朝ドラ再放送『どんど晴れ』第144回感想(ネタバレ)──「信じてる」恵美子の言葉が伸一を救う一方、土下座の場面はつらすぎた

どんど晴れ

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2026年4月4日に放送された『どんど晴れ』第144回。

第144回は、秋山に逃げられたあとの“現実”が一気にのしかかってきた回だった。環も夏美も、加賀美屋が崖っぷちに立たされている中で、それでも女将・若女将として笑顔で接客し続けなければならない。一方で伸一は、秋山に騙された現実と、自分が引き起こした事態の重さに耐えきれず、部屋に閉じこもってしまう。そんな伸一を立ち上がらせたのは、責めるのではなく、それでも信じると伝えた恵美子の言葉だった。ただ、ラストの土下座の場面は、家族の和としてきれいに受け取るにはあまりにも苦く、複雑なものだったと思う。

※この回は、前日の展開を踏まえて見ると、より重みが増します。

👇 前回(第143回)の感想はこちら

朝ドラ再放送『どんど晴れ』第143回感想(ネタバレ)──秋山の正体発覚、そして株譲渡 加賀美屋が本当に崖っぷちに立った回
2026年4月3日に放送された『どんど晴れ』第143回。第143回は、これまで積み上がってきた不穏が、ついに“事実”として家族の前に突きつけられた回だった。柾樹は徹夜で集めた資料をもとに、秋山の背後に大手ホテルチェーンと外資の乗っ取りグルー...

  1. 笑顔で接客しながら、内側では伸一の不在が重くのしかかる場面
    1. 個人的感想
      1. この場面で大きいのは、「危機は続いているのに旅館の時間は止まらない」という現実
      2. 環が不安を見せても、すぐ献立の話に戻るのは“女将であることをやめられない”からなんだと思う
      3. 柾樹の「弁護士に見てもらう」は、ようやくこの話が“人間関係”から“法的対応”へ移ったことを示している
      4. ただし柾樹の「買収のプロだからミスはない」という言い方には、すでに半分あきらめも混じっている気がする
      5. 浩司の「伸一はああ見えて繊細」は、責めた側の後悔も少しにじんでいるように見える
      6. 時江が“そばにいてあげたい人”で、夏美がそれを察して許す流れはかなりよかった
      7. 「一人で耐え抜く揺るぎない心」は、今回かなりはっきり限界を見せている
  2. カツノに謝る伸一と、それでも信じる恵美子――追い詰められた伸一を支えた場面
    1. 個人的感想
      1. この場面は、“株を失ったこと”より“自分がカツノの思いを裏切ったこと”が伸一を本当に打ちのめしている場面なんだと思う
      2. 恵美子はここで、“ただ優しい人”ではなく“叱ることもできる最後の味方”になっている
      3. 「信じている」は、事実を肯定する言葉ではなく、“それでも立ち直れると信じている”という言葉なんだと思う
      4. 伸一に今必要なのは、経営者としての承認ではなく“人としてまだ見捨てられていない”という確認だったのかもしれない
      5. この場面は、伸一の再起の場面であると同時に、“野心の終わり”を示す場面にも見える
      6. 時江が部屋に入らないのは、遠慮ではなく“自分の役目がもう違うと分かったから”かもしれない
      7. だからこの場面は、伸一と恵美子の再接続だけでなく、伸一と時江の“卒業”の場面としてもかなり意味がある
      8. この場面は、加賀美屋の危機の中で初めて“救い”がきちんと置かれた場面だったと思う
  3. 子どもたちの前での土下座、そして夏美が見た“まだ失っていないもの”
    1. 個人的感想
    2. 伸一と夏美の事例の対比
      1. この場面は、“謝罪”の場面というより、“加賀美屋が何を一番大事だと思っているのか”を示そうとした場面なんだと思う
      2. ただ、その描き方が“団結”というより“同調圧力”に見えてしまうのがかなり危うい
      3. 恵美子の土下座は、夫婦としての連帯にも見えるが、“伸一一人では受け止めきれないから隣に座る”行為にも見える
      4. 子どもたちの土下座は、“家族のやさしさ”として見るより、“家父長的な空気の継承”として見るとかなり怖い
      5. 久則たちが責め続けることで、謝罪が“再出発の場”ではなく“まだ終わらない糾弾の場”になっている
      6. 「しきたり」との矛盾はかなり本質的だと思う
      7. 夏美の「一番大事なものは失っていない」は、希望の言葉であると同時に、かなり危うい言葉でもある
      8. この場面は、“加賀美屋の再生の芽”を描こうとしているのに、同時に“加賀美家の怖さ”もかなり露出してしまっている場面だったと思う
  4. まとめ

