朝ドラ『風、薫る』第65回感想・ネタバレ|ツヤ解雇。善意が止められなかった、起こるべくして起きた事故

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2026年6月27日放送の『風、薫る』第65回は、心配していたことが起こるべくして起こってしまった回だった。

看病婦として働きながら看護科の講義を受け、寝る間を惜しんで勉強を続けていたツヤ(東野絢香)。その無理がついに患者を危険にさらすインシデントにつながり、ツヤは帝都医大病院を解雇されてしまう。

多田院長(筒井道隆)は悪者のように描かれていたかもしれない。けれど、今回に限っていえば、多田が言っていることは概ね間違っていないようにも見えた。

むしろ、ツヤを看護婦にしてあげたいという善意が、誰にもストップをかけさせなかった。その結果として、一番ツヤを傷つける結末になってしまったのかもしれない。

前回の記事はこちらです。

朝ドラ『風、薫る』第64回感想・ネタバレ|頑張りすぎるツヤが心配。看護とは仕事なのか、善意なのか
2026年6月25日放送の『風、薫る』第64回は、看病婦から看護婦を目指すツヤ(東野絢香)の危うさが、かなり強く見えてきた回だった。喜代(菊池亜希子)が久しぶりに帝都医大病院を訪れ、ツヤが看護婦を目指すきっかけが喜代だったことも明かされる。...

第65回のポイント

  • シマケン(佐野晶哉)は、団子屋でりん(見上愛)と環(英茉)に会う。
  • シマケンは新作小説「浮世の翼」をりんに読ませる。
  • 看護科の生徒たちは、りんと直美(上坂樹里)の指導について噂している。
  • ツヤは、生徒たちに「どっちも大事だよ」と伝える。
  • 小川吾郎(甲斐翔真)は、直美に先日の失礼を詫び、自己紹介する。
  • ツヤは今井教授(古川雄大)からの術後の解熱頓服薬の指示を忘れ、患者を発熱させてしまう。
  • 今井は、ツヤに無理がかかっているのではないかとりんに伝える。
  • りんは責任は自分にあると報告してほしいと今井に頼む。
  • 多田院長は、ツヤの解雇を告げる。
  • 直美は、貧しい人が看護婦になってまっとうに生きていく道をどう助けるのかと多田に問う。
  • ツヤは諦めず、どうにかして看護婦になると宣言する。
  • りんは、バーンズ先生が残した本をツヤに譲る。

