
  • 秋山は、ワイバーンが保有する株と、自分個人が保有する株の話を始める。
  • そして環に、残りの加賀美屋株47%は誰が持っているのか、乗っ取られると分かっていて手放す者はいるのかと確認する。
  • 環は、加賀美家の人間にそんな者はいないと答える。
  • それを聞いた秋山は、自分の持つ加賀美屋株5%をワイバーンのために使うつもりはないと宣言する。
  • アーサーは、本社へすぐ報告すると言い、それでは秋山はクビになり、この世界では生きていけなくなるぞと脅す。
  • しかし秋山は、勝手にすればいいと応じる。
  • 秋山はさらにアーサーに、この加賀美屋の良さが分からない人間はとっとと出ていけと命じる。
  • アーサーは部屋の中を見渡し、そのまま出て行く。
  • 秋山は西田とユナ(ヨンア)にも退室を促す。
  • ユナは秋山を見損なったと言い、西田は、自分たちにはまだ加賀美屋の株がある、ここで手を引くわけにはいかないと告げる。
  • 秋山は、それは分かっていると返し、二人も退室させる。
  • ひとまず乗っ取りの危機を回避して安堵する加賀美屋の一同とは対照的に、秋山は複雑な表情を見せる。
  • 夏美が何とお礼を言ったらいいかと感謝すると、秋山は「あのおじいさんに言われた通りになっただけだ。座敷童に会ったのが運の尽きだとね」と言って、ほっとしたような笑みを見せる。
  • その秋山の背後で、環は静かに頭を下げる。

個人的感想

環は最後に、一日だけでも加賀美屋としてのおもてなしをさせてほしいと頼み込む。そして夏美が「来る者帰るが如し」の意味を説明する。加賀美屋に泊まりに来るということ自体を、我が家に帰ってくるような気持ちで楽しみにしてくれているお客様がいる。だからこそ、最後に加賀美屋としてのおもてなしをさせてほしい――この姿勢が、ついに秋山の心を動かす決定打になったんだろうなと思う。

秋山は、みんなが土下座してお願いしているあの異様な光景を見て、平治が言っていた「加賀美屋を何とかして救おうとしてくれる、人が人を思いやる心」というものを、ようやく実感として受け取ったのかもしれない。これもまた、ある意味では座敷童の力なんだろう。

ただ、その後の株の説明にはかなり引っかかった。秋山は「我々が」最初に取得した株が3%だと言っていたけれど、第150回で半年前に3%の株を取得したと説明した時は、「私は」と、秋山個人が3%取得したようにも聞こえる言い方だった。今回になって急に「我々が」最初に取得した3%と、組織として取ったような言い方に変わってしまった。ここ、かなり大事なポイントだと思うんだけど、案外さらっと変更されてしまったように見えて少し気になった。

以前にも似たような引っかかりを覚えたことがあった。伸一が「高級リゾートホテルに建て替える」と言っていたはずなのに、途中に高級リゾートホテルのような「旅館」に建て替えるという話をした時だ。いや、ホテルじゃなくて旅館に建て替えるなら、そこまでみんな文句言わなかったんじゃないの、と思ったのを思い出した。

話を戻すと、今回の秋山の説明では、秋山たちが最初に入手した3%、そして伸一の持分をすべて取得して、会社としては53%を持っていることになる。そのうえで、報酬としてそのうち5%を秋山個人が持っているという。つまり53-5で、秋山の5%を除くとワイバーン本体だけでは過半数に届かない、という理屈だ。

半年前に3%取得した時点では、自分は、秋山が個人的に3%を取得したのか、それとも秋山自身が実は加賀美家の身内にあたる血筋なのか、いろいろ考えていた。でも今回「我々が」最初に取得した株と言ったことで、ワイバーンが主体となって加賀美家の身内から3%を入手した、という理解で見るのが自然なんだろうなと思った。結局、誰が譲渡したのかは最後まで明かされなかったけれど。

