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2026年4月2日に放送された『どんど晴れ』第142回。
第142回は、これまで「何となく怪しい」で積み上がってきた秋山の不穏さが、ついにかなり具体的な形を持ち始めた回だった。仲居たちは秋山の言葉をきっかけに賃上げ要求を考え始め、加賀美屋の内部には従業員レベルの火種まで広がっていく。一方で柾樹は、香織からの情報と自分の調査をつなぎ合わせることで、盛岡のリゾート開発と外資、さらに加賀美屋を狙う乗っ取りの構図にまでたどり着こうとしていた。今回は、家族の対立や感情のもつれだけではなく、加賀美屋が本当に“外から狙われている”ことが見え始めたのが大きかったと思う。
※この回は、前日の展開を踏まえて見ると、より重みが増します。
👇 前回(第141回)の感想はこちら

- 柾樹が秋山の懐へ入る――静かな探り合いの中で見えた小さな動揺
- 仲居たちの不満がついに形になり始める――秋山の火種が現場へ広がった場面
- 佳奈と聡の距離、そして一人残される恵美子
- 個人的感想
- この場面は、加賀美屋の重苦しさの外側で、それぞれの人間関係が少しずつ動いている場面なんだと思う
- 夏美が伸一を見直すのは、伸一が正しいからというより“やっと話せるようになったから”なんだと思う
- 佳奈はこの作品の中ではかなり珍しく、“問題は大きくなる前に処理した方がいい”という感覚を持っている
- 聡と佳奈の関係が進むことで、夏美の周囲の人間関係もようやく“次の段階”へ進み始めている
- 夏美は恋愛の空気には鈍いが、“失われた気持ち”には少しずつ気づけるようになってきている
- 最後に恵美子を一人で映すことで、この場面全体が少し苦く締まっている
- この場面は、“加賀美屋の危機”の中で、それでも人間関係は少しずつ前へ進んでいることを見せる回でもある
- 個人的感想
- 浩司は席を立ち、伸一はさらに秋山へ傾く――対話が成立しないまま進む危うい夜
- 個人的感想
- この場面で起きているのは「浩司の説得失敗」ではなく、「説得の場に見せかけた切り崩しの不成立」なんだと思う
- 浩司は説明できないが、危険は感じ取っている人として描かれている
- 秋山は「家族が頑な」だと思っているが、実際には伸一の説明の中身もまだ空疎なんだと思う
- 秋山は「夢を語れ」とは言わず、「事を詰めろ」と現実路線を装ってさらに深く入り込む
- 「全面的に援助してもいい」は、いちばん大事なところを曖昧にしたまま伸一を安心させる言い方
- 伸一はもう“資金調達の合理性”ではなく、“秋山が自分の夢を実現してくれること”に感謝している
- この場面は、「浩司を説得できなかった」ことより、「伸一がもう秋山の言葉の精査をやめている」ことの方が深刻
- この場面は、家族内の対立が続く一方で、伸一だけがどんどん“秋山とだけ通じる言語”の中へ入っていく場面だった
- 個人的感想
- ついに秋山の正体が輪郭を持つ――加賀美屋は“乗っ取り”の標的なのか
- 個人的感想
- この場面で大きいのは、“秋山が怪しい”から“秋山は乗っ取りの一員かもしれない”へ段階が変わったこと
- 柾樹はここで初めて、“家族の対立を処理する人”ではなく“外の脅威を分析する人”として本領を見せている
- 香織の役割は、元カノという感情の火種ではなく“外の世界の情報を持ち込む窓口”としてかなり大きい
- 土地取引の活発化が出てきたことで、狙いが“加賀美屋そのもの”だけでなく“盛岡全体の開発”へ広がる
- 柾樹の「今、事実が分かれば何か手を打てる」は、希望でもあり、かなり危うい願望でもある
- この場面は、“家族内の争い”を超えて“相手の正体が外の仕組みとして見えてくる”場面
