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2026年5月14日放送の『風、薫る』第34回は、全体として大きく物語が動いた回ではなかった。けれど、その代わりに今の登場人物たちが抱えている危うさや迷いがかなりはっきり見えた回だったと思う。特に目立ったのは、直美(上坂樹里)のやり方の危うさと、シマケン(佐野晶哉)の頑張り方の危うさだった。
一方で、りん(見上愛)は現場でも私生活でも少し立ち止まっている感じがあったし、美津(水野美紀)は相変わらず有能なのか無能なのか分からない不思議な立ち位置を見せていた。大事件が起きた回ではないけれど、それぞれの人物の「今の状態」がよく出ていた回だったように思う。
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第34回のポイント
- 直美は藤田邦夫(坂口涼太郎)をうまく動かし、患者の要望を通していく。
- そのやり方は結果を出す一方で、かなり危ういものにも見える。
- りんは瑞穂屋や家で、少し立ち止まりながら自分の気持ちを整えているように見える。
- シマケンの家族構成や背景が少し見え、「何者でもないこと」への焦りが強く出てくる。
- ラストには不穏な女性の後ろ姿が映り、次回への含みを残す。
個人的に印象に残ったこと
今回まず印象に残ったのは、直美が丸山(若林時英)に対して、今日から一日三回薬を塗ることになったと伝えて処置する場面だった。丸山が、患部が臭うだろうと謝るのに対して、直美が気にすることではないと返すのはよかった。ここはもう、かなり看護婦らしくなってきたと思うし、患者との距離の取り方も板についてきた感じがある。
その様子を見ていた他の患者が、自分も相談があると言い出す流れもよかった。つまり、直美の看護はもう患者同士の中で「話してみてもいい相手」として認識され始めているのだろう。これはかなり大きいことだと思う。
ただ、その後の展開を見ると、やはり直美のやり方には強い危うさもある。藤田に根回しをして、丸山の隣の患者の薬も変えさせる。しかも夜、寮でその方法を聞かれると、教授が褒めているとか怒っているとか、それらしく揺さぶって、さらに「先生はお優しい」とおだてて話を通したのだと説明する。ここはかなり引っかかった。
もちろん、結果として患者の希望は通ったし、その場ではうまくいっている。だからトメ(原嶋凛)が「それでも結果は出ている」と認めるのも分かる。でも、だからといってこのやり方を肯定していいのかはかなり難しい。直美は「大事なのは患者のため」「正しいことを正しく言うだけじゃ人は動かない」と言い切るが、ここはかなり危ないと思った。
なぜなら、この方法は相手がまだ自分を信用しているうちしか通用しないからだ。一度「どうせまたその場しのぎのウソだろう」と思われたら、本当に必要な時まで聞いてもらえなくなる。そうなれば、結局いちばん困るのは患者のはずだ。ウソも方便という範囲に収まっているうちはいいとしても、このままいけばいつか越えてはいけない線まで越えそうで怖い。ここは記事でもちゃんと残しておきたいポイントだと思った。
りんのパートは少し不思議だった。休日に瑞穂屋へ寄るのだが、実習がどうかと聞かれてもうまく答えられず、卯三郎(坂東彌十郎)にも同じように言葉を濁す。さらに勝海舟(片岡鶴太郎)に卯三郎がどういう人物かを聞かされるが、りんは居心地が悪くなったのか逃げるように去っていく。ここは正直、りんが何をしに来たのかが少し分かりにくかった。実習で疲れて、少し息をつきたかったのかもしれないし、安心できる場所に戻りたかったのかもしれないが、描写としては少し散って見えた。
そのあと家に戻ると、シマケンが壊れた玄関の戸を直している。この流れで、シマケンの実家が浜松で料理屋をしていて、母と祖母が仕切っていること、姉三人と兄一人の末っ子であることが分かる。これでだいぶ「何者か」が見えてきた感じはあるが、同時に末っ子だからこそこうして東京で何者でもないままふらふらしていられる、という自虐も出てくる。この言い方にはかなり焦りがにじんでいた。
