朝ドラ『風、薫る』第74回感想・ネタバレ|直美の「看護婦、辞めな」は冷たさではなく、りんを守る決断なのかもしれない

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2026年7月9日放送の『風、薫る』第74回は、山本の死をきっかけに看護婦として働けなくなっていくりん(見上愛)と、そのりんに「看護婦、辞めな」と告げる直美(上坂樹里)の回だった。

りんは何度も「大丈夫」と言う。

けれど、全然大丈夫には見えない。

患者の体に触れるたびに山本の最期を思い出し、脈も取れず、処置もできない。そんな状態で命を預かる現場に立ち続けることは、りんにとっても患者にとっても危険である。

直美の「辞めな」は、冷たい言葉ではなかったと思う。むしろ、病院も周囲も言えなかったことを、直美だけが言えたのだと思う。

前回の記事はこちらです。

朝ドラ『風、薫る』第73回感想・ネタバレ|トヨの死と直美の優しさ。りんは本当に大丈夫なのか
2026年7月8日放送の『風、薫る』第73回は、トヨ(松金よね子)の最期と、山本辰治の死を引きずるりん(見上愛)の姿が描かれた。トヨは住み慣れた長屋で、嘉平(春海四方)やキク(広岡由里子)、丸山(若林時英)、直美(上坂樹里)、りんに見守られ...

第74回のポイント

  • 直美は丸山(若林時英)の団子屋でシマケン(佐野晶哉)と会う。
  • シマケンはりんの様子を心配し、直美は人としての正しさと看護婦としての正しさが違う時があると打ち明ける。
  • 丸山の新作「みたらしおやき」を一ノ瀬家で試食する。
  • 環(英茉)は、来年から小学生になることを話す。
  • 新しい患者の宇野(関本昇平)が診察を受ける。
  • りんは宇野に肩を貸したことで山本のことを思い出し、診察介助がうまくできない。
  • 直美は捨松(多部未華子)のもとを訪ね、何かを依頼する。
  • シマケンはりんを心配して一ノ瀬家を訪ねる。
  • 環は、りんが「何でもない」と言う時の表情を見抜く。
  • 宇野の容体が急変し、りんは処置の場面で動けなくなる。
  • 直美とフユ(猫背椿)が対応し、宇野は手術を受ける。
  • 手術後、直美はりんに「看護婦、辞めな」と告げる。
  • 直美は外科看護婦取締として、今のりんに看護婦として働かせるわけにはいかないと判断する。

