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2026年7月2日放送の『風、薫る』第69回は、りん(見上愛)とシマケン(佐野晶哉)、直美(上坂樹里)と小川吾郎(甲斐翔真)、そして山本辰治(本田大輔)夫婦の話が描かれた。
前半は、りんとシマケンの距離がまた少し近づき、直美と小川の関係にも変化が見える。けれど後半は、山本のがん再発の可能性と、病状を伏せなければならないりんの苦しさが重くのしかかってくる。
花火の日に夫婦で牛鍋を食べに行く。
それは山本夫婦にとって、年に一度の贅沢であり、約束でもあった。
手術をするべきなのか。本人に病状を告げるべきなのか。うそをつかなければならない看護婦の立場とは何なのか。いろいろ考えさせられる回だった。
前回の記事はこちらです。

第69回のポイント
- りんは団子屋でシマケンと会い、とんびを受け取ったことに感謝する。
- シマケンは、りんが好きな看護に専念できるようになったことを前向きに捉える。
- りんはシマケンに「私のとんびですね」と伝える。
- 清(細川岳)の見舞いに来た小川は、清がすでに退院していたことを知る。
- 直美と小川は団子を食べながら話し、小川は直美への尊敬を伝える。
- 小川は直美に会いにまた来ると宣言し、直美は友人になることを受け入れる。
- 山本は大腸がんの手術を終え、一度退院する。
- 夏になり、山本は再び入院する。
- 今井教授(古川雄大)は、がんが再発している可能性が高いと見て、一刻も早い手術を望む。
- 山本は、花火の日に妻と牛鍋を食べる約束を守りたいと願う。
- 手術後、山本は自分のがんが広がったのではないかとりんに尋ねる。
- りんは病状を伏せるよう命じられていたため、山本にうそをつく。
個人的に印象に残ったこと
今回まず印象に残ったのは、りんとシマケンが団子屋で話している場面だった。
りんはシマケンに、直美からとんびを受け取ったことを伝え、感謝する。
あのとんびは、飛ばすとモヤモヤが消えるものとして描かれていたはずだ。
だからシマケンは、「要らなかったです」と言う方がよかったんだけどと笑う。
でもりんは、残念ながらうれしかったですと答える。
ここは良かった。
りんにとって、シマケンのとんびはちゃんと届いていた。
ツヤのこと、ヒデのこと、取締を外されたこと。
りんはずっと自分が間違えてばかりだと感じていた。その中で、シマケンのとんびは、少しだけりんの気持ちを軽くしたのだと思う。
りんは、自分は大事な時に間違えてばかりだと話す。
するとシマケンは、りんが先生や取締の仕事を楽しかったのかと尋ねる。
りんは、楽しむ余裕などなく、ただ必死にやっただけだと答える。
さらにシマケンは、教えたり、まとめたりする仕事が好きだったのかも聞く。
りんは、仕事なので好きとか嫌いとかはないと答える。
ここでシマケンは、好きな仕事の看護に専念できるようになってよかったじゃないかと言う。
この視点は、シマケンらしかった。
りんは、取締を外されたことを失敗として受け止めている。
でもシマケンは、好きな看護に戻れることとして見ている。
もちろん、そんな単純な話ではない。
りんの中には、責任を果たせなかった悔しさもあるだろう。
でも、りんが患者を看る時間が増えること自体は、悪いことではない。
シマケンは、看護婦になるのにワクワクし、患者さんの話を聞くのが楽しいと言っていたりんが好きなのだと説明する。
そしてすぐに、「好きだから」というのは労働への姿勢についての話だとごまかす。
相変わらず分かりやすい。
りんはかなり鈍感だが、さすがにそろそろ気づいてもいいのではないかと思う。
シマケンがりんをどう見ているのかは、もうかなり分かりやすい。
りんは、患者さんを看る時間が増えたことは喜ばなきゃいけないですよねと話す。
そして会話はシマケンの話題に移る。
シマケンが書評で売れっ子になっていると聞いたりん。
シマケンは、人の小説を論評することで何かの勉強になるかと思って引き受けたが、それが評判になってしまってと、喜びとも嘆きとも取れるような答えをする。
ここも前回から続く問題だった。
シマケンがやりたいのは小説を書くこと。
