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2026年7月10日放送の『風、薫る』第75回は、直美(上坂樹里)に「看護婦、辞めな」と言われたりん(見上愛)が、看護婦を辞めた後にどう生きていくのかという現実に直面する回だった。
りんは今の自分には看護婦はできないし、やるべきではないと分かっている。
けれど、看護婦を辞めれば生きていけない。
環(英茉)を女学校へ通わせたい。美津(水野美紀)との暮らしも支えなければならない。大黒柱として働かなければならない。
看護婦はできない。でも給金の低い仕事では困る。家族と離れるのも嫌だ。
りんの苦しさは分かる。けれど、どうしても少しわがままに見えてしまう面もあった。何かを選ぶということは、何かを諦めることでもある。今回はその厳しい現実が、りんに突きつけられた回だった。
前回の記事はこちらです。

第75回のポイント
- 直美はりんに、「辞めていいよ。看護婦」と告げる。
- りんは、自分が働かなければ環も美津も生きていけないと訴える。
- 捨松(多部未華子)は夫の大山巌(高嶋政宏)の名を借り、りんのために新しい仕事を探していた。
- シマケン(佐野晶哉)は、書評で稼ぎ、りんのために「細い大黒柱」になろうとしている。
- 槇村太一(林裕太)は、シマケンに小説を本当に諦められるのかと問いかける。
- りんは瑞穂屋を訪ね、卯三郎(坂東彌十郎)に働かせてほしいと頼む。
- 卯三郎は、環を女学校へ通わせられるほどの給金は払えないと説明し、りんは引き下がる。
- 捨松はりんに、新潟・上越の女学校の寮の舎監の仕事を紹介する。
- 舎監の仕事は住み込みで、食事と住まい付きだが、りん一人で行かなければならない。
- 捨松の帰りを、外で直美が待っていた。
- 直美はりんを突き放しただけではなく、次の仕事を探すために捨松へ頼んでいた。
個人的に印象に残ったこと
今回まず印象に残ったのは、前回の続きで、直美がりんに「看護婦、辞めな」と告げた場面だった。
りんは「私はクビってこと?」と確認する。
直美は、自分にはそんな力はないと答える。
ただ、りんは誠実に看護できていると思うのかと問う。
りんは否定できない。
ここはつらい場面だった。
りんは悪気があって看護できなくなっているわけではない。
山本の死が傷になり、体が動かなくなっている。
本人も苦しい。
でも、患者にはりんの事情は関係ない。
直美はそのことを前回はっきり言った。
今回はさらに、「辞めていいよ。看護婦」と言う。
この「辞めていいよ」は、突き放すようでいて、りんを縛っているものをほどこうとする言葉にも聞こえた。
りんは、自分が看護婦を続けなければならないと思い込んでいる。
家族を養うため。
環を育てるため。
美津と暮らしていくため。
大黒柱だから。
でも、今のりんは看護婦として働ける状態ではない。
だから直美は、「辞めていい」と言ったのだと思う。
しかし、りんはそれでは生きていけないと言う。
直美が一番知っているでしょう。私が働かなきゃ、環も母上も生きていけない。
りんはそう言い残し、詰所を出ていく。
直美も動揺したのか、目が泳いでいる。
あんなふうに言わなくてもと言うトメ(原嶋凛)。
一方で、多江(生田絵梨花)は、あんなふうに言わなきゃ、りんさん辞められないと理解を示す。
多江の見方はかなり正しいと思う。
直美だって、好きであんな言い方をしたわけではない。
りんに優しく言っても、りんは「大丈夫」「頑張る」と言ってしまう。
だから、あえて強く言うしかなかった。
直美の目からも涙がこぼれる。
ここで、直美の厳しさが冷たさではないことがよく分かった。
次に描かれたのは、捨松と夫の大山巌の会話だった。
捨松は、巌が紹介してくれた話をしに出かけていたという。
まだまだこの国では、女の生きる道は限られていて。
捨松はそう嘆く。
そして、また巌の名を借りたことを謝る。
しかし巌は、自分の名など減るものではない、好きなだけ使えばいいと言う。
自分も鹿鳴館ではさんざん捨松の力を借りた。
だからお互い様という雰囲気だった。
この夫婦の関係は良かった。
捨松は、自分の立場や夫の名前を使って、女性たちの道を広げようとしている。
もちろん、捨松がりんや直美を助けていることは善意でもある。
