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2026年4月30日放送の『風、薫る』第24回は、看護婦養成所の課題である「observe」という言葉をめぐって、りん(見上愛)と直美(上坂樹里)がそれぞれ自分の迷いと向き合い、その先で少しだけ歩み寄る回だった。これまでの二人は、ぶつかってばかりで、同じ場所にいても見ているものがずれていた。でも今回は、別々に悩み、別々に人に会いに行きながら、最後には同じ方向を向きかけるところまで来たように思う。
ただ、その一方で気になったのは、二人がそれぞれ成長のきっかけをつかんでいる時に、寮に残されたトメのような存在にまで気が回っていたのかという点だった。今回の話はきれいに見れば「二人が少し近づいた回」だが、別の見方をすると、まだまだ不器用で、配慮が足りない人たちの集まりでもある。そこがこの作品らしいところなのかもしれない。
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第24回のポイント
- 直美は捨松(多部未華子)に「observe」の意味と、看護婦に向いているのかという悩みを打ち明ける。
- りんは瑞穂屋で島田健次郎(佐野晶哉)に相談し、「observe」に対応する日本語として「観察する」を知る。
- 捨松は、りんと直美の両方に、それぞれの迷いごと受け止めて言葉を返す。
- 門限に遅れたりんと直美は、最後に少しだけ笑い合う。
個人的に印象に残ったこと
今回まず印象に残ったのは、直美が捨松のもとを訪ねて「observe」の意味を尋ねる場面だった。捨松は、「observe」は包み込むように見続けることではないかと答える。そして、「看護」の「看」という字は手の下に目と書くことに注目して、手と目を使って看ることなのだろうと話す。この説明はかなりよかった。単なる英単語の訳し方ではなく、看護という仕事の本質までつながる話になっていたからだと思う。
直美がそこで、自分は人間が好きではない、悪口も言うし、うそもつくし、優しくもない、りんや周りの人を傷つけてばかりだと打ち明けるのも印象的だった。ようやくここまで自分のことを正面から言えるようになったのだと思ったし、その意味では前回までのぶつかり合いも無駄ではなかったのだろうと思う。
そこで捨松が、「りんのような人が向いている」と言う直美に対して笑い出し、実はりんも同じように悩みを打ち明けに来ていたと明かす流れもよかった。しかも、りんは「直美を傷つけてしまった、こんな自分が看護婦になれるのだろうか」と悩んでいたという。ここで初めて、二人は互いに傷つけ合っただけではなく、傷つけたことをちゃんと気にしていたのだと分かる。これはかなり大きかった。
さらに捨松が、「看護は一人ではできない仕事」だと言い、仕事場に good partner がいるのは羨ましいことだと語るのもよかった。そしてナイチンゲールの言葉として、「世の中で看護という仕事ほど『自分が何を成せるか』が『自分がどのような人間であるか』に左右される職はほかにない」と伝える。これは今回のテーマそのものだったと思う。技術や知識だけではなく、その人がどんな人間なのかが問われる。だからこそ、自分のことを悩める人の方がむしろ向いているのかもしれない、という捨松の見方はかなりよかった。
一方のりんは、瑞穂屋に立ち寄って美津(水野美紀)が迷惑をかけていないか確認し、文(内田慈)から「面白いです」と返される。ここはちょっと笑ってしまった。美津が外国人相手にどう立ち回っているのか、かなり見てみたくなる返しだった。
そのあと、卯三郎(坂東彌十郎)が留守で、代わりに島田健次郎に「observe」にぴったりの日本語がないか相談する流れもよかった。そこで島田が、西周が「observe」に「観察する」という訳語を当てたこと、その言葉が仏教由来で「あるがまま観て物事を見極める」という意味を持つことを説明する。ここはかなりしっくりきた。単に見るだけでなく、あるがままを受け止めた上で見極めるという感覚は、今回の二人の迷いにもぴったり重なっていたと思う。