そのうえで秋山は、残り47%の状況を環に確認する。ここも少し気になった。そもそも3%を入手する段階で、株主構成くらい調べているんじゃないのかと思うからだ。最初は、たまたま3%持っている親族を見つけたから何となく攻めてみた、みたいな雑な話なのかとも思った。でも「残りの株は身内の方がお持ちなんですよね?」と確認している以上、身内しか株を持っていないこと自体は把握したうえで、念押ししているだけなんだろう。

ここで重要なのは、環が「残り47%は私と主人、そして親族の者が少しずつ分けて持っている」と説明し、さらに秋山が「この加賀美屋が乗っ取られると分かっていて手放す人はいますか?」と確認したところだと思う。要するに、最初に3%を譲渡してしまった親族は、半年前の時点ではそれが乗っ取りのための契約だなんて思っていなかったんだろう。しかし、今後もし誰かが株を譲渡するなら、それは加賀美屋が乗っ取られると分かったうえで、お金に目がくらんで譲る人間だというレッテルを貼られることになる。そうなると、乗っ取りに加担した親族として生き続けるわけで、かなり心理的ハードルは高い。すでに3%を譲った親族がいる以上、今後も絶対にないとは言い切れないけれど、かなりしんどい立場になるのは間違いないだろう。

それにしても、秋山個人が保有しているこの5%の解釈はやっぱり少し分かりづらい。秋山はアーサーたちに「私は、私の“5%”の株をお前たちのために使うつもりはない!」とはっきり言っている。だから、どうあってもワイバーンは経営の実権を握れないと明言しているわけだ。たしかに第146話で「報酬は5%」という話は出ていた。でもその5%が、加賀美屋の全株式に対する5%なのか、伸一から取得した50%のうちの5%なのかははっきりしていなかった。

もし仮に、秋山の取り分が「伸一から取得した株式のうちの5%」という意味なら、秋山個人の持分は加賀美屋全体の2.5%にしかならない。そうだとしたら、「私の“5%”の株を使わせない」とは言わないんじゃないかと思うんだよ。発行済株式が600株なら、自分が持っているのが30株なのか15株なのかくらい、さすがに分かるだろうと。MBAも持っているんだろうし、伸一から実際に紙の株券も譲渡してもらって、自分の取り分以外は本社が保管していることまで分かっているんだから、自分の持株が何株で本社が300株超を持っているか持っていないかくらいは把握していて当然だろうと思う。

もし本当に、秋山が実際には2.5%しか持っていないのに、勢いだけで「53-5!」とアーサーたちを煽っていたのだとしたら、それはそれでちょっとしたコントだ。「経営学のMBAを持っていながら、そんな簡単な計算もできないのか!」と大見えを切った本人が、実はケアレスミスをしていた、みたいな話になってしまう。さすがにそれはないだろうから、素直に秋山は加賀美屋全体の5%を持っている、と受け取るのが自然なんだろうなと思う。だって53-5という説明を自信満々にしているし、実際に紙の株券も持っているいるはずなんだから。自分はプロだと豪語し、日本語の使い方が微妙だったとしても、自分の株券の数字を見て持分比率くらい分るんじゃないだろうかと。

とにかく、秋山がワイバーンを裏切ってくれたことで加賀美屋はひとまず助かった。来る者帰るが如し、という加賀美屋のおもてなしが、裏切られて投獄され、帰る場所を失っていた秋山に対して、「ここには帰る場所がある」と示すように響いたのだとしたら、かなり美しい流れではある。

ただ、一方でこうも思う。自分はずっと、もし秋山がワイバーンを裏切るとしたら、ワイバーンの中に、秋山を前科者に仕立てた過去の裏切り相手がいるんじゃないか、と予想していた。だから、もし今回の裏切りが、ただ単に夏美の座敷童パワーや加賀美屋のおもてなしに心を動かされた、というだけだったのだとしたら、前科者である秋山を拾ってくれたワイバーンを、秋山が単純に裏切っただけにも見えてしまう。そこは少し物足りない気もする。