ただ同時に、捨松にとっては、自分の夢や理想を実現するために、りんや直美を必要としている面もあるのだろう。
それでも、実際に助けてくれる人がいるのは大きい。
りんも直美も、困った時に捨松のような大物に頼れるのは、かなり恵まれていると思う。
一方、シマケンは槇村太一が差し入れてくれた弁当も食べず、書評を書き続けている。
これが終わったら、お前のところの書評も書くから。
シマケンは太一にそう言う。
太一は、俺に気づかいはやめてくれと返す。
シマケンは、俺が書きたいんだと答える。
そして太一は核心を突く。
「小説やめるのか?」
シマケンは、今は稼ぎたいんだと答える。
りんが看護婦をしているのが苦しそうだ。
でも、りんは辞められない。
だから自分が書評で稼いで、細い大黒柱くらいになれれば、りんは無理しなくてもいいはずだ。
シマケンはそう思い込んでいる。
ここは、かなりシマケンらしいが、少し気持ち悪さもある。
りんに頼まれたわけではない。
りんとそういう関係になったわけでもない。
それでも勝手に、りんのために大黒柱になろうとしている。
どうしようもなく、りんが好きなのだろう。
ただ、太一は冷静だった。
人のことは分かるのに、自分のことは分からないから評論に向いているのかもな。
そう言う。
そして、りんに細い大黒柱になってくれと頼まれたのか、もうそんな仲なのかと確認する。
シマケンは、それは違うけど、もし断られたらそれはその時と答える。
太一はさらに問いかける。
もし、りんが受け入れたとして、りんのために小説を本当に諦められるのか。
お前自身が納得できるものがまだ一作も書けていないだろう。
「人のために自分を諦められるような人じゃないよ。諦められるほど、まだ何もしていない。」
太一の言葉は厳しい。
一見すると、とても美しい言葉にも聞こえる。
でも、少し引っかかるところもあった。
シマケンは渾身の自信作として「浮世の翼」を書き上げ、りんに一番に読んでもらった。
りんは面白かったと褒めていた。
しかし、綿貫(小松和重)にはあまり評価されなかった。
自分は、あれがシマケンにとって納得できる一作だったのではないかと思っていた。
それなのに、太一は「まだ何もしていない」と言う。
シマケンが頑張って書き上げた「浮世の翼」は、「まだ何もしていない」の一言で片づけられてしまうのだろうか。
シマケンは小説を諦めたというより、「浮世の翼」が認められなかったことで、小説家の道に見切りをつけ始めたようにも見えていた。
今は稼ぎたいという理由の裏には、夢が折れかけている現実もあるのではないかと思う。
一方、りんは呆然と歩いている。
丸山に声をかけられても気づかず、歩き続ける。
瑞穂屋の前で美津と環の声を聞き、隠れるりん。
その後、りんは文(内田慈)に姿を見せる。
そして卯三郎の机の前で、「お願いします。働かせてください」と頭を下げる。
りんは看護婦を辞めた後の仕事を探そうとしているのだろう。
しかし卯三郎は即座に断る。
卯三郎は、自分があてがうことができる仕事は、環を女学校へやれるほどの給金を払えるものではないが、それでも構わないのかと確認する。
りんは「考えが足らず、失礼いたしました」と頭を下げる。
そして引き下がる。
ここで少し分からなくなった。
りんの最優先事項は「生きていくこと」なのか。
それとも「環を女学校に入れること」なのか。
りんは直美に、自分が働かなければ環も美津も生きていけないと言っていた。
だから、生きていくための収入が必要なのだと思っていた。
でも卯三郎から、環を女学校に通わせられるほどの給金は払えないと言われると、りんはあっさり引き下がる。
生きていくだけなら、美津が瑞穂屋で働いている給金と、りんが卯三郎から紹介される低めの給金で、何とかできる可能性はあるのではないか。
それでも引き下がったということは、りんは単に食べていくだけではなく、環を女学校に通わせられるだけの収入を必要としているのだろう。
この時代、女の生きる道は限られている。
だからこそ、りんは環に教育を受けさせたいのだと思う。
その気持ちは分かる。
ただ、今のりんは、看護婦はできない、でも看護婦と遜色ない給金は必要、家族とも離れたくないという状態になっている。
それはかなり厳しい。
卯三郎に頼めば何とかしてくれるという考えが、少し透けて見えるようにも感じた。
卯三郎は慈善事業をしているわけではない。
