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2026年6月4日放送の『風、薫る』第49回は、りん(見上愛)と直美(上坂樹里)が外科実習を終え、内科実習へ移る回だった。
外科ではフユ(猫背椿)やヨシ(明星真由美)との関係にも変化があり、少し名残惜しさもある移動だった。ところが、内科に入った途端、服毒心中の男女が運び込まれ、しかもその女郎が「夕凪」だと分かる。
直美が探していた母親かもしれない人物が、目の前に患者として現れる。さすがに都合が良すぎるようにも思うが、ドラマとしてはここで直美の出自の問題を一気に進める必要があったのだろう。
男と女郎の心中騒動から、直美の母親探しへ。かなり重たい過去を持つ人物たちが、また一人、物語の中心に入ってきた回だった。
前回の記事はこちらです。

第49回のポイント
- 実習開始から4か月が経ち、りんと直美は外科実習を終えて内科実習へ移る。
- フユは最後まで嫌味を言いつつも、りんと直美との間には以前とは違う空気が流れている。
- 藤田(坂口涼太郎)は直美をデートに誘おうとするが、直美に断られる。
- 内科では、柏原淳之介(小方蒼介)と夕凪(村上穂乃佳)が服毒心中で運び込まれる。
- 木村(前野朋哉)は男性患者の処置を優先し、「女郎は後だ」と言う。
- 直美は女郎への扱いに納得できず、夕凪にも催吐剤を使うよう求める。
- 淳之介は亡くなり、父の弥吉は夕凪に怒りを向ける。
- ヨシは、自分が元やり手婆だったことを明かす。
- 直美は夜通し夕凪を看病し、目の前の女郎が探していた夕凪だと気づく。
個人的に印象に残ったこと
今回まず印象に残ったのは、外科実習を終えるりんと直美に対するフユの言葉だった。
実習を始めて4か月。りんと直美は外科の実習を終え、内科の実習へ移ることになる。
りんがフユに、家事のつもりで、力の入れ方を考えて長く続けられるよう頑張ると伝えるのが良かった。前にフユが言っていた「家事だと思ってやらないと間違えるよ」という言葉を、りんなりに受け止めていたのだと思う。
フユは直美に対して、内科だから不器用でもいいなんてことはないと言い、りんには、仕事には離縁されないようにせいぜい頑張ってと嫌味を言う。
最後まで腹立つ言い方ではある。
でも、りんと直美はその言葉に怒りながらも、笑顔で笑い合っていた。以前なら本気で腹を立てていたかもしれないが、今はもうフユの言葉の奥にあるものも少し分かっているのだろう。
嫌味を言われても、そこに完全な敵意だけがあるわけではないと感じられる関係になっている。外科実習の中で、この二人とフユたちの間には確実に変化があったのだと思う。
その後、黒川(平埜生成)と藤田もやってくる。
藤田は直美をデートに誘おうとしているが、あっさり断られる。昔の直美だったら、帝都医大の助教授と結婚することを「上がり」だと思っていたかもしれない。でも今の直美は、看護婦という仕事で自分自身の力で現状を変えていくつもりなのだろう。
藤田の誘いに乗らないところに、直美の変化が見えた気がする。
一方で、りんは黒川とのやり取りの中で、口のきき方を覚えたほうがいいと苦言を呈される。こちらはこちらで、りんの率直さがまた出ていたのだと思う。
りんと直美が内科の医局に挨拶に行くと、木村は、内科には切ったはったの患者はめったに来ないから、のんびりやってくださいと言う。
外科の緊張感から離れて、少し落ち着いた実習になるのかと思った矢先に、看病婦のワカ(野口聖古)が「大変です」と木村を呼びに来る。
そこで運び込まれてきたのが、柏原淳之介と夕凪だった。
二人は服毒心中を図ったらしく、ヒ素を飲んだ様子だった。男性患者を見た木村は、看病婦に催吐剤を用意するよう指示する。
ここで直美が、女性患者の方はどうすればいいかと聞くと、木村は「女郎は後だ!」と言う。
この一言はかなり重かった。
