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2026年8月4日放送の『風、薫る』第92回は、赤痢が発生した村の避病院で、りん(見上愛)と黒川(平埜生成)が現場を立て直そうとする回だった。
医者は信用されない。
避病院は恐れられている。
村人たちは噂と恐怖で混乱している。
それでも黒川は、「今、この村に最も必要なのは医療、我々です」と言い切る。
そしてりんは、換気、消毒、清潔な場所とそうでない場所の区分けなど、今やるべきことを一つずつ進めていく。
恋愛模様から一気に感染症との戦いに入った『風、薫る』だが、個人的にはこの赤痢パートに入ってからかなり面白くなってきた。
看護婦としてのりんが、ようやく本格的に戻ってきた気がする。
前回の記事はこちらです。

第92回のポイント
- アサ(美山加恋)を避病院へ運ぼうとする黒川たちに、村人たちは強く反発する。
- 村長の本間(大高様夫)は、医者を信用せず、村のことは村でやるという態度を見せる。
- 黒川は「今、この村に最も必要なのは医療、我々です」と言い切る。
- りんは、クワは墓穴を掘るためではなく、お手洗いの穴を掘るためのものだと説明する。
- 避病院へ向かう黒川たちに、村人たちは罵声や石をぶつける。
- 避病院には多くの重症患者がいて、応援に来た医者たちは逃げ出していた。
- 村の医者・田島(中野英樹)だけが残っていたが、できることはもう何もないと諦めていた。
- りんはすぐに障子や窓を開け、換気を始める。
- 黒川は田島に「一緒にここを病院にしましょう」と声をかける。
- りんは看病婦たちに消毒液の作り方や手拭いの巻き方を教える。
- 東京から来た柳生(中村倫也)は、赤痢を持ち込んだと噂され、病室に入ることを恐れていた。
- りんは染(大浦千佳)に「ちゃんと怖がって、看護しましょう」と声をかける。
- 太助(板橋駿谷)の家では、長太郎(渋谷そらじ)が母・アサを心配している。
- 避病院では患者も看病婦もりんを頼り、明らかに人手が足りなくなる。
- その時、門の外から「りん!」という声が聞こえ、直美(上坂樹里)が現れる。
個人的に印象に残ったこと
今回は、アサを避病院へ運ぼうとする黒川たちを、村人たちが非難する場面から始まった。
医者を信用しない村人たち。
医者に文句を言い続ける村人たち。
山辺(六角慎司)は、役場の仕事なんだから早く運ばせてくれと説得する。
巡査の金子(金子岳憲)は、村人たちにうちへ帰れと命令する。
しかし、村人たちの不信感は簡単には収まらない。
村長の本間は、「医者なんて全く信用なんねえ」と言う。
医者がいることによって、余計に村の中がまとまらない。
村のことは村でやる。
そういう空気がある。
この「よそ者を受け付けない感じ」は、かなり根深い。
赤痢そのものへの恐怖もある。
避病院への恐怖もある。
それに加えて、医者や役人への不信もある。
感染症との戦いは、病気だけを見ていればいいわけではない。
村の空気、不安、噂、偏見、恐怖。
それらすべてが、医療の前に立ちはだかっている。
それでも黒川は言う。
「今、この村に最も必要なのは医療、我々です。」
ここは強かった。
村のことは村でやる。
その気持ちは分からなくもない。
しかし、赤痢は村の空気や根性でどうにかなるものではない。
必要なのは医療である。
知識である。
隔離であり、消毒であり、清潔な環境である。
黒川はそこをはっきり言った。
本間は、黒川たちが持ってきたクワを見て、墓穴を掘るためのものだろうと言う。
この発想が、避病院への恐怖を表している。
避病院へ行くことは、死にに行くこと。
そう思われているのだろう。
しかしりんは、クワはみんなが生きるために使うものだと言う。
みんなが毎日使う一番大事な穴を掘るため。
お手洗いの穴を掘るためのクワだと説明する。
この説明は良かった。
赤痢の流行を止めるには、排泄物の処理が重要になる。
クワは墓穴を掘るためではない。
命を守るために、衛生を整えるために使う。
死のための道具ではなく、生きるための道具である。
りんが看護婦として学んできたことが、現場で具体的に出ていた。
大八車にアサを乗せ、黒川たちは村の道を進む。
村人たちは「逃げれ!逃げれ!」と言葉をぶつける。
避病院へ向かう道中、石まで投げられる。