りんが看護婦になる時には、卯三郎にも何らかのリターンがあると判断したのかもしれない。
でも、看護婦ではなくなったりんに仕事をあてがっても、卯三郎にリターンはない。
文が、何で今度は駄目なのかと聞くと、卯三郎は「慈善事業ではありませんからねえ」と答える。
冷たいようだが、これも現実だと思う。
卯三郎はりんのためだけに動く人ではない。
その後、りんの家には捨松が来ている。
看護服のまま帰ってきたりんを見て、捨松はいつも看護服のままなのかを気にする。
りんは、今日は看護婦を辞めるように言われて、それでこのまま帰ってきたと説明する。
美津は驚いた表情を見せる。
環も「お母さん、看護婦辞めちゃうの?」と気にする。
美津は、環にあっちに行きましょうと言い、隣の部屋へ移る。
ここで美津がすぐ環を離したのは良かった。
環には、りんの動揺をそのまま背負わせないようにしたのだと思う。
捨松は、りんにどうするつもりなのかと問う。
りんは、今の自分には看護婦はできないし、やるべきではない、怖くなってしまったと答える。
捨松は「命が怖くなった?」と聞く。
りんは頷く。
この表現はとてもはっきりしていた。
りんは患者が怖くなったわけではない。
仕事が嫌になっただけでもない。
命が怖くなった。
山本の死を前にして、命を預かることの重さが、りんの中で耐えられないものになってしまったのだと思う。
りんは、本当に申し訳ありませんと頭を下げる。
捨松は、それならば場所を替えてみてはどうですかと提案する。
そして、女学校の寮の舎監を引き受けてほしいという話をする。
りんの状況を聞いて心配していたところに、ちょうど舎監を探しているという知人の話があったので、機を逃すまいと急いで訪ねたという。
「誰からかは、お察しのとおりです。」
捨松はそう言う。
これは、直美のことだろう。
直美が捨松に、りんの次の仕事が何かないかとお願いしたのだと思う。
そして仕事の話自体は、大山巌の紹介だったのだろう。
捨松は条件面を説明する。
給金は今より少し減る。
ただし、食事と住まい付き。
しかし、住み込みは舎監一人のみというのが先方の条件だった。
りんは、自分一人だけという条件に戸惑う。
場所を確認すると、新潟の上越だと言われる。
家族と離れて、一人で新潟に行かなければならない。
これはかなり大きい。
捨松は、悩むのは分かりますと理解を示す。
りんは、家族と離れるのはもう……と言う。
そこへ、美津が隣の部屋から出てくる。
家族でゆっくり話してお返事したい、少し時間がほしいとお願いする。
捨松は、よく考えてみてくださいと言って、りんの家を出る。
りんの状況は、かなり詰んでいるように見える。
看護婦はできない。
でも給金が少ないのは困る。
家族と離れるのも嫌だ。
新潟の舎監なら生活はできるかもしれないが、一人で行かなければならない。
何かを諦める覚悟がないと、かなり厳しい。
りんの苦しみは分かる。
でも、どうしてもわがままに見えてしまう面もある。
あれもほしい、これもほしいは難しい。
生きていく上では、何かを諦めなければならないこともある。
捨松が家を出ると、外では直美が待っていた。
捨松は直美に、新潟の仕事しか見つからなくてと謝る。
直美は、本当にありがとうございましたと感謝する。
そして捨松は、「直美さんも、つらかったわね」と労う。
ここで、直美がりんのために動いていたことがはっきりした。
直美は、りんに厳しい言葉を浴びせただけではない。
きちんと、りんが看護婦を辞めた後の道を探そうとしていた。
この時代、女性が生きる道は限られている。
だからこそ、直美は捨松に頼んだ。
りんを見捨てない。
そこが直美らしいと思う。
直美はみなしごで、親に見捨てられたような人生を背負っている。
だからこそ、自分はりんを見捨てないのかもしれない。
捨松に頭を下げて見送り、直美が振り返ると、家の前ではりんが待っていた。
ここで今週の放送は終わる。
りんは、直美が自分のために動いてくれていたことを知ったのだろうか。
次回、りんと直美がどんな話をするのかが気になる。
新たな仕事の紹介をしに、りんを訪ねた捨松。
住み込みで一人のみという条件で、場所は新潟の上越。
引き受ければ家族と離れることになるようです……👇りんの様子を捨松に教えたのは……https://t.co/oVCFPrAvlx#朝ドラ #風薫る
