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2026年7月27日放送の『風、薫る』第86回は、直美(上坂樹里)とりん(見上愛)の道が、それぞれ新しく動き出した回だった。
文(内田慈)との親子物語に一区切りがついた直美は、貧しい人たちのための派出看護の会を作ろうと動き出す。
一方、新潟で舎監として働いているりんの前には、黒川(平埜生成)が現れ、看護婦取締として黒川病院で働いてほしいと頼む。
直美は病院を辞めて外へ出ようとしている。
りんは、一度離れた看護の現場に戻るかもしれない。
二人とも、自分で道を切り開いているようでいて、周囲に導かれながら、新しい場所へ進んでいるようにも見えた。
前回の記事はこちらです。

第86回のポイント
- 直美、美津(水野美紀)、環(英茉)は、環の入学写真を見て盛り上がる。
- 美津は、その写真を早く旦那様にも見せないと話す。
- 新潟の寮に黒川が現れ、りんを訪ねてくる。
- 黒川は新潟の大きな病院である黒川病院の跡取りだった。
- 黒川は、りんに看護婦取締として黒川病院で働いてほしいと頼む。
- りんは、看護婦としてやっていく自信がないと断る。
- 黒川は、患者のために悩める人こそ現場にいるべきだと伝える。
- 横沢(井上祐貴)は、看護婦を軽く見るような発言をし、りんは反論する。
- 直美は、貧しい人たちのための派出看護について木村(前野朋哉)や捨松(多部未華子)に相談する。
- 捨松は、直美に派出看護専門の会を作ることを提案する。
- 直美は多田院長(筒井道隆)に退職を願い出る。
- 多田は直美の考えを理解し、町医者のリストを渡して支援する。
- 万作(飯尾和樹)と多田院長が幼なじみであることが分かる。
- 直美は、文が遺したお金を元手に派出看護の会を始めると、りんへ手紙で伝える。
- 直美は看護婦取締として引き継ぎを行い、ヨシ(明星真由美)からも認められる。
個人的に印象に残ったこと
今回は、直美、美津、環が入学の時に撮った写真を見て盛り上がっている場面から始まった。
直美は、この写真を早くりんに送ってあげないとと言う。
美津は、早く旦那様にも見せないと、と言う。
環の入学写真が、一ノ瀬家にとって大事な記念になっている。
りんは新潟にいる。
父親も不在である。
それでも、直美と美津が環の成長を一緒に喜んでいる。
直美は本当に、環の二人目のお母さんになっているのだと思う。
そんな穏やかな東京の一方で、新潟ではりんの前に思わぬ人物が現れる。
りんが舎監を務める寮に、黒川が訪ねてきた。
男の人がりんを訪ねてきたことで、生徒たちはざわつく。
たしかに、女子寮に突然男性が訪ねてくれば、そりゃざわつくだろう。
黒川は、突然すまないが外でゆっくり話せないかと、りんを外へ連れ出す。
ここで分かったのは、黒川がこの辺りで一番大きな病院である黒川病院の跡取りだったということだった。
帝都医大病院で修業し、4月から新潟で働くために戻ってきたらしい。
医療機械も最新のものをそろえ、東京と同じ治療ができるように努めているという。
黒川は、帝都医大病院にいた頃から、トレインドナースたちの理解者のように見えていた。
だから、黒川が新潟でりんを必要としていること自体に大きな違和感はない。
ただ、こういう形で再会するとは思わなかった。
黒川は、新潟には一人もトレインドナースがいないことを嘆く。
そして、りんに看護婦取締として黒川病院で働いてもらいたいと頼み込む。
給金は帝都医大病院と同じだけ払うという。
これは本気だと思う。
地方の病院で、東京の大学病院と同じ給金を出す。
黒川にとって、りんの力が本当に必要なのだろう。
しかし、りんは丁重に断る。
「すみません。私にはできません。」
黒川は、りんがまだ手が震えることを気にしているのかと尋ねる。
りんは、あれからまだ患者さんに触れていないから分からないと答える。
ただ、りんは「看護婦としてやっていく自信は……」と、自分には無理であることを伝える。
山本の件は、まだりんの中に残っている。
看護婦として患者に触れること。
患者を助けること。
患者の死と向き合うこと。
そのすべてに、まだ怖さがあるのだろう。
黒川は問う。
「本当に、一生、このまま看護に関わらないつもりなのか?」
そして続ける。
「僕は、君のような、患者のために悩める人こそ現場にいるべきだと思うがね。」