医者も信用ならない。
この村もみんな殺されてしまう。
そんな噂が飛び交う。
黒川たちがやっていることは、アサを助けるためであり、村を守るためである。
それなのに、村人たちからは敵のように扱われる。
この理不尽さがつらい。
でも、これも感染症の現場なのだと思う。
恐怖は人を攻撃的にする。
正しい知識がなければ、助けに来た人さえ敵に見えてしまう。
避病院へ向かう途中、向かいから大八車に乗せられた遺体が通ってくる。
りんたちは手を合わせる。
苦しそうなアサに、りんはもう少しで着きますからねと声をかける。
避病院は、まさに死と隣り合わせの場所として描かれていた。
黒川たちが避病院に着くと、見張り番は山辺に、今日は逃げようとしている人はいないと報告する。
つまり、逃げようとする患者がいるのが普通の状況なのだろう。
山辺と金子は、あとは黒川たちに任せて去っていく。
看病婦たちにアサを任せ、りんと黒川は避病院の中を視察する。
締め切った薄暗い中に、大勢の患者がいる。
これだけで、かなりひどい状況だと分かる。
換気もされていない。
清潔さも保たれていない。
患者たちは重症で、部屋の空気も悪い。
部屋の隅には、この村の医者である田島が座り込んでいた。
黒川が声をかける。
田島は、ここと向こうの二間に患者が二十五人もいると伝える。
残っているのは自分たちだけ。
できることはもう何もない。
他の医者は、気づいたらいなくなっていた。
みんな重症で運び込まれ、手が回らなくなった。
田島は完全に疲れ切っていた。
応援に来ていた医者たちが逃げ出してしまった現状でも、田島だけは残っていた。
田島を責める気にはなれない。
むしろ、ここまで残っていたこと自体が大変だったと思う。
ただ、現場はほとんど崩壊している。
このままでは患者を救うどころではない。
その状況で、りんはいち早く動く。
障子や窓を全開にし、換気を始める。
そして、掃除と消毒を徹底することを宣言する。
ここから一気に、りんが看護婦として動き始めた。
山本の時に命に触れる怖さを知ったりん。
手が震えるりん。
そのりんが、赤痢の避病院では、迷いなく環境整備に入っている。
患者一人ひとりに触れる前に、まず場所を整える。
病院として機能する場を作る。
これが大事なのだと思う。
黒川は田島に言う。
「一緒にここを病院にしましょう。」
この言葉も良かった。
ここは避病院と呼ばれている。
でも、現状はただ患者を集めているだけの場所に近い。
換気も不十分。
消毒も不十分。
管理も行き届いていない。
だから黒川は、ここを病院にしようと言った。
ただ隔離する場所ではなく、治療し、看護し、生きるための場所にする。
第92回の大きな軸は、まさにここだったと思う。
避病院を、病院にする。
りんは、消毒液や医療道具を準備し、手拭いを顔に巻く巻き方を指導する。
黒川は、院内を清潔な場所とそうでない場所に分けるとりんに指示する。
そして急を要する患者がいないか確認する。
りんは、ここを詰所にして患者の容体を整理することを黒川に提案する。
黒川も承諾する。
この二人の動きがとても良かった。
黒川が全体の医療判断をする。
りんが看護と現場整理を担う。
役割分担がはっきりしている。
しかも、りんは受け身ではない。
自分から詰所の設置や容体整理を提案している。
看護婦としてのりんが戻ってきたというより、以前よりも現場を見て動けるようになっている気がした。
りんは、五人の看病婦に消毒液の作り方を説明する。
まずは五%の石炭酸水の作り方。
しかし、五%が理解できない看病婦がいる。
りんは、煮沸した水九割五分に対して石炭酸を五分混ぜると説明し直す。
ここも地味に大事だった。
知識がある人だけで動いても現場は回らない。
分からない人に、分かるように伝える必要がある。
りんはただ知識を持っているだけではない。
相手に伝え直すこともできる。
「看護のいろは」を書いていたことも、ここにつながっているように見えた。
患者を移動させながら、部屋の掃除を進めるりんと看病婦たち。
りんは、手際よく掃除と消毒の指示を出す。
雑巾など使い終わって汚れたものは袋に入れて外で燃やすと説明する。
りんの指示が具体的である。
何をするのか。
なぜするのか。
使い終わったものをどうするのか。
それが見える。
このあたりは、看護婦としての専門性がしっかり出ていた。