個人的に印象に残ったこと

今回まず描かれたのは、シマケンとりんの場面だった。

シマケンが団子屋にいると、りんが環を連れてやってくる。

りんは直美に、お団子を買ってきてと頼まれたという。

ここでシマケンは、直美が気を利かせてくれたことに気づいたようだった。

いつも団子屋でりんを待っているシマケンのために、直美がわざとりんを団子屋へ向かわせたのだろう。

直美はこういうところ、本当に分かりやすく世話を焼くようになった。

シマケンは、新しく書き上げた「浮世の翼」という小説をりんに読ませる。

りんは一気に読み上げ、面白かったと伝える。

こんな話を書けるシマケンはすごいと褒める。

シマケンにとっては、かなり嬉しい言葉だったはずだ。

新作を最初に読ませたい人に、無事に読んでもらえた。

よかったな、シマケンと思った。

ただ、団子屋に来た時点ではまだ明るかったように見えたが、読み終える頃には日が傾きかけていた。

その間、環は待たされていたことになる。

小説が面白くて一気に読んでしまったのか。それとも、ここで全部読まなければ、またシマケンがいつまでも待ち伏せしそうだと思ったのか。

どちらなのかは分からないが、シマケンの新作はりんにしっかり届いたのだと思う。

一方、看護科の生徒たちは、りんや直美のことを噂している。

りんは、何でも患者のお願いを聞くやり方では時間がかかって仕方ない。

直美は、時間がもったいないから要領が大事だと言うが、ちょっと雑で後でやり直すこともある。

生徒たちは、りんと直美を足して2で割ればいいと笑い合う。

なかなか正直な評価だった。

確かに、りんは患者に寄り添いすぎるところがある。

直美は合理的で要領は良いが、少し雑に見えるところもある。

どちらも長所であり、短所でもある。

そこでツヤは、どっちも大事だよと教える。

現場に出れば分かることもある。

このツヤの言葉が良かった。

ツヤは講義では苦労している。

でも、現場で働いてきた経験がある。

だから、りんの患者に寄り添う姿勢も、直美の効率を重んじる姿勢も、どちらも大事だと分かる。

この答えに、りんは感動する。

直美は、自分たちだってバーンズ先生の悪口を言っていたのだから、生徒の話を聞いていたっていいことないとりんに告げる。

これも直美らしい。

生徒たちが先生のことをあれこれ言うのは、ある意味自然なことなのだろう。

自分たちもかつてそうだった。

だから、いちいち聞きに行って傷ついても仕方ない。

清(細川岳)のお見舞いに来た小川吾郎は、直美に話しかける。

先日は、看護婦という仕事があるとは知らず失礼したと詫びる。

小川は、「自分は近衛兵第三聯隊二等軍曹小川吾郎であります」と自己紹介する。

それに対して、直美は「本当ですか?」と聞き返す。

直美は以前、軍人のふりをした人に騙された経験がある。

だから、小川が本当に軍人なのか疑ってしまうのも分かる。

小川は、直美の厳しさは自分の上官と同じで、優しさからくるものだと思っているようだった。

直美は、おほめにあずかり光栄ですと言って去っていく。

この二人は、前回ほど険悪ではなかった。

小川も直美の厳しさを少し理解したように見える。

ただ、直美は簡単には気を許さない。

今後もこの二人は、何かとぶつかりながら関係が変わっていくのかもしれない。

そして今回の中心は、やはりツヤのインシデントだった。

ツヤは、今井教授から術後の解熱頓服薬を患者に投与するよう指示されていた。

しかし、その指示を忘れてしまう。

結果として患者は発熱してしまう。

これは重大なインシデントだった。

今井は、ツヤが近頃ぼんやりしていて、聞き違えることがあると他の医師からも聞いていることをりんに伝える。

そして、仕事の合間に看護科の講義を受けていて、無理がかかっているのではないかと心配する。

今井の指摘はもっともだった。

ツヤはこれまでも、明らかに危うい状態だった。

講義中の居眠り。

仕事中のふらつき。

夜遅くまで残って勉強している姿。

どれも、仕事と講義の両立が難しいことを示していた。

それをりんも見ていた。

フユ(猫背椿)も見ていた。

直美も見ていた。

黒川(平埜生成)も、ツヤが講義についていくのに苦労していることに気づいていた。

誰もが、どこかで危うさを感じていたはずだ。

りんは、ツヤの疲労や不安に気づいていたのに、うまく対応できなかったことを悔やむ。

今井が上に報告するというと、りんは二度と起こらないようにするからと、報告を考え直してもらおうとする。

しかし今井は、患者を危機にさらしたのだから報告しないわけにはいかない、病院全体の問題になると正論を返す。

これは今井が正しいと思う。

現場で起きた事故を、個人の頑張りや善意でうやむやにしてはいけない。

患者を危険にさらした以上、報告し、病院全体の問題として扱う必要がある。

りんは、では責任は私にあるとご報告願いますと頼む。

今井は分かったと返事をする。

りんは、ツヤを守りたい一心だったのだと思う。

でも、ここでも少し危うさを感じた。

何かあれば自分が責任を持つ。

この言葉は立派に聞こえる。

けれど、りんが本当に責任を取れるのか。

ツヤが患者を危険にさらした事実を、りんが責任をかぶれば解決する話なのか。

そこは違うように思う。

その後、多田院長に呼び出されるツヤとりん。

多田が告げた結論は、ツヤの解雇だった。

りんは、今回のことは自分の指導不足であって、ツヤのせいではないと訴える。

