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2026年5月15日放送の『風、薫る』第35回は、りん(見上愛)と直美(上坂樹里)が、それぞれ違う形で患者に向き合えるようになってきたことが見えてくる回だった。りんは対話を通じて患者の気持ちをほぐし、直美は厳しさも込みで患者を動かしていく。やり方は違うのに、どちらも患者のことを思っているのは確かで、その違いがはっきり見えてきたのがよかった。
その一方で、和泉千佳子(仲間由紀恵)という新しい患者が入ってきたことで、病院の中にある身分差や医療の限界も一気に前面に出てきた。そしてラスト、直美が「一ノ瀬りんには、まだ、侯爵夫人の看護をする技量はありません」と言い切る。かなり気になる終わり方だったし、今回はそこへ至るまでの積み上げがきちんと効いていた回だったと思う。
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第35回のポイント
- りんは患者との対話を通して、少しずつ信頼を得始める。
- 直美は長屋で親子の姿を見て、自分の出自を強く意識させられる。
- 和泉千佳子(仲間由紀恵)が乳がんの疑いで入院し、病院中が特別扱いに走る。
- 丸山(若林時英)は、りんとの何気ない会話が「極楽」だったと語る。
- ラストで直美が、りんには侯爵夫人の看護をする技量がまだないと断言する。
個人的に印象に残ったこと
今回まず印象に残ったのは、休みを経て元気を取り戻したりんが病室に入ると、患者たちがちゃんと挨拶を返してくれるところだった。前は距離があったはずなのに、その空気が少し変わっている。しかも患者たちは、前日に直美が病室を全部仕切って、食事も薬も歩く稽古もきびきびさせたことを話しながら、「あんたがいたらなぁ」と言う。ここでりんがうれしそうな顔をするのがよかった。
つまり患者たちは、直美のやり方が悪いと言っているのではない。ちゃんと自分たちのことを思ってやっているのは分かっている。でも、それでもりんのほうが話しやすいし、そばにいてほしいと感じている。ここで、りんと直美の看護の違いがかなりはっきりした気がした。
直美のパートも印象的だった。長屋で、迷子だった子どもが無事に母親と再会したことを聞き、その子に「もうおっかさんとはぐれないようにしなよ。せっかく産んでもらってお乳くれたんだから」と言う。この言い方がかなり引っかかったし、同時に痛々しくもあった。どこか自分に言い聞かせているようにも聞こえたからだ。母に産んでもらい、乳をもらったという事実にしがみつくような言い方で、直美の中にある母への感情の複雑さがにじんでいた。
そのあと、お守りのように持っているものの中身を取り出す流れも含めて、今回はかなり直美の出自を強く意識させる回だったと思う。
丸山が、退院したら何がしたいかとりんに聞かれて、「風呂に入りたい」「走りたい」、そして何より「音が聞きたい」と答えるのもすごくよかった。まな板を叩く包丁の音や、夫婦喧嘩の声のような、普通の生活音を聞きたいというのがいい。病気そのものの話ではなく、その先の生活を語る患者の言葉としてかなり印象に残ったし、りんがそういう話を引き出せるようになってきたことも大きかった。
一方で病院の方は、侯爵夫人である和泉千佳子(仲間由紀恵)の入院で一気に慌ただしくなる。病室を整え、看病婦たちが走り回り、今井益男(古川雄大)たちも神経を尖らせる。一般患者とはまるで違う扱いで、その露骨さに寮の生徒たちが違和感を覚えるのも当然だと思った。ゆき(中井友望)が、和泉家は格上の由緒ある家柄なのだと説明し、病院の対応も分からなくはないと言うのも、この時代の現実としてはそうなのだろう。
ただ、千佳子の様子を見ていると、単なるわがままな華族の奥様とも言い切れないように思えた。乳がんの疑いが強く、しかもこの時代に乳房切除手術の成功率が2割程度だとすれば、そりゃ不安にもなるだろう。窓の景色や看病婦の態度に不満を言っているように見えても、その奥に強い恐怖があるのだろうと思う。身分が高くても、不安そのものが消えるわけではないのだと感じた。