秋山は、ワイバーンの仕事そのものに嫌気がさしていたんだろうか。加賀美屋が最高の旅館だったとしても、裏切られて投獄された苦い過去を持つ秋山が、それでもなお前科者を拾ってくれたワイバーンを「裏切る」理由としては、個人的にはもう少し明確なものがほしかった気もする。もちろん、加賀美屋に心を動かされたこと自体はよく分かる。でも、それだけであの秋山がここまで踏み切るのかという点には、少し考え込んでしまった。


この場面で大きいのは、環が“誇りを守るため”ではなく“従業員を守るため”にいったん負けを受け入れたことだと思う

ここ、かなり重い。

環は最後まで強気に突っぱねることもできたはずだ。

でもそうしない。

なぜなら、突っぱねた結果として従業員が総入れ替えになり、路頭に迷う可能性があるからだ。

つまり環はここで、

旅館の面子
より

働いている人たちの生活
を優先した。

かなり女将として、経営者として重い決断だったと思う。

土下座の場面は、屈服ではなく“最後まで加賀美屋のやり方を通そうとした抵抗”だったんだと思う

ぱっと見ると、土下座は負けだ。

でも中身は少し違う。

環たちが頼んでいるのは、

自分たちを許してくれ、ではなく、

最後にお客様をちゃんと迎えさせてほしい、ということだ。

つまりあの土下座は、

加賀美屋の矜持を最後まで通したい
という抵抗でもあった。

かなり異様だけど、かなり加賀美屋らしい。

「来る者帰るが如し」が秋山に効いたのは、“帰る場所を失った人間”だからこそなんだろうなと思う

ここはかなり大きい。

来る者帰るが如し。

客を家へ帰ってくるように迎える。

その発想は、帰る場所を持っている側の言葉だ。

でも秋山は、裏切られ、投獄され、たぶんずっと帰る場所を失ってきた人間なのかもしれない。

だからこそこの言葉は、

単なる旅館の接客理念ではなく、

お前にも帰る場所がありえたのかもしれない
という形で響いたんじゃないかと思う。

かなり効く一言だったはずだ。

株の説明の細部には少し揺れがあるけど、ドラマとしては“秋山の5%が最後の鍵だった”という結論を強く出したかったんだろうなと思う

3%を「私」と言っていたのに「我々」に変わる。

このあたりは、たしかに少し雑に見える。

でもたぶんドラマとしては、細部の整合性よりも、

秋山個人の5%が加賀美屋を救う鍵になる
という構図を明確にしたかったんだろうなと思う。

だから厳密に詰めると気になるところはあるけれど、

大枠では

ワイバーン53%のうち、秋山の5%が抜けると過半数が崩れる
ということを見せたかったんだろう。

残り47%を誰も手放さない、という環の返答は、“加賀美家の和”が初めて株主構成の面でも意味を持った瞬間でもある

これまでずっと「家族の和」は精神的な話として語られてきた。

でも今回は違う。

誰も売らない。

つまり親族が持株を守る。

そのことが、そのまま買収防衛になる。

つまりここで初めて、

家族の和


株主の結束
として具体的な意味を持ったんだろう。

かなり面白い転換だと思う。

秋山の裏切りは、ワイバーンへの復讐というより“もうこれ以上は自分をあちら側に置けない”ところまで来た結果なのかもしれない

今回の描き方を見ると、秋山はワイバーンへの復讐のために裏切ったというより、

加賀美屋を壊す側に、もう自分を置いていられなくなった
んだろうなという感じが強い。

つまりこれは積極的な裏切りというより、

限界まで来た良心の反転
なのかもしれない。

ドラマとしてはかなり情緒的だけど、そう読むと少し腑に落ちる。

