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2026年7月13日放送の『風、薫る』第76回は、りん(見上愛)が新潟の女学校の舎監として働く決意をする回だった。
看護婦は続けられない。
でも、環(英茉)を女学校に通わせたい。
家族と離れたくはない。
誰かに人生を委ねたくもない。
そんなりんの迷いに対して、直美(上坂樹里)が真正面からぶつかっていく。
直美はりんにとって、ただの友人ではなく、本当の家族になろうとしている。けれど、その家族の形が整っていく一方で、環がまた大人の事情に振り回されることにもなった。
前回の記事はこちらです。

第76回のポイント
- りんと直美は料理をしながら、新潟の仕事のことを話す。
- りんは、直美が自分の知らないところで動いていたことを気にしている。
- 直美は、次の仕事を考えずに「辞めろ」なんて言えなかったと答える。
- りんは、今の自分の手では患者に責任を持てないため、直美に言ってもらってよかったと話す。
- しかし、新潟行き、直美の金銭的援助、再婚案のどれにも、りんは難色を示す。
- 直美は、りんがあれも嫌、これも嫌と言っているように見え、ついに感情を爆発させる。
- 山本を連れ出したことをなぜ相談してくれなかったのかという直美の思いもぶつけられる。
- りんと直美は互いを思うからこそ衝突し、互いに「でれすけ!」と罵り合う。
- 直美は美津(水野美紀)と環を連れてきて、自分がこの家の本当の家族になると宣言する。
- 直美は、環の二人目のお母さんになりたいと願い出る。
- 環は、寂しいけど悲しいとは違うと言い、りんの新潟行きを受け入れる。
- りんは新潟で元気に働き、自分の力で生きることを諦めたくないと決意する。
- 最後は、りんが直美に環の好きな小魚のつくだ煮の作り方を教える場面で終わる。
個人的に印象に残ったこと
今回は、りんと直美が料理をしながら話している場面から始まった。
直美は、りんに怒っているのかと確認する。
りんは怒ってはいない。
ただ、自分の知らないところで、直美がいろいろと動いていたことを気にしている。
直美としては、りんの次の仕事も考えておかなければ、りんに辞めろなんて言えなかった。
これは直美らしい。
前回、直美はりんにかなり厳しい言葉をぶつけた。
「看護婦、辞めな」
あの言葉だけを聞けば、冷たく突き放したようにも見える。
でも実際には、直美は捨松(多部未華子)に頼み、りんの次の仕事を探していた。
りんを現場から離すだけではなく、りんがその後も生きていけるように道を探していたのだ。
りんは、看護婦は続けられないと言う。
この手では患者さんに責任を持てない。
だから直美に言ってもらってよかった。
そう話す。
りん自身も、今の自分が看護婦として働ける状態ではないことは分かっている。
患者の命に責任を持てない。
それは、りんが一番痛感しているのだろう。
ただ、直美が新潟の仕事の話をすると、りんは素直に喜べない。
直美も、まさか新潟だとは思わなかった。
それでも、家族を支えて、環を女学校にやれるような仕事はこれしかなかったと言う。
りんは「ありがとう」と口にする。
でも、本当に感謝しているのかは分からない。
ありがたいのは分かっている。
でも、受け入れられない。
そんな複雑な表情に見えた。
その後、りんは一人座り込み、「振り出しに戻っちゃった……」とつぶやく。
この言葉も重い。
看護婦になる前に戻ったような感覚なのだろう。
せっかく看護婦になった。
家族を支える道を見つけた。
環に教育を受けさせる希望も見えてきた。
しかし、山本の死をきっかけに看護婦として働けなくなり、また生活の土台を失いかけている。
りんにとっては、本当に振り出しに戻ったような気持ちなのだと思う。
落ち込むりんに、直美は提案する。
自分も環の女学校のお金を払うから、りんは瑞穂屋でもどこでも東京で働き口を見つけたらどうか。
りんは驚く。
そんなことは頼めない。
直美は「家族じゃないから?」と聞き返す。