そしてすごくよかったのが、丸山が直美に、昨日は極楽だったと言う場面だった。よく考えたら、病気以外の話を入院してから病院の人としたことがなかった。りんとした普通の話が楽しかった。これ、かなり大事な言葉だったと思う。りんがやっていたことは、医学的な処置でも衛生管理でもなく、患者に「生活」を思い出させるような会話だったわけで、それが丸山には極楽に感じられた。ここで、りんの看護の強みがかなりはっきり言語化された気がした。
だからこそ、ラストで多田重太郎(筒井道隆)や今井、藤田邦夫(坂口涼太郎)、黒川勝治(平埜生成)が待つ場にバーンズ先生(エマ・ハワード)と一緒に呼ばれ、直美が「一ノ瀬りんには、まだ、侯爵夫人の看護をする技量はありません」と断るのが重かった。これは単なる嫉妬ではないだろうと思うが、どういう意図でこの発言をしたのかとても気になる終わり方だった。
丸山:「音が聞きたいな。人が暮らす音」
患者の丸山が退院したらしたいこと……
お風呂に入りたい。走りたい。人が暮らす音が聞きたい。👇このシーンの続きはNHK ONEでhttps://t.co/K93IRXmPLP
見上愛 若林時英#朝ドラ #風薫る pic.twitter.com/MX77rjfQXM
— 朝ドラ「風、薫る」公式 (@asadora_nhk) May 14, 2026
りんと直美は、別々の看護の形を持ち始めている
今回かなりはっきり見えたのはここだった。りんは、患者と話すことで相手の不安をほぐし、生活の感覚を取り戻させるタイプなのだと思う。一方で直美は、厳しさや段取りの良さで患者を動かし、現実的に必要なことを進めるタイプだ。
どちらが正しいというより、両方必要なのだろうと思う。ただ、相手によってどちらが先に必要なのかは違う。今回の丸山にはりんの会話が効いた。でも侯爵夫人の千佳子に対しては、直美には別の危うさが見えているのかもしれない。だから最後の一言はかなり重かった。
直美の「母」と千佳子の「乳房」がつながっているようにも見える
今回かなり気になったのはここだった。迷子の子どもに「せっかく産んでもらってお乳くれたんだから」と言う直美の言葉は、あまりにも生々しかった。そして千佳子は乳がんの疑いで、乳房を切除するかもしれない立場にある。
ここがもし意図的につながっているのだとしたらかなり重い。直美にとって「母」とは、生んで乳をくれる存在でありながら、自分を手放した人でもある。その母性の象徴のような乳房が、千佳子の身体から切り離されるかもしれない。この構図はかなり意味深だと思った。さらに、もしかすると千佳子が直美の母親なのでは、という読みまでしたくなるくらい、今回は母と乳房のイメージが強く重ねられていた。
千佳子の不安に寄り添えるのは、看病婦ではなく見習たちなのかもしれない
看病婦たちは交代させられ、今井たちも「病院の名折れになる」と病院の体面を優先しているように見える。その中で、本当に千佳子の不安や恐怖に寄り添えるのは誰なのかを考えると、やはり看護婦見習たちなのかもしれないと思えてくる。
たぶん次週はそこが問われるのだろうし、りんと直美の違いも、そこでかなり大きく出てくるのだろうと思う。
第35回は、本格的に医療と看護のドラマへ寄ってきた感じがある
今回の印象としてかなり大きかったのはここだった。乳がん、手術の成功率、身分差のある入院対応、患者の不安、看護の技量。かなりはっきり「医療と看護」を描く方向に寄ってきている感じがある。ここまで群像劇や成長物語として見てきた部分もあったが、今回はかなり本格的に医療ドラマの顔をしていたと思う。
だからこそ、ラストの直美の一言もすごく効いていたし、来週がかなり楽しみになる終わり方だった。
まとめ
2026年5月15日放送の『風、薫る』第35回は、りんと直美がそれぞれ別の形で患者に向き合えるようになってきた一方で、和泉千佳子という大きな不安を抱えた新たな患者を前に、看護の本質があらためて問われそうな回だった。りんの世間話が丸山には「極楽」に感じられたことは、看護の中にある会話や安心の力を強く感じさせた。
そのうえで、最後に直美が「一ノ瀬りんには、まだ、侯爵夫人の看護をする技量はありません」と言い切ったのはかなり重かった。ただの嫉妬ではなく、何かを見抜いての言葉に見えるからこそ、なおさら気になる。本格的に医療と看護のドラマへ進んでいく気配が強くなってきた回だったように思う。
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