笑顔で接客しながら、内側では伸一の不在が重くのしかかる場面

  • 危機的状況の中でも、環(宮本信子)と夏美(比嘉愛未)は女将・若女将として笑顔で接客している。
  • しかし帳場には伸一(東幹久)の姿がない。
  • 久則(鈴木正幸)は呆れたように、顔も出せないのだろうと環に言う。
  • 夏美は柾樹(内田朝陽)に、どうにかできないのかと尋ねる。
  • 柾樹は、香織(相沢紗世)に契約書のコピーを送り、専門の弁護士に見てもらうよう頼んだことを伝える。
  • ただし相手は買収のプロだから、契約上のミスをしているとは思えないとも話す。
  • そして今は、あとは秋山たちがどう出るかを待つしかないと説明する。
  • 環はいつものように接客を続けるが、一人になると不意に不安そうな表情を見せる。
  • その様子に気づいた夏美が声をかける。
  • しかし環は、自分のことよりもお客様の献立のことを気にする。
  • 板場では浩司(蟹江一平)が、魚の苦手なお客様への献立変更を夏美に伝える。
  • その流れで浩司は、伸一の様子も確認する。
  • 夏美が帳場にはいないと答えると、浩司は伸一はああ見えて繊細なところがあると話す。
  • その会話を、時江(あき竹城)が心配そうに聞いている。
  • 帳場では、久則が伸一のデスクを心配そうに見つめている。
  • その後、時江が夏美に声をかける。
  • 夏美は事情を察したように「分かっています」と答える。
  • そして夏美は、伸一のそばにいてあげてくださいと時江に伝える。

個人的感想

柾樹が、秋山たちの居場所が分からないから今はどうにもできない、その代わり香織に契約書のコピーを送って専門の弁護士に見てもらっていると言っていた。ここで今後、契約書の中身が視聴者にも見えてくるのかどうかがかなり気になる。

そもそもの話として、「買戻特約付譲渡契約書」の譲受人は誰なんだろう。秋山個人なのか、それとも名刺メールアドレスが書いてあった、あるのかどうかも怪しい~co.jpの法人なのか。この契約時点ではワイバーン・インベストメントの存在はまだ表に出ていないはずだから、自分としては秋山個人との譲渡契約なんじゃないかと思っているんだけど、そのへんがまだ分からない。所在がずっと分からないと言っているけど、契約書に実印と印鑑証明添付は求めなかったのだろうか、それらも全部偽造されていて、本当に所在が不明ってことなのかね。逃げたってことは明らかに株券を詐取するつもりだったんじゃないのと思ってしまう。このへんはかなり興味深い。

ただ一方で、「相手は買収のプロだからミスはないと思う」という柾樹の言い方には少し引っかかった。逃げたってことは、明らかに何かやましいことをしている自覚があるからじゃないのか、とも思うからだ。完全に合法で堂々とできる取引なら、あそこまで鮮やかに消える必要はないはずなんだよな。

そしてここでやっと弁護士を介入させる段階まで来たわけだけど、そこで少し考えてしまった。自分としてはこういう法的な攻防はかなり興味深いし、むしろ楽しみな展開でもある。でも同時に、ここまでどんど晴れを好きで見てきた人たちにとっては、こういう重厚な展開ってそんなに求めていたものなのかな、とも思ってしまう。

大女将・カツノがいた頃、翼のそばアレルギーの件で相手方が弁護士を立て訴訟しようとした時、カツノは自分たちは弁護士を立てず、誠心誠意対応するだけだと言って、あの不思議なパワーで乗り切った。もし今回もカツノが存命だったら、また法律を超越した「誠心誠意」「信じる心」「一人耐え抜く揺るぎない心」「座敷童」みたいな力でどうにかしてしまうんじゃないか、そして見ているこちらは「そんなことあるかよ!」と突っ込みながら楽しむのが、ある意味どんど晴れらしい見方なんじゃないか、とも思えてきた。