ここから、二人の本音が少しずつぶつかり始める。
りんは、環のことは自分がなんとかしないといけないと思っている。
直美が、だったら新潟に行くしかないと言うと、りんは新潟は遠すぎると難色を示す。
直美が、じゃあ再婚するしかないんじゃないかと言うと、りんは結婚も嫌だと言う。
ここで、直美の堪忍袋の緒が切れる。
ごちゃごちゃごちゃごちゃダダこねて。
直美のこの言葉には、正直かなりすっきりした。
前回の記事でも、りんは少しわがままに見えると感じていた。
看護婦はできない。
でも給金は必要。
環は女学校に入れたい。
家族とは離れたくない。
直美のお金を受け取るのも嫌。
新潟に行くのも嫌。
再婚も嫌。
りんの苦しさは分かる。
でも、それではどうするのか。
直美が今回、その違和感をそっくりそのまま代弁してくれたようだった。
直美は言う。
私がお金を出すのは嫌。
新潟に行くのも嫌。
だけど環ちゃんは女学校にやりたい。
それなら誰か見つけるしかないでしょう。
りんは、「環と私の人生をほかの誰かに委ねたくない」と答える。
この言葉も、りんらしい。
りんは自分の力で生きたい。
環の人生も、誰かに預けるような形にはしたくない。
それは分かる。
でも、自分の力だけではどうにもならない場面もある。
だったらどうするの。
直美が呆れるのも当然だと思う。
そして直美は、山本を連れ出したことも持ち出す。
なぜ言ってくれなかったのか。
ここで、直美の本当の怒りが見えてくる。
直美は、りんを責めたいだけではない。
相談してほしかったのだと思う。
一緒に困りたかった。
一緒に悩みたかった。
家族だと言ってくれたのに、大事なことを一人で抱え込まれたことが悲しかったのだろう。
りんは、直美は看護婦取締だから言えるわけがないと言う。
直美に言ったところで、困らせるだけで何もできなかったと思っている。
ここで、二人の思いは完全にすれ違っている。
直美は、困らせてほしかった。
りんは、困らせたくなかった。
直美は、家族なんだから頼ってほしかった。
りんは、家族だから大事にしたかった。
互いに相手を思っているからこそ、言葉が強くなっていく。
りんは泣き出す。
直美は言う。
家族って言ってくれたのは、りんだよ。
家族って、大事な時こそ頼るものじゃないの。
この直美の言葉は、かなり切実だった。
直美はずっと家族を求めていた。
みなしごとして生きてきた直美にとって、「家族」と言ってもらえたことは大きかったのだろう。
だからこそ、その家族に頼ってもらえなかったことがつらかった。
りんは、家族だから大事にしたかったと胸中を明かす。
直美を巻き込みたくなかった。
困らせたくなかった。
それもまた、りんなりの家族への思いだった。
二人は思いをぶつけ合い、互いに「でれすけ!」と罵り合う。
この場面は、喧嘩ではあるのだけれど、ただの喧嘩ではなかった。
本当の家族になっていくためのぶつかり合いだったのだと思う。
そして直美は「決めた」と一言言い、外に出て美津と環を連れてくる。
直美は、りん、美津、環の前で宣言する。
「私、この家の本当の家族になります。」
環の二人目のお母さんになる。
りんが新潟に行くなら、環は東京で自分が責任を持って育てる。
直美はそう言う。
「私が家族になりたいの。ならせてください!」
そして美津に頭を下げる。
ここはかなり大きな場面だった。
直美は家族になりたいと、自分から願い出た。
りんの家族として、環の母として、責任を引き受けようとしている。
ただ、正直ここまでしてやれるのかという驚きもあった。
直美は家族への憧れが強い。
りんが初めて家族だと受け入れてくれたから、ここまで献身的になれるのかもしれない。
それでも、環の二人目の母になるというのは、かなり重い決断である。
将来、直美自身が結婚して子どもが生まれたら、環の立場はどうなるのか。
そこまで考えると、少し心配にもなる。
りんは、おかしい、普通じゃないと言う。
それに対して美津は、りんが再婚しないと言った時からおかしいと思っていたし、看護婦になると言った時からおかしいと思っていたと言う。