でも、評価されているのは書評である。
やりたいことと、できることが違う。
これは、りんが取締ではなく看護の現場に戻る話とも少し重なっているように感じる。
りんは最後に、「シマケンさんは、私のとんびですね」と言い残し、団子屋に支払いを済ませて去っていく。
これは、シマケンにとってかなり大きな言葉だったのではないか。
とんびは、モヤモヤを消してくれるもの。
つまり、シマケンはりんにとって、モヤモヤした時に気持ちを軽くしてくれる存在になっている。
りんがシマケンの気持ちに気づいて言ったのか、何も考えずに言ったのかは分からない。
でも、こんなことを言われたら、シマケンにも火がついてしまいそうだ。
少なくとも今のりんに必要な人は、虎太郎ではなくシマケンなのだろう。
次に印象に残ったのは、直美と小川の場面だった。
清のお見舞いに来た小川だったが、清はすでに退院していた。
小川は、清から来週の火曜日に退院と聞かされていたらしい。
お見舞いに持ってきた団子が無駄になるのを気にする小川。
直美は、最後だから特別にだと言って、小川と団子を食べる。
この「特別に」という言い方が、少し直美らしかった。
病院の規則として、こういうことをしていいのかは分からない。
でも直美は、お願いされたら意外と断れない人なのかもしれない。
小川は、看護学生が直美を見るとピリッとするので、直美は本当に偉い人なんですねと驚く。
直美は、今はたまたま一時的に内科と外科の取締をしているから、見習生たちが勝手に怖がっているのだと説明する。
そして、自分は実際に怖い人だということも忘れずに説明する。
ここが直美らしい。
自分で怖い人と言ってしまうところが面白い。
それに対して小川は、「知ってます。けど、優しいのも」と答える。
この言葉に、直美は戸惑う。
直美は、自分がみなしごだということを告白する。
父も母も知らないから、怖がられてもしっかり働いて、自分の力で生きていくしかない。
直美はそう説明する。
直美にとって、怖がられることは、ある意味では自分を守る鎧なのかもしれない。
みなしごで、誰にも頼れない。
だから弱く見られたくない。
怖がられても、きちんと働き、自分の力で生きていくしかない。
直美の強さの裏には、そういう孤独があるのだと思う。
それを聞いた小川は、それならなおさらすごいと言う。
みなしごで、看護婦で、ピリッとさせて、ただ者じゃない。
小川は直美を褒める。
ここで直美は、ただ同情されたのではない。
かわいそうな人として見られたのではなく、すごい人として見られた。
それが直美には少し意外だったのではないかと思う。
小川は直美に「また来ます」と言う。
清はもう退院しているのだから来る必要はないと思っている直美に対して、小川は、また直美に会いに来ると宣言する。
直美は、自分にはそんな気持ちはないと答える。
すると小川も、自分もまだどういう気持ちかは分からないと言う。
ただ、直美のような女性は初めてで、働いている姿がりりしくて気持ちがいい。尊敬している。
この「尊敬」という言葉に、直美は驚く。
直美にとって、異性から向けられる言葉として「尊敬」はかなり新鮮だったのではないか。
小川は、もしお邪魔じゃなければと食い下がる。
直美は、「お邪魔です。失礼します」と即答する。
この即答は直美らしかった。
しかし小川は、ではどうしたらと問いかける。
それを私に聞くんですかと、直美は笑う。
そして、分かりました、友人になりましょうと受け入れる。
小川は嬉しそうだった。
小川が直美に好意を抱いているのは間違いないと思う。
直美もまんざらではないのかもしれない。
ただ、少し気になるのは、直美が押しに弱そうに見えることだ。
一度は「お邪魔です」とはっきり断った。
でも、小川に押されて、最終的には友人ならと受け入れた。
直美は怖い人だと自分で思っているし、生徒たちからも怖がられている。
でも実際には、優しく、お願いされると断り切れないところがあるのではないか。
その押しに弱いところは、少し危うくも感じる。
お願いされた時に、どこまで受け入れ、どこから断るのか。
直美の中に、その境界線はちゃんとあるのだろうか。
一方、山本の大腸がん手術は無事に成功し、退院の日となる。