もちろん柾樹が弁護士に頼るのは防衛策として当たり前だし、自分もそういう展開を楽しみにしてきた。でも、そういう重めの法務ドラマ的展開は朝ドラじゃなくても見られるんじゃないか、とも少し思う。まあ、自分はここから先が緊迫したリアル寄りの展開でも、逆にトンチキな力技で乗り切る展開でも、どっちでも楽しめそうだから結局どっちでも構わないんだけどさ。

話をドラマに戻すと、環も久則も浩司も時江も、みんな伸一のことはかなり心配していそうだ。ただ、どう接すればいいのか分からないようにも見える。浩司は伸一のことを「ああ見えて繊細なところがある」と言っていた。繊細だと分かった上で、前日は掴みかかるほど感情的になっていたわけだから、浩司もかなり限界だったんだろう。

そして時江は、もう仕事を抜けてでも伸一のそばに行きたいくらい心配している。その気持ちを察して、伸一のそばにいてあげてくださいと許す夏美。ここはよかったと思う。自分自身、詐欺に遭った知人を支えたことがあるから余計そう思うのかもしれないけど、こういう時は仕事中だろうが、行ける人がいるなら様子を見に行った方がいいと思う。詐欺に遭ったその知人も、立ち直るまでは憔悴しきっていて、周りから見ても何かしでかすんじゃないかと心配されるくらいだった。でも弁護士が入ってくれたことで最終的には助かった。もちろん弁護士が万能なわけじゃないし、その人も周囲に迷惑をかけたのは事実だけど、それでも今は元気に生きている。だからこそ、誰かに助けを求めることの大切さと、「一人で耐え抜く」ことの危うさはかなり感じてしまう。