りんが、シマケンの具合が悪いのではと気づき、おでこに手を当てる場面もよかった。ここはたしかに「看護婦らしい観察」が自然に出ていたと思う。シマケンが、体ではなく別の意味で少し無理していることを認めるのも印象的だった。そして、お互いに飛ばした紙のとんびの数を言い合って笑う流れも、かなりやわらかかった。りんは、自分だけがもやもやしているわけではないと少し励まされたのだろうし、シマケンもまた、自分だけではないと感じられたのかもしれない。
ただ正直、シマケンは「何者でもない自分」にとらわれすぎていて、このまま無理の方向を間違えると危ないなとも思う。頑張ること自体は悪くないが、自分を追い込むことでしか前に進めないタイプに見えるので、そこはかなり心配になった。
そして美津のカレーの場面。今日の料理は自信があると言いながら、出来上がったカレーを食べたりんもシマケンも「苦い」となり、安(早坂 美海)に水を求める。美津自身が食べて「これは……まずい」と認め、みんなが笑う。ここは笑える場面ではあるのだが、同時に「本当に味見していなかったのか?」という疑問も残る。美津ほどの人が、料理中に一度も味見しないものなのだろうか。あまりにも出来が悪いので、逆にこれはわざと外したのではないか、と少し勘ぐってしまった。もしそうなら策士だが、ただの失敗だとしても美津らしいとも言える。不思議な場面だった。
最後に、雨と雷の音の中で、一人の女性の後ろ姿が映る。ここで終わるのはかなり不穏だったし、何かが起きそうな気配だけ残していった感じだった。
藤田:「何か困ったことがあったら、また」
直美の言うことは聞いてくれる藤田先生。
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上坂樹里 坂口涼太郎#朝ドラ #風薫る pic.twitter.com/7d0LtEuKEx
— 朝ドラ「風、薫る」公式 (@asadora_nhk) May 13, 2026
直美のやり方は「結果が出ればいい」で済ませるには危うすぎる
今回いちばん引っかかったのはここだった。直美のやり方は、現場を動かす力がある。相手の性格を見抜いて、どこを押せば通るかを判断して、実際に結果を出す。そこは一つの能力なのだろうと思う。
でも、それが「患者のためなら許される」とまでは自分は思えない。なぜなら、医療の現場は信頼が崩れたら終わるからだ。今はまだ小さな根回しで済んでいるかもしれないが、ここから先も同じやり方を続けたら、いずれ決定的に信用を失う可能性がある。その時には、もう正しいことを言っても誰にも信じてもらえないかもしれない。そこがかなり危うい。
りんとシマケンの関係はやわらかいが、シマケン側はかなり危なっかしい
今回のりんとシマケンのやり取り自体は、かなりやわらかくてよかった。二人ともそれぞれもやもやを抱えていて、だからこそ少し笑い合える、という空気があった。
ただ、シマケンはやはり「何者でもない自分」にとらわれすぎている気がする。頑張らないといけない、無理しないといけない、という方向にばかり行ってしまうと、そのうち自分を壊しかねない。ここは少し心配になる描かれ方だった。
美津はやはり有能なのか無能なのか分からない
瑞穂屋で外国人相手に立ち回れるかと思えば、今度は苦すぎるカレーを作る。美津は本当に振れ幅が大きい。だから面白いとも言えるが、今回のカレーはさすがに不思議だった。あの場面が単なる笑いなのか、何かの含みがあるのか、少し引っかかったままだ。
第34回は、人物の危うさを確認する回だったのかもしれない
今回は物語が大きく進んだわけではない。実習が劇的に変わったわけでもないし、何か大事件が起きたわけでもない。でもその代わりに、直美の危うさ、シマケンの危うさ、りんの立ち止まり、美津の不安定さがよく見えた。
そういう意味では、次に何かが大きく動く前の「今の人物たちがどういう状態か」を見せる回だったのかもしれないと思った。
まとめ
2026年5月14日放送の『風、薫る』第34回は、看護の現場そのものよりも、登場人物たちの危うさや迷いが前に出た回だった。特に、直美の「結果のためならウソも辞さない」やり方は、この先かなり大きな問題になりかねない危うさを感じさせた。
一方で、りんとシマケンのやり取りにはやわらかさがあり、美津の不思議な存在感も相変わらずだった。大きく話が動いた回ではないが、その分だけ、今の人物たちの立ち位置がよく見えた回だったように思う。
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