- 夏美が驚くところで終わるのは、視聴者の理解と夏美の理解に少し差があるからだと思う
- この場面は、“対立の原因”がようやく人間の好き嫌いから切り離されて、外部の脅威として認識される場面だった
- 個人的感想
- まとめ
柾樹が秋山の懐へ入る――静かな探り合いの中で見えた小さな動揺
- 柾樹(内田朝陽)が秋山(石原良純)のオフィスを訪れる。
- 柾樹は、秋山の経歴や、なぜ盛岡に来たのかといったことについて探りを入れる。
- 秋山は、柾樹の質問に対して淀みなく答えていく。
- ただし、盛岡に来た理由を説明した時だけは、少し動揺したようなしぐさを見せる。
- その後、秋山は梶原(中尾彬)に電話で報告する。
- 梶原から、大丈夫なのかと確認される。
- 秋山は、厄介なのが一人いるが、もう手は打ってあると答える。
個人的感想
柾樹が、素性もよく分からない怪しい人間のオフィスに一人で乗り込んだのはかなり驚いた。もっと慎重に動くかと思っていたが、落ち着いた様子で秋山と向き合っている。柾樹って、こんなに肝の据わったやつだったんだなと思った。
しかも、お互いに探り合っている状況だと分かっているはずなのに、ただ睨み合うだけじゃなく、褒めるところは褒めつつ、核心に近い質問も入れていく。このやり取りはなかなかしびれた。静かな場面なのに緊張感がかなりあった。
柾樹が、なぜ盛岡に来たのかを聞いた時だけ秋山が少し動揺していたのも印象的だった。あそこはやっぱり何かあるんだろうなと思う。盛岡を狙ったのは秋山自身の判断なのか、それとも梶原の命令で送り込まれただけなのか。そこが分かると、秋山という人間の立ち位置もかなり見えてきそうだ。
今までのどんど晴れを見ていて、「この先どうなるんだろう」と毎回続きが気になる感じはそこまでなかったんだけど、秋山が出てきてからは、明確に先が気になるようになった。個人的には、秋山が出てきてくれてよかったと思っている。
この場面で初めて、柾樹と秋山が“正面から同じ土俵に立った”感じがある
これまでも柾樹は秋山を怪しんでいた。
でも基本的には、裏で調べたり、家族の中で警戒したりする段階だった。
今回は違っていて、
柾樹が自分から秋山のいる場所へ行き、直接探りを入れている。
つまりここで初めて、
疑っている側と疑われている側が、真正面から同じ場に立った感じがある。
それだけでかなり緊張感がある。
柾樹はここで、“家族の中で押し返される人”ではなく、“外敵に向かって詰める人”として見えた
ここしばらくの柾樹は、家族の中で正論を言い、でも伸一との関係では空気が重くなり、やや閉塞感のある立場だった。
でも今回は違う。
外部の怪しい人間に対して、一人で出向き、冷静に質問を重ねている。
つまりこの場面では柾樹が、
守りに回る人ではなく
危険の中心に踏み込んで確かめる人
として描かれているんだと思う。
ここはかなり印象が変わる。
秋山が盛岡に来た理由だけわずかに揺れたのは、“経歴”より“目的”の方が本体だからだと思う
経歴や肩書きはいくらでも整えられる。
それっぽい説明もできる。
でも「なぜ盛岡なのか」という問いは、秋山の仕事の本当の目的に近い。
だからそこだけ少し揺れる。
つまりここで秋山が動揺したのは、
柾樹が単にプロフィールを聞いているのではなく、
秋山の行動の動機そのものに触れたから
なんだと思う。
かなりいい質問だった。
秋山は表では余裕を見せるが、裏ではすでに柾樹を“厄介な一人”として認識している
梶原との電話で「厄介なのが一人いる」と言う。
これは明らかに柾樹のことだろう。
つまり秋山は、柾樹をただの若造や家族の一人として軽く見ていない。
ちゃんと障害として認識している。
ここが大きくて、
秋山にとっても柾樹は、
計画を狂わせる可能性のある存在
になっている。
だからこの二人の対立は、本格的に始まった感じがある。