“秋山が加賀美屋を救った場面”であると同時に、“秋山自身がようやく自分の立ち位置を選び直した場面”としてかなり重要だった

加賀美屋は助かった。

でもそれだけじゃない。

秋山はここで、

買収屋として生き続けるのか、

それとも自分の中に残っていた何かを選ぶのか、

その分岐で後者を選んだ。

つまりこの場面は、

加賀美屋の危機回避
であると同時に、

秋山という人物の着地点
が決まった場面なんだと思う。

かなり大きな山場だった。


岸本会長の価値観と、聡の過去――“勝ち負け”の論理が突きつけられた場面

  • 翌日、夏美は次の手を打つため、柾樹(内田朝陽)の待つ東京へ向かう。
  • 夏美が到着すると、そこには柾樹、香織(相沢紗世)、山室部長(中原丈雄)、久美子(別府あゆみ)が待っていた。
  • 夏美は、秋山が自分の持株は使わせないと宣言したことを柾樹たちに報告する。
  • 香織は、乗っ取り側まで味方につけるなんてさすが夏美だと話す。
  • 柾樹は、岸本会長(夏八木勲)がワイバーン・インベストメント・ジャパンの社外取締役だったのは昨年までだと説明する。
  • 香織は、岸本会長が自動車部門でいち早く中国市場へ進出し成功した人物だと説明する。
  • 久美子は、「青雲商事会長 岸本隆一郎」が載っている雑誌を見せながら、岸本会長は今でもワイバーンのニューヨーク本社と付き合いがあり、少し強引なところもあるらしいと伝える。
  • 山室部長は、話は通じる人らしいが、ビジネスにはシビアだと説明する。
  • その時、部屋のドアが開き、中から聡(渡邉邦門)が出てくる。
  • 夏美と柾樹は、なぜ聡がここにいるのかと驚く。
  • 聡は、ここの会長である岸本は自分の父だと説明する。
  • 夏美と柾樹は岸本会長の部屋へ通される。
  • そこにはハーバーサイドホテル副総支配人の吉沢(ささきいさお)も待っていた。
  • 柾樹と岸本会長があいさつを交わす。
  • 岸本会長は、大体の事情は吉沢と息子の聡から聞いていると話す。
  • 柾樹が現状を説明し、聡も、柾樹と夏美は大切な仲間だから助けてあげてほしいと頼む。
  • 吉沢は、利益さえ上がればいいという昨今のM&Aの考え方には賛成できないとし、何かいい手はないかと岸本会長に問う。
  • 岸本会長が語り始めると、聡が反論する。
  • すると岸本会長は、聡に「お前は、自分に負けただけだ」と言い放つ。
  • さらに夏美と柾樹にも、「君たちも負けたんだよ。世の中は勝つか負けるかだ」と告げる。
  • その緊張感のある場面で、この日の放送は終了する。

個人的感想

ここは東京にある岸本会長の青雲商事なのだろうが、まず少し気になったのは、山室部長と香織と久美子まで揃っていることだ。吉沢のお供として来ているのか、それともそれぞれが夏美に一つずつ説明するために配置されているのか。少し都合よく並んでいる感じもしなくはないが、終盤のお膳立てとしては分かりやすい。だが、こんなにたくさん駆けつけてハーバーサイドホテルの企画部は大丈夫かと心配にもなる。

岸本会長の雑誌インタビューにあった「情けでは利益は生まれない」という言葉は、いかにもこの人らしくて面白いし、今後の展開にもかなり関わってきそうだなと思う。そういう価値観で生きてきた人なのだと、一言で伝わる。

そして聡だ。岸本会長の息子だと明かされる。もっと大きく驚いてもいい気もするけれど、相手の会社に乗り込んでいる場で大げさに反応するわけにもいかないし、あの程度の驚き方になるのも分かる。とはいえ、これで聡の違和感がかなりはっきり形になった。あの影のある感じも、サラリーマン的な世界への妙な敵意も、やはり自分の出自と強く結びついていたのだろうと思う。