この言葉は重かった。
りんは、患者のために悩みすぎる人である。
それが行き過ぎて、山本を病院から連れ出し、自分自身も壊れてしまった。
だからこそ看護の現場から離れた。
でも黒川は、その悩めること自体に価値を見ている。
患者のために悩める人こそ現場にいるべき。
これは、りんをもう一度看護の道へ引き戻す言葉になるのかもしれない。
黒川は、もう少しゆっくり考えてから返事を聞かせてほしいと言う。
りんも、分かりましたと応じる。
まだ決まったわけではない。
でも、りんに再び看護の道が見えてきたことは確かだ。
その話を聞いていた横沢が、いい話なのになぜ断ったのかとりんを問い詰める。
横沢は、看護婦というのはちょっと周りの目が大変そうではありますが、と看護婦を下に見るような口ぶりで言う。
ここで、りんはきっぱり反論する。
「看護婦は看護や衛生などを専門に学び訓練を受けた人が就く仕事です。決して、けんえんされるべきものではありません。」
これは良かった。
りんは今、看護婦として働く自信を失っている。
でも、看護婦という仕事の価値まで否定しているわけではない。
自分は戻れないかもしれない。
でも看護婦という職業を軽く見られるのは違う。
そこははっきり言える。
りんの中に、看護婦としての誇りはまだ残っているのだと思う。
東京では、環が直美に花を摘んでくる。
その花を文に供える。
文は亡くなった。
でも、直美や環の暮らしの中に、文の存在は静かに残っている。
そして直美は、木村と派出看護について話し合っていた。
木村によれば、看護婦を派出しているのは中等以上の家であり、金のある患者に対して一日50銭ほどで行っているようだ。
つまり、派出看護はすでに存在している。
ただ、それは裕福な人のためのものだ。
直美が助けたい人たちとは違う。
直美は、万作が盗み聞きしていることに気づく。
木村が、うちの病院の医者が慈善で治療するのは難しいと思うと言う。
すると直美は、万作に聞こえるように、看護婦だけで患者の家に行くのならできますかねと木村に問う。
木村は、看護婦だって慈善で看護するのは難しいと答える。
木村は今回も、あまり頼りにならない。
言っていることは現実的ではある。
医者も看護婦も慈善だけでは動けない。
それは確かだ。
でも、どうすれば可能になるかを考える雰囲気はあまりない。
直美はそこに限界を感じたのだろう。
直美は捨松に、貧しい人たちのための派出看護について相談しに行く。
直美は、自分が住んでいた長屋の人たちは、病院にかかることも看護を受けることもできないと言う。
病にかかれば、仕方ないと諦める。
看護を受けられれば回復するものもあるのに。
直美はそれを悔しがる。
これは、トヨや文のことが大きく影響しているのだと思う。
お金がないから医者にかかれない。
病院に行けない。
治療や看護を受ける前に諦める。
直美は、その現実を目の前で見てきた。
帝都医大病院では採算が取れない。
裕福な人からは看護料をもらい、貧しい人は無料にすれば、採算は取れるのではないか。
直美はそう考える。
ただ、大学病院ではそういうわけにはいかない。
この悩みに対して、捨松は提案する。
だったら、自分で派出看護専門の会を作ればどうか。
日本にはまだないが、アメリカにはすでに派出看護の会があるという。
看護料は松竹梅の三段階。
派出する看護婦の等級や患者の容体によって分ければ、利益を出せる組織にできる。
これはかなり具体的な提案だった。
直美は、梅は無料にして、松は高額にするプランを考える。
ただ、それを自分が女の身でやることに躊躇する。
捨松は「日本初ですね」と言う。
難しいことは承知しているが、それに挑戦できる直美を羨ましくも思うという。
捨松は、大山巌(高嶋政宏)の力を借りてさまざまな活動ができる。
しかし、それではこの社会で女の地位を上げることはできないと気づいたという。
「いい人になりたいのではなく、この社会を変えたいのに……。」
捨松はそう歯がゆい思いを語る。
ここは少し引っかかった。
社会を変えたいなら、やればいいのではないかとも思ってしまう。
もちろん、大山巌の妻という立場が大きすぎて、一人の人間として小回りがきかないのかもしれない。
名前が大きくなりすぎると、個人として自由に動くことが難しくなる。
支援はできる。
でも、自分が先頭に立って社会を変えることは難しい。
捨松はそういう立場なのだろうか。
