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2026年4月17日放送の『風、薫る』第15回は、直美(上坂樹里)と捨松(多部未華子)がそれぞれ自分の目的のために現実的な手段を選び取っていく一方で、りん(見上愛)の側でも美津(水野美紀)が相変わらず美津らしく場を仕切り始める回だった。物語としては確かに動いている。けれど、その動きが視聴者の「応援したい」という気持ちに素直につながるかというと、まだかなり難しい。
むしろ今回は、登場人物たちがみな何かを得ようとしているのに、その過程で見える打算や嘘や特権意識の方が強く印象に残った。もちろん、生きるためにはきれいごとだけでは済まないのだろう。でも、ここまでそれが続くと、朝から見ていてしんどさの方が勝ってしまう。そんな回だったように思う。
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第15回のポイント
- 直美は、小日向栄介(藤原季節)との関係を進める一方で、自分が作った「お嬢様」の仮面とのズレも感じ始める。
- 捨松は鹿鳴館を利用して「アワーソサエティー」を実現しようとしていることを直美に語る。
- 東京での暮らしの中で、美津は相変わらず周囲を巻き込みながら自分の居場所を作り始める。
- 炊き出しの場で、りんと直美は再び顔を合わせることになる。
個人的に印象に残ったこと
今回まず強く感じたのは、直美が「お嬢様」と偽って結婚に近づけることに手応えを覚えつつも、それが本当の自分ではないことにも気付き始めているように見えたことだった。小日向との関係が進めば進むほど、「結婚できる私」と「本当の私」のズレも大きくなる。楽になりたい気持ちはある。でも、偽りの自分のままで幸せになれるのかといえば、たぶん直美自身もそこに引っかかっているのだろうと思う。
捨松のパートも印象的だった。鹿鳴館でバザーにするか炊き出しにするかを話し合う場面で、周囲の意見が自然と「楽な炊き出し」へ流れるのは、いかにも人間らしかった。大変な方より楽な方へ流れるのは当然だし、よほど明確な目的がなければわざわざ苦しい道は選ばない。その中で捨松だけは、鹿鳴館を単なる華やかな社交場ではなく、自分のやりたいことのために使おうとしている。
しかも、捨松が直美の嘘を見抜きながらも、それを咎めるのではなく「みなに同じ話をしておかなければ、後々つじつまが合いませんよ」と忠告するのが面白かった。倫理的に正すのではなく、もっと実務的な目線で話している。ここに、捨松もまた理想だけで動く人ではないことが見える。目的のために現実的な手段を選べる人なのだろう。
そのあと、捨松がアメリカで参加した慈善会の話をし、会津と薩摩の戦の時に自分がひもじい思いをしたこと、炊き出しを受ける側だったことを語る場面はよかった。あの経験があるからこそ、今、自分は鹿鳴館を使って「アワーソサエティー」をやろうとしている。ここで直美がその言葉に反応するのも自然だった。ようやく、鹿鳴館のきらびやかさの向こうにある捨松の意志が見えた気がした。
ただ、その一方で、捨松自身も「目的のためなら年の離れた陸軍大臣とも結婚した」とさらりと言ってしまう。ここは正直かなり引っかかった。もちろん、それだけで愛情のない結婚だったと決めつけることはできないし、実際、大山巌とのあいだにはきちんと信頼や愛情があるようにも見える。けれど、少なくとも捨松自身の語り方としては、「使えるものは使う」という強さが前に出ていた。そういう意味では、直美と通じる部分があるのかもしれない。
📺#朝ドラ 【#風薫る】#大山捨松:「私にとっての結婚はGoalではなく、その先のMy Life」
👇このシーンの見逃し配信https://t.co/8Oiw9hPJdE#上坂樹里 #多部未華子 pic.twitter.com/vYWj0O9Z50
— 朝ドラ「風、薫る」公式 (@asadora_nhk) April 16, 2026
りんの側では、美津が相変わらず美津だった。引っ越してきたばかりなのに、近所のマツや貞三、六郎を自然に使って片づけを進めてしまう。最初は美津と安(早坂美海)で掃除していたのに、いつの間にか近所の人まで巻き込んで指図し始めているというのが、いかにも美津らしい。りんが「母上は生まれながらの姫君ですぐにみんなを家来にしてしまう」と言うのも妙に納得してしまった。