ただ、ここで少し分からなくなるのは、柾樹たちが岸本会長に何を頼みに来たのか、という点だ。加賀美屋の買収そのものは、秋山が自分の持株は使わせないと宣言したことで、ひとまずは踏みとどまったようにも見える。なのにその翌日に、夏美まで同席して岸本会長に会いに来ている。ということは、単に加賀美屋一軒を助けてほしいという話ではなく、盛岡全体のリゾート開発を止めさせたいのか。それとも、ワイバーンに握られている株式を手放させて、また身内だけが持株を持つ状態に戻したいのか。このあたりがまだ少し曖昧だ。

柾樹は、今のままでは盛岡の古き良き伝統や歴史、大事に守ってきたものが壊されてしまうと説明している。そうなると、やはり加賀美屋だけではなく、盛岡全体を守るという発想なのかもしれない。一方で、聡まで「夏美と柾樹は大切な仲間だから助けてほしい」と頼んでいる。この“助ける”が、加賀美屋の買収からの救済を意味するのだとしたら、そこは秋山の改心で一歩前進しているようにも見える。だからこそ、岸本会長に何をしてもらいたいのかが気になる。ワイバーンに対して、持っている株を手放すよう圧力をかけてほしいのだろうか。あるいは盛岡全体への食い込みそのものを止めさせたいのだろうか。

そしてやはり引っかかるのが、岸本会長の「ワイバーンもビジネスで、何も法には触れていない」という言い方だ。ここは聡が「法に触れなければ何をしてもいいのか」と反発していたけれど、自分もその感覚の方が自然だと思う。というのも、以前からずっと引っかかっていることがあるからだ。もし本当に何も法に触れていないのなら、秋山はなぜ、一夜にして事務所をもぬけの殻にして逃げ、柾樹たちから所在を隠したのか。そこだけがどうにも整理できない。何もやましいことがないなら、堂々としていればいいはずなんだよな。あれはなぜ逃げたんだ。何か後ろめたいことがあるからにしか見えない。

そもそも、法に触れていないことと、その行為が正しいこと、有効なこととは別問題だ。違法ではなくても、「不当」であれば無効になることなんていくらでもある。公序良俗に反していたり、権利濫用に当たったりすれば、明文に触れていなくても目的を達することができないことは普通にある。このどんど晴れ世界の中にだって、そういう例はあった。時江の解雇がまさにそうだ。仮に解雇予告手当を払って即時解雇したのだとしても、法律に触れていないことと、その解雇が有効であることはまったく別だ。あの解雇はかなりの確率で無効になるだろうし、加賀美屋側が追加でお金を払う必要さえあったかもしれない。だから、「法に触れていないから大丈夫」「法に触れなければ何をやってもいい」という考え方はやっぱり危険だし、聡が感じている違和感の方がずっとまともだと思う。

もっとも、ビジネスとして大金を手にする、というのが岸本会長の価値観なのだろう。聡はそんな父親のやり方に反発して飛び出し、南部鉄器職人の道を志したのだと思う。岸本会長は、勝つか負けるかという尺度でしか物事を見ないタイプらしいし、自分の息子に対しても「自分に負けただけだ」と言い放つ。そんな父親のもとを離れて、「心」を大切にする平治のもとで南部鉄器職人を目指していた方が、たとえ大金は手に入らなくても、聡にとってはずっと幸せなんじゃないかと思ってしまう。平治はあんなに穏やかで幸せそうに日々を生きているわけだから。

岸本会長は夏美と柾樹に対しても、「君たちは負けたんだ。世の中は勝つか負けるかだ」と言う。でも少なくとも夏美は、その勝ち負けの世界とはかなり対極にいる存在だと思う。女将修業対決の時だって、相手に勝つことそのものに執着していたというより、競い合う中で自分自身を高めていこうとしていたように見えた。そういう人間が、最後には価値観の相容れない岸本会長に助けを求めなければならない。そこに資本主義の残酷さみたいなものを感じる。

もしこの殺伐とした展開から、最後に少しでもほっこりした最終回へ着地させることができるキーパーソンがいるのだとしたら、やはり、加賀美屋に宿泊中に熱を出し、夏美と恵美子(雛形あきこ)が付きっきりで看病した“岸本様”なのかもしれない。放送も残りあと2回。かなり楽しみだ。


