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2026年3月27日に放送された『どんど晴れ』第137回。
第137回は、伸一が秋山に取り込まれていく危うさと、加賀美屋の将来像をめぐる家族の温度差が一気に表面化した回だった。秋山はレナとの一件を「自分が何とかする」と処理役の顔で引き受け、さらに伸一の全面建て替え案をまるごと肯定することで、伸一の承認欲求と夢の両方に入り込んでいく。一方、加賀美家の中では柾樹のリフォーム案が支持され、180年の歴史と伝統を守る方向へ一気に空気が傾いていく。だがその流れの中で、伸一の考えはほとんど聞かれず、家族が柾樹を持ち上げ、伸一を切り捨てていくようにも見えた。今回は、加賀美屋をどう変えるのかという話でありながら、同時に“誰の言葉が家の中で採用されるのか”がはっきり見えてしまう、かなり苦い回だった。
※この回は、前日の展開を踏まえて見ると、より重みが増します。
👇 前回(第136回)の感想はこちら

- 秋山に傾く伸一と、ただ一人警戒を強める環――家の中で温度差が広がる
- 伸一の夢に差し出される“倍の資金”――秋山がついに株まで要求し始める
- 柾樹案に傾く家族たち――伸一の全面建て替え案が完全に孤立した食卓
- 時江だけが見る伸一の本音――“加賀美屋にとって何がいいのか”という迷いが秋山へ向かう
- 個人的感想
- この場面で見えるのは、“伸一の権力”ではなく“伸一の迷い”の方だと思う
- 伸一は“権力を振りかざしたい人”ではなく、“正解がほしい人”になっている
- 秋山に相談しようとする時点で、伸一は“外部の判断”に救いを求めている
- 時江は“甘い味方”ではなく、“伸一の秘密にまで手を伸ばす味方”になっている
- 「夏美から聞き出した」という一言で、夏美の立場の危うさもはっきりする
- 伸一が耳打ちするのは、“信頼しているから”でもあり、“共犯に近づけているから”でもある
- この場面は、“伸一が悪いことをしている”だけではなく、“伸一が本気で加賀美屋を考えている”ことも見せている
- 最後のナレーションは、“柾樹不在”が事件の条件として置かれているのが不穏
- 個人的感想
- まとめ
秋山に傾く伸一と、ただ一人警戒を強める環――家の中で温度差が広がる
- 加賀美家の朝食の席で、伸一(東幹久)が秋山(石原良純)について熱心に語っている。
- 久則(鈴木正幸)は「経営コンサルタント」と聞いて怪しがる。
- 浩司(蟹江一平)は、また秋山と飲みに行っていたことを心配する。
- 環(宮本信子)は、気が合うからといって家の中のことをぺらぺらしゃべるんじゃないよと伸一に釘をさす。
- 伸一は、近いうちに柾樹(内田朝陽)にも秋山を紹介すると言う。
- 環は、伸一と秋山はそんなに仲がいいのかと恵美子(雛形あきこ)に確認する。
- 恵美子は、秋山は良い人らしいですねと答える。
- 夏美も、秋山は良い人だと思うと話す。
- それでも環は不安げな表情を見せている。
- その後、伸一は廊下で夏美を呼び止める。
- 伸一は夏美に、レナ(野波麻帆)の件は片がついたと説明する。
- 客室で花を生けている夏美は、背後の気配に気づいて振り返る。
- そこには時江(あき竹城)がいて、伸一のことで何かあるようなら包み隠さず話してくれと夏美に頼む。
- 夏美は、時江の圧に押されそうになっている。
個人的感想
経営コンサルタントと聞いて怪しむのは、今も昔もあまり変わらないんだなと思った。もちろん真面目にやっているコンサルタントもいるんだけど、どうしても日本人は形のないものにお金を払うことに感覚的な抵抗があるんだろうなと感じる。無形の知識や助言に対して対価を払うというのは、それだけ難しい。
今のところ、環だけは秋山に対してかなり強い警戒心を持っているように見える。他の家族たちは、まだそこまで危機感を抱いていない。恵美子と夏美に至っては、秋山は良い人だと言っているくらいだ。視聴者目線で見れば、ここまでの流れから秋山はかなり危ない人物に見えるのが普通だろうけど、劇中の人物たちからすれば、実際にはまだ秋山が何を考えているのかははっきり分かっていない。だから、恵美子や夏美が言うように、良い人である可能性がまだゼロではないというのも、理屈としては分からなくはない。