その中で、りんは廊下の隅に、ワラが被せられ横たわる男の手があることに気づく。
りんは亡くなっているものと勘違いし、合掌する。
ケサ(兵頭公)に、ご遺体の安置はどこにと確認する。
すると、横たわっていた柳生が「まだ生きてる」と動く。
これは驚いた。
柳生は東京から来た人間で、赤痢は自分が持ち込んだと噂されていることを気にしている。
黒川は、誰が持ち込んだかなんて誰も分からないと声をかける。
しかし柳生は、中に入ったら何をされるかと、自分の安全を危惧している。
病室の中に入ることを恐れている。
赤痢を持ち込んだと疑われているなら、患者たちや村人から何をされるか分からない。
柳生の恐怖も理解できる。
りんは、生き延びることを優先し、この場から動かさず、着替えと掛けるものを用意するよう看病婦に命じる。
黒川もこの場で診察を始める。
この判断も良かった。
病室に移すのが原則かもしれない。
でも、本人が中で何をされるか分からないと恐れている。
動かすことで余計に混乱するなら、まずはその場で命を守る。
りんは現場に合わせて判断していた。
赤痢に恐怖する染に、りんは声をかける。
「怖くていいんです。怖がらないと伝染してしまう。病室を清潔にするのも、私たちがうつらないためでもあるんです。だから、ちゃんと怖がって、看護しましょう。」
この言葉が、今回かなり印象に残った。
怖がることは悪いことではない。
むしろ、怖がらないと伝染してしまう。
ただ、怖がって逃げるのではなく、ちゃんと怖がって看護する。
恐怖を否定しない。
恐怖を知識と行動につなげる。
これは、感染症の現場でとても大事な考え方だと思う。
染は頷く。
その様子を、柳生が無表情に観察している。
この柳生という人物が、今後どう物語に関わってくるのか気になる。
ただの患者では終わらなさそうな雰囲気があった。
表で、りんは汚れた衣類を燃やす。
そして自分の手を見つめながら、「おっちょこちょいのちょい」と歌い出す。
この歌は、りんが自分を保つためのものなのだろうか。
現場の緊張、死の気配、患者の苦しみ。
その中で、りんが自分の手を見つめて歌う。
少し不思議な場面だったが、りんが自分の手と向き合っているようにも見えた。
太助の家では、太助が長太郎に、寂しいだろうけど辛抱だと声をかけている。
母を避病院に連れていかれた長太郎。
近づくこともできない。
会いに行くこともできない。
太助もつらいだろう。
でも、三日間は家から出ない。
それが正しい。
伝染病は、親子の情だけでは乗り越えられない。
避病院では、りんがお湯に水あめを溶かしたものを黒川に渡す。
黒川は疲れが取れそうだと言う。
りんは「あの子、どうしているでしょう……」と長太郎を気にする。
黒川は、「君は母親なんだな。私は、あの子にかける言葉が出てこなかった」と声をかける。
ここも良かった。
黒川は医者として、赤痢の説明はできる。
隔離の必要性も説明できる。
しかし、母と離れる子どもにどう声をかけるか。
そこは、りんの方が言葉を持っている。
りん自身が母であり、環と離れて暮らしている。
だから、長太郎の気持ちに触れることができたのだと思う。
でも、伝染病は親子でも近づかないことが正しい。
りんと黒川はそれを確認する。
つらいけれど、正しい。
この矛盾が、感染症の残酷さである。
温めた石を布でくるんで、りんはアサのお腹に当てる。
これで少し痛みが和らぐと思うと伝え、そばにいることを約束する。
ここは、りんの看護が出ていた。
薬でどうにもできない苦痛でも、少しでも和らげる。
そばにいる。
不安を減らす。
これも看護である。
一日をかけて、避病院の清潔は取り戻せた。
しかし、多くの患者はぐったりしたままである。
看病婦たちは、あらゆることをりんに確認する。
患者もりんを頼る。
明らかに、りん一人では看護婦の数が足りない。
りんが慌ただしく対応する中、門の外から声が聞こえる。
「りん!」
現れたのは、直美だった。
ここはテンションが上がった。
東京に帰ったはずの直美が、なぜ避病院に現れたのか。
どういう経緯で、どんな行程で来たのか。
気になることを挙げればきりがない。
でも、今この場所に、りんにとって最も必要な人が現れた。
その事実だけで十分に盛り上がる。
看護婦の数が足りない。
りん一人に負担が集中している。
