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2026年4月15日放送の『風、薫る』第13回は、りん(見上愛)も直美(上坂樹里)も、それぞれ新しい場所で一歩ずつ前へ進み始めているのに、その先にある壁の大きさの方がまだ強く印象に残る回だった。りんは瑞穂屋で働きながら少しずつ店の空気に馴染み、初めての給料まで手にする。一方の直美は鹿鳴館で給仕として働き始め、持ち前の英語力やしたたかさを武器に生き残ろうとしている。
ただ、今回見えてきたのは、二人がようやく自分の力を使い始めても、まだその力を十分に生かせる社会にはなっていないということだった。女であること、身分があること、逆に身分に縛られること。いろいろなものが二人の前に立ちはだかっていて、物語は少しずつ動いているのに、すっきり前向きにはなれない。そのもどかしさがかなり残る回だった。
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第13回のポイント
- 直美は鹿鳴館で給仕として働き始める。
- りんは瑞穂屋で槇村太一(林 裕太)や島田(佐野晶哉)とやり取りし、店員として少しずつ成長を見せる。
- りんは初めての給料を受け取るが、女が働くことへの世間の視線の厳しさにも直面する。
- 直美は捨松(多部未華子)の姿から、ただ結婚するだけではない別の生き方を見始める。
個人的に印象に残ったこと
今回まず印象に残ったのは、りんが瑞穂屋でだいぶ自然に店に立てるようになっていたことだった。槇村太一に本を売りながら、なぜか英単語まで教わっているのも面白いし、そこへ島田がやってきて、上巻と下巻をそれぞれに買わせてあとで交換したらどうかと勧める場面は、りんの商売人としての勘のようなものが少しずつ育っている感じがあった。槇村に商売上手だと褒められるのも納得だった。
一方で、島田の立ち位置はやはり不思議だった。りんが質屋だと思い込み、槇村がそれを即座に否定する流れも含めて、この人は自分の身の上を明かしたくないのだろうということがますます強くなった。しかも、ただ秘密主義というより、「何者でもない」側にいたいように見える。いい家柄や肩書きがあるのに、そこから距離を取ろうとしている人にも見えるし、その分だけ少し思想が強めにも映る。りんにとってはまだ理解しにくい相手だろうが、この違和感は今後も続きそうだ。
そして今回のりんでよかったのは、卯三郎(坂東彌十郎)から初めての給料を受け取る場面だった。りんが素直に嬉しそうなのがよかったし、「自分で働いて得たお金」の重みがちゃんと伝わってきた。環(宮島るか)を連れて買い物に出る姿も、ようやく生活の形が少し整い始めた感じがあった。
ただ、そのすぐ後に、女が働いていることが周囲に知られただけで「かわいそう」と言われてしまうのが、この作品らしいしんどさでもあった。働いて生活を立てていることを誉められるどころか、哀れまれる。これではたしかに生きづらい。女が働くというだけで不幸の証拠のように扱われる社会の息苦しさが、今回かなりはっきり出ていたと思う。
一方の直美は、鹿鳴館でかなりしたたかに動いていた。給仕として働きながら、どんな人間がどういう経緯でここに来たのかを周囲に探り、自分にとって得になりそうな相手も見極めようとしている。ホットチョコレートを所望した外国人に対して、他の給仕が分からなかった注文の意味をすぐ理解し、英語で対応するところもよかった。あの場面を捨松が見逃していなかったのも重要そうだった。
ただ、直美の危うさもかなり出ていたと思う。男たちが自分に親切なのを見れば、それを利用してもう少し金がありそうな相手を、と品定めする。器量の良さを武器として使うことをためらわない。そのたくましさは確かに強さでもあるが、同時に見ていて少し危うい。ここでうまくいってしまったら、直美は「人生なんてこうやって立ち回ればいい」と思ってしまうかもしれない。そこに不安も残る。
今回の直美でいちばん印象に残ったのは、捨松が陰口を叩かれているのを見て飛び出しかける場面と、その後の捨松との会話だった。直美はすぐに反応してしまうが、捨松は表情だけで制し、「これが鹿鳴館だ」と言う。そして、自分がアメリカで学んできた英語も学問も、この国では女である自分に生かせる場所がない、と言い切る。この言葉はかなり重かった。
