朝ドラ再放送『どんど晴れ』全156回総括感想|夏美の成長と一本桜が意味したものを最終回まで見届けて

どんど晴れ

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NHK朝ドラ再放送『どんど晴れ』を第1回から最終回まで、全156回見届けた。

毎日の放送ごとに感想を書き続ける一区切りはついたが、全話を見終えた今だからこそ、あらためて作品全体を振り返りたくなった。横浜でケーキ職人を目指していた夏美が、柾樹との結婚話の破談、加賀美屋での厳しい修業、人間関係の衝突、そして多くの別れと再生を経て、最終回でどこにたどり着いたのか。毎話感想を書く時間は終わっても、この作品について考えたいことはまだたくさんある。これからは少し、全156回を見たからこそ感じたことを、総括や考察という形で掘り下げて書いていきたいと思う。

第1回から繰り返し描かれてきた一本桜や座敷童、加賀美屋という家のしきたり、そして夏美が周囲にもたらした変化を踏まえながら、今回は『どんど晴れ』全156回を総括したい。

夏美は最初から「人を喜ばせる人」だった

『どんど晴れ』を最後まで見て、まず強く感じたのは、夏美は加賀美屋に来てから初めて「人のために動ける人」になったわけではないということだ。

第1回の時点で、夏美は父の誕生日用に作っていたケーキを、見知らぬ子どものために差し出していた。自分の都合よりも、目の前の相手の喜ぶ顔を優先してしまう。あの場面には、夏美という人物の本質がすでにきれいに出ていたと思う。

加賀美屋に来てからも、その性質は変わらない。餅で子どもたちにウサギやカメを作って場を和ませたり、自然に相手の気持ちをほぐしたりする姿は、まさに夏美らしさそのものだった。だから私は、『どんど晴れ』を「夢を捨てた物語」だとはあまり思わない。横浜ではケーキという形で人を喜ばせていた夏美が、盛岡ではもてなしという形で人を支えるようになっただけで、根っこにあるものはずっと同じだったのではないかと思う。

終盤で一本桜をモチーフにしたシブーストが加賀美屋に届けられる流れまで見ていると、夏美の中で「ケーキ」と「加賀美屋」は切れていなかったことがよく分かる。夏美は何かを捨てたのではなく、自分の力が別の形でも人を笑顔にできることを知っていったのだろう。

一本桜は、この物語そのものを表す象徴だった

『どんど晴れ』を思い出すとき、やはり外せないのが一本桜の存在だ。

柾樹にとって一本桜は、亡き母・俊江の思い出が残る場所であり、つらいときでも見上げれば笑顔に戻れた記憶の場所だった。そこで夏美は、柾樹の「心の一本桜になりたい」と願う。そして結婚を断られたあとでさえ、「つらい時や苦しい時、見上げればいつでも笑顔になれる、そんな桜になりたい」と言い切った。あの場面は、このドラマ全体の方向を決定づけた名場面だったと思う。

ただ、全156回を見終えた今あらためて感じるのは、この一本桜という象徴は、柾樹との恋愛だけを表していたわけではないということだ。夏美は結果的に、柾樹だけではなく、加賀美屋そのものにとっても、見上げれば少し気持ちが軽くなるような存在になっていった。カツノや平治が夏美を座敷童に見間違えたことも、ただの演出ではなかったのだと思う。

座敷童とは、その家に福をもたらし、空気を変える存在として描かれていた。そして終盤、加賀美屋に戻ってきた人たちの笑顔や、もう一度立ち上がっていく旅館の姿を見ると、夏美は本当にその役割を果たしていたのだと分かる。一本桜と座敷童は、違う形をした同じ象徴だったのかもしれない。つまり、傷ついた人や停滞した場所に、もう一度笑顔を呼び戻す存在という意味で。

加賀美屋は「守る価値のある古い家」だった

『どんど晴れ』の魅力は、加賀美屋をただの観光的な老舗旅館としてではなく、人の感情や歴史が折り重なった場所として描いていたところにもあった。

格式や伝統、しきたりの重みは確かにある。けれど、その一方で、この家には長年積み重なったわだかまりや、うまく言葉にできない感情もたくさんあった。カツノと環の緊張感、柾樹が抱えてきた寂しさ、家の中でそれぞれが背負ってきた役割。加賀美屋は最初から美しく整った家ではなく、守る価値があるからこそ、その中にある痛みやゆがみもまた濃く見える場所だったのだと思う。

だからこそ、この作品は「伝統か改革か」という単純な話にはならなかった。カツノが守りたかったものにも意味があり、環が変えようとしたことにも現実的な理由があった。どちらか一方だけが正しいわけではなく、それぞれが加賀美屋を思っているからこそぶつかっていた。その間に入った夏美は、理屈で勝つのでも、権力を持つのでもなく、目の前の人に向き合い続けることで、少しずつ空気を変えていった。