見上愛 多部未華子 pic.twitter.com/e1EvalgUar— 朝ドラ「風、薫る」公式 (@asadora_nhk) July 9, 2026
りんは何を最優先にしたいのか
今回のりんを見ていると、最優先事項が少し分からなくなった。
看護婦はできない。
でも働かなければ生きていけない。
環を女学校へ通わせたい。
美津とも環とも離れたくない。
それぞれの気持ちは分かる。
でも、全部を同時に叶えるのは難しい。
卯三郎に紹介できる仕事では、環を女学校へ通わせられるほどの給金は払えないと言われたりんは、あっさり引き下がった。
生きていくだけではなく、環の教育まで考えているからなのだろう。
ただ、看護婦として働けない以上、何かを諦める必要が出てくる。
環の女学校なのか。
家族と一緒に暮らすことなのか。
今までと同じ給金なのか。
りんは、その選択を迫られている。
卯三郎は慈善事業をしているわけではない
卯三郎は、りんの願いを即座に断った。
冷たく見えるが、卯三郎らしい判断だと思う。
卯三郎は慈善事業をしているわけではない。
りんが看護婦になる時には、何らかの価値を見出したのかもしれない。
しかし、今のりんに仕事をあてがっても、卯三郎にどんなリターンがあるのかは見えにくい。
困った時に卯三郎や捨松のような大物に頼れるりんは、かなり恵まれている。
だからこそ、卯三郎が何でも助けてくれるわけではないという現実も、ちゃんと突きつけられたのだと思う。
捨松は本当に頼りになるが、彼女にも理想がある
捨松は、りんと直美のためによく動いてくれる。
今回も、りんのために新潟の女学校の舎監の仕事を紹介してくれた。
ただ、捨松は単に優しいだけの人ではない。
女の生きる道が限られているこの国で、女性が働き、自立する道を広げたいという理想がある。
その意味では、りんや直美は捨松にとって、自分の理想を実現するために大事な存在でもあるのだろう。
善意だけではなく、理想もある。
それでも、りんに具体的な選択肢を持ってきてくれたことは大きい。
シマケンはりんのために自分を諦められるのか
シマケンは、りんのために書評で稼ぎ、細い大黒柱になろうとしている。
でも、それはりんに頼まれたことではない。
シマケンが勝手に思い込んでいることでもある。
太一が言ったように、人のために自分を諦められるほど、シマケンはまだ何かを成し遂げたわけではないのかもしれない。
ただ、シマケンは「浮世の翼」を書き上げている。
それが綿貫に評価されなかったことで、小説家としての自信が折れかけているようにも見える。
りんのために稼ぎたいという気持ちと、小説から逃げたい気持ち。
その両方が混ざっているのではないか。
シマケンもまた、りんと同じように、何を選び、何を諦めるのかを迫られている。
直美はりんを見捨てない
直美は、りんに厳しい言葉を言った。
「看護婦、辞めな」
「辞めていいよ。看護婦」
かなりきつい言葉だった。
でも、それはりんを突き放すためではなかった。
直美は裏で捨松に頼み、りんの次の仕事を探していた。
りんの事情を一番知っているからこそ、看護婦を辞めろと言うだけでは終わらせなかった。
りんを見捨てない。
そこが直美の強さであり、優しさなのだと思う。
何かを諦めなければならないこともある
りんの苦しみはよく分かる。
看護婦は怖くなった。
でも家族を養わなければならない。
環の将来も考えたい。
家族と離れるのもつらい。
ただ、現実には全部を守ることは難しい。
給金を選べば家族と離れることになるかもしれない。
家族と暮らすことを選べば、給金や環の進学を諦めることになるかもしれない。
生きていく上では、何かを選び、何かを諦めなければならない場面がある。
今のりんは、まさにその苦しさの中にいるのだと思う。
まとめ
第75回は、看護婦を辞めなと言われたりんが、その後どう生きていくのかという現実に直面する回だった。
りんの苦しさは分かる。けれど、看護婦はできない、給金は必要、家族とは離れたくないとなると、どうしても何かを諦めなければならない。
直美はきつい言葉を言ったが、裏では捨松に頼み、りんの次の道を探していた。直美はやはりりんを見捨てていない。
来週は、りんが少しでも苦しみから解放され、明るい方向へ進めるといいと思う。
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