同じように毒を飲んで運ばれてきた患者なのに、男が先で女郎は後。もちろん、淳之介の方がより危険な状態だった可能性もあるのかもしれない。ただ、あの場面では「女郎」という立場によって命の優先順位が下げられているようにも見えた。
直美が「女郎」という言葉に動揺するのも無理はない。
直美にとって女郎は、探している母親かもしれない夕凪につながる言葉でもある。単なる患者の職業では済まない響きがあったのだと思う。
その場で動揺する直美を、りんが率先して行動しながら引っ張るのも良かった。直美の気持ちが揺れている時に、りんが先に体を動かす。この二人は、だいぶお互いの状態を感じ取れるようになっている。
淳之介の両親である弥吉とカツが入ってきて、淳之介に必死に目を覚ましてと声をかけ、木村にお願いしますと頼み込む。
その一方で、カツは「この女のせいで……!」と倒れている女郎に掴みかかろうとする。
このあたりもかなりつらい場面だった。
息子が心中を図り、命の危機にある。親として怒りや悲しみの持って行き場がなく、女郎に向かってしまうのは分からなくもない。ただ、その女郎もまた毒を飲み、倒れている患者であることに変わりはない。
女郎は後だという木村や坂田(金井勇太)に対して、直美は女郎にも催吐剤をとお願いする。ここで坂田から「やっといて」という言葉を引き出す。
直美の中で、女郎への扱いに納得できないものがあったのだと思う。
それは母親探しと重なっているからなのかもしれないし、単純に患者として扱われていないことへの反発でもあるのだろう。どちらにしても、直美はそこで引かなかった。
女郎は目を覚ます。
しかし、助かったことを喜ぶどころか、「どうして……助けたのよ。余計なことを……。また地獄に戻んなきゃなんない……。だったら、死んだ方が、マシだ……」とつぶやく。
この言葉はかなり重かった。
助けられたことが救いにならない人もいる。生き延びることが、そのまま地獄に戻ることになる人もいる。
25年前から女郎をしていると説明されていた夕凪が、どれくらい若い頃からそういう世界にいたのかは分からない。それでも、長い年月を女郎として生きてきて、本当に死んだ方が楽だと思うほど追い詰められていたのかもしれない。
りんは、女郎に薬を飲ませるよう直美に指示し、自分は先生を呼びに行く。
このりんの判断も良かった。直美が動揺している中で、りんがその場を回している。やはり、この二人はかなりバディ感が強くなってきたと思う。
残念ながら、淳之介は息を引き取る。
泣き崩れるカツ。息子をそそのかしたと女郎に怒り狂う弥吉。
弥吉は、息子が死んだのに女郎は生きているのはどういうことだと坂田に詰め寄り、女郎の病室はどこだと聞き出す。坂田は弥吉の勢いに押され、答えてしまう。
この坂田の対応はかなり危なかった。
怒り狂っている遺族に、相手の病室を教えてしまう。結果的に弥吉は夕凪の病室に入り込むことになる。感情的には弥吉の怒りも分からなくはないが、患者の安全を守るという意味では、止めなければいけなかったと思う。
弥吉が病室に入り込むと、万作(飯尾和樹)が弥吉を病室の外に連れ出す。
そして直美は、弥吉に「そろそろ警察が来るかもしれません」と嘘をつく。りんも、奥様はきっと心細いはずだと弥吉に声をかけ、弥吉は引き下がる。
ここでの直美の嘘は、相変わらず息を吐くように出ていた。
ウソでこの世の中を渡り歩いてきた直美らしいとも言える。ただ、ここまで自然に嘘をつき続けると、直美の発する言葉はすべて嘘なのではないかと思ってしまい、言葉の重みがなくなるかもしれないとも感じる。
もちろん、この場面の嘘は誰かを守るためのものだった。弥吉を刺激しすぎず、夕凪への危害を防ぐためには有効だったと思う。
でも、直美にとって嘘があまりに身近な道具であることも、改めて見えた場面だった。
その後、ヨシが、男と心中未遂を起こした女郎がどうなるかを直美とりんに説明する。
助ける方が酷だということもある。
この現実もかなり重い。
看護する側としては、命を救うことが仕事だと思う。けれど、助かった後に待っている現実があまりにも過酷であれば、助けることが本当に救いなのかという問いが出てくる。