この場面で大きいのは、「危機は続いているのに旅館の時間は止まらない」という現実

家の中では株が奪われたかもしれない。

秋山は逃げた。

伸一は姿を見せない。

それでも帳場は開き、お客様は来て、献立は変えなければならない。

つまりこの場面は、

加賀美屋の危機がどれだけ深刻でも、旅館業はその場で止まってくれない
ことをかなりはっきり見せている。

ここがしんどいし、旅館ものとしてかなりリアルでもある。

環が不安を見せても、すぐ献立の話に戻るのは“女将であることをやめられない”からなんだと思う

環は明らかに不安を抱えている。

でも夏美が声をかけても、自分の感情には触れずに、お客様の献立の話へ戻る。

これは強さでもあり、限界でもあるよなと思う。

つまり環はここで、

不安を感じてはいけないからではなく、不安を感じていても女将の役割を下ろせない
んだと思う。

かなり苦しい。

柾樹の「弁護士に見てもらう」は、ようやくこの話が“人間関係”から“法的対応”へ移ったことを示している

ここまでは、

  • 伸一が騙された
  • 秋山が怪しい
  • 家族が揉める

という感情の話が中心だった。

でもここで初めて、契約書を弁護士に見せるという具体的な防衛策が出てくる。

つまりようやく、

被害感情を語る段階から

法的に何ができるかを検討する段階

に入ったわけだ。

かなり大きい進展だと思う。

ただし柾樹の「買収のプロだからミスはない」という言い方には、すでに半分あきらめも混じっている気がする

普通なら、弁護士に見せるならどこかに穴があることを期待する。

でも柾樹は先に「ミスはないと思う」と言ってしまう。

これは慎重というより、

かなり厳しい状況だともう分かっている人の言い方

にも聞こえる。

つまり弁護士に見せるのは希望ではあるけれど、同時に最後の確認でもある。

そこがかなり重い。

浩司の「伸一はああ見えて繊細」は、責めた側の後悔も少しにじんでいるように見える

この言い方、ただの説明以上のものがある気がする。

前日、浩司はかなり強く伸一を責めた。

でも今は姿を見せない兄を気にしている。

つまりここには、

責めるしかなかったけど、あそこまで追い込んだことへの後ろめたさ

も少し混じっているんじゃないかと思う。

だからあの一言は意外と重い。

時江が“そばにいてあげたい人”で、夏美がそれを察して許す流れはかなりよかった

時江は仕事中でも伸一のそばに行きたい。

それを夏美が「分かっています」と受けて、行ってあげてくださいと言う。

ここはかなりよかった。

なぜなら今必要なのは、

正論や叱責よりも、

一人にしないこと

だからだと思う。

ここで夏美がその判断をできるのは、若女将としてかなり大きい。

「一人で耐え抜く揺るぎない心」は、今回かなりはっきり限界を見せている

大女将・カツノはその理想を語った。

でも実際には、

  • 環は平治に弱音を吐く
  • 夏美はイーハトーブに相談する
  • 時江は伸一のそばに行く
  • 柾樹は弁護士に頼る

誰も一人では耐え抜いていない。

いや、耐え抜けない。

つまりこの場面は、

理想としての強さより、助けを求めることの方がずっと現実的で必要だ
とかなりはっきり示している気がする。


カツノに謝る伸一と、それでも信じる恵美子――追い詰められた伸一を支えた場面

  • 伸一はカツノ(草笛光子)の遺影の前で「ごめん」とつぶやき、泣き崩れる。
  • そこへ恵美子(雛形あきこ)がやって来る。
  • 恵美子は、みんなが働いているのに伸一だけが逃げているのは卑怯だと叱る。
  • その一方で、ささやくような優しい声で、伸一のことを信じていると励ます。
  • 恵美子の言葉が届き、伸一は涙が止まらなくなる。
  • 恵美子はそんな伸一を後ろから優しく抱きしめる。
  • その様子を見た時江は、部屋の中には入らず、遠くから静かに見守る。

個人的感想

そりゃ、伸一はカツノに謝るしかないよなと思う。後継者の座を諦めてまで手にした、カツノから譲り受けた株を、あっけなく全部失ったんだから。ここまで来たら、もう理屈じゃなく、まずは「ごめん」しか出てこないだろうなと思った。

そして恵美子だよ。毎回思うけど、どうして彼女はこんな伸一を見捨てないんだろうと思ってしまう。視聴者としては、これまで伸一のモラハラっぽい言動や、自分勝手さや、家族への態度をずっと見てきている。だからなおさら、こんなふうに自信を失って崩れている旦那を、どうしてここまで優しく包み込み、認めて、笑顔まで見せて、「信じている」と言えるのかが本当にすごい。

もちろん、こんなふうに甘やかすから伸一が成長しないんだ、という見方もあるかもしれない。でも正直、今の伸一はそんな段階じゃないと思う。これ以上追い詰めたら何をしでかすか分からないくらい、かなり危ういところまで来ている。そういう人間に対しては、恵美子のこの優しさは、たぶん何よりも効くんだろうなと思う。

特に「あなたと結婚できて、本当に良かったと思ってるんだから」という言葉は強かった。あれだけで、伸一はかなり救われただろうなと思う。もう経営権とか株とか、そういうものは忘れていいから、とにかく恵美子と子どもたちだけを幸せにすることを考えろ、変な野心なんて持つな、と言ってやりたくなるくらいだった。

そして時江。この場面は、伸一と時江の関係にとっても、一つの区切りになるシーンなのかもしれないと思った。お互いにかなり依存し合ってきた二人だけど、ここで時江は部屋に入らず遠くから見守る。たぶん時江は、「伸一には恵美子がいる、自分が入る場所ではない」と感じたんじゃないかと思う。逆に伸一の方も、恵美子がそばにいてくれるなら、自分はもう時江に甘えなくてもいい、という方向へ少し進めるのかもしれない。そういう意味でも、この場面は静かだけどかなり大きかった。