ツヤは決して力量がないわけではない。

寝る間を惜しんで、ただ必死に頑張ってきただけだ。

りんはそう説明する。

しかし多田は考えを改めない。

ツヤは解雇となった。

ツヤは、申し訳ありませんでしたと頭を下げ、院長室を出ていく。

院長室の外では、直美が待っていた。

ツヤは、解雇となった事実を直美に伝える。

この場面はつらかった。

けれど、心配していたことが起こるべくして起こったという感じでもあった。

ツヤが何か問題を起こしそうなことは、十分すぎるほど予見できた。

講義中に眠っていた。

仕事中にふらついていた。

寝ずに勉強していた。

それでも、誰も止めなかった。

ツヤのためには、看護婦になれるように応援したい。

その善意が、結果としてツヤを追い込んでしまったように見える。

今回、多田院長が一方的に悪者のように見えるかもしれない。

でも、多田もおかしなことばかり言っているわけではない。

看病婦が講義を受けられる特例を最終的に認めたのは多田だから、全く責任がないとは言えない。

ただ、少なくとも多田は、黒川に看護科の様子を確認していた。

その時、黒川はすでにツヤが講義についてこられていないことに気づいていたはずだ。

しかし黒川は、特に問題はありませんと答えた。

黒川の善意だったのだと思う。

ツヤの頑張りをつぶしたくなかった。

でも、もしあの時、看病婦が講義を受けることは難しいかもしれませんと正直に伝えていたら、事情は変わっていたかもしれない。

りんも同じである。

ツヤが講義中に居眠りしていることを見ていた。

寝ずに無理して勉強していることも知っていた。

フユも、ツヤが仕事中に倒れそうになっていたことを見ていた。

でも誰もが、ツヤを看護婦にしてあげたいという一心で、ストップをかけられなかった。

どこかで誰かが立ち止まらせれば、防げたインシデントだったかもしれない。

しかし誰もそれをしなかった。

結果として、最悪の結論である解雇となってしまった。

院長室の中では、りんがまだ多田に食い下がる。

このまま勉強を続ければ、ツヤは必ずいい看護婦になります。

ツヤが看護婦になれれば、他の看病婦だって。

りんはそう訴える。

ただ、この言葉にも少し引っかかった。

りん自身、まだ看護婦になって日が浅い。

看護とは何かと自問自答している日々である。

それなのに、どうしてこのまま勉強を続けていれば「必ずいい看護婦」になれると約束できるのか。

りんの言葉は、時々その場しのぎで薄っぺらく聞こえることがある。

何かあれば自分が責任を取る。

必ずいい看護婦になれる。

そう言いたくなる気持ちは分かる。

でも、言葉だけでは患者の安全もツヤの人生も守れない。

多田は、病院としては看病婦を減らしていく方針だと率直に説明する。

そもそも看護婦が生まれたことで、こうなることは分かっていたことではありませんか。

患者のためには、新しい知識を持ったトレインドナースの方がいい。

もちろん今後も、看病婦から看護婦になる道は開いていくつもりだ。

多田の言葉は冷たく聞こえる。

でも、現実を見ている言葉でもある。

看護婦という新しい職業が確立されれば、看病婦の立場は変わる。

それは前から分かっていたことなのだ。

そこへ直美が反論する。

それは形だけで、できるわけのない条件をつけている。

半額の受講料であっても、看病婦にとってはなけなしのお金である。

お給金が減るから、仕事量も減らせなかった。

貧しい人が看護婦になってまっとうに生きていこうとするのを、どうやったら助けられるのか。

直美の言葉も分かる。

ツヤのように貧しい人が、看護婦になって自分の人生を切り開こうとしている。

その道が、実質的には狭すぎる。

制度として道はあると言っても、お金や時間がなければ通れない道になっている。

それは形だけではないか。

直美の怒りは当然だと思う。

ただ、多田が返した言葉も、これまた現実だった。

直美の言う看病婦の問題の根底にあるのは貧困であり、それは社会の仕組みを変えるしかない。

大学病院の仕事ではない。

あなた方は帝都医大病院の看護婦取締としてふさわしい仕事をしてください。

ここも、悔しいが多田の言っていることは一理あると思う。

大学病院として奨学金制度を作るという形は考えられるかもしれない。

でも、貧しい人が教育を受け、専門職になれるようにするにはどうすればいいかという問題は、病院だけで解決できる話ではない。

それは社会の仕組みや政治の話でもある。

多田院長は悪者のように描かれている気がするが、今回は一番現実を見ている人かもしれないと思った。

その後、りんはツヤに、何の力にもなれなかったと謝る。

ツヤは、一つの間違いも許されない仕事なのに、間違いをした自分が悪いと言う。

そこへヒデが、一ノ瀬先生も間違えたんじゃないですかとりんを責める。

ツヤのことを助けられたのは、りんだけだったのに。

ヒデの言葉は厳しかった。

でも、間違ってはいない。

りんはその通りだと認め、自分は間違えてしまったと謝罪する。

今回、りんは看護婦取締として、ツヤを守ることも、止めることもできなかった。

応援することはできた。

本を貸すこともできた。

励ますこともできた。

でも、ツヤが限界に来ていることを見て、立ち止まらせることはできなかった。

その意味で、りんは間違えたのだと思う。

ツヤは、諦めないと言う。

勉強を続けて、どうにかして看護婦になると宣言する。

そして、「だって、一ノ瀬さんたちより、長く、ここで働いてきたんですから」と言う。