この場面で大きいのは、聡の正体が明かされたことで、“加賀美屋を救うかもしれない力”が、情ではなく資本と権力の側にあるとはっきりしたことだと思う

ここまでの加賀美屋は、

  • 人の縁
  • おもてなし
  • 思いやり
  • 外からの応援

で踏ん張ってきた。

でも今回は違う。

青雲商事会長、岸本隆一郎。

つまりここで初めて、

加賀美屋を左右できるのは、人情だけではなく、現実の資本と権力でもある
とはっきり出てきた。

かなり終盤らしい重さだと思う。

第31回からあった聡の“サラリーマン嫌悪”が、ついに出自と結びついたのはかなり気持ちいい回収だった

聡の違和感はずっとあった。

妙に刺々しい。

妙に影がある。

妙に夏美の苦しさに反応する。

それがここで、岸本会長の息子だったと分かる。

つまり聡の反発は、単なる若さではなく、

父の価値観と、その世界への反発
だったんだろうなと見えてくる。

ここはかなりきれいな回収だと思う。

岸本会長が“話の分かる大人”ではなく、かなりはっきり“勝ち負けの論理”を口にするのがいい

終盤に出てくる有力者って、

案外すぐ味方してくれる便利な人物になりがちだ。

でも岸本会長は違う。

ちゃんと厳しい。

ちゃんと冷たい。

そして価値観が明確だ。

だからこそ、この人がどう動くのかが読めないし、

単なる都合のいい救世主では終わらない感じがある。

そこがかなり面白い。

「法に触れていない」と「正しい」は別だという聡の違和感は、かなりこの終盤全体のテーマにも重なっている

ここは本当に重要だと思う。

ワイバーンのやり方は、少なくとも表向きにはルールの中にある。

でもそれでいいのか、という話だ。

つまり今の終盤は、

合法か違法か
だけではなく、

それで人の心や歴史を壊していいのか
が問われている。

だから聡の反発は、かなりまっとうだし、

この作品の最後の問いに近い気がする。

柾樹たちが岸本会長に何を頼みに来たのかが少しぼんやりしているのは、逆に“加賀美屋一軒の問題ではなくなっている”ことの表れかもしれない

今となっては加賀美屋だけなら秋山の5%で何とか持ちこたえたようにも見える。

だからなおさら、何を頼みに来たのかが少し分かりづらい。

でも逆に言えば、

もう話は

加賀美屋一軒の防衛
だけじゃなく、

盛岡全体の開発と買収の構図
に広がっているのかもしれない。

そう考えると、この面会は加賀美屋救済というより、

もっと大きな流れを止めるための一手なんだろうなとも思える。

“心で動く加賀美屋”と“勝敗で世界を見る岸本会長”が真正面からぶつかった場面としてかなり重要だった

夏美たちは、人の心を大事にしてきた。

岸本会長は、勝つか負けるかで世界を見る。

つまりここでは、

どんど晴れの価値観


資本主義の価値観
が真正面からぶつかっている。

だからこの会話は、単なる作戦会議じゃない。

最終回へ向けて、

この作品が最後に何を肯定するのかを試される場面でもある。

かなり重要なラストだったと思う。


まとめ

今回の第154回でまず大きかったのは、環が“加賀美屋の誇り”よりも“従業員の生活”を優先して、いったんはワイバーン側の条件を飲もうとしたことだと思う。ここはかなり重かった。最後まで突っぱねることもできたはずだけど、そうすれば従業員が総入れ替えになり、路頭に迷うかもしれない。だから環は、自分たちだけの旅館ではもうないと認め、苦しい判断をする。女将としての面目よりも、働いている人たちの生活を取ったんだろう。かなり経営者としての現実判断だったと思う。