この場面は、“株を失ったこと”より“自分がカツノの思いを裏切ったこと”が伸一を本当に打ちのめしている場面なんだと思う

伸一が泣き崩れている理由は、もちろん株を失ったことも大きい。

でも本当に効いているのは、それ以上に

カツノの思いを自分の手で踏みにじってしまった
という感覚なんだろうなと思う。

だから相手は環でも久則でもなく、まず遺影。

ここで伸一は初めて、経営の失敗ではなく、

継承の失敗
としてこの出来事を受け止めているように見える。

恵美子はここで、“ただ優しい人”ではなく“叱ることもできる最後の味方”になっている

この場面の恵美子が強いのは、

最初から甘やかしていないところだと思う。

  • 逃げているのは卑怯だと叱る
  • でも信じているとも言う
  • そして最後は抱きしめる

この順番がすごく大事で、

ただ慰めるだけじゃなく、

逃げてはいけないことも、でも見捨てないことも、両方伝えている

だからここでの恵美子は、単なる癒やし役ではなく、

伸一を立ち直らせるために必要な強さと優しさの両方を持った存在

としてかなり大きい。

「信じている」は、事実を肯定する言葉ではなく、“それでも立ち直れると信じている”という言葉なんだと思う

ここもかなり大きい。

恵美子は、伸一のしたことを正しいと言っているわけじゃない。

逃げていることもちゃんと卑怯だと分かっている。

それでも「信じている」と言う。

つまりこれは、

あなたの判断を信じている
ではなく、
あなたがここから立ち直れることを信じている

という意味なんだろうなと思う。

だからあの言葉は甘さではなく、

かなり本質的な支えになっている。

伸一に今必要なのは、経営者としての承認ではなく“人としてまだ見捨てられていない”という確認だったのかもしれない

これまでの伸一は、

後継者として認められたい、

自分の案を評価されたい、

という気持ちがかなり強かった。

でもこの場面で恵美子が与えているのは、そういう承認ではない。

あなたが失敗しても、私はあなたを見捨てない

という、人としての承認だ。

たぶん今の伸一には、それが一番必要だったんだと思う。

だから涙が止まらなくなる。

この場面は、伸一の再起の場面であると同時に、“野心の終わり”を示す場面にも見える

ここで伸一はかなり救われたと思う。

同時に、ここから先はもう、

経営権だの後継者争いだのにこだわる段階ではなくなるのかもしれない。

つまりこの場面は、

伸一が経営者として勝ちたい人から、

家族を守るところまで戻ってくる人
になる分岐点にも見える。

そういう意味では、かなり大きな転換点だと思う。

時江が部屋に入らないのは、遠慮ではなく“自分の役目がもう違うと分かったから”かもしれない

ここがかなり静かだけど大きい。

今までの時江なら、伸一を支えに入っても不思議じゃない。

でも今回は入らない。

遠くから見るだけにとどまる。

これは単なる遠慮というより、

今この人を支える役は自分ではなく恵美子なんだ
と分かったからなのかもしれない。

その意味でこれは、時江の敗北ではなく、

時江が一歩引いて関係を見直す場面としても読める。

だからこの場面は、伸一と恵美子の再接続だけでなく、伸一と時江の“卒業”の場面としてもかなり意味がある

伸一と時江はずっと、情や依存でつながっていた部分がある。

でも今回、伸一を本当に立たせる役を果たしたのは恵美子だった。

時江はそれを見ている。

つまりこの場面では、

  • 伸一は、恵美子の方へ戻る
  • 時江は、そこから一歩引く

という静かな配置換えが起きているように見える。

かなり大きい。

この場面は、加賀美屋の危機の中で初めて“救い”がきちんと置かれた場面だったと思う

ここ数回はずっと、

  • 秋山の工作
  • 株譲渡
  • 家族の分裂
  • 逃亡
  • 責任追及

みたいに、息苦しい流れが続いていた。

でもこの場面では、初めてはっきりと

人が人を救う
場面が置かれた。

しかもそれが、理屈や策ではなく、

信じることと抱きしめることだった。

かなりベタなんだけど、だからこそ効いたんだと思う。

静かな場面だけど、かなり重要だった。

伸一がここから立ち上がれるかどうかの分岐としても、

人間関係の整理としても、かなり大きな場面だったと思う。


子どもたちの前での土下座、そして夏美が見た“まだ失っていないもの”

  • 仕事を終えた環、久則、柾樹、夏美、浩司が母屋の居間に戻ってくる。
  • 健太(鈴木宗太郎)と勇太(小室優太)は、夏美と遊ぶためにまだ起きていた。
  • そこへ伸一がやって来る。
  • 伸一は恵美子と目配せをしたあと、環たちの前で土下座して謝罪する。
  • しかし、伸一が土下座しても、環、久則、浩司は伸一を責め続ける。
  • それでも謝ることしかできない伸一の横で、恵美子も一緒になって土下座する。
  • さらに時江も続いて土下座する。
  • その姿を見た健太と勇太も、お父ちゃんが悪いことをしたなら自分も謝ると言って一緒に土下座する。
  • その様子を見た夏美は笑みを浮かべる。
  • そして「大丈夫です。加賀美屋は一番大事なものは失ってはいません」と言う。
  • そのまま今週の放送は終了する。