「もう手は打ってある」という言葉が、柾樹の前進と同時に不穏さも増している
柾樹が動き始めたことで、見ている側としては少し希望が出る。
でもその直後に秋山が「もう手は打ってある」と言うから怖くなる。
つまりこの場面は、
柾樹が秋山の正体に近づいているという前進と、
秋山の方がすでに一歩先で備えているという不穏さが、
同時に置かれている。
だから爽快な逆襲の始まりにはならず、むしろ緊張感が増す。
この場面は、“情報戦”が本格的に始まった場面でもある
家族の感情のぶつかり合い、従業員への懐柔、そういうフェーズから少し進んで、今回は
- どこまで相手の素性を知れるか
- 相手の狙いを見抜けるか
- 誰が誰より先に事実へ届くか
という、かなりはっきりした情報戦の場面になっている。
その意味で、これまでのどんど晴れにはあまりなかった種類の面白さが出てきているんだと思う。
秋山が出てきてから“続きが気になる”ようになったのは、善悪より“仕組み”が動いているからかもしれない
今までは、家族の感情や人間関係の揺れが中心だった。
それはそれで大事なんだけど、展開としては読める部分も多かった。
でも秋山が出てきてからは、
- 何を狙っているのか
- 背後に誰がいるのか
- どんな手を打っているのか
という、“仕組み”の部分が動き始めている。
だから先が気になるんだろうなと思う。
この場面は短いけど、
柾樹が初めて秋山の本丸に近づき、同時に秋山も柾樹を本気で警戒し始めた
という意味で、かなり重要な場面だったと思う。
仲居たちの不満がついに形になり始める――秋山の火種が現場へ広がった場面
- 仲居たちは、女将に対して賃上げ要求をするかどうか話し合っている。
- そこへ時江(あき竹城)と夏美(比嘉愛未)がやって来る。
- 時江が入ってきたことで、仲居たちの話はいったん打ち切られる。
- 佳奈(川村ゆきえ)は、そのやり取りを夏美の耳に入れておいた方がいいと思い、話しかけようとする。
- しかし時江に邪魔されてしまい、その場では話せない。
- その後、環(宮本信子)、夏美、仲居たちはお客様の到着を出迎える。
- 場面はイーハトーブに移る。
- 佳奈は、昼間言えなかったことを夏美に話している。
- 秋山から加賀美屋の賃金水準が低いと聞かされ、仲居たちが賃上げ交渉をしようとしていることを佳奈が説明する。
- さらに佳奈は、その話には康子(那須佐代子)・則子(佐藤礼貴)・恵(藤井麻衣子)だけでなく、清美(中村優子)も加わっていると伝える。
- そのことに夏美は驚く。
- ビリー(ダニエル・カール)や聡(渡邉邦門)も、人にはそれぞれ事情があるし、給料は高い方がいいだろうと理解を示す。
- 裕二郎(吹越満)は、どうして秋山のような人間が加賀美屋に出入りしているのかを気にする。
- 夏美は、秋山は伸一のビジネスパートナーなのだと説明する。
個人的感想
このどんど晴れの時代設定である2006年当時は、まだ今ほど労働者の権利意識は高くなかったんじゃないかと思う。今みたいに、賃上げ要求や有給休暇の権利や、そのほかの労働条件について自分たちの権利をはっきり主張する空気は、ここまで強くなかった気がする。そしてこのあと数年でリーマンショックが来る。そうなると雇用環境はさらに悪化して、「雇ってもらえるだけありがたい」と思わざるを得ない人もかなり出てくるはずだ。今、仲居たちは賃上げを要求しようとしているけれど、数年後には雇用の維持そのものが最優先になるかもしれない。そう考えると、この場面は時代の境目みたいなものも少し感じてしまう。
話は少しずれたけど、佳奈が夏美に何か伝えようとするたびに、だいたい時江に邪魔される。今回は急ぎの用件ではなかったからまだいいけど、今後また同じことがあるなら、「すぐ終わりますから」と一言言ってでも、その場で話してしまった方がいいのかもしれない。