鹿鳴館は絢爛豪華なハリボテだが、使い方次第では自分のやりたいことができる、と捨松は言う。ここで直美が、その「やりたいこと」は何かと気にしているのもよかった。つまり直美は、この時点で初めて「結婚相手を探す」以上の何かを持っている女性を、身近に見たのだと思う。だからこそ、捨松の存在はただの憧れではなく、直美の価値観を揺らす存在になりそうだ。
そして終盤、小日向という海軍中尉が現れるのもいかにも意味ありげだった。アメリカ帰りで鹿鳴館のような場所は苦手だと言う。その登場の仕方からして、直美との線が今後強くなりそうなのはかなり分かりやすい。
最後に、美津と安がりんのところへ来る終わり方もよかった。ようやく少しずつ立ち上がり始めたりんのところへ、過去と家族がまたつながってくる。この先どう動くのか気になる終わり方だった。
鹿鳴館で働き始めた直美。
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— 朝ドラ「風、薫る」公式 (@asadora_nhk) April 14, 2026
りんはようやく「逃げてきた人」から「働く人」へ変わりつつある
今回のりんを見ていると、以前のようなただ追い詰められているだけの姿からは少し変わってきたように思う。本を売り、給料をもらい、環と暮らすために買い物をする。そういう日常の積み重ねが、ようやくりんを「働く人」として立たせ始めている。
その一方で、働いているだけでかわいそうと言われてしまう。このギャップが苦しい。でも、そういう世間の目にさらされながらも、りんが自分の足で立ち始めていること自体は大きいと思う。
島田は「何者でもなくてもいい」という思想を体現する存在なのかもしれない
今回も島田の存在はかなり異質だった。役目がないと生きていけないと思っているりんに対して、生きていける社会の方が助かる、と返す。これはかなりはっきりした主張だと思う。
少し心配になるという感覚もある。作品がこのテーマを強く押し出し続けると、見ていて身構える感じは出てくるかもしれない。ただ、今のところはまだ、りんの視野を広げるための刺激として機能しているように見える。島田はたぶん、この作品のテーマをそのまま喋るための人というより、りんに「別の見方」を持ち込む人なのだろう。
直美はまだ「結婚のために鹿鳴館で働く」つもりだが、そのままでは終わらなそう
直美の今の目的はかなり現実的だ。まともな結婚をするため、そのために鹿鳴館で働く。けれど、捨松を見ているうちに、その考えだけでは収まらなくなっていきそうな感じがある。捨松は陰口を叩かれても動じず、自分のやりたいことのために鹿鳴館を使っている。その姿は、直美のしたたかさとは少し似ていて、でも決定的に違う。
だから、直美はたぶんこの先、ただ結婚相手を探すだけでは満足できなくなるのではないかと思う。メアリーに胸を張って報告できる生き方かどうか、という視点も、今後かなり効いてきそうだ。
今週から面白くなるかという期待は、まだ少し保留かもしれない
「今週から面白くなるかも」という期待に対して、まだそこまでの勢いはない感じも確かにある。話は動いているし、新しい人物や場所も出てきている。でも、それが一気に面白さに転化しているかというと、まだ準備段階の印象が強い。
ただ、りんの仕事、直美の鹿鳴館、捨松の夢、小日向の登場、美津たちの再接続と、次に向かう材料はかなりそろってきている。だから今は、まだエンジンがかかりきる手前なのかもしれない。
まとめ
2026年4月15日放送の『風、薫る』第13回は、りんも直美も新しい場所で前へ進み始めながら、その進み方の違いがかなりはっきり見えた回だった。りんは働きながら学び、直美は嘘も駆け引きも使いながら鹿鳴館に食い込む。どちらも生きるための必死さだが、その必死さの形はかなり違う。
まだ物語として一気に面白く跳ねた感じまではないけれど、次に大きく動くための準備はかなり整ってきた印象がある。第13回は、りんと直美がそれぞれの場所で、少しずつ次の段階へ入っていく回だったように思う。
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