これで花火の頃に牛鍋を食べられる。
山本は、妻のテイ(伊勢佳世)との約束を守れることを喜ぶ。
この時点では、少し明るい空気があった。
山本とテイにとって、花火の日に牛鍋を食べることは、ただの食事ではない。
年に一度の贅沢であり、夫婦の大事な約束なのだと思う。
そして、季節はセミが鳴く夏となる。
山本は再び病院にやってくる。
花火の日が近いので、それまでに牛鍋を食べられるようにとお願いする山本。
自分では腸炎だから大丈夫でしょうと言う。
しかし、りんは山本には病名を伝えていない。
山本は腹部の違和感が強く、食欲もない。
りんが今井教授にそのことを伝えると、今井は、がんが再発している可能性が高いから、一刻も早く手術をしたいと言う。
直美は、りんを山本の担当に命じる。
ここから空気がかなり重くなった。
山本は、自分の体に何か起きていることを、たぶん感じている。
でも病院側は、病名を伏せている。
りんは、その間に立たされることになる。
重症病室に入院している山本の検温に、りんが来る。
山本は、熱があれば手術はしないで済むのかと尋ねる。
だったらあと2週間でいい。延ばしてもらえないか。
この願いが切なかった。
山本にとって、手術そのものよりも、花火の日に妻と牛鍋を食べる約束の方が大事なのだと思う。
りんが、どうして花火の日に牛鍋を食べることにこだわるのかを尋ねる。
山本夫婦は、真夏の暑い日、花火でどこも店が混んでいたので、仕方なく牛鍋屋に入ったら、そこがすごくおいしかったのだと話す。
それからは、いつも花火の日は花火も見ず、年に一度の贅沢として夫婦そろって牛鍋を食べている。
これより贅沢なことはないだろ。
山本は、どうしてもその店に行きたいのだと伝える。
花火より牛鍋が好きなのはうそではないと、テイもお墨付きを与える。
そして、ただの腸炎なのだから、手術すれば食べられますよと山本を勇気づける。
この夫婦のやり取りが、とても良かった。
山本は嘘をつく人ではある。
前回も、話がほとんど嘘だったことがばらされていた。
でも、花火の日に牛鍋を食べたいという思いは、嘘ではない。
夫婦で年に一度の贅沢を楽しむ。
その約束を守りたい。
それが山本にとって、生きる理由の一つになっているようにも見えた。
りんは、体調に問題がなければ明日にでも手術だと伝える。
山本は仕方なく受け入れる。
病室から出たりんを追って、テイがやってくる。
「難しいのは分かっています。でも……なんとかお願いします。」
テイは、りんに頭を下げてお願いする。
去年、来年も一緒に食べようなと約束したことを伝える。
この場面も泣ける。
テイも、おそらく難しいことは分かっている。
それでも、なんとか成功してほしい。
もう一度、夫と一緒に牛鍋を食べに行きたい。
その思いだけなのだと思う。
本人が手術を望んでいるのか。
妻が手術を望んでいるのか。
本人が本当の病状を知らされていない中で、何が正しい判断なのか。
ここはかなり難しい。
手術室に運ばれていく山本。
手術室の前で泣きながら祈るテイ。
この姿を見ると、どうか無事に牛鍋を食べに行ってほしいと思ってしまう。
手術が終わり、今井が黒川(平埜生成)、りん、直美に説明する。
できる限りのことはしたが、あとは本人の体力次第。
予想以上にがんが広がっていた。
今井は、引き続き山本には病状を伏せておくように命じる。
ここで、りんにまた重い役割がのしかかる。
患者に本当のことを伝えられない。
でも患者は何かを感じている。
その中で、どう向き合えばいいのか。
病室で眠る山本の手を握るテイ。
りんが脈を計っていると、山本が目を覚ます。
りんが先生を呼んでくると言うと、山本は待ったをかける。
「俺は……がんが広がったんだろう?」
山本はそう確認する。
りんは「いいえ」と答える。
この一言が重かった。
山本は、自分の体のことだから、なんとなく理解しているのだと思う。
ただの腸炎ではない。
手術後の様子も、周囲の空気も、りんの表情も、何かを物語っていたのかもしれない。
それでも、りんは病状を隠すよう命じられている。
だから正直には答えられない。
山本は、「一ノ瀬さんもつけるんだなあ……うそを」と言う。
この言葉が、どうしようもないくらい切なかった。