それにしても、康子・則子・恵だけではなく、清美までこの話に加わっているというのは、夏美にとっても佳奈にとってもかなり衝撃だったんだろうなと思う。ただ、清美の事情を考えると、お金を優先したとしても責めることはできない。シングルマザーで、子どももいて、さらに入院した母までいる状況なんだから、きれいごとだけでは済まないよなと思う。
環は昨日、平治に愚痴をこぼせる関係を作った。一方で夏美は、イーハトーブの仲間に加賀美屋の内情をかなり話している。こうなってくると、大女将・カツノが環に言っていた「一人で耐え抜く揺るぎない心」みたいなものは、もう現実にはそこまで貫かなくていい、ということなのかもしれない。昨日、平治自身が「カツノだってぼやいていた」と言っていた以上、何があっても一人で耐え抜いて揺るがない、というのは理想としては立派でも、現実にはかなりハードルが高い生き方なんだろうなと思った。
この場面で大きいのは、「秋山の火種」がついに仲居たちの行動に変わり始めたこと
前回までは、秋山が
- 給料は安い
- よそと比べると不利かもしれない
- 今のままでいいのか
と、不満の種をまいている段階だった。
でも今回は違う。
仲居たちが実際に
賃上げ要求をするかどうかを話し合い始めている。
つまり秋山の言葉は、単なる雑音では終わらず、
現場の動きそのものを変え始めている
ここがかなり大きい。
賃上げ要求そのものが悪いのではなく、“誰の言葉で動かされているか”が問題
ここは大事で、仲居たちが賃上げを考えること自体は、別におかしなことではない。
賃金が低いなら不満が出るのは当然だし、生活がある以上、少しでも高い方がいいと思うのも当たり前だ。
問題は、それが
自分たちで待遇を見直してほしいと考えた結果
なのか、
秋山にうまく煽られてそう思わされた結果
なのか、ということなんだと思う。
つまりこの場面は、権利意識の目覚めのようにも見える一方で、
その目覚めがかなり危うい誘導の上に乗っているところが厄介だ。
清美が加わっていることが、この話を単なる“若い仲居の浮つき”で終わらせなくしている
康子・則子・恵あたりだけなら、
夢を見せられて浮ついている、でまだ片づけられるかもしれない。
でも清美まで入っているとなると、話はかなり違ってくる。
清美は、生活の現実を強く背負っている側の人間だ。
その清美が動くということは、
この賃金の話が、ただの軽い不満ではなく
生活の切実さに触れてしまっている
ということなんだと思う。
だから夏美と佳奈が衝撃を受けるのも分かる。
ここで初めて、この問題が本当に現場の土台に触れた感じが出ている。
佳奈はここで、“現場の異変を最初に察知して若女将へ上げる人”としてかなり重要
佳奈は前にも、何かおかしいと感じる役回りをしていた。
今回もまたそうだ。
ただ噂話に加わるのではなく、
これは夏美に知らせておいた方がいい
と判断している。
つまり佳奈はここで、
現場の小さな違和感を最初に拾って、上へ伝えるセンサーみたいな役割になっている。
かなり大事な立ち位置だと思う。
イーハトーブで話す夏美は、もう“加賀美屋の内情を外に持ち出す人”にもなっている
正直、加賀美屋の中の問題をここまで外で話して大丈夫かと心配になる。
でも今の夏美は、イーハトーブの仲間たちにかなり率直に話している。
これは秘密管理の意味では危うさもある。
ただ一方で、
夏美自身がもう一人では抱えきれない段階に来ている
ことの表れでもあるんだろうなと思う。
環は平治にこぼす。
夏美はイーハトーブにこぼす。
結局、大女将のように全部を一人で抱え込んで揺るがない、なんてことは、現実には誰にもできないんだろう。
「一人で耐え抜く揺るぎない心」は、理想ではあっても現実の運営には向かないのかもしれない
この回を見ていると、カツノが環に求めていたあの理想像は、
