本記事にはアフィリエイト広告を利用しています。
2026年7月3日放送の『風、薫る』第70回は、山本辰治(本田大輔)の最後の願いと、それに揺れるりん(見上愛)の姿が描かれた。
山本は、妻のテイ(伊勢佳世)と花火の日に牛鍋を食べに行く約束をしていた。
しかし手術後の状態はかなり悪く、今井教授(古川雄大)からは、このままだともってあと1、2週間だろうとりんは伝えられる。
それでも山本は、今日一日だけでいいから家に帰りたいと願う。
妻を後悔まみれで残したくない。最後に一つ、うそをつかせてほしい。
山本の願いは切ない。夫婦の思いも分かる。けれど、りんが病院から患者を連れ出すのだとしたら、それは看護婦として越えてはいけない一線でもあるのではないか。美談として受け取っていいのか、かなり考えさせられる回だった。
前回の記事はこちらです。

第70回のポイント
- りんは山本の検温をし、体調を確認する。
- 山本は体調がすぐれず、食事がいつごろできるのかを気にしている。
- テイは夫の状態を心配し、こんなことなら無理して手術を受けさせなければよかったと後悔する。
- りんと直美(上坂樹里)は縁側で、病状告知について話す。
- 直美は、自分の時は思い残すことがないように告知してほしいとりんに頼む。
- りんは、自分の場合は残された人たちにとって良い方でいいと答える。
- 山本宛に、テイが発熱してしばらく病院に来られないという電報が届く。
- 一週間が経ち、花火の日がやってくる。
- 山本は今井に、今日一日だけ家に戻れないかと頼む。
- 今井は、今帰宅したら命の保証はできないと伝える。
- 山本はりんに、こっそり家に連れていってほしいと頼む。
- りんは一度は断るが、山本の必死の願いに揺れる。
- 夜、りんは山本が病院から抜け出すのを手伝う。
- 外では花火が上がり始める。
個人的に印象に残ったこと
今回まず描かれたのは、山本の病室だった。
りんは山本の検温をし、体調を聞く。
山本は「いいって言うほどうそつきじゃあねえな」と答える。
体調がすぐれないことを、山本らしい言い方で伝えたのだと思う。
前回、山本はりんに「一ノ瀬さんもつけるんだなあ……うそを」と言った。
だから今回の「うそつき」という言葉も、軽く聞こえるようで重い。
山本は、自分の病状がかなり悪いことを薄々分かっている。
それでも、病院側は真実を伝えていない。
りんも、正直には答えられない。
その状況の中で、山本の言葉にはずっと「うそ」がつきまとっている。
りんが何か気になることはありますかと確認すると、山本は、飯はいつごろ食べられそうかを確認する。
もちろん、しばらくは無理そうなことは山本自身も分かっている。
それでも聞いてしまう。
食べること。
牛鍋を食べること。
それが山本にとって、今いちばん大事な願いになっているからだろう。
りんは「先生に聞いておきますね」と答える。
喉が渇きますよねとりんが確認すると、山本は理由は分からないが、一瞬嫌そうな顔を見せる。
それでも、脱脂綿に含んだ水分を口に入れてもらう。
この小さな反応も印象に残った。
口から食べることも飲むこともできない状態。
それでも喉は渇く。
脱脂綿で水分を含ませてもらうことしかできない。
山本にとっては、自分がもう普通に食べられない、飲めない状態にあることを突きつけられる瞬間でもあったのかもしれない。
解熱鎮痛剤は投与してあると説明されても、テイの表情は不安げである。
テイは病室を出たりんを追いかけ、夫がどうなるのかを確認する。
先生からは、もしかしたらこのままかもと言われた。
テイがそう伝えると、りんは自分には分からない、「看護婦ですから」と答える。
この返答は、りんにしてはかなり線を引いた言い方だった。
看護婦だから診断はできない。
医師ではないから、今後どうなるとは言えない。
これは正しい。
でも、テイからすれば、何か少しでも言ってほしかったのかもしれない。
こんなことなら、無理して手術なんか受けさせなければよかった。
テイは後悔する。
ここもつらい。
テイが山本に手術を受けさせたのは、長生きしてもらいたいと思ったからだろう。
それは当然の気持ちだ。
けれど、結果として山本の状態が悪くなったように見える。