ただ、ここも見方が難しい。美津には人を動かす才能があるとも言えるし、実際それで場が回っている面もある。でも、やはりどこかに「自分は筆頭家老の家の人間だ」という感覚が抜けていないようにも見える。周囲に感謝しているのか、それとも当然だと思っているのか、そのあたりが曖昧なままなので、素直に好意的には受け取りにくかった。
とはいえ、美津が「これからは変わる」と言い、自分も働くつもりで琴の指南をすると言い出すのは少し面白かった。本当に自分で稼げるのかという疑問はあるけれど、少なくとも美津なりにこのままではいけないとは思っているのだろう。外に怪しい人影がいたのも含めて、ここからまた不穏な流れになりそうなのはかなり嫌な予感がした。
小日向の場面も、かなり“出来すぎ”ではあるけれど印象に残った。財布をすられた男に対して、子どもを逃がすために真逆の方向を示し、そのあとで「軍人としてあるまじき行為をしてしまいました」と言う。しかも、直美は「自分も同じことをした」と答える。ここで小日向もまた「間違えた」と言うのが、このドラマらしいと思った。
この「間違える」という感覚は、たぶんこの作品のかなり大きな価値観なのだろう。正しいことを選びきれない。けれど、完全に正しさだけでも人は生きられない。だから間違えながら進むしかない。そういう感覚がずっと流れている気がする。ただ、今のところはそれが面白さというより、重さとして前に出てしまっている感じもある。
そしてラスト、炊き出しの現場で吉江たちと捨松たちが顔を合わせ、そこにりんもやってきて直美と遭遇する流れは、ようやく物語が交差しそうな気配が出てきた。ここで何か変わるのか、それともまたもや苦いまま進むのか。とりあえず次に繋がる場所には来たのだと思う。
捨松は理想家ではなく、かなり現実的な実行者として描かれている
今回の捨松を見ていると、ただ高潔で立派な人として描いているわけではないのが分かる。鹿鳴館というハリボテも使えるなら使う。必要なら結婚すら自分の人生の戦略に組み込む。その現実性はかなり強い。
だからこそ、直美との相性は悪くないのかもしれない。直美もまた、きれいごとだけでは生きていけないと知っている人だからだ。理想のために現実を使う捨松と、現実を乗り越えるために嘘すら使う直美。この二人が近づくことで、直美が何を学ぶのかはかなり気になる。
美津は変わろうとしているのかもしれないが、まだ特権意識を手放してはいない
美津が東京で働こうとすること自体は、一歩前進なのかもしれない。けれど、近所の人を自然に使う振る舞いを見ていると、やはりまだ「自分は人を使う側」という感覚が抜けていないようにも見える。ここが美津の面白さでもあり、しんどさでもある。
りんが今ようやく、自分の力で働き、生きようとしている時に、母はまだその感覚に追いついていない。親子の世代差でもあるのだろうし、ここが今後どう埋まっていくのかは見どころかもしれない。
直美はしたたかだが、そこに感情移入しにくい段階がまだ続いている
小日向から告白を勝ち取るところまで来た直美だが、今のところそれを「すごい」と素直に見られるかというと難しい。やはり土台に嘘があるし、相手を条件で見ている感じも強い。もちろん、それが直美なりの生存戦略だとは分かる。けれど、まだ「この人の幸せを応援したい」と思える段階までは来ていない。
今後、そこに本音や揺れがもっと見えてくれば印象は変わるのかもしれないが、現時点では“うまく立ち回ろうとしている人”に見えすぎてしまっている感じがある。
3週目まで来ても、まだ「面白かった」と言い切れない苦しさがある
今回いちばん大きいのはここかもしれない。話は動いている。人物も交差している。テーマもある。なのに、見終わって「面白かった」「続きが気になる」と素直に言い切れない。このもどかしさはかなり大きい。
たぶん、今は材料はそろっているのに、それがまだ気持ちよく繋がっていないのだろう。来週あたりで一気に流れが変わってくれればいいのだが、今の段階ではまだ期待が先行している感じが強い。
まとめ
2026年4月17日放送の『風、薫る』第15回は、直美も捨松も美津も、それぞれのやり方で現実を渡ろうとしているのに、その姿が素直に応援しにくく、かなりしんどさの残る回だった。理想のために現実を利用する捨松、嘘を重ねて生き延びようとする直美、まだ特権意識を引きずる美津。誰もが何かを得ようとしているが、まだそこに爽快さがない。
ただ、炊き出しの場でりんと直美がまた交わり、物語がようやく少し大きく動きそうなところまでは来た。ここから本当に巻き返せるのか。第15回は、その期待を持ちつつも、まだかなり厳しさの残る回だった。
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