個人的感想

正直に言うと、この場面はかなり嫌な気分になった。

父親が子どもたちの前で土下座して謝る。しかも子どもたちは事情もよく分からないまま、「お父ちゃんが悪いことをしたなら自分も謝る」と一緒に頭を下げる。これを家族の和だとか、美しい団結だとかいう方向で受け取れと言われたら、自分は少し怖い。

子どもたちは何が起きたか分かっていない。だったら、まず先に寝かせることもできたはずだ。あの場面で子どもを退室させず、そのまま父親の土下座を見せるのは、かなりきつい。しかも、「理由は分からないけど、とりあえずお父ちゃんが謝ってるから自分も謝る」という学習をしてしまわないかも心配になる。悪いことの中身も責任も分からないのに、空気で謝る子になってしまったら、それは本当にまずいだろうと思う。

そして、伸一が土下座して謝っても、環も久則も浩司も責め続ける。伸一が大変なことをしでかしたのは事実だから、その怒り自体は理解できる。理解できるけれど、ここで引っかかったのは、これまで加賀美屋が振りかざしてきた「しきたり」との整合性だ。

どんど晴れのこれまでの流れに照らして考えると、今回の伸一の件は、以前の“翼のそばアレルギー事件”とかなりよく似ているように見えるんだよな。

前日、久則は伸一に対して、「秋山という男は信用できるのか」と何度も念を押していたのに伸一はその忠告を聞かず、勝手に動き、結果として加賀美屋の経営そのものを危機にさらしたと言った。

これって、夏美が翼をそばアレルギーで緊急搬送させた時と構造がかなり似ていないか。あの時も時江は、翼を勝手にさんさ踊りへ連れていかないこと、何か行動する時は必ず事前に相談することを何度も言っていた。それなのに夏美はその注意を守らず、独断で動いて、結果として翼を命の危険にさらした。

つまり、両者ともに

  • 事前に何度も注意されていた
  • それでも勝手な判断で動いた
  • その結果、重大な危機を招いた

という点で、かなり近い構図だ。

しかも結果の重さで言えば、今回の伸一は会社の命を危険にさらし、当時の夏美は人の命を危険にさらした。どちらも取り返しがつかなくなってもおかしくないレベルの失敗だった。

そこで気になるのが、加賀美屋がこれまで振りかざしてきた「しきたり」だ。

加賀美屋には、下の者のミスは上の者が責任を取るという考え方があったはずだ。

実際、翼の事件の時は、なぜか当の夏美本人には“責任を取らせようがない”という空気になって、結局責任を負わされたのは、理不尽に解雇された時江、仲居頭に降格された環、そして大女将を引退させられたカツノの側だった。

だったら今回も、その理屈を本気で貫くなら、伸一だけを責めて終わるのはおかしいんじゃないかと思ってしまう。

今回の伸一の上にいる立場の者といえば、久則と環しかいないわけで、この「しきたり」を機械的に適用するなら、久則は引責辞任、環も再び仲居頭に降格、くらいの話にならないと筋が通らないはずだ。

もちろん、夏美の時と違って、今回は伸一自身が自分で責任を取れるくらいのキャリアや立場だから、本人が責任を取るべきなのは間違いない。そこは大前提だと思う。

ただ、それでもなお気になるのは、これまで使われてきた「上の者が責任を取る」という加賀美屋のしきたりが、今回は発動されるのか、それとも伸一一人を悪者にして終わるのか、ということだ。

もし今回だけその理屈が適用されないのだとしたら、それは結局、主人公やその時々の都合に合わせて運用される“便利なしきたり”だったということになってしまう。

そこがどうしても引っかかる。

夏美が言う「一番大事なもの」は、たぶん家族の団結とか、まだみんなが一緒にいられることとか、そういう意味なんだろう。でも、自分にはあの場面がそこまできれいには見えなかった。家族の団結というより、空気で一緒に頭を下げさせる怖さの方が強く残ってしまった。