その意味では、直美のように身一つで動ける人が羨ましいのかもしれない。
捨松は、直美がやることは、たとえ小さな歩みでも、新しい女の生き方につながると言う。
これは、直美の背中を押す言葉だった。
後日、直美は多田院長に、帝都医大病院を退職することを願い出る。
多田は「派出看護をするつもりですか?」と、すでに直美の考えに気づいている。
直美は「万作さんから聞きましたか?」と、いたずらっぽく聞く。
多田は「聞こえるように話したのでは?」と返す。
このやり取りは面白かった。
直美は万作に聞こえるように話していた。
万作はそれを多田に伝えた。
そして多田も、直美の意図を見抜いている。
直美は、自分たちで派出看護をする会を作ろうと思っていることを伝える。
満足に治療を受けられない貧しい人たちのために。
それは、この病院では難しいと判断した。
多田は「賢明な判断ですね。承知しました」と、あっさり受け入れる。
渡辺(森田甘路)は「困ります」とうろたえる。
直美は、迷惑のないよう、辞めるのはしっかり引き継ぎをしてからと考えていると答える。
多田は、大学病院は医学の研究、発展のための病院であり、今の医学では救えぬ命を、明日救うべく進み続けなければならないと言う。
一方で、今の医学から、貧しさゆえにこぼれ落ちる命を救う者もいなければならない。
この言葉はとても良かった。
大学病院の役割。
町の人々に近い医療や看護の役割。
どちらも必要である。
多田は、机の引き出しからめぼしい町医者のリストを取り出し、直美に渡す。
私の紹介だと名前を出して構わない。
そう言う多田に、直美は深々と頭を下げる。
渡辺は困惑している。
多田は最後に言う。
「どちらの医も仁術なり。」
多田院長は、トレインドナースたちの敵なのか味方なのか、これまで掴みどころのない人物だった。
でも、この言葉の前では、敵も味方も関係ないように思えた。
大学病院で医学を進める者。
貧しい人たちの暮らしの中へ入っていく者。
どちらも、目の前の命に真摯に向き合っている。
多田は、その両方を認めているのだと思う。
直美は万作に感謝を告げる。
万作は、期待に応えられたようでよかったと言う。
万作は、りんと始めるのかと問う。
直美は、りんは新潟で頑張っているので頼りませんと答える。
すると万作は言う。
「人を動かすのは上手だけど、頼るのは下手な人にさ、素直に、こう、『困った』なんて頼られたらうれしいもんだよ。」
直美は、誰の話ですかと気にする。
万作は、幼なじみの話と答える。
ここで、直美は多田院長と万作が幼なじみであったことに気づく。
万作は院長のスパイなのではないかという見方もあった。
でも、実際は幼なじみだった。
仏頂面の多田院長が「困った」とこぼせる、数少ない相手が万作なのだろう。
この関係は少し面白い。
万作は、ただ院内の情報を流す人ではなく、多田の本音を受け止める存在でもあるのだと思う。
直美は手紙でりんに、病院を辞めることを伝える。
文が残してくれたお金を元手に、派出看護の会を自分でやってみることにした。
手紙には、環が入学の時に撮った写真も添えられていた。
直美の道は決まった。
文が遺したお金が、直美の新しい活動の元手になる。
これは、文が直美に遺したものが、ただのお金ではなかったということでもある。
文は、直美の次の人生を動かす力を遺したのだと思う。
帝都医大病院では、看護婦取締として引き継ぎを行う直美が、看病婦たちを上手く転がしている。
その様子を、ヨシが見ていた。
直美はヨシに「あれくらい言っておけば力になってくれますかね」と聞く。
ヨシは「あんた、そういうのもできるようになったら、どこ行っても取り締まれるよ」と認める。
直美は「お世話になりました」と頭を下げる。
ヨシとフユ(猫背椿)は、本当に頼りになる看病婦だった。
最初は一筋縄ではいかない相手だった。
でも直美は、彼女たちといい関係を築いてきた。
看護婦取締としての直美の成長を、最後にヨシが認める。
ここは、帝都医大病院での直美の区切りとして良かった。
多田院長「どちらの医も仁術なり。健闘を祈る」
派出看護の会を作るため帝都医大を辞めると告げた直美に
多田院長は力を貸してくれそうな町医者のリストを渡してくれました。👇見逃し配信https://t.co/sTGsLfuusF#朝ドラ #風薫る
上坂樹里 筒井道隆 森田甘路 pic.twitter.com/r15kJA2Z3S— 朝ドラ「風、薫る」公式 (@asadora_nhk) July 27, 2026