象徴としては美しいけど、
実務としてはかなり無理があるようにも見えてくる。
なぜなら実際には、
- 環も愚痴をこぼす
- 夏美も外で相談する
- 平治も支える
- 現場も揺れる
からだ。
つまり旅館を支えるのは、一人の強さではなく、
誰かに話せること、誰かが聞けること、揺れながらでも持ちこたえること
なのかもしれない。
この場面はそこを逆に示している気がした。
この場面は、“経営方針の対立”がついに“労務問題”へ接続した場面でもある
これまでの中心は、建て替えかリフォームか、誰が経営を握るか、という話だった。
でも今回はそこに、
賃金水準と現場の不満
がはっきり接続された。
つまり加賀美屋の危機はもう、
家族経営の内輪もめだけではなく、
労務の火種まで抱え始めた
ということなんだと思う。
ここまで広がってくると、かなり危ない。
この場面は静かな会話中心だけど、実はかなり重大で、
加賀美屋が内側から崩れるルートがもう一つ増えた場面だったと思う。
浩司は席を立ち、伸一はさらに秋山へ傾く――対話が成立しないまま進む危うい夜
- スナックでは、レナが伸一に酒を作っている。
- しかしレナは別のテーブルに呼ばれ、その場を離れる。
- 秋山は、伸一がレナに一言も声をかけないことを気にかける。
- 浩司は、すぐに帰ろうとする。
- 秋山は、浩司の話もいろいろ聞こうと思っていたと伝える。
- しかし浩司は、話すことなどないと答える。
- さらに、秋山と伸一のやろうとしていることには、何を言われても反対だと告げる。
- 浩司は財布から札を数枚取り出し、釣りはいらないと言ってそのまま帰っていく。
- 秋山は、家族のみんなが思ったよりも頑なだと話す。
- それに対して伸一は、みんな保守的なのだと答える。
- 伸一は、もう一度家族にプレゼンしたいので協力してほしいと秋山に頼む。
- しかし秋山は、もっと現実的に話を進める必要があると説く。
- 伸一がそれはどういうことかと尋ねると、秋山は、伸一の建て替え計画を実現するために事を詰めていく必要があると説明する。
- そうすれば、伸一の言っていることが夢ではなく、実現可能なことだと分かるはずだと話す。
- さらに秋山は、「全面的に援助してもいい」と言ってきていることを伸一に伝える。
- 伸一はそれを喜び、すべて秋山のおかげだと感謝する。
個人的感想
まず、なんで浩司の話を聞きたいと言っておいて、この場所がスナックなんだよとは思ってしまった。落ち着いて意見を聞きたいなら、もっと別の場所があるだろうに。どう見ても、相手に本音を言わせるための場というより、酒と雰囲気で丸め込む場にしか見えない。
そしてまたレナが登場したが、今回は特に何か事件を起こすようなことはなかった。だからこそ逆に、レナは何を考えていて、どんな動機でここにいるのかがますます気になる。秋山と完全に利害でつながっているだけなのか、それとももう少し別の感情があるのか。
浩司は結局、秋山とはまともに話もせず帰っていった。子どもが使うような財布から札を二枚くらい出して、「釣りはいらない」と言って去っていくのも、いかにも浩司らしい雑さだった。あれが千円札二枚だとして足りるのかどうかは知らないが、とにかく一秒でも早くこの場を離れたかったんだろうなという感じは出ていた。
ただ、反対するならちゃんと反対理由を説明すればいいのにとも思う。とはいえ浩司の性格を考えると、何を言っても秋山にきれいに言い返される、あるいは丸め込まれると思っていたのかもしれない。だから最初から勝負を避けて、その場を切り上げたのだろう。
