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2026年4月29日放送の『風、薫る』第23回は、看護婦養成所の中でくすぶっていた空気がついに表に出て、りん(見上愛)と直美(上坂樹里)が真正面からぶつかる回だった。これまでも直美の頑なさや、りんのまっすぐすぎるところは見えていたが、今回はその相性の悪さまで含めて、かなりはっきり描かれていたように思う。
ただ、単純に「りんが正しくて直美が間違っている」と片づけられる回でもなかった。りんの言葉は正論だし、見ている側も思わずうなずいてしまうところがある。でも、その正しさが直美の一番痛い場所をえぐってしまったのも確かだった。今回は、養成所編が単なる成長物語ではなく、価値観や傷のぶつかり合いを描く話なのだとよく分かる回だった。
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第23回のポイント
- 英語の課題に取り組む中で、直美と多江のグループの対立が深まる。
- りんは「助け合って訳そう」と提案するが、直美も多江も拒む。
- 休日の過ごし方をめぐって、りんと直美はついに本音でぶつかる。
- りんは自分の言葉を反省し、直美は捨松(多部未華子)のもとを訪ねる。
個人的に印象に残ったこと
今回まず印象に残ったのは、英語の課題の場面だった。「observe」の訳し方で苦戦している二つのグループを見ていると、早くも養成所の空気がぎくしゃくしているのが分かる。直美と玉田多江(生田絵梨花)がそれぞれのグループを引っ張る形になっているが、この時点でかなり相性が悪い。もし英語ができるのが別の穏やかな人たちだったなら、案外もう少し素直に協力できたのかもしれない。やはり、リーダー格の性格がそのまま空気になるのだろうと思った。
そんな中で、工藤トメ(原嶋凛)が「observe」が何個あるか数えて喜んでいるのに直美が呆れているのも、ちょっと象徴的だった。トメはトメで、今できる形で課題に関わろうとしているのに、直美にはそれが幼く見えるのだろう。けれど、こういう「できないなりに関わろうとする人」を切り捨てていくと、共同作業はやっぱり回らなくなる。
りんが「この際、みんなで助け合って訳しませんか?」と提案するのも、いかにもりんらしい。ここだけ見れば、たしかにその方が合理的だし、養成所としても正しい方向だと思う。ただ、直美からすれば、自分が必死に努力して身につけた英語を、努力していない人に簡単に渡したくないという気持ちも分からなくはない。そこに柳田しのぶ(木越明)が「こんな意地悪な人に看護婦なんてできるのかしら」と言ってしまい、直美も応戦して一気に険悪になる流れはかなりリアルだった。
ここでりんが「どんなに動機が“不純”でも看護婦を目指すなら同士だ」と言うのも、りんらしくてよかった。ただ、この「不純」にしのぶが引っかかるのも当然で、そこから「誰がどういう理由でここに来たのか」をめぐる空気が一気に悪くなる。看護婦を目指す理由が一つではないからこそ、この養成所は面白いのだが、同時に簡単にはまとまらない場所でもあるのだとよく分かった。
日曜日の場面もよかった。帰る家のある人は帰っていく中で、行くところのない直美とトメをりんが家に誘う。りんとしては善意なのだろうが、直美は拒否するし、トメは行きたそうなのに直美が「親兄弟」という言葉に引っかかってまた刺々しくなる。ここで直美のめんどくささがかなり出ていた。りんが善意で動けば動くほど、直美はそれをきれいごととして受け取ってしまう。そこがこの二人の難しさなのだと思う。
そして、ついにりんが本音をぶつける場面。ここはかなり強かった。うそつきで不細工だとまで言い、「不幸ぶって不細工」と言い放つ。かなりきつい言葉だし、見ていて「そこまで言うか」と思う部分もあった。ただ、りんがここまで言ってしまったのは、直美が自分の不幸や苦労を盾にして、誰の言葉も受け取らず、何でも跳ね返そうとする姿に、とうとう我慢ができなくなったからなのだろうと思う。
ただ、りんの言葉が全部間違っているとも思わない。特に「病やケガで苦しむ人には、直美がどんな生まれで、どんな育ちをして、どんだけ苦労してきたかなんてどうだっていいことじゃないのか」という言葉は、その通りだと思った。看護婦になるなら、そこで問われるのは過去ではなく、目の前の人にどう向き合うかだろう。ここはかなり核心だった。
それでも、直美の側にも理屈はある。家老の娘というだけで仕事も見つかり、辞書も手に入るりんが、正しいことを並べてもきれいごとに聞こえるという怒りは分かる。直美から見れば、りんは苦労していてもなお「守られてきた側」の人間に見えるのだろう。だから、どれだけ正しいことを言われても、素直に聞けないのだと思う。