それでも環たちは、ただ屈したわけではなかった。最後に一日だけ、予約しているお客様を迎えさせてほしいと頼み込む。土下座までして願う。あの場面は異様だったし、正直ぎょっとする光景でもあったけれど、ただの屈服ではなかったと思う。自分たちを助けてくれではなく、最後まで加賀美屋としてお客様を迎えたい、という願いだったからだ。つまりあの土下座は、負けを認める行為であると同時に、加賀美屋としての矜持を最後まで通したいという抵抗でもあったんだろうなと思う。

そして、その姿を見た秋山がついに動く。ここで効いたのはやっぱり、夏美の説明した「来る者帰るが如し」だったんだろう。加賀美屋に泊まりに来ることを、自分の家へ帰ってくるように楽しみにしてくれる客がいる。だから最後まで迎えたい。その発想は、裏切られ、投獄され、帰る場所を失ってきた秋山にはかなり響いたはずだ。平治が言っていた「人が人を思いやる心」が、ここでついに秋山の中に届いた。座敷童に会ったのが運の尽きだ、という秋山の言葉は、かなりどんど晴れ的だけど、秋山がもう買収屋の側に自分を置いていられなくなったことの表れなんだろうなと思った。

ただ、その一方で株の説明には少し引っかかる部分も残った。以前は半年前に取得した3%の株について秋山が「私は」と言っていたのに、今回は「我々が」最初に取得した株という言い方になっている。このへんは結構大きいところなんだけど、案外さらっと変わってしまっている感じもある。とはいえ、ドラマとしてやりたかったのはそこよりも、ワイバーン53%のうち秋山個人の5%が抜けることで過半数が崩れる、という一点なんだろう。だから細部の整合性に少し揺れがあっても、とにかく「秋山の5%が最後の鍵だった」という構図を強く見せたかったんだと思う。ここはかなり大きかった。

そして今回、地味に重要だったのは、秋山が環に「残りの47%は誰が持っていて、乗っ取られると分かっていて手放す人はいるのか」と確認したことだと思う。半年前に3%を譲った親族は、まさかそれが乗っ取りに使われるとは思っていなかったのだろう。でも今後誰かが譲れば、それは加賀美屋が食われると知ったうえでの裏切りになる。そうなると、親族として生き続ける上でかなりきつい。つまり秋山はここで、株の数字だけではなく、人間関係や心理の面からも、残り47%は崩れにくいと見切ったんだろうなと思う。

一方、東京の場面もかなり大きかった。聡の正体がついに明かされ、岸本会長の息子であり、二年前まではその会社側の人間だったことが分かる。これで第31回の頃からずっとあった、聡のサラリーマン嫌悪や、どこか影のある感じが、かなりきれいに出自と結びついたと思う。単なる反抗的な若者ではなく、父親の価値観そのものに反発して、あの世界から飛び出した人間だったんだろうなというのが見えてくる。そして今、加賀美屋を助けるために、その嫌っていた側の世界へもう一度戻ってきている。戻りたくて戻った仲居たちとは対照的に、聡は誰かを救うために自分が犠牲になる側に回っている。この苦さもかなり印象に残った。

そして岸本会長だ。この人は単なる便利な救世主ではなく、はっきり「世の中は勝つか負けるかだ」と言い切る。話の分かる理解者ではなく、かなり厳しい資本主義の論理そのものとして出てきているのが良かった。法に触れていなければいいのか、という聡の違和感の方がむしろ自然だし、ここでぶつかっているのは単なる加賀美屋の買収問題ではなく、心で動く加賀美屋の世界と、勝敗と利益でしか物事を見ない資本の世界との衝突なんだろうなと思う。だからこそ、残り二回でこの人がどう動くのかがかなり重要になってくる。

第154回は、加賀美屋がいったん負けを受け入れるところまで追い込まれながら、その姿勢そのものが秋山を動かし、ついにワイバーンの過半数を崩す回だったと思う。ただ、それで全部が終わったわけではなく、むしろここから先は、岸本会長という“勝ち負けの論理”を体現した人物に対して、夏美たちの世界が何を示せるのかが問われる段階に入った。かなり大きな転換点だったし、最終回前の一話としてかなり重い回だった。

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