個人的に印象に残ったこと

今回まず印象に残ったのは、丸山の団子屋で直美がシマケンに会う場面だった。

直美は、丸山から新作の試食をお願いされる。

そこへシマケンがいて、りんの様子を確認する。

シマケンはやはり、りんのことが気になって仕方ないのだろう。

直美は、りんに何かあったのかと気にするシマケンに、人としての「正しい」と、看護婦としての「正しい」が違う時があると打ち明ける。

この言い方が、今のりんの苦しさをよく表していた。

山本の願いを叶えたい。

人としては、それが正しいように思えた。

でも看護婦としては、医師の許可なく患者を病院から連れ出してはいけなかった。

人として正しいことと、看護婦として正しいことがずれてしまう。

そのずれの中で、りんは完全に動けなくなっている。

シマケンも、直美からそう聞いて、りんの状態をかなり深刻に受け止めたのだと思う。

直美は帰宅後、「おやつの時間でーす」と言って、丸山の新作「おやき」をりん、環、美津(水野美紀)に試食させる。

中にみたらしを入れた「みたらしおやき」。

美津の口には合わないようだったが、環は好きじゃなくても食べるよと言う。

来年には学校だもん。

環は、来年から小学生になることを知らせる。

この場面は一見、日常の穏やかな場面だった。

けれど、環が成長していることが、りんにとっての「大黒柱」としての責任にもつながっているように見えた。

環はこれから学校へ行く。

読み書きも必要になる。

お金も必要になる。

りんは簡単に仕事を休めない。

簡単に「大丈夫じゃない」とは言えない。

その重さが、後の場面につながっていく。

一方、病院では新しい患者の宇野が今井教授(古川雄大)の診察を受けている。

問診では、足と腰を打ったという話だった。

宇野は、りんの肩を借りて診察台へ移動する。

しかし、宇野に肩を貸して移動させたことで、りんは山本のことを思い出してしまう。

今井に患者の肩を押さえるよう言われても、りんはうまく押さえられない。

その様子を、直美がじっと観察している。

ここはかなり危うかった。

りんは、山本の最期を思い出してしまうと、患者に触れることすら難しくなっている。

肩を貸す。

体を支える。

脈を取る。

包帯を巻く。

看護婦として必要な動作が、山本の記憶と結びついてしまっているのだと思う。

上手くいかず、りんは詰所で落ち込んでいる。

壁のひび割れに触ると、欠片が崩れ落ちる。

この描写も分かりやすかった。

りん自身も、壁のようにひび割れている。

少し触れただけで、崩れ落ちそうな状態なのだろう。

その頃、直美は捨松の元へ行き、何やらお願い事をしている。

捨松は「分かりました」と一言。

直美は「よろしくお願いします」と言い残して去る。

ここはかなり気になる場面だった。

直美は、りんをこのまま現場で働かせてはいけないと判断し始めていたのだと思う。

ただ、りんには大黒柱として稼がなければならない事情がある。

病院側もすぐには処分しない。

むしろ、通常勤務を命じている。

その中で、直美がりんを本当に休ませる、あるいは看護婦の仕事から離れさせるためには、何らかの根回しが必要だったのだろう。

だから捨松に相談したのではないかと思う。

自宅では、環が自分の名前を漢字で書く練習をしている。

りんに確認してもらうと、正しい書き方を添削される。

女学校に行くには読み書きを頑張らないと、と美津に言われたという環。

その「頑張らないと」という言葉に、りんは引っかかった様子だった。

今のりんにとって、「頑張る」という言葉はかなり危うい。

自分もずっと頑張ってきた。

大丈夫ではないのに、大丈夫と言い、頑張るしかないと思ってきた。

だから、環が無邪気に「頑張らないと」と言ったことが、りんの中で何かに引っかかったのだと思う。

そこにシマケンが現れる。

シマケンはりんに、今日だけではなくもっと長く休めないのかと心配する。

りんは、この家の大黒柱だからそういうわけにはいかないと答える。

ここが、りんが休めない理由なのだろう。

りんは母であり、一ノ瀬家の大黒柱である。

自分が働かなければ家族を支えられない。

だから、弱音を吐けない。

大丈夫ではないと言えない。

シマケンは、りんの気持ちを軽くしたいのだと思う。

りんがシマケンの書評を褒めると、シマケンはりんを書評のように評価し始める。

書評のような言葉でありながら、りん自身の本質を見抜くような言葉だった。

りんは涙をこらえる。

シマケンは、りんを心配するあまり声が大きくなる。

それをけんかと勘違いした環が部屋に入ってくる。

けんかなどしていないと謝るりんとシマケン。

りんは「何でもない」と言う。

しかし環は、「何でもない時、お母さんは、そういう顔しない」と鋭く突っ込む。