この言葉には、ツヤの最後のプライドが感じられた。

自分は特例で講義を受けさせてもらっただけの人間ではない。

ここで長く働いてきた。

現場を知っている。

看病婦として患者に向き合ってきた。

その誇りが、この言葉に込められていたと思う。

特例で講義に参加することを認めてもらうより、堂々と正規の入試を突破して看護婦になってもらいたい。

そんな気持ちにもなった。

貧しい人でも看護婦になれる道を作るためには、やはり梅岡看護婦養成所のような場所が必要だったのではないか。

直美だって、りんだって、お金に困ってはいたけれど看護婦にはなれた。

だったら、ツヤに必要なのは、帝都医大の特例受講ではなく、梅岡看護婦養成所のような場所だったのかもしれない。

りんは、バーンズ先生が残していった本をツヤに譲る。

全部英語で書かれている本を見て、ツヤは「頑張ります……!ありがとうございました!」と涙をこらえながら言う。

つらい場面だった。

ツヤは解雇された。

でも、看護婦になることを諦めてはいない。

ただ、その道は本当に険しい。

真風(研ナオコ)が言っていた、「気をつけるんだよ。間違いが正しくて、正しいが間違いのことがある」という言葉は、このツヤに対する一連の行動のことだったのだろうか。

ツヤを応援することは正しいように見えた。

でも、無理を止めないことは間違いだった。

厳しく止めることは冷たく見えたかもしれない。

でも、それが正しかったのかもしれない。

今回の出来事を見ると、あの言葉がかなり重く響く。

ツヤの事故は、起こるべくして起こった

ツヤが患者を危険にさらすインシデントを起こしてしまった。

これは突然の事故というより、起こるべくして起こったことに見えた。

講義中の居眠り。

仕事中のふらつき。

寝ずに勉強している状態。

どれも、ツヤが限界に近いことを示していた。

それでも、周囲はツヤを止めなかった。

看護婦になりたいというツヤの気持ちを応援したい。

その善意が、誰にもブレーキを踏ませなかった。

結果として、ツヤは患者を危険にさらし、解雇されてしまった。

どこかで誰かが止めていれば、防げたことだったのかもしれない。

多田院長は、本当に悪者だったのか

今回、多田院長は冷たい人のように見えた。

ツヤを解雇し、看病婦を減らす方針をはっきり語り、貧困問題は大学病院の仕事ではないと言った。

ただ、言っていること自体は、概ね現実的だったと思う。

患者を危険にさらした以上、病院として処分しないわけにはいかない。

看護婦が生まれたことで、看病婦の立場が変わることも避けられない。

貧困の問題を大学病院だけで解決するのも難しい。

多田院長は悪者のように描かれているかもしれないが、一番現実を見ている人なのかもしれない。

りんの言葉は、時々その場しのぎに聞こえる

りんは、ツヤに何かあれば自分が責任を持つと言った。

今回も、責任は自分にあると報告してほしいと今井に頼んだ。

さらに、ツヤはこのまま勉強を続ければ必ずいい看護婦になるとも言った。

りんの気持ちは分かる。

でも、言葉が少し軽く聞こえる時がある。

自分が責任を取ると言っても、患者を危険にさらした事実は消えない。

必ずいい看護婦になると言っても、りん自身がまだ看護とは何かを問い続けている段階である。

りんは善意で動いている。

でも、その善意が本当に相手を救うとは限らない。

今回、りん自身もそのことを痛感したのではないかと思う。

直美の怒りは分かるが、多田に問うには大きすぎる問題だった

直美は、貧しい人が看護婦になってまっとうに生きていくにはどうすればいいのかと多田に問うた。

直美の怒りはよく分かる。

ツヤのように貧しい人が、働きながら学ぶしかない状態で、受講料も払わなければならず、仕事量を減らせば給金も減る。

これでは、道があるようで実際にはないに等しい。

ただ、その問題は多田一人に答えを求めるには大きすぎる。

大学病院が奨学金を作ることはできるかもしれない。

でも、貧困の中にいる人が教育を受け、専門職として生きていく道をどう作るかは、社会全体の問題でもある。

直美の問いは正しい。

でも、多田にぶつけても解決しきれない問いだったのだと思う。

ツヤの最後のプライドが切なかった

ツヤが言った、「一ノ瀬さんたちより、長く、ここで働いてきたんですから」という言葉は重かった。

ツヤは看病婦として、帝都医大病院で長く働いてきた。

りんたちよりも前から、現場で患者を見てきた。

だからこそ、看護婦になりたい。

その思いには、看病婦としての誇りもあったのだと思う。

特例で講義を受けさせてもらうのではなく、正規の道で看護婦になれる場所があればよかった。

やはり、梅岡看護婦養成所のような場所が残っていれば、ツヤにとっては別の道があったのかもしれない。

まとめ

第65回は、ツヤが患者を危険にさらすインシデントを起こし、解雇されてしまう重い回だった。

多田院長だけが悪いというより、ツヤを看護婦にしてあげたいという周囲の善意が、結果として一番ツヤを傷つけてしまったように見える。

りんも、直美も、黒川も、フユも、どこかで止められたかもしれない。

ツヤは諦めないと言ったが、その道はかなり険しい。真風の「間違いが正しくて、正しいが間違いのことがある」という言葉が、ここで重く響いた。

『風、薫る』感想まとめはこちら

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