伸一と夏美の事例の対比

項目 夏美(翼のそばアレルギー事件) 伸一(秋山への株譲渡)
事前の注意 時江から「勝手な行動をするな」「事前に相談しろ」と何度も言われていた 久則らから「秋山は信用できるのか」と何度も注意されていた
行動 注意を聞かず独断で翼をさんさ踊りに連れ出した 注意を聞かず独断で秋山と契約し株を譲渡した
結果 翼をそばアレルギーで緊急搬送させ、人の命を危険にさらした 加賀美屋の株の半分を失い、会社の命を危険にさらした
失敗の性質 独断行動による重大事故 独断行動による重大経営危機
当人の責任 本人の判断ミスは大きいが、なぜか本人は直接大きな責任を取らされなかった 本人の責任は極めて重く、今のところ全面的に責められている
上位者の責任 時江の解雇、環の降格、カツノの引退という形で上の者が責任を負った 今のところ久則・環の責任は問われず、伸一一人に責任が集中している
しきたりとの整合性 「下の者のミスは上の者が責任を取る」が強く適用された 同じ理屈を当てはめると久則・環にも責任が及ぶはずだが、そこはまだ曖昧
違和感のポイント 主人公の夏美本人が守られすぎていた 今回は逆に伸一一人に責任が集まりすぎていて、構造の検証が抜けている

 

