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2026年5月20日放送の『風、薫る』第38回は、りん(見上愛)と直美(上坂樹里)が、これまで積み重ねてきた「観察」や「寄り添い」を、さらにもう一歩先へ進めようとしている回だった。ただし、ここで二人が何らかの完成した答えにたどり着いた、とはまだ思えない。むしろ今回は、患者の気持ちは本人にしか分からない という当たり前だけれど重い事実を受け止めたうえで、それでも看護婦として何ができるのかを手探りで探し始めた段階に見えた。
だから今回の面白さは、「ついに答えが出た」という爽快感ではなく、まだ答えは出ていないけれど、二人が前より少し深い問いに入っていった ところにあるのだと思う。千佳子(仲間由紀恵)への向き合い方も、杉山(内野 謙太)という患者の事情も、直美の出自につながりそうな「夕凪」という名前も、全部が少しずつ次の段階へつながっていく感じがあった。
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第38回のポイント
- りんは千佳子が困っている空気を察し、あえて物音を立てて場を切る。
- 千佳子は「手術は受けたくありません」と明言し、その背景に武家の女としての価値観もにじませる。
- 杉山の「治るだけでは足りない。働ける体に戻りたい」という言葉で、患者ごとに望みが違うことが見えてくる。
- 直美の過去につながりそうな「夕凪」という名が出てきて、寛太(藤原 季節)も再登場する。
個人的に印象に残ったこと
今回まず印象に残ったのは、千佳子の病室で今井益男(古川雄大)が夫の和彦(谷田歩)と息子の行彦(荒井啓志)の前でもう一度病状を説明しようとする場面だった。千佳子は自分の病状が分かっていないわけではないのに、今井はなおも説明を続ける。その時、りんが千佳子の困り方を察して、あえて手に持っているものを落として大きな音を立てる。ここはかなりよかった。りんは正面から割って入るのではなく、でも病室の空気をちゃんと変えた。しかもその後、千佳子がりんに目くばせをするのもよかった。あれは間違いなく「助かった」という合図に見えた。
そのあと、りんが千佳子の病室で畳を拭きながら話しかけ続ける場面もかなり良かった。前回の「奥様のお気持ちは分かります」という失敗を踏まえて、今回は「残念ながら奥様の本当の気持ちは分からない。看護婦見習の他人だから、ご家族のように気を遣う必要もない」と言う。ここは大きかった。無理に分かったふりをしないことで、逆に千佳子が少し本音をこぼせるようになったからだと思う。
そして千佳子が、「手術は受けたくありません。手術を受けて生き長らえたいほど強欲な恥知らずではありません。華族といっても元は武家。武家の女らしく潔く死にます」と言うのは、やはり重かった。これは単純な恐怖やわがままではないのだろうと思う。自分の体がどうなるかという不安だけでなく、「どう振る舞うのが女として恥ではないのか」という価値観そのものを抱えている。だから現代の感覚で「怖いなら怖いと言えばいい」と簡単にはいかないのだろうと思った。
りんが自分も武家の血筋だと伝え、母からは「看護婦になるなど恥を知れ」と言われたが、今では応援してくれていること、この仕事、この手はは多くの人を助けると看護婦養成所で教わったこと、自分はまだまだだけれど奥様の生きる助けになりたいと思っていることを話す流れも良かった。ここでりんは、ただ慰めるのではなく、自分の立場から正直に話している。そのまっすぐさはやはりりんの強みだと思う。
ただ、ここでまだ千佳子が本当の理由を打ち明けないのもよかった。すぐに心を開くのではなく、「ベッドメイクは悪くないから」とシーツ交換だけ任せる。りんを完全には拒まないが、まだ奥へは入れない。その距離感が自然だった。
一方、瑞穂屋では美津(水野美紀)が松原(小倉史也)に的確に指示を出していて、相変わらず現場での強さを見せていた。そこへ槇村太一(林裕太)が兄の宗一(上杉 柊平)とシマケン(佐野晶哉)を連れてきて、さらに環(英茉)と安(早坂美海)もやってくる。正直、今回の看護パートの濃さに比べると少し話が散る感じもあったが、安と宗一の線を少し進めつつ、美津がすぐに宗一のことを探り始めるのは面白かった。美津の勘の鋭さはやはり健在だと思った。
ただ、今回自分が本当に大きいと思ったのは杉山の場面だった。足を痛めながらも鍛えていた理由を聞かれ、「早く退院しても働けないほど他が弱っていては生きていけない」と話す。ここで、怪我が治ることと、その人が元の生活に戻れることは同じではないのだと、かなりはっきり示されたと思う。丸山が望んでいたのは生活音を聞くことだったし、杉山は働けるようになることを望んでいる。患者によってゴールが違う。その違いが見えてきたのはかなり大きかった。