さらにヨシは、自分が女郎を締め上げていた元やり手婆だと告白する。
ここでヨシの過去も一気に気になってきた。
ヨシはただの看病婦ではなかった。女郎の世界を知っているどころか、かつてはその中で女郎を締め上げる側にいた人物だった。
なぜそのヨシが、今は病院で看病婦をしているのか。
女郎の世界を知っているヨシが、直美と夕凪の関係にどう関わってくるのか。
かなり重要な人物になりそうな気配がある。
それでも、りんは「自分たちは看護が仕事なので」と言って、直美の手を引っ張り戻っていく。
この一言も良かった。
助ける方が酷かもしれない。女郎の現実は厳しい。周囲からの扱いもひどい。そういうことを知った上で、それでも今の自分たちの仕事は看護だとりんは言う。
理想論に見えるかもしれないが、現場に戻るためには必要な線引きでもあったと思う。
女郎は「おっかあ……」とうなされている。
直美は、その汗を拭き、頭を撫でる。
この場面は、かなり複雑だった。
直美はまだ、この女郎が夕凪だとは知らない。けれど、女郎という立場や、うなされながら母を呼ぶ姿に、何か感じるものがあったのだろう。
探している母親かもしれない女郎を前に、直美がその女郎の頭を撫でる。この時点では直美に自覚はないが、見ている側としてはかなり意味深な場面だった。
木村が女郎を診察し、今晩を乗り越えられればあとは体力次第だと説明する。何も口にできない上、腹痛、発熱が続く。目を覚ましたら水分を取らせるよう命じ、できることはそれくらいしかないと言って出ていく。
ここでも、医療の限界が出ていたと思う。
できることはそれくらいしかない。命を救う現場であっても、できることは限られている。前回までのゆきの話とも、どこかつながる現実だった。
今晩は自分がついていると、りんと直美は同時に言い出そうとする。
ここでりんが直美の気持ちを察し、自分は明日からに備えておくから今晩は直美に任せると身を引く。直美は、ありがとうと感謝する。
この二人の関係が本当に良かった。
りんは、直美がこの女郎にただならぬものを感じていることを分かっている。詳しい理由までは分からなくても、直美に任せた方がいいと判断している。
直美も、それを受け取って素直にありがとうと言う。
もうこの二人は、かなり以心伝心に近い関係になっていると思う。ますますバディ感が強まっている。
直美は夜通し看病する。
そして女郎が目を覚ます。
「まだ生きてる……。」と嘆き、「これで夕凪の人生終わらせられると思ったのに……。」とつぶやく。
ここで、直美は目の前にいる女郎が、自分の母親かもしれない夕凪だと気づく。
この終わり方はかなり強かった。
男と女郎の心中未遂として始まった話が、一気に直美の出自の問題へつながる。直美が探していた夕凪が、まさか患者として目の前に現れる。都合が良すぎる展開ではあるが、ドラマとしてはかなり引きの強い締め方だった。
内科での実習となったりんと直美。
そこに、夕凪という心中未遂の女郎が運ばれてきました。母の名も“夕凪”かもしれないと聞いた直美ですが……👇https://t.co/pvPvkeXnDx[見逃し配信中]
続きは明日。#村上穂乃佳#朝ドラ #風薫る pic.twitter.com/tnteNQmWUQ— 朝ドラ「風、薫る」公式 (@asadora_nhk) June 3, 2026
直美はもう「結婚が上がり」ではなく、自分の仕事で立とうとしている
藤田が直美をデートに誘おうとして断られる場面は、短いながらも直美の変化が見えた場面だったと思う。
昔の直美なら、帝都医大の助教授と結婚できるなら、それを「上がり」だと思ったかもしれない。実際、直美はこれまで、今の自分の場所からどう抜け出すかをかなり現実的に考えてきた人でもある。
でも今の直美は、看護婦という仕事を通して、自分自身の力で現状を変えていく方向に動いているように見える。
それはまだ本人がはっきり言葉にしているわけではないが、藤田に流されず、自分の目の前の仕事に向かう直美の姿から、少しずつ伝わってきた。