この環の言葉がとても良かった。

環はまだ小さい。

でも、お母さんであるりんの表情をずっと見てきたのだと思う。

夜遅くに帰ってきた時。

疲れているのに料理をする時。

着物を畳む時。

環が泣いた時。

りんがどういう顔でいるのかを、環は見逃していなかった。

りんは、周囲に心配をかけないように笑っているつもりだったのだろう。

でも、子どもは見ている。

母親の「大丈夫」が本当ではないことを、環はちゃんと分かっている。

環に「大丈夫……?」と聞かれ、りんは涙がこらえきれなくなる。

それでも「大丈夫、大丈夫」と答える。

この「大丈夫」は、もうほとんど自分に言い聞かせている言葉のように聞こえた。

シマケンは、自分がお母さんに変なことを言ったせいなんだと、環を安心させようとする。

りんが「おなかが痛いの」と言うと、環は「お医者さん呼ぶ?」と心配する。

看護婦だから分かる。休んだら治る。

りんはそう言う。

環は、りんの帯の上からお腹に手を当てる。

そして、シマケンさんもと、シマケンの手を取り、りんのお腹に持っていく。

りんは「大黒柱も悪くないです」と泣き笑う。

この場面は少し温かかった。

環もシマケンも、りんを心配している。

りんは一人で家を支えなければならないと思っている。

でも、実際にはりんの周りには、りんを支えようとする人たちがいる。

ただ、それでもりんはまだ「大丈夫」と言い続けている。

そこが危うい。

そして、宇野の病状が急変する。

フユが先生を呼びに行ったため、直美とりんが宇野の処置を行うことになる。

直美は、りんに宇野の脈を取れと指示する。

しかしりんは、うまくできない。

直美は「脈は私が」と、りんに交代を命じる。

さらに直美は、宇野の服を脱がせてと指示する。

しかし、りんは呆然と立ち尽くす。

今井とフユが病室にやってくる。

直美はフユに、宇野の服を脱がすようお願いする。

今井は聴診器で胸の音を聞き、気胸かもしれないと診断し、処置室に運ぶよう指示する。

直美とフユはテキパキと動く。

一方で、りんは一歩も動けない。

ここはもう、決定的だった。

りんは看護婦として現場に立てる状態ではない。

本人にやる気があるかどうかの問題ではない。

頑張るかどうかの問題でもない。

命に関わる場面で動けない。

患者の脈も取れない。

服を脱がせることもできない。

これは、患者にとって危険である。

りんにとっても危険である。

詰所では、落ち込むりんをトメ(原嶋凛)と多江(生田絵梨花)が励ましている。

どういうことか分からないけれど、少し休めばまたできるようになるでしょ。

二人はそう励ます。

トメと多江の気持ちは分かる。

りんを責めたくない。

事情があるのだろうと察して、寄り添いたい。

でも、それだけでは現場は回らない。

手術を終えた直美が詰所に入ってくる。

宇野の手術は無事に終わったと報告する。

そして、毅然とした表情で言う。

「りん。看護婦、辞めな。」

この一言は強かった。

トメと多江は、何があったか知らないけれど、りんだって好きで手が震えているわけではないと同情する。

それに対して直美は、はっきり言う。

「りんの事情は、患者さんには関係ない。外科看護婦取締として、今のりんには看護婦として働いてもらうわけにはいきません。」

これは至極当然の判断だったと思う。

りんの苦しみは本物である。

りんは好きで動けなくなっているわけではない。

山本の死がトラウマになり、体が動かなくなっている。

それは責めるべきことではない。

でも、患者には関係ない。

患者は、りんの事情を背負うために病院に来ているわけではない。

命を預かる現場で、看護婦が動けないことは許されない。

直美は友人としてりんを支えたい。

でも今の直美は、外科の看護婦取締でもある。

患者を守る責任がある。

その立場からすれば、今のりんを看護婦として働かせるわけにはいかない。

これは冷たい宣告ではない。

むしろ、これ以上誰も傷つかないために、直美だけが言えた言葉だったのだと思う。

病院側は、今すぐりんを処分しない。

通常勤務を命じる。

渡辺は、りんが自ら辞職を申し出るのを待っているようにも見える。

トメと多江は、りんに同情している。

シマケンは心配しているが、具体的に何かできるわけではない。

この状況で、りんを止められるのは直美だけだった。

しかも直美は、大黒柱として稼がなければならないりんの事情も知っている。

だからこそ、捨松に何かをお願いした上で、「辞めな」と言ったのではないか。

ただ突き放したのではなく、りんが看護婦を離れても生きていける道を探そうとしているのではないかと思う。

昨日、トヨは直美に「いい人に出会ったねえ」と言った。

それは、直美がりんに出会えたことを言っていたのだと思う。