このドラマには、いろいろな嘘つきが出てくる。
直美の嘘。
寛太の嘘。
山本の嘘。
でも今回、りんも嘘をついた。
それは自分のための嘘ではない。
医師に命じられた嘘であり、患者を守るためとされる嘘である。
でも、山本には分かってしまう。
りんが嘘をついていることが。
りんは、まだ少し意識が混濁しているみたいですね、先生を呼んできますと理由をつけ、病室を出ていく。
逃げるようにも見えた。
りんにとっても、この嘘はかなり苦しかったはずだ。
病状は正直に告知すべきなのか。
隠すべきなのか。
本人が手術を望まなくても、妻が望んでいるなら手術を進めるべきなのか。
今の時代とは考え方も違うだろう。
それでも、見ている側としてはいろいろ考えさせられる。
山本には、どうか無事に妻と牛鍋を食べに行ってもらいたい。
退院した山本が3ヶ月後また病院へ。
症状が悪化してしまったようで、もう一度手術をしたのですが……👇牛鍋を食べたいと願う山本ですが……https://t.co/GVBCezleYf#朝ドラ #風薫る
見上愛 上坂樹里 本田大輔 伊勢佳世 pic.twitter.com/yb25RIun8H— 朝ドラ「風、薫る」公式 (@asadora_nhk) July 2, 2026
りんに必要なのは、今は虎太郎ではなくシマケンなのかもしれない
りんとシマケンの会話は、かなり自然だった。
シマケンは、りんが好きな看護に専念できるようになったことを、別の角度から見せてくれる。
りんが取締を外されたことを失敗だけで終わらせない。
患者さんを看るのが楽しいと言っていたりんが好きだから。
そう言いかけて、労働への姿勢の話だとごまかす。
もうかなり分かりやすい。
りんも、「シマケンさんは、私のとんびですね」と言ってしまう。
今のりんにとって、モヤモヤを少し軽くしてくれるのは、虎太郎ではなくシマケンなのだろう。
直美は押しに弱いところが危うい
直美と小川の関係も動き始めた。
小川は直美を尊敬していると伝え、また会いに来ると言う。
直美は一度「お邪魔です」と即答した。
しかし結局、友人になりましょうと受け入れる。
直美は怖い人に見える。
自分でもそう言っている。
でも実際には、優しく、押しに弱い人なのかもしれない。
お願いされた時にどこまで受け入れるのか。
どこで断るのか。
その境界線が曖昧だと、直美自身が傷つくこともあるのではないかと少し心配になる。
山本夫婦の牛鍋は、ただの食事ではなかった
山本夫婦にとって、花火の日に牛鍋を食べることは、ただの食事ではなかった。
真夏の暑い日に、花火も見ず、夫婦で牛鍋を食べる。
年に一度の贅沢。
去年も、来年も一緒に食べようと約束した。
だから山本は、手術を2週間延ばしてほしいと願ったのだと思う。
病気を治すことだけがすべてではない。
患者にとっては、誰かとの約束や、年に一度の楽しみの方が大事なこともある。
そこがとても切なかった。
りんがついた嘘は、看護婦として避けられない嘘だったのか
山本に、自分のがんが広がったのではないかと聞かれたりんは、「いいえ」と答えた。
りんは嘘をついた。
でも、それは自分の都合でついた嘘ではない。
病状を伏せるように命じられていたからである。
とはいえ、山本には分かってしまった。
「一ノ瀬さんもつけるんだなあ……うそを」
この言葉はかなり重かった。
患者に本当のことを伝えられない看護婦。
患者の方は本当のことを知りたがっているかもしれない。
この間に立つりんは、本当に苦しかったと思う。
このドラマは嘘つきがたくさん出てくるが、今回は「つかなければならない嘘」について考えさせられた。
まとめ
第69回は、りんとシマケン、直美と小川の関係が少し動く一方で、山本夫婦の話が重く響く回だった。
好きな仕事をする理想と現実。お願いされると受け入れてしまう直美の危うさ。山本夫婦の愛。そして、うそをつかなければならないりんの苦悩。
特に山本の「一ノ瀬さんもつけるんだなあ……うそを」という言葉は切なかった。
山本には、どうか無事にテイと牛鍋を食べに行ってほしい。
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