そうなると、テイは自分を責めてしまう。
ただ、これは本当に難しい。
手術を受けなければ牛鍋を食べに行けたのかといえば、それも分からない。
手術を受けなかったら、もっと早く悪化していたかもしれない。
手術がうまくいって長生きできた可能性だってあった。
何が正解だったのかは、結果を見ても簡単には言えない。
それでも、残された側は考えてしまう。
あの時、手術をさせなければよかったのではないか。
あの時、別の選択をしていればよかったのではないか。
その後悔が、テイにのしかかっている。
夜、環(英茉)を寝かしつけた後、りんと直美は縁側でお茶を飲んでいる。
お茶なのか、お酒なのかは少し分からないが、二人だけで静かに話す時間だった。
直美は、りんが自分と違ってうそが下手だから疲れているんでしょうと心配する。
直美は、りんのことをよく見ている。
山本に病状を伏せることが、りんにとってどれだけ負担になっているか分かっているのだろう。
りんは、山本本人も薄々気づいているみたいで、がんが転移しているのかと一度確認されたと話す。
直美は、自分の時は告知してほしいとりんに頼む。
いろいろ思い残すことがないように、やっておきたいことをやれるように。
この直美の考え方は、直美らしいと思った。
直美は自分の力で生きていくことを大事にしている人である。
だから、自分の人生の終わりについても、自分で知って、自分で決めたいのだと思う。
りんは分かったと返事する。
直美に、りんはどうなのかと聞き返されると、りんは少し悩みながらも、どっちでもいいかなと答える。
その真意は、残された方は生きていなければならないから、生きていくみんながいい方でいいということだった。
これはかなりりんらしい答えだった。
自分が知りたいかどうかより、残される人たちがどう生きていけるかを考える。
自分の死で周囲が苦しまない方を選びたい。
その気持ちは分かる。
でも、同時に少し危ういとも思う。
りんは、いつも自分のことより周囲のことを優先する。
それが優しさでもあるが、自分の望みを後回しにしすぎているようにも見える。
直美は、それは思いつかなかったと答える。
そして「あれ、やだ。私たち、いつまで一緒にいるの?」と疑問を持つ。
この会話は少し可笑しさもあったが、二人の関係がかなり自然に続いていることを示していた。
直美はもう一ノ瀬家の一員のようになっている。
病気や死の話をしながらも、いつまで一緒にいるのかと笑える関係になっているのが良かった。
その後、山本宛に電報が届き、りんが山本の元へ届ける。
山本は、りんに代わりに読んでほしいと頼む。
内容を要約すると、テイが発熱し、しばらく病院には来られないというものだった。
山本は、テイはしばらく寝ていれば大丈夫だろう、テイが来たからってよくなるわけでもないしと言う。
ここも山本らしい言い方だった。
本当は、テイに来てほしいのだと思う。
でも、体調を崩したテイを無理に来させるわけにはいかない。
自分のために妻を苦しめたくない。
そう思っているのだろう。
それから一週間が経ち、花火の日がやってくる。
弱っている山本は、今井に「家に戻るわけにはいきませんか……? 今日一日でいいんで……」と確認する。
花火の日。
妻と牛鍋を食べるはずだった日。
山本にとっては、どうしても家に戻りたい日である。
しかし今井は、もっと体調が元に戻ってからでないとと答える。
帰宅した途端に体調が悪化することを心配しているのだ。
山本は「元に……。戻りますかね……?」と弱気に聞く。
この一言がつらかった。
山本はもう、自分の体が元に戻るとは思っていないのだろう。
だからこそ、今日一日だけでいいと言っている。
今井は、最善を尽くしているが、今帰宅したら命の保証はできないと伝える。
医師としては当然の判断だと思う。
今の状態で帰宅させることはできない。
それで命に関わることが起きたら、病院としても責任を問われる。
山本の願いがどれだけ切実でも、医師として許可できないのは当然だろう。
病室を出た今井は、りんに、このままだともってあと1、2週間だろうと説明する。
そして、気をしっかり持つよう励ましてやってくれと命じる。
この言葉もまた、りんには重い。
患者には本当の病状を伏せる。