そこへ直美が来る。
明日から、専門的な看護を学んだトレインドナースたちの奮闘が見られそうで、かなり楽しみになった。
東京から来た柳生藤次も赤痢に感染。
柳生が病気を持ち込んだと思われているようです……。👇本日登場した #中村倫也 さん!https://t.co/BjQR1xJT1J[見逃し配信中]#朝ドラ #風薫る
見上愛 pic.twitter.com/uNoxfy6FHH— 朝ドラ「風、薫る」公式 (@asadora_nhk) August 3, 2026
避病院を「病院」に変える黒川とりん
今回一番良かったのは、黒川とりんが避病院を病院にしようとしたことだった。
そこは、患者をただ閉じ込める場所のようになっていた。
応援の医者は逃げ、田島は疲れ切り、患者は重症化し、空気は悪く、清潔さも保たれていない。
しかし黒川は諦めなかった。
「一緒にここを病院にしましょう」と言った。
りんも、すぐに換気、掃除、消毒、患者の整理を始めた。
病院とは、建物の名前ではないのだと思う。
患者を診る人がいる。
看護する人がいる。
清潔を保ち、容体を見て、治療につなげる仕組みがある。
黒川とりんは、その仕組みを一から立て直そうとしていた。
「ちゃんと怖がって、看護しましょう」が良かった
染が赤痢を怖がるのは当然である。
死者が出ている。
自分にもうつるかもしれない。
怖くないわけがない。
そこで、りんが「怖がらなくていい」と言わなかったのが良かった。
怖くていい。
怖がらないと伝染してしまう。
だから、ちゃんと怖がって看護しましょう。
この言葉には、りんの成長を感じた。
勇気とは、怖くないことではない。
怖さを分かったうえで、何をすべきかを知り、行動することなのだと思う。
感染症の現場では、無謀さは勇気ではない。
怖がることも、看護の一部なのだと思った。
りん一人では限界だったところに直美が来た
一日で避病院の清潔は取り戻せた。
しかし、それで終わりではない。
患者はまだ多い。
看病婦たちはりんに確認し続ける。
患者もりんを頼る。
りん一人では明らかに限界である。
そこへ直美が現れた。
このタイミングは本当に良かった。
直美がどうやって来たのかは気になる。
東京に帰ったはずなのに、どういう判断でここまで来たのかも気になる。
ただ、物語としては、今一番必要な人が現れた瞬間だった。
りんと直美。
この二人がそろえば、避病院の現場は大きく変わるはずである。
柳生という男は何者なのか
柳生は東京から来た人間で、赤痢を持ち込んだと噂されている。
本人は病室に入ることを恐れている。
中に入ったら何をされるか分からない。
りんはその恐怖を無視せず、その場で診察と看護を進めた。
柳生は、りんのことを無表情に観察していた。
この男が今後どう関わってくるのか、かなり気になる。
単なる患者なのか。
それとも、りんたちの看護を外へ伝える存在になるのか。
東京から来たという設定も含めて、何か物語に影響を与えそうな人物に見えた。
赤痢パートに入って一気に面白くなってきた
個人的には、今までの恋愛模様よりも、赤痢パートに入ってから一気に面白くなってきたと感じる。
医療従事者が感染症と向き合う。
村人の恐怖と偏見に向き合う。
避病院を立て直す。
看護婦として、何ができるのかを問われる。
このドラマの軸である看護の話が、ここに来てかなり濃くなってきた。
応援に来ていた医者も逃げ出すような現場に、黒川とりんは立ち向かっている。
現代まで続く医療従事者の奮闘にも通じるものがあり、頭が下がる思いだった。
まとめ
第92回は、赤痢の避病院を黒川とりんが立て直そうとする回だった。
医者を信用しない村人たち、避病院への恐怖、患者の多さ、逃げ出した医者たち。現場はかなり厳しい状況だったが、黒川もりんも諦めなかった。
りんが換気や消毒、清潔な場所とそうでない場所の区分けを進めていく姿には、看護婦としての成長がはっきり出ていたと思う。「ちゃんと怖がって、看護しましょう」という言葉も印象的だった。
そして最後に直美が現れたことで、明日からの展開が一気に楽しみになった。りんと直美、専門的な看護を学んだ二人がそろった避病院で、赤痢との戦いがどう動いていくのか見守りたい。
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