ここで自分が一番気になったのは、りんと直美がこの先どっちの方向へ進もうとしているのか、ということだった。今回の描き方だけを見ると、二人は「患者の気持ちは分からないのだから、それぞれの患者が何を求めているのかをよく観察して、自分で見つけるしかない」という方向へ進みつつあるようにも見える。けれど、まだそこを結論として受け取るには早い気もする。
なぜなら、バーンズ先生の教えは今のところ、患者ごとに柔軟に合わせるというより、むしろ感情を排し、まず合理的に、徹底的に、看護婦としてやるべきことをやれ、という方向にも見えるからだ。りんと直美は、そのバーンズ先生の教えを土台にしつつ、患者の心や事情にも目を向けようとしている。でも、それが最終的に「患者ごとに看護を変える」形へ行くのか、それとも「合理的な看護を基本にしつつ、患者の事情はその中で汲む」形へ落ち着くのかは、まだはっきりしないと思う。
今回の木の場面で、りんと直美が「どうやったって患者と同じ気持ちにはなれない」というところまでは来た。でも、その先にあるのが「だから個別の望みに柔軟に合わせよう」なのか、「だからこそ、こちらはぶれずに看護婦としての役割を徹底しよう」なのかは、まだ分からない。自分としては、そこはまだ保留だと思うし、二人もまだ試行錯誤の途中にいるように見えた。
そして最後に急に大きく動いたのが直美の出自の線だった。通りで「お前は夕凪か?」と声をかけられ、人違いだと否定しつつも気になって話を聞く。夕凪は女郎で、昔少し世話になったことがある女だという。しかも直美に似ているが、もっと年上らしい。ここまで来ると、夕凪が直美の母親である可能性はかなり高そうに見える。さらにその男が入っていった先で、以前直美を騙した詐欺師の寛太が現れ、その男を「先生」と呼ぶ。この先生と呼ばれる男も直美の出自に関係あるのか。ここはかなり不穏だったし、一気に別の物語が動き出しそうな気配があった。
夕凪という女郎と間違えらえた直美。
気になって声をかけてきた男性を追うと、そこには寛太が。👇寛太は何を…?https://t.co/L8a75Youbn
上坂樹里 藤原季節#朝ドラ #風薫る pic.twitter.com/iuK6ggmI3u
— 朝ドラ「風、薫る」公式 (@asadora_nhk) May 19, 2026
りんと直美は、まだ答えにたどり着いたわけではないと思う
今回一番大事なのはここだと思う。二人は確かに成長しているし、患者ごとに求めるものが違うことにも気づき始めている。でも、だからといって「患者に合わせて看護を柔軟に変えるのが答えだ」と、もう結論が出たようには自分はまだ見えない。
むしろ、今の二人はその間で揺れているのだと思う。患者の気持ちは分からない。でも、分からないからといって画一的で合理的な看護だけで押し切っていいのかも分からない。バーンズ先生の教えはかなり合理的で、感情を排する方向に見える。一方で、りんと直美は患者に寄り添おうとしている。その二つの間で、まだ本当の答えを探している途中なのだと思う。
だから今回は、「二人が答えを得た回」ではなく、「どんな看護を目指すのかという問いが、ようやく本格的に立ち上がってきた回」と受け止めるのが自然な気がした。
千佳子は「わがままな患者」ではなく、「価値観ごと揺らいでいる患者」なのだろう
千佳子の拒絶はやはり単なるわがままではないと思う。病気の不安、乳房を失うかもしれない恐怖、武家の女としてどう生きどう死ぬかという価値観。その全部が重なっているから、誰かに「分かる」と言われること自体が耐えがたいのだろうと思う。
だからこの人に必要なのは、ただ優しくすることでも、ただ合理的に処置することでもなく、その価値観ごと抱えている苦しさを見誤らないことなのかもしれない。そこへりんと直美がどう近づくのかは、かなり見どころだと思う。
瑞穂屋のパートは少し散るが、看護以外の暮らしも並行して動いている
正直、今回は看護の話がかなり面白いので、瑞穂屋の客や縁談の線は少し散る感じもした。でも、安や美津、シマケンたちの暮らしも同時に動いているからこそ、りんや直美の世界が病院だけではないことも分かる。直接看護に関係なくても、人物たちの生活全体を見せる役割はあるのだろうと思った。
まとめ
2026年5月20日放送の『風、薫る』第38回は、りんと直美が「患者の気持ちは分からない」という地点からさらに進み、患者ごとに何を望んでいるのかを探ろうとし始めた回だった。ただし、それがそのまま「患者に合わせて柔軟に看護を変えるのが答えだ」という結論にまで至ったようにはまだ見えない。むしろ今は、バーンズ先生の合理的な教えと、患者に寄り添いたい気持ちの間で、二人がまだ試行錯誤している段階なのだと思う。
その意味で今回は、何かをはっきり掴んだ回というより、看護とは何かという問いがより深くなった回だった。そして、直美の出自に関わる「夕凪」の存在まで動き出したことで、今後は看護の成長と私的な過去が同時に揺さぶってくる展開になりそうだ。かなり続きが気になる回だったと思う。
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