でも浩司の反対理由って、改めて考えると何なんだろうな。兄貴の話は夢物語だと言っていたけど、じゃあ本当に実現可能なら賛成に回るのか。あるいは高級リゾート化されることで、自分の板場の居場所や料理人としての存在感が薄くなることを恐れているのか。そのへんがまだはっきり見えない。もし彩華が若女将になっていて、彩華が全面建て替えに賛成していたら、浩司はどう動いたんだろうというのも少し気になる。あれだけ彩華を庇って隠ぺいまでして加賀美屋を裏切る行為をしていた人間が、今は兄に対してここまで強く出られるのも不思議だ。
秋山は、家族が思ったよりも頑なだと言う。それに対して伸一は、みんな保守的で新しいことに挑戦しないのだと言う。でもそこは正直、あまり説得力がない気がする。保守か革新かで言えば、地元とのしがらみを断ち切れずにいたのはむしろ伸一の方じゃなかったか。その点では柾樹の方が、よほど改革を進めようとしていた気がする。建て替え案の一点だけで自分は革新的で、他は保守的だと言ってしまうのは、ちょっと雑だと思う。
あと秋山の言い方は、相変わらず具体がない。「事を詰める」とか「全面的に援助してもいい」とか、肝心なところを全部ぼかすんだよな。これはやっぱり、言質を取られないようにわざと具体的にしていないんだろうなと思う。実際、「事を詰める」は建て替えを既成事実化して進めるってことだろうし、「全面的に援助」は秋山の背後にいる外資なり乗っ取り屋なりの資金のことなんだろう。
それなのに伸一は、もうすっかり秋山を信用してしまっている。まだ口頭でしか説明されていないのに、また何も確かめないつもりかと思ってしまう。ここまで来ると、危なっかしいというより、もう自分から落ちに行っているようにすら見える。
この場面で起きているのは「浩司の説得失敗」ではなく、「説得の場に見せかけた切り崩しの不成立」なんだと思う
表面上は、伸一と秋山が浩司を説得しようとして、浩司が帰った場面に見える。
でも実際には、まともな説得なんて最初から成立していない。
なぜなら場所がスナックで、レナもいて、酒もある。
つまりこれは最初から、
冷静に議論する場ではなく、
雰囲気と人間関係で懐柔する場
として設定されている。
だから浩司があの場から逃げるように出ていったのは、未熟さでもあるが、同時にあの場の不自然さを本能的に察知した結果にも見える。
浩司は説明できないが、危険は感じ取っている人として描かれている
浩司は言語化が下手だ。
感情的にもなる。
だから話し合いの相手としてはかなり弱い。
でも今回の行動を見ると、
何がどう危ないのかを理路整然とは言えなくても、
秋山と伸一が進めようとしている流れが危ないこと自体は感覚で分かっている
ように見える。
つまり浩司は、論理で勝てないから退いた。
でも直感のレベルではかなり正しい警戒をしている。
そこがこの人の面白いところでもある。
秋山は「家族が頑な」だと思っているが、実際には伸一の説明の中身もまだ空疎なんだと思う
伸一は、みんなが保守的だから分かってくれないと思っている。
でも厳しく言えば、伸一の側もまだ弱い。
なぜ全面建て替えなのか。
なぜ高級リゾート化なのか。
なぜ今の加賀美屋では駄目なのか。
その核心が、自分の言葉としてまだ十分に説明できていない。
つまり伸一は、
理解されないことを家族のせいにしている面
もある。
もちろん家族にも問題はある。
でも、だからといって伸一の論が十分に詰まっているわけでもない。
そこが苦い。
秋山は「夢を語れ」とは言わず、「事を詰めろ」と現実路線を装ってさらに深く入り込む
ここがかなりいやらしい。
秋山は、もう一度プレゼンしようという伸一に対して、それでは駄目だと言う。
もっと現実的に進める必要があると。
つまり秋山はここで、
単なる夢の煽り屋ではなく、
夢を現実にする実務のパートナー
みたいな顔に移っている。
ここまで来ると、伸一にとってはますます頼もしく見えてしまう。
でも実際には、「現実的」と言いながら具体は何も明かさない。
だから中身のない現実論で押しているだけなんだよな。