でも、励ませと言われる。
看護婦としてそばにいるりんは、かなり苦しい立場に置かれている。
あと少しで日が暮れてしまうと嘆く山本。
山本はりんに、こっそり家に連れていってもらえないかと頼む。
りんは、それは……すいませんと断る。
できない頼みである。
山本を病院から連れ出すことは、看護婦としてしてはいけないことだ。
りんは山本の家族ではない。
帝都医大病院に雇われている看護婦である。
病院の管理下にある患者を、医師の許可なく連れ出すなど、普通に考えれば大問題である。
それでも山本は必死だった。
このまま自分が死んだら、テイは間違いなく、手術しなければよかったと自分を責める。
これで死んでも、自分は構わない。
ただ、テイのことだけが心配だ。
自分のせいで、後悔まみれで置いていくのは、死んでも死にきれない。
この山本の思いは分かる。
自分の命が助かるかどうかより、残される妻が後悔し続けることを心配している。
だから、最後に一つ、テイのためにうそをつきたい。
牛鍋を食べられた、約束を果たせたという形を残したい。
夫としての決意なのだと思う。
山本は、りんが連れていってくれないなら一人で帰ると、ベッドから起き上がろうとする。
しかし、倒れ落ちてしまう。
りんは、それを見逃すこともできない。
ただ見逃してくれればいいという願いも、聞き入れることはできない。
でも山本は、「しなきゃいけない無茶なんだ。最後に一つ、うそをつかせてほしい。助けてください……」と頼み込む。
この言葉はかなり強い。
山本にとって、これはただのわがままではない。
しなきゃいけない無茶。
妻を後悔から救うための、最後のうそ。
そういう思いなのだろう。
りんの表情は揺れ動く。
おそらく、りんならやってしまうだろうなと思った。
りんは、直美と違って、人の思いに強く共感してしまうタイプである。
目の前に苦しんでいる人がいる。
その人の願いを叶えることが、その人の苦しみを少しでも軽くするなら、やってはいけないと分かっていても動いてしまう。
そういうところがある。
看護婦として病院側から見れば、かなり厄介なタイプだと思う。
ツヤが患者を危険にさらしたことで一発解雇になったことを思えば、りんがやろうとしていることも一発解雇案件になったとしても不思議ではない。
患者を勝手に病院から連れ出す。
しかも、命の保証はできないと言われている状態である。
もし途中で山本の容体が急変したらどうするのか。
病院に戻る前に亡くなったらどうするのか。
山本の妻であるテイは、それで本当に救われるのか。
帝都医大病院はどうなるのか。
今井や直美や他の看護婦たちにも影響が出るのではないか。
りんは、そこまで想像できているのだろうか。
個人的には、「責任は私が取ります」と軽々しく言う人には、少し危うさを感じる。
何も起こるはずがない。
何か起きたら自分が責任を取ればいい。
そういう程度にしか考えていないように見えることがある。
でも実際には、責任というものはそんなに簡単ではない。
自分一人が罰を受ければ終わる話ではない。
周囲にも影響が及ぶ。
病院にも、医師にも、他の看護婦にも、患者の家族にも影響する。
今回は、りんが「責任を取る」と口にしたわけではない。
けれど、行動としてはそれに近いことをしようとしているように見える。
山本を救ってあげたいという気持ちは分かる。
山本のためだろうということも分かる。
自己満足だけではない。
それは救いではある。
でも、一人の看護婦が抱え込むには大きすぎる問題だ。
直美に相談した上での行動なのか。
誰にも相談せず、りん一人で決めたのか。
そこも気になる。
夜になり、りんは山本が病院から抜け出すのを手伝っている。
外では花火が上がり始める。
そして、今週の放送はここで終わった。
終わり方としては、かなり衝撃だった。
山本夫婦はかわいそうだ。
夫の願いも、妻の苦悩も理解できる。
でも、看護婦を巻き込んではいけないとも思う。
山本は、妻のテイに対しては、自分がこのまま死んだら自分を責め続けることになると心配している。
一方で、りんに対しては、病院から連れ出してほしいとお願いする。
このお願いによって、りんもテイと同じように苦しむとは考えないのだろうか。