時江は以前にも、加賀美家の出来事は全部報告するようにと夏美に言っていた。その時も、いやそれは業務の範囲を超えているだろうと少し突っ込みたくなったが、今回もまた伸一のことを本気で気にかけている。このドラマの中では「信じる」という言葉がよく出てくるけど、劇中でいちばん“信じる力”が強いのは、もしかしたら時江が伸一に向けている気持ちなのかもしれないなと思えてきた。
この場面は“秋山の評価”より、“家族ごとの温度差”が見える場面
朝食の席では、秋山そのものの正体が明らかになるわけではない。
でもその代わりに、秋山をどう見るかで家族の反応がかなり分かれている。
久則と浩司は警戒寄り、恵美子と夏美はまだ好意的、環だけははっきり不安を抱いている。
つまりここで描かれているのは、
秋山という人物そのものより、
秋山に対する見え方が家の中で割れていること
だと思う。
この温度差があとで効いてきそうだ。
環だけが警戒しているのは、“説明できない違和感”を人より先に拾っているからだと思う
環は、秋山の具体的な悪事を知っているわけではない。
それでも不安げな顔を崩さない。
これは理屈で判断しているというより、
人の距離の詰め方や空気の入り方に対する勘
で動いているように見える。
大女将・カツノ亡きあと、
加賀美屋の中でこういう“嫌な感じ”を最初に拾う役目を
環が引き継いでいるようにも見えた。
恵美子と夏美が「良い人だ」と言ってしまうのも無理はない
視聴者は伸一とレナの一件を知っているし、秋山の裏の顔も見ている。
だから秋山は危険人物に見える。
でも劇中人物として考えると、
愛想がよく、感じがよく、実際に直接ひどいことをされたわけでもない相手を
即座に悪人だと断定する方が難しい。
つまりここでは、
環の勘が特別に鋭いのであって、
恵美子や夏美が鈍いというだけでもない。
そう考えると、この温度差も自然だと思う。
伸一はもう、秋山を“他人”ではなく“味方”として扱い始めている
近いうちに柾樹にも紹介する。
これはかなり大きい。
単に知り合いができたという話ではなく、
伸一の中で秋山はすでに
家の中に入れてよい人間
になりかけているということだからだ。
つまり伸一はここで、
自分だけの秘密の処理役としてだけでなく、
加賀美屋の将来に関わる人間として秋山を見始めている。
かなり危ない段階だと思う。
「レナの件は片がついた」は、伸一が自分で考えるのをやめた証拠にも見える
伸一は夏美に、片がついたと説明する。
でもそれは、自分で整理して片づけたというより、
秋山がそう言ったからそう思っているだけに近い。
つまり伸一はここで、
問題の中身を自分で確かめることより、
誰かに“大丈夫だ”と言ってもらうことを優先している。
この受け身の感じがかなり危うい。
時江は“報告を求める人”である以上に、“伸一の異変を見逃さない人”として描かれている
時江は今回も、何かあったら包み隠さず話してくれと夏美に頼む。
これは前にもあった流れだけど、やはり印象的なのは、
時江がそこまで伸一の変化を気にしていることだ。
単なる詮索ではなく、
何かが起きているのに誰も正面から見ようとしていないこと
を、時江だけは放っておけないのかもしれない。
その意味ではかなり本気で心配しているように見える。
時江の“信じる力”は、恵美子とは少し違う形かもしれない
恵美子も伸一を信じている。
でも恵美子の信じ方は、問い詰めずに受け止める方向に出やすい。
一方で時江の信じ方は、
何かあるなら知りたい、ちゃんと把握したい、そのうえで守りたい
という形に見える。
だから時江の信頼は、受け身ではなくかなり能動的だ。
その強さが、今回は少し怖くも見えた。
この場面は、“秋山の危険”が外ではなく家の中に広がり始めていることを示している
朝食の席で名前が出る。
家族の中で評価が分かれる。
夏美は秘密を知っている。
時江は何かを感じ取っている。
つまり秋山はもう、外から近づいてくる怪しい男ではなく、
家の中の会話や空気を揺らす存在
になっている。
だからこの場面は派手な事件ではないけれど、