黒川の再登場で、りんにも看護の道が戻ってきた
黒川が新潟の大きな病院の跡取りだったことには驚いた。
ただ、帝都医大病院にいた頃から、黒川はトレインドナースたちへの理解がある医師だった。
だから、りんを看護婦取締として迎えたいという話には説得力がある。
りんはまだ自信を失っている。
でも、黒川はりんの「患者のために悩めるところ」を評価している。
りんが本当に一生看護に関わらないつもりなのか。
この問いは、りんにとってかなり重い。
ここからりんがどう答えるのかが気になる。
捨松は社会を変えたいなら動けばいいのでは、とも思う
捨松の「いい人になりたいのではなく、この社会を変えたいのに……」という言葉は印象的だった。
ただ、少し引っかかりもある。
社会を変えたいなら、やればいいのではないかと思ってしまうからだ。
もちろん、捨松には捨松の立場がある。
大山巌の妻としてできることは多い。
でも、その立場があるからこそ、自分の名前で自由に動くことは難しいのかもしれない。
支援者にはなれる。
でも、自分自身が先頭に立って新しい女の生き方を切り開くことはできない。
だから直美が羨ましい。
そういう複雑な立場なのだろう。
多田院長と万作は幼なじみだった
多田院長と万作の関係は、ここで一気に見え方が変わった。
万作は院長のスパイのようにも見えていた。
でも実際は、幼なじみだった。
多田院長が「困った」と言える相手。
仏頂面の院長にも、そういう相手がいたのだと思うと少し面白い。
多田院長は、直美の退職をあっさり認めただけではなく、町医者のリストまで渡してくれた。
「どちらの医も仁術なり。」
この言葉の前では、病院の内と外、敵と味方という分け方はあまり意味がないのかもしれない。
直美は周りを自然と巻き込んでいく
直美はどうしてこうも周りから助けられるのだろう。
捨松が背中を押す。
多田が町医者のリストを渡す。
万作が間をつなぐ。
ヨシが認める。
文が遺したお金が元手になる。
直美は、何か特別なことをしているのだろうか。
第79回で文が「人の運の量は決まっている」というようなことを言っていた。
幼少期に何もいいことがなかった直美の運が、今になって大爆発しているのかもしれない。
ただ、それだけではないとも思う。
直美には行動力がある。
人を動かす力がある。
困ったことをそのままにできない。
そういう直美だから、周りも自然と巻き込まれていくのだろう。
派出看護は本当に成り立つのか
直美は、貧しい人を救いたいという思いがかなり強い。
派出看護の会を作るという発想は大きな一歩だと思う。
ただ、正直に言うと、本当にニーズがあるのか、採算が取れるのかはまだ分からない。
裕福な人から高額な料金を取り、貧しい人は無料にする。
理想は分かる。
でも、現実にそれで回るのかは簡単ではないはずだ。
それでも、直美は動き出す。
何もしなければ、貧しい人たちは病気になっても諦めるしかない。
それなら、まずは動いてみる。
その行動力はすごいと思う。
二人は自分で切り開くというより、導かれて進んでいるのかもしれない
今回、直美は派出看護の道へ進み始めた。
りんは、新潟で看護に戻る可能性が出てきた。
二人の道が同時に動き出した回だった。
ただ、直美もりんも、自分だけで道を切り開いているというより、誰かに導かれて進んでいるタイプなのかもしれない。
直美は、文の死、捨松の助言、多田の支援、万作の橋渡しによって動き出した。
りんは、黒川の誘いによって、もう一度看護と向き合うことになった。
自分で選んでいるようでいて、周囲との関係の中で道が開いていく。
それが、この二人らしいのかもしれない。
まとめ
第86回は、直美が派出看護の道へ進み、りんにも新潟で看護に戻る可能性が出てきた回だった。
文が遺したお金は、直美の新しい活動の元手になる。直美は帝都医大病院を離れ、病院に来られない貧しい人たちのために動き出そうとしている。
一方、りんの前には黒川が現れた。看護婦としての自信を失ったりんが、もう一度看護に関わるのかどうかも大きな見どころになりそうだ。
直美もりんも、自分一人で道を切り開くというより、周囲に導かれながら新しい道へ進んでいる。二人の物語が、ここからまた別の形で動き出した区切りの回だった。
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