もし病院で山本が亡くなったら、りんは「あの時連れ出してあげればよかった」と悔やむかもしれない。
でも、連れ出した結果、死期が早まってしまったら、今度は「あの時連れ出さなければよかった」と後悔するかもしれない。
山本は自分の妻の苦しみは心配している。
けれど、自分が死んだ後の看護婦の苦悩までは考えていないようにも見える。
もちろん、山本も追い詰められている。
死を目前にした人に、そこまで冷静になれというのは酷かもしれない。
それでも、りんにとっては重すぎる願いである。
これは美談なのか。
それとも、美談として描いてはいけないものなのか。
かなり考えさせられる内容だった。
山本「最後にひとつ、嘘をつかせてほしい」
担当患者・山本の嘘とは、
そして、りんが出す答えは……👇この続きは見逃し配信でhttps://t.co/gQ9iUIJsu2#朝ドラ #風薫る
見上愛 本田大輔 pic.twitter.com/99ufCSK2xs— 朝ドラ「風、薫る」公式 (@asadora_nhk) July 2, 2026
山本夫婦の願いは切ないが、正解は分からない
テイが山本に手術を受けさせたのは、長生きしてもらいたかったからだと思う。
その選択自体を責めることはできない。
手術がうまくいけば、山本はもっと長く生きられたかもしれない。
一方で、手術をしなければ、花火の日に牛鍋を食べられたかもしれない。
でも、それも確かなことではない。
何が正解だったのかは分からない。
ただ、このまま山本が亡くなれば、テイが「手術させなければよかった」と自分を責めることだけは分かっている。
だから山本は、最後に無茶をしてでも、テイの後悔を少しでも軽くしたいのだと思う。
りんは共感しすぎるから危うい
りんは、目の前の人の苦しみに強く共感する人である。
だからこそ、患者に寄り添える。
でも、その共感の強さは危うさでもある。
やってはいけないことだと分かっていても、相手を救えると思えば動いてしまう。
今回、山本を病院から連れ出すのだとしたら、それは明らかに一線を越える行動だと思う。
病院の規則もある。
医師の判断もある。
患者の命に関わる問題でもある。
りん一人が抱え込んで判断していい話ではない。
山本の願いは、りんにも後悔を背負わせる
山本は、テイを後悔まみれで残したくないと言う。
その気持ちはよく分かる。
でも、山本の願いは、りんにも別の後悔を背負わせる可能性がある。
連れ出さなければ、りんは「あの時願いを聞いてあげればよかった」と苦しむかもしれない。
連れ出せば、容体が悪化した時に「あの時止めていればよかった」と苦しむかもしれない。
山本は妻のことを思っている。
でも、その願いを受け止めるりんの苦しさまでは、十分に考えられていないようにも見えた。
だからこそ、この話は単純な美談には見えない。
病状告知をめぐる直美とりんの違い
直美は、自分の時は告知してほしいと言った。
思い残すことがないように、自分でやっておきたいことをやりたい。
これは直美らしい考え方だと思う。
一方で、りんは、自分の場合は残された人たちがいい方でいいと答えた。
自分がどうしたいかより、残される人がどう生きていけるかを考えている。
どちらが正しいとは言えない。
ただ、山本の件を見ていると、本人に告知しないことの重さはかなり大きい。
本人が本当の病状を知らないまま、家族や病院が判断する。
その結果、誰かが後悔を背負うことになる。
病状を告げるべきなのか、伏せるべきなのか。
今回もかなり考えさせられた。
まとめ
第70回は、山本の最後の願いと、それに揺れるりんの姿が描かれた重い回だった。
山本夫婦の思いは切ない。花火の日に牛鍋を食べたいという願いも、妻を後悔から救いたいという気持ちも分かる。
ただ、そのためにりんが患者を病院から連れ出すのだとしたら、それは看護婦として越えてはいけない一線でもあると思う。
美談なのか、そうではないのか。山本を救いたい気持ちと、りんに背負わせてはいけないものの間で、かなり考えさせられる内容だった。
『風、薫る』感想まとめはこちら
懐かしい朝ドラをもう一度見たい方はこちら → NHKオンデマンドでは見られないけどTSUTAYA DISCASで楽しめる朝ドラ5選