夕凪の「死んだ方がマシ」は、簡単には否定できない重さがあった
夕凪は、助けられたことを喜ばなかった。
むしろ、どうして助けたのか、余計なことをした、また地獄に戻らなければならない、死んだ方がマシだとつぶやいた。
これはかなり重い言葉だった。
看護する側にとっては、命を助けることが第一かもしれない。でも、夕凪にとっては、生き延びることが地獄に戻ることを意味していた。
25年前から女郎をしていたのだとすれば、相当長い時間をその世界で生きてきたことになる。若い頃からずっと抜け出せず、本当に人生を終わらせるしかないと思うところまで来ていたのかもしれない。
直美にとって夕凪は、母親かもしれない人物だ。
しかし、その夕凪は、母としての顔を持つ前に、地獄の中で生きてきた一人の女郎として現れた。この出会い方はかなりつらい。
直美の嘘は人を守るが、言葉の重みを失わせる危うさもある
直美は、怒り狂う弥吉に対して「そろそろ警察が来るかもしれません」と嘘をついた。
この嘘は、夕凪を守るためのものだったと思う。弥吉を遠ざけるためには必要だったのかもしれない。
ただ、直美は本当に息を吐くように嘘をつく。
これまで嘘で世の中を渡り歩いてきた直美にとって、嘘は生きるための道具だったのだろう。それが今は、誰かを守るためにも使われている。
でも、ここまで嘘が自然だと、直美の言葉そのものの重みが薄くなってしまう危うさもある。
嘘をつけることは、直美の強さでもある。同時に、人との信頼関係を難しくするものでもある。このあたりは、夕凪との関係が進んでいく中で、また大きく関わってきそうな気がする。
りんと直美のバディ感がかなり強まっている
今回、りんと直美の関係はかなり良かった。
女郎という言葉に直美が動揺した時、りんが先に動く。夕凪の看病をどちらがするかという場面では、りんが直美の気持ちを察して身を引く。
直美も、りんの判断を受け入れて素直にありがとうと言う。
この二人は、お互いが何を考えているのか、かなり感じ取れるようになっている。言葉で全部説明しなくても分かる。まさに以心伝心に近い。
りんはりんで看護への理想を持ち、直美は直美で現実感覚と複雑な過去を抱えている。タイプは違うが、だからこそ補い合える関係になってきていると思う。
ヨシの過去は、直美と夕凪の関係に大きく関わってきそうだ
ヨシが元やり手婆だったという告白は、かなり大きかった。
これまでヨシは、豪快で手際のいい看病婦という印象が強かった。でも、女郎の世界を知っているどころか、かつて女郎を締め上げる側にいた人物だったとなると、見え方が変わってくる。
どうして今は看病婦をしているのか。
女郎たちを締め上げていた過去を、ヨシ自身はどう受け止めているのか。
そして、夕凪を前にした直美に対して、ヨシはどんな言葉をかけるのか。
ヨシは、直美と夕凪の関係に影響を与えるキーパーソンになるのかもしれない。
まとめ
2026年6月4日放送の『風、薫る』第49回は、りんと直美が内科実習へ移ったところから、服毒心中で運び込まれた女郎・夕凪との出会いへ一気に進んだ回だった。
男と女郎の心中騒動として始まった出来事が、直美の出自の問題に直結する。直美が探していた母親かもしれない夕凪が、患者として目の前に現れるという展開は、さすがに都合が良すぎる気もするが、ドラマ上の演出としてはかなり強い引きだったと思う。
夕凪の「死んだ方がマシ」という言葉には、長く女郎として生きてきた人間の地獄がにじんでいた。助けることが本当に救いなのかという問いもあり、かなり重い内容だった。
また、直美の嘘、りんとのバディ感、ヨシの元やり手婆という過去など、今後につながりそうな要素も多かった。
なかなか重たい過去を持っている人が多そうで、訳アリ人間がたくさん集まってきたかのようなドラマだ。ここから直美と夕凪の関係がどう動いていくのか、かなり気になる。
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