ただ今回、直美はだんだん論点をずらしていくようにも見えた。他人の一家団らんを見せられて自分が楽しいと思うのか、トメだって一人じゃ嫌だから私を誘ったに決まってる、と決めつけで話を進めてしまう。ここはやはり、りんに本質を突かれて苦しくなったからなのだろうと思う。真正面から返せなくなって、別の不満や痛みを持ち出して対抗するしかなくなる。その苦しさは見ていてかなり生々しかった。
そして部屋を飛び出した直美が、自分の髪を切った日のことを思い出す場面もよかった。後ろ髪をきれいにそろえてくれたのが吉江(原田泰造)だったこと、しかも吉江が泣きながら切っていたことが分かる。これはかなり大きかった。直美は一人で全部を断ち切ったつもりでいたのかもしれないが、実際にはその節目にも、ちゃんと寄り添ってくれる人がいたのだ。そこを思い出すことで、りんの言葉が余計に刺さったのかもしれない。
りんが一人で家に帰り、環と再会し、折り鶴をもらう場面もやわらかくてよかった。一方、寮に一人残ったトメが荷物を見つめているのも気になる終わり方だった。トメもまた、りんと直美の間に挟まれてかなりしなくていい苦労をしている気がする。
美津が瑞穂屋で働き始めたことを報告し、「人と人。話せばいつの間にか通じるものです」と言うのも印象的だった。ここでりんが、自分は直美に言ってはいけないことを言ってしまったと気づく流れもよかった。つまり今回の回は、りんが正論で勝った回ではなく、言葉が正しくても人を傷つけることはある、とりん自身が学ぶ回でもあったのだと思う。
最後に、直美が捨松の屋敷を訪ねるところで終わるのもよかった。今のままではだめだと感じているからこそ、また捨松のもとへ行くのだろう。ここからどう変わるのかがかなり気になる。
吉江先生:「直美さん……」
泣きながら直美の髪を切る吉江先生…😢
直美役の上坂さんはこのシーンでご自身の髪にはさみを入れました。👇見逃し配信https://t.co/OWbgy5pkk7
上坂樹里 原田泰造 pic.twitter.com/VKpdAWhfUy
— 朝ドラ「風、薫る」公式 (@asadora_nhk) April 28, 2026
直美はめんどくさい。でも、そのめんどくささの中に傷がある
今回の直美はかなりめんどくさかった。正直、見ていて「またそこに引っかかるのか」と思う場面も多いし、自分の苦労や不幸を盾にしているように見えるところもあった。けれど、そのめんどくささの根っこに深い傷があるのも確かだと思う。
だから完全に突き放すこともできない。むしろ、こういう人が変わる時には、正論だけではなく、自分の中で何かが崩れるきっかけが必要なのだろう。今回のりんの言葉は、そのきっかけの一つになったのかもしれない。
りんは正しい。でも、正しいことと優しいことはやっぱり違う
今回のりんはかなり本質を突いていたと思う。直美の態度も、グループの空気も、たしかに問題がある。だから言っていること自体は間違っていない。けれど、その言い方が相手を追い詰めることもある。ここは以前の「正しいけど間違えた気がする」と少しつながるものがあった気がした。
りんはまっすぐで、思ったことをそのまま言う人だからこそ、人を救うこともあるし、傷つけることもある。その危うさが今回かなりよく出ていたと思う。
多江と直美のライバル関係は、かなり面白くなりそうだ
今回も直美と多江のバチバチした空気はかなりよかった。医者の家のエリートと、みなしごの雑草魂という構図が分かりやすいし、能力も意地もある者同士だからこそ、簡単には折れない。この二人の対立は、ただ険悪なだけでなく、うまくいけば相互作用になりそうな感じもある。
今はまだ感情的にぶつかっている段階だが、将来的にはかなりいいライバルになるかもしれないと思った。
養成所編は、ようやく「人間関係が面白い」段階に入ってきた
これまでの養成所編は、まだ土台を作っている感じが強かったが、今回はかなり人間関係の熱が出てきた。対立、誤解、善意、すれ違い。その全部が一つの狭い空間の中で起きていて、ようやく群像劇としての面白さが見えてきた気がする。
ここから先は、単に看護を学ぶだけでなく、どういう人間がどう変わっていくのかを見る楽しさが出てきそうだと思えた。
まとめ
2026年4月29日放送の『風、薫る』第23回は、看護婦養成所の中で、りんと直美がついに真正面からぶつかった回だった。りんの言葉は正しく、でも優しくはなかった。直美の態度はめんどくさく、でもその背景には深い傷がある。その複雑さがかなりよく出ていたと思う。
また、直美と多江の対立、トメの立ち位置、美津の意外な適応力まで含めて、養成所編が単なる学園ものではなく、人間関係の濃い物語として面白くなり始めている感じもあった。第23回は、その転換点としてかなり印象的な回だった。
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