りんが、以前聞いた島田の言葉で、看護婦への迷いがなくなったと答えるのもよかった。しかも島田が、どの言葉がそんなふうに響いたのか気にするのに、門限の時報が鳴ってりんが急いで帰っていく。そして、外出できるのが日曜だけと知って残念がる島田。これはもうかなり分かりやすかった。島田がりんのことを気にかけているのは、ほとんど隠せていない気がする。
「観察する。西先生は、observe にそう訳語をつけた。西先生は哲学者だけど、元々ご典医(てんい)の家柄だから科学や医学の分野の訳語が独特で上手いんだ」
西周(にし あまね)の訳語をりんに紹介するシマケン。
👇解説のつづきはhttps://t.co/An0NODEDEt#佐野晶哉 pic.twitter.com/24JfdUV2Yg
— 朝ドラ「風、薫る」公式 (@asadora_nhk) April 29, 2026
終盤の、門限に遅れた直美とりんの場面も印象的だった。直美は先に戻ってきて隠れていて、遅れてきたりんにどうして遅れたのかを尋ねる。りんは捨松のところへ行ったことを答えないし、直美は逆に自分が捨松の屋敷に行ったことを打ち明ける。ここで小声で「ありがとう」と言うのがよかった。りんには聞こえていなかったようだが、それでもあの一言が出たこと自体に意味がある。直美はちゃんと、りんに背中を押されたことを分かっているのだろう。
そのあと、寮に入れそうな隙間を見つけて、二人が笑い合っているところで松井エイ(玄理)に見つかった。怒られて終わるのだけれど、明日どうなるのか気になってしまう終わり方だった。
捨松は二人に同じ答えを与えたのではなく、同じ場所へ導いたのだと思う
今回の捨松はやはり見事だった。りんにも直美にも、それぞれ別の悩みを聞きながら、結局は同じところへ導いている。「observe」とは何か、自分がどんな人間なのか、それを見つめることが看護につながるという方向だ。
しかも、ただ答えを与えるのではなく、考える余地を残しているのがいい。だから二人とも、それぞれ別の場所で答えにたどり着ける。捨松はかなりいいメンター役になってきたと思う。
りんと直美はようやく、互いを傷つけたままでは終わらない関係になり始めた
前回はぶつかって終わったが、今回はその先が描かれたのがよかった。りんは言いすぎたと反省しているし、直美もりんの言葉が刺さったからこそ捨松のところへ行った。そして最後に「ありがとう」と言う。まだ素直に分かり合えたわけではないが、少なくとも相手をただの敵として切り捨てる段階は越えたのだと思う。
ここから二人が、本当に good partner になっていくのかどうか。今回の話はその最初の一歩に見えた。
それでも、トメのことを考えると二人はまだかなり不器用だ
今回少し引っかかったのはここだった。りんも直美も、自分の悩みや成長に向き合っているのは分かる。でも、その間、寮に残っていたトメのことをどれだけ考えていたのかと思うと、やはりまだ不器用だし配慮が足りないとも感じる。
看護婦を目指すという崇高な目標があっても、目の前にいる身近な人への気配りが抜け落ちることはある。今回の話は、その意味で理想だけではない人間臭さもよく出ていたと思う。
養成所編は、だいぶ面白くなってきた
ここまでの養成所編は、対立やぎこちなさが前面に出ていたが、今回はそのぶつかり合いが少しずつ意味を持ち始めた感じがある。単なるケンカではなく、価値観の違いが成長のきっかけになっている。そこがよかった。
今後は、看護の授業そのものが始まれば、さらに関係性も変わっていくのだろうし、ようやく物語のエンジンが本格的にかかってきた気がする。
まとめ
2026年4月30日放送の『風、薫る』第24回は、「observe」という言葉を通して、りんと直美がそれぞれ自分自身と向き合い、少しだけ互いに近づいた回だった。捨松の助言も、島田の言葉も、それぞれの場所で二人の迷いをほどいていく形になっていて、かなり丁寧な回だったと思う。
その一方で、まだまだ二人は不器用で、身近な相手への配慮まで十分に行き届いているわけではない。だからこそ、この先どう変わっていくのかが楽しみになる。第24回は、養成所編の人間関係がようやく前向きに動き始めた回だったように思う。
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