今まで世間様の当たり前の道を、りんは歩んでこなかったではないか。
美津のこの言葉は良かった。
りんは最初から普通の道を歩んできたわけではない。
ならば、直美が家族になるという普通ではない形も、あり得るのかもしれない。
直美は、夢をかなえたいのでしょうとりんに問いかける。
そして、りんの夢のために手伝わせてと願い出る。
環は、お母さんの夢は何かとりんに聞く。
りんは、環が好きな夢を持てるように、元気で働くお母さんでいることだと答える。
この答えは、りんらしい。
りんの夢は、自分だけの夢ではない。
環に好きな夢を持たせるために、自分が働くこと。
環の可能性を広げること。
そのために、りんは生きようとしている。
しかし、そのためには環と離れて暮らさなければならない。
遠くで働かなければならない。
りんがそう伝えると、環は「寂しいけど、いいよ」と答える。
そして言う。
「寂しいと悲しいは違うでしょ?」
この言葉は、とても立派だった。
寂しいけど、お母さんが夢をかなえるのはうれしい。
このごろ、お母さんが元気ないのは悲しい。
環はそう答える。
りんは環を抱きしめ、ごめんねと言う。
環は、お母さんならできるよと背中を押す。
ここは感動的な場面として描かれていたと思う。
ただ、個人的には少し引っかかりもあった。
環はまだ小学校に入る前の幼い子どもである。
その子が、ここまで立派に言葉を定義づけし、母の背中を押す。
立派な行動ではある。
でも、リアリティがありすぎるというよりは、少し立派すぎるようにも感じた。
そして何より、これは本当に環の本音なのだろうか。
環は幼い頃から、大人の都合に振り回され続けている。
父の家から逃げ出した。
母の愛情がほしい時期に、母は看護婦になるため寮生活をしていて、週に一日しか会えなかった。
そして今回、また母と離れて暮らすことになる。
さらに、大人たちの都合で、新しい二人目の母親ができる。
環は「寂しいけど、いいよ」と言った。
でも、本当にそれでいいのだろうか。
本当は寂しいし、悲しいのではないか。
そう思ってしまう。
りんは、環を女学校に入れたいと思い、苦渋の選択で新潟行きを決意した。
それは母としての愛情なのだと思う。
ただ、環がもう少し大きくなって、女学校には行きたくないと言い出したらどうなるのか。
その時、りんはまた特大の「私、また間違えた……」を炸裂させるのではないかと心配になる。
子どもは親の願い通りに育つとは限らない。
これだけ大人の事情で振り回され続けているのだから、環が今後まっすぐに育つ保証もない。
りんは自分の都合で勝手に壁にぶつかっている面もあるから、ある程度は仕方ないと思える。
でも、環だけはかわいそうでならない。
りんは、夢をかなえるために頑張ると決意する。
「新潟で元気に働いてきます。自分の力で生きることは、諦めたくない。」
そう言う。
そして直美と美津に、環のことをよろしくお願いしますと頭を下げる。
直美と美津は了承する。
環は、直美がもう一人のお母さんになってくれるのはうれしいと言う。
直美は涙する。
りんも泣いている。
美津は「環のお母さんたちは泣き虫ね」と言う。
ここは、あたたかい場面として描かれていた。
ただ、自分の力で生きることは諦めたくないというりんの言葉には、少しだけ引っかかった。
りんは常に、誰かに支えられている。
直美が仕事を探してくれた。
捨松が仕事を紹介してくれた。
美津が環を見てくれる。
直美が二人目の母になると言ってくれた。
環が背中を押してくれた。
もちろん、人は一人では生きていけない。
誰かに支えられて生きること自体は悪くない。
でも、りんにはもう少し、主体的に物事を解決してほしいと思ってしまう。
常に誰かがお膳立てしてくれたルートで、なんとなく解決していくように見えてしまうと、「自分の力で生きることは諦めたくない」という言葉が少し虚しく響いてしまう。
最後は、環の好きな小魚のつくだ煮の作り方を、りんが直美に教える場面だった。
これは、りんが環を直美に託す準備をしている場面でもある。