「全面的に援助してもいい」は、いちばん大事なところを曖昧にしたまま伸一を安心させる言い方
誰が。
いくら。
どういう条件で。
いつ。
どの立場で。
何を担保に。
本来はそこが全部必要なはずなのに、秋山は言わない。
でも「全面的に援助してもいい」とだけ言う。
これで伸一は喜んでしまう。
つまり秋山の強さは、
相手が聞きたい言葉だけを先に与えて、確認すべき条件を全部後回しにさせること
にあるんだと思う。
かなり危ない手口だ。
伸一はもう“資金調達の合理性”ではなく、“秋山が自分の夢を実現してくれること”に感謝している
ここまで来ると、伸一が喜んでいる理由は金が集まること自体ではない。
もっと大きいのは、
秋山だけが自分の夢を本気で実現可能だと言ってくれること
なんだと思う。
だから「全部秋山のおかげだ」となる。
これは資金繰りの話ではなく、
承認と救済の話に変わってしまっている。
ここまで来ると、もう理屈では引き戻しにくい。
この場面は、「浩司を説得できなかった」ことより、「伸一がもう秋山の言葉の精査をやめている」ことの方が深刻
浩司が帰った。
それ自体も大きい。
でももっと深刻なのは、
その後の秋山の曖昧な説明を、伸一が一切疑わず受け取っていることだと思う。
つまり今の問題は、家族が反対していること以上に、
伸一の中で“確認する”という機能がかなり落ちていること
ここが一番怖い。
この場面は、家族内の対立が続く一方で、伸一だけがどんどん“秋山とだけ通じる言語”の中へ入っていく場面だった
浩司とは話せない。
家族とも噛み合わない。
でも秋山とは通じる。
少なくとも伸一にはそう感じられる。
そして秋山の言葉は、どんどん曖昧で抽象的になっているのに、
伸一はそれをむしろ「分かってくれている」と感じている。
つまりこの場面では、
伸一が家族の言葉から離れ、秋山の言葉の世界へ入っていく感じ
がかなり強まっている。
かなり危ない段階に来たなと思わせる場面だった。
まとめ
今回の第142回でまず大きかったのは、秋山が従業員の不満を実際の行動へ変え始めたことだと思う。前回までは、給料が安い、よそより低い、と火種をまいている段階だった。ところが今回は、仲居たちが本当に賃上げ要求をしようかと話し始める。賃上げを望むこと自体は何も悪くないし、特に清美のように生活を背負っている側にとっては切実な問題でもある。ただ、今回はそれが自然な権利意識の高まりというより、秋山にうまく煽られた形で表に出てきているのがかなり危うい。加賀美屋の危機が、家族の方針対立だけでなく、労務の問題にまで接続し始めたという意味で、かなり重要な局面だった。
その一方で、柾樹の調査が一気に本格化したのも大きかった。これまでの秋山は、怪しい、裏がありそう、信用できない、という感覚的な不信の対象だった。でも今回、大手ホテルチェーン、外資、盛岡の土地取引、リゾート開発、そして加賀美屋という点がかなり一本の線でつながり始めたことで、秋山は単なる怪しいコンサルではなく、加賀美屋を狙う“乗っ取り”の構図の中にいる人間かもしれない、というところまで話が動いた。ここでようやく、家族の感情論ではなく、客観的な脅威として秋山の危険性が見えてきた感じがした。
そして最後に、夏美が「乗っ取り屋かもしれない」という話を聞いて驚くところで終わったのも大きい。視聴者からすれば、秋山が危険なのはかなり前から分かっていた。でも夏美はまだ、そこまで具体的には見えていなかった。だから今回のラストは、視聴者が先に感じていた危機を、ようやく夏美も共有し始めた瞬間だったと思う。第142回は、加賀美屋の問題が“家族の対立”から“外部の脅威に対する防衛戦”へと切り替わる、その入口をはっきり示した回だった。
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