でも今回を見ると、いい人に出会えたのは、むしろりんの方だったのではないかと思えてくる。

直美は、りんにとって本当に大きな存在である。

優しく寄り添うだけではない。

必要な時には、嫌われるかもしれない言葉も言える。

それができるのは、直美だけなのだと思う。

環はりんの「大丈夫」を見抜いていた

環は小さい子どもだが、りんの表情をよく見ている。

「何でもない時、お母さんは、そういう顔しない。」

この言葉はかなり鋭かった。

りんは、家族に心配をかけないように笑っているつもりだったのだろう。

でも環は、その笑顔が本物ではないことを知っている。

夜遅く帰ってきた時も、疲れているのに料理をする時も、着物を畳む時も、環が泣いた時も、りんは同じように笑っていた。

環にまで心配されるほど、今のりんは周囲に負の空気を出しているのだと思う。

それでもりんは「大丈夫」と言う。

その「大丈夫」が、今はとても危うい。

りんが頑張るほど、周囲が振り回されている

りんは一家の大黒柱である。

だから簡単に休めない。

大丈夫ではないとは言えない。

その気持ちは分かる。

でも、りんが大丈夫だと頑張れば頑張るほど、周囲が振り回されている。

直美はりんの様子を見続けなければならない。

フユも現場で助け船を出さなければならない。

トメや多江も心配する。

環も母の異変を感じ取る。

シマケンも放っておけない。

どこかで、りんが「大丈夫ではない」と言えれば楽になるのかもしれない。

でも、りんはそれができない。

だからこそ、直美が強制的に止めるしかなかったのだと思う。

直美の「看護婦、辞めな」は冷たい言葉ではない

直美の「看護婦、辞めな」は、かなり厳しい言葉だった。

でも、冷たい言葉ではなかったと思う。

りんの事情は患者には関係ない。

この言葉は厳しいが、正しい。

患者の命を預かる現場で、りんが動けないまま働き続けることはできない。

もう一人誰かを危険にさらしてしまったら、りんにとっても病院にとっても取り返しがつかない。

直美は友人としてではなく、外科看護婦取締として判断した。

そして同時に、友人としてりんを守ろうとしたのだと思う。

捨松への相談は、りんを助けるための根回しなのか

直美が捨松のもとへ行き、何かをお願いしていた場面が気になる。

直美は、りんに看護婦を辞めろと言う前に、何らかの道を作ろうとしていたのではないか。

りんには大黒柱として稼がなければならない事情がある。

ただ看護婦を辞めさせるだけでは、生活が成り立たなくなる。

だから捨松に何かを頼んだのではないか。

要所要所で、捨松はりんたちを助けてくれる存在である。

普通の人がこんな偉い人に助けてもらえることはそうそうないだろうが、直美にとってもりんにとっても、捨松に出会えたことはかなり大きい。

バーンズ先生の教育は本当に十分だったのか

もし、りんが本当に看護婦を辞めることになれば、梅岡看護婦養成所の一期生の半分以上が看護婦ではなくなることになる。

これはなかなか重い。

もちろん、看護婦という職業がまだできたばかりで、現場も制度も未熟だった。

だから仕方ない面もある。

それでも、バーンズ先生の教育は本当に十分だったのだろうかという疑問も出てくる。

シーツ交換や換気の仕方だけではなく、末期の患者との関わり方、死に直面した時の心構え、患者の願いと医療者の責任がぶつかった時の考え方。

そういうものを、もっと教える必要があったのではないか。

ゆきが退学を決めた時点でも、看護婦が人の死にどう向き合うのかを教える機会はあったはずだ。

りんがここまで崩れているのを見ると、看護婦を育てることの難しさを改めて感じる。

今のところ直美の評価がどんどん上がっている

このドラマは、りんと直美のダブル主演のバディ物である。

ただ、ここ最近は回を追うごとに、りんの危うさが目立ち、直美の評価が上がっているように見える。

直美はうそをつくし、不器用で雑なところもある。

でも、状況を見て判断できる。

患者を守ることもできる。

友人を支えることもできる。

嫌われるかもしれない決断もできる。

今の直美は、本当に頼りになる。

ここから、りんの巻き返しはあるのだろうか。

まとめ

第74回は、りんが本当に看護婦として働けない状態になっていることがはっきり描かれた回だった。

りんは何度も「大丈夫」と言うが、患者の急変時に動けない以上、もう大丈夫ではない。

直美の「看護婦、辞めな」は厳しい言葉だったが、冷たい宣告ではなく、りんと患者を守るための判断だったと思う。

暗い展開が続くが、直美が捨松に何を頼んだのか、そしてりんがここからどう立ち直るのかが気になる。

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