この「空気が変わっていく感覚」こそが、『どんど晴れ』の面白さだったように思う。

夏美が変えたのは、旅館の経営より先に人の関係だった

加賀美屋を本当に立て直したものは何だったのか。全156回を見終えて思うのは、経営や建て直しの議論よりも先に、人と人との関係が変わっていったことのほうが大きかったということだ。

夏美は最初から完璧なヒロインではなかった。失敗もあるし、感情的になる場面もあるし、思い込みで動くこともある。けれど、だからこそ彼女の変化には説得力があった。最初は柾樹のために、加賀美屋のためにと動いていた夏美が、少しずつ周囲の人の立場や痛みにも目を向けられるようになっていく。その積み重ねが、加賀美屋の人間関係を少しずつ変えていったのだと思う。

恵美子が気持ちを言葉にしやすくなったこと、佳奈がまっすぐな味方として存在感を増していったこと、仲居たちが戻り、旅館に活気が戻っていったこと。終盤の加賀美屋には、序盤にはなかった種類の笑顔が確かに増えていた。旅館を再建したのは、何か一つの劇的な出来事ではなく、人が戻り、人が話し、人が笑えるようになっていったことそのものだったのではないかと思う。

カツノの厳しさと孤独が、この物語を深くしていた

『どんど晴れ』は夏美の物語であると同時に、カツノという人物の物語でもあったと思う。

カツノは厳しい。理不尽に見えることもあるし、頑固すぎると感じる場面も多い。それでも最後まで見ていると、あの厳しさの奥には、家を守り続けてきた人の孤独と覚悟が確かにあったことが見えてくる。女将として働き続けた義理の娘・俊江を失い、出ていった息子・政良の問題を抱え、それでも加賀美屋だけは守らなければならなかった。その思いの重さが、カツノという人物の芯になっていたのだろう。

だからこそ、政良との再会や、環との関係の変化、そして夏美への継承は、この物語の大きな見どころだった。特に、着物が引き継がれていく場面や、カツノを囲んだ家族写真の場面には、加賀美屋という家が「支配」から「継承」へと静かに移っていく感触があった。ただ厳しいだけではなく、守ってきたものを次へ渡そうとする人としてのカツノが見えたからこそ、終盤の加賀美屋には深みが出たのだと思う。

『どんど晴れ』の“めでたしめでたし”は、甘いだけの結末ではなかった

第2回で「どんど晴れ」という言葉は、昔話の最後に使う“めでたしめでたし”のような意味だと説明されていた。けれども、全156回を見たあとでこの言葉を振り返ると、その意味はもっと深いものだったように思う。

『どんど晴れ』における“めでたし”は、何もかもが完璧に解決した状態ではない。誰も傷つかず、誰も間違えず、すべてがきれいに整った世界でもない。むしろ、傷ついた人も、間違えた人も、喪失を抱えた人もいるまま、それでもなお笑って前を向こうとすること、そのこと自体が『どんど晴れ』だったのではないかと思う。

終盤、加賀美屋には再び人が戻り、笑顔が戻り、一本桜をモチーフにしたシブーストを囲む場面には、以前とは違う明るさがあった。昔のままに戻った幸福ではなく、いろいろなことを知ったうえで、それでもつながり直した人たちの幸福。だからこの作品の最後にふさわしい言葉は、やはり「どんど晴れ」なのだろう。

全156回を見終えて思ったこと

『どんど晴れ』は、たしかに古い朝ドラだと思う。作劇の荒さを感じるところもあるし、登場人物同士がもっとちゃんと話せばいいのにと思う場面も少なくない。けれど、それでも最後まで見た今、この作品をただ懐かしい再放送だったとはとても言えない。

夏美は完璧なヒロインではなかった。柾樹も、環も、カツノも、みんな不器用で、偏っていて、時には理不尽だった。けれど、そんな人たちが、一人の外から来た娘をきっかけに、少しずつ変わっていく。その過程を156回かけて積み上げたことに、この作品の価値があるのだと思う。

夏美は加賀美屋を救った救世主だったというより、加賀美屋の中に元々あった優しさや思いやりを、もう一度表に引っぱり出した人だったのではないか。だからこそ彼女は、一本桜のように、そして座敷童のように、この物語の中心に立つことができたのだと思う。

『どんど晴れ』とは、問題のない世界の物語ではない。問題や痛みを抱えたまま、それでも最後に笑顔へたどり着こうとする人たちの物語だった。だからこそ、この朝ドラは最終回まで見届ける意味のある作品だったし、今こうして全156回を振り返っても、ちゃんと語る価値のある物語だったと思っている。

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