この場面は、“謝罪”の場面というより、“加賀美屋が何を一番大事だと思っているのか”を示そうとした場面なんだと思う

表面上は、伸一の謝罪の場面だ。

でも演出として本当に見せたかったのはたぶんそこだけじゃない。

  • 恵美子も一緒に下げる
  • 時江も続く
  • 子どもたちまで頭を下げる
  • それを見た夏美が「一番大事なものは失っていない」と言う

つまりこの場面では、謝罪の是非よりも、

加賀美屋にとって最後に残るものは何か

を示そうとしているんだと思う。

たぶん作り手としては、それを“家族のつながり”として描きたいんだろう。

ただ、その描き方が“団結”というより“同調圧力”に見えてしまうのがかなり危うい

子どもたちが事情も分からないまま一緒に謝る。

これは感動というより、

場の空気に合わせて頭を下げることが正しい

という形に見えやすい。

つまりこの場面は、家族の和を見せようとしている一方で、

別の角度から見ると

家の中の空気に個人が飲み込まれていく怖さ

もかなり強く出ている。

そこがこの場面の危うさだと思う。

恵美子の土下座は、夫婦としての連帯にも見えるが、“伸一一人では受け止めきれないから隣に座る”行為にも見える

恵美子が一緒に土下座するのは、伸一の責任を代わりに負っているわけではない。

むしろ、

この人を一人でこの場に立たせたら壊れる

と分かっているから、隣に座っているんだと思う。

つまりこれは謝罪の共有というより、

崩れそうな人を一人にしないための行動

として見るとかなりしっくりくる。

子どもたちの土下座は、“家族のやさしさ”として見るより、“家父長的な空気の継承”として見るとかなり怖い

ここは本当に大きい。

子どもたちが悪いわけじゃない。

むしろ純粋だからこそやってしまう。

でも問題は、その純粋さが

理由より空気で謝る態度
につながっていることだ。

だからこの場面をそのまま美しいと言ってしまうと、

家の中の上下関係や空気への服従まで美化してしまいかねない。

その意味で、かなり怖い場面でもある。

久則たちが責め続けることで、謝罪が“再出発の場”ではなく“まだ終わらない糾弾の場”になっている

もしここで、伸一の土下座を受けて空気が少し変わるなら、

まだ再生の入口として見られたかもしれない。

でも実際には違う。

謝っても責め続ける。

つまりこの場は、謝罪を受け取る場ではなく、

怒りをさらにぶつける場
として続いている。

だからこそ、伸一の謝罪も、家族の和の回復というより、

ただ痛々しく見えてしまうんだと思う。

「しきたり」との矛盾はかなり本質的だと思う

ここは本当に大事で、

この作品の中では以前、

下の者の失敗は上の者が責任を取る

というロジックがかなり強く使われた。

しかもそれは、かなり理不尽な形で使われた。

だったら今回も、本気でそのしきたりを適用するなら、

  • 伸一だけでは済まない
  • 久則や環の監督責任も問われる
  • 家の運営そのものの問題として扱う

という方向に行かないと筋が通らない。

なのに今回は、ほぼ伸一個人の責任として処理されそうに見える。

そこに違和感が出るのはかなり自然だと思う。

夏美の「一番大事なものは失っていない」は、希望の言葉であると同時に、かなり危うい言葉でもある

たぶん夏美は、

  • 家族がまだここにいる
  • みんなが同じ場にいる
  • 完全にばらばらではない

そういう意味で言っているんだと思う。

でもその直前に見せられたのが、

子どもまで巻き込んだ土下座の連鎖だ。

だからこのセリフは、

見方によってはすごく危うい。

一番大事なもの=家族の和
と置いた瞬間に、

その和を守るためなら、個人の感情や事情を飲み込ませてもいい

みたいな方向へも行ってしまうからだ。

この場面は、“加賀美屋の再生の芽”を描こうとしているのに、同時に“加賀美家の怖さ”もかなり露出してしまっている場面だったと思う

制作側としてはおそらく、

ここで伸一を完全に切り捨てず、家族としてまだ一緒に立てることを描きたかったんだろう。

それ自体は分かる。

でも描き方としては、

  • 子どもの同調
  • 土下座の連鎖
  • 伸一一人への責任集中
  • しきたりとの整合性の弱さ

が重なって、かなり怖さも出てしまっている。

だからこの場面は、感動的な家族の再確認として見る人もいるだろうし、

かなり危うい家族主義として見る人もいるだろうなと思う。

自分は後者の引っかかりがかなり強い。

かなり印象に残るラストではあったけど、素直にいい場面とは言いにくい、かなり複雑な終わり方だったと思う。


まとめ

今回の第144回でまず印象的だったのは、加賀美屋の危機が続いているのに、旅館の時間は止まってくれないことだった。株の問題も、秋山の逃亡も、伸一の状態も、どれも深刻だ。それでもお客様は来るし、献立は考えなければならないし、環も夏美も笑顔で接客しなければならない。この“内側は崩れかけているのに、外側では平常運転を求められる”感じがかなりしんどかった。特に環が不安を押し隠して、すぐにお客様の献立の話へ戻る場面には、女将という立場の重さがよく出ていたと思う。

その一方で、伸一の描かれ方もかなり重かった。これまでは責められる側として見られてきたが、今回はもう、ただの加害者としては見られないほど壊れかけていた。カツノの遺影の前で泣き崩れ、「ごめん」としか言えない姿は、株を失ったこと以上に、自分がカツノの思いを踏みにじったと感じているからなんだろうなと思う。そんな伸一に対して、恵美子が「逃げているのは卑怯だ」と叱りつつも、「信じている」と伝え、最後には抱きしめる流れはかなり強かった。伸一のしたことを正しいとは言わない、でもそれでも見捨てない。そのバランスが絶妙で、今回いちばん人を救っていたのは恵美子だったと思う。

ただ、最後の土下座の場面は正直かなりきつかった。伸一が土下座し、恵美子も土下座し、時江も続く。そこまではまだ、痛々しくはあっても理解できる。でも、事情の分からない健太と勇太まで「お父ちゃんが悪いことをしたなら自分も謝る」と頭を下げるところで、自分はかなり嫌な気分になった。これを家族の和、団結、美しい絆として受け取るのは少し怖い。理由が分からなくても、とりあえず空気で謝る。そういう感覚を子どもに覚えさせてしまうのだとしたら、それはかなり危ういと思う。

さらに引っかかったのは、ここでもまた伸一一人に責任が集中していることだ。もちろん株を渡したのは伸一で、責任が重いのも事実だ。ただ、どうしてそこまで追い込まれたのか、なぜ秋山に入り込まれるところまで行ってしまったのか、その背景を誰も検証しようとしない。以前の「下の者の失敗は上の者が責任を取る」というしきたりを思い出すと、今回だって伸一だけを責めて終わるのはおかしいんじゃないかと思ってしまう。加賀美屋の筆頭株主だった伸一を軽んじ、柾樹ばかりを持ち上げ、話を聞こうともしなかった家族の側にも、自業自得の面はかなりあるはずだ。

だから今回のラストで、夏美が「加賀美屋は一番大事なものは失ってはいません」と言った時、自分は素直にはうなずけなかった。たぶん夏美が言いたい“一番大事なもの”は、家族のつながりとか、まだみんなが一緒にいることなんだろう。でも、その直前に見せられたのは、子どもまで巻き込んだ土下座の連鎖だった。第144回は、伸一が恵美子に救われる場面としては大きかった一方で、加賀美家という共同体の怖さもかなり露出した回だったと思う。きれいな話としてまとめるには、あまりにも苦いものが残る終わり方だった。

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