食べ物の好み。
家庭の味。
母親として知っていることを、直美に渡している。
直美が本当に環の二人目の母になるのだと感じさせる終わり方だった。
直美、環のお母さん宣言🙋♀️
りんが新潟で働いている間、環を東京で責任を持って育てると約束しました。
👇このシーンをもう一度https://t.co/UGFJq1YidF#朝ドラ #風薫る
上坂樹里 英茉 pic.twitter.com/kqKyMBtcXg— 朝ドラ「風、薫る」公式 (@asadora_nhk) July 13, 2026
りんと直美の衝突は、互いを思うからこそだった
今回のりんと直美の喧嘩は、互いが互いを思っているからこその衝突だった。
直美は、家族なんだから頼ってほしかった。
りんは、家族だから困らせたくなかった。
直美は、一緒に悩みたかった。
りんは、一人で背負うしかないと思っていた。
どちらも間違っているわけではない。
でも、家族になるということは、きれいな言葉だけでは済まないのだと思う。
頼ること。
困らせること。
ぶつかること。
それも含めて家族なのだと、直美はりんに伝えたかったのだろう。
直美はなぜここまでりんに尽くせるのか
直美の献身はすごい。
りんに厳しい言葉を言う。
捨松に仕事探しを頼む。
環の二人目の母になると宣言する。
環を責任持って育てると言う。
ここまでできるのは、直美の家族への憧れが強すぎるからなのだろうか。
初めて自分を家族だと言ってくれた人たちを、直美はどうしても守りたいのだと思う。
ただ、直美自身の人生もある。
直美が結婚したり、子どもを持ったりした時に、環の立場はどうなるのか。
直美の思いが本物だからこそ、そこまで心配になってしまう。
環があまりにも大人すぎる
環は本当に立派だった。
寂しいと悲しいは違う。
お母さんが夢をかなえるのはうれしい。
お母さんが元気ないのは悲しい。
そう言って、りんの背中を押した。
ただ、幼い子どもとしては、あまりにも大人すぎる。
環はずっと、大人の事情に合わせて生きている。
母と離れ、また母と離れ、今度は二人目の母ができる。
それを受け入れているように見えるが、本当に心の底から受け入れているのかは分からない。
ただただ、環がかわいそうだと思ってしまった。
りんにはもう少し主体的に解決してほしい
りんの苦しみは分かる。
看護婦を続けられないほど傷ついたことも分かる。
環のために働きたい気持ちも分かる。
でも今回も、結局は直美が動き、捨松が仕事を探し、美津と環が受け入れ、直美が家族になることで道が開けた。
りん自身が何かを切り開いたというより、周囲に支えられてルートが用意されたように見えてしまう。
それ自体は悪いことではない。
人は助け合って生きるものだ。
ただ、「自分の力で生きることは諦めたくない」と言うなら、もう少し主体的に選び取る姿も見たい。
ここから新潟で、りんが本当に自分の力で立ち上がる姿を見せてほしい。
それでも直美と環がいたから、りんは進めた
厳しいことも感じたが、それでも今回りんが前に進めたのは、直美と環がいたからだと思う。
直美は本気で怒り、本気でぶつかり、本気で家族になろうとした。
環は寂しさを抱えながらも、母の背中を押した。
美津も、それを静かに受け止めた。
りんは一人では決められなかった。
でも、この家族がいたから新潟行きを決められた。
それは確かに救いでもある。
まとめ
第76回は、りんと直美が本音でぶつかり、直美が本当の家族になることを宣言する回だった。
直美の献身はすごい。りんのためにここまで動けるのは、家族への憧れと、りんたちを本当に大切に思う気持ちがあるからなのだろう。
ただ、環はまた大人の事情に振り回されることになった。立派に母の背中を押していたが、本当に寂しくないわけではないはずだ。
明日以降、りんが新潟で本当に自分の力で立ち上がれるのか。今度こそ、りん自身が主体的に道を切り開く姿を見たい。
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