かなり重要な広がり方をしている場面だったと思う。
伸一の夢に差し出される“倍の資金”――秋山がついに株まで要求し始める
- 帳場では久則と柾樹が話している。
- 柾樹は銀行からの融資結果を気にしており、久則はもう決まったも同然なのだから慌てるなと声をかける。
- 一方、秋山のオフィスでは、伸一が設計図と模型を持ち込み、秋山に見せている。
- 秋山はそれらを見て絶賛し、伸一も嬉しそうな様子を見せる。
- 秋山は、この建て替えに取り組むのはいつからなのかと伸一に確認する。
- 伸一は、この案では銀行から融資が下りず、一部リフォーム案に変更したのだと説明する。
- さらに、加賀美屋の後継ぎである柾樹が決めたことだから仕方がないと話す。
- それに対し秋山は、それはいけない、あなたの考えの方が正しいのだと伸一を肯定する。
- 融資が下りない以上仕方がないと諦める伸一に対し、秋山は魅力的なプランを提案する。
- ただし、そのプランには一つだけ条件があると言う。
- その条件とは、伸一が持っている加賀美屋の株を譲ることだった。
- 伸一は、それは無理だと拒否する。
- それでも秋山は、さらにうまく付け入ろうとする。
- 伸一は、気持ちはありがたいが、自分は加賀美屋の人間であり、今さら身内が決めたことに逆らうことはできないと話す。
- 秋山は、このままでは加賀美屋が危ないと伸一を揺さぶる。
- さらに、自分なら銀行融資額の倍の資金を用意できる自信があると豪語する。
- 秋山は、伸一の夢にかけてみたいのだと語る。
- 伸一は、考えさせてもらってもいいですかと答え、心が揺れている様子を見せる。
- 秋山は、決断する時は相談してほしい、自分もできる限りのことはする、いつでも自分は伸一の味方だと伝える。
- 伸一は、その言葉に感謝する。
個人的感想
融資の結果がまだ出ていないことで、柾樹が少し焦りを見せている一方で、伸一はもう完全に秋山に心酔し切っているように見えた。自分の案を全部肯定してくれるのももちろん嬉しいのだろうが、やはり一番効いているのは「いつでも私はあなたの味方ですよ」というあの一言なんだろうなと思う。今の伸一にとって、あれはたぶん何より響く言葉だ。
加賀美家の中で伸一は表向き気遣われてはいるが、本当の意味で「あなたの考えは正しい」と言ってくれる人はもういない。その状況で、秋山だけが全面建て替え案を丸ごと肯定し、しかも夢にかけてみたいとまで言う。そんなことを言われたら、そりゃ気持ちは持っていかれるだろうなと思った。
伸一の持株については、少なくとも大女将から譲り受けた50%はあるはずで、本家の人間で支配人という立場まで考えると、それにプラスαの株まで持っていて、単独過半数の筆頭株主なんじゃないかと勝手に想像している。そうだとしたら、理屈の上では伸一がその気になればかなり好きなようにできる立場にいるはずだ。会社は労働者のものでも柾樹のものでもなく、株主のものなのだから。とはいえ、好きなようにやりたくても、肝心の銀行から融資を引っ張ってこられなかったから、現実には柾樹の案を飲むしかなかった。そこへ「銀行に頼らなくても、その倍の金を出せる」と言われたら、そりゃ揺らぐよなと思う。
ただ、さすがの伸一でも、最低50%は持っているであろう株を譲るのはまずいと分かっている感じはあった。そこが最後の歯止めになっているようにも見えたが、もうかなり危ないところまで来ているとも感じる。
それにしても、この株式は譲渡制限付株式のはずだから、譲渡には取締役会の承認が必要なんじゃないかと思う。現時点で取締役としてはっきり見えているのは代表取締役の久則くらいだが、この伸一の持株を秋山が手に入れるスキームって、具体的にはどういう形を想定しているんだろうか。そこは実務的にかなり気になるところだ。
ただ、弱っている人間の心の隙間には、こういうふうに入り込めば案外何とかできてしまうのかもしれないな、と少し説得力を感じてしまったのも事実だ。そこが秋山の怖さだと思う。
秋山は“金を出す人”ではなく、“伸一の願望に現実味を与える人”として効いている
銀行では無理だった。
家族にも反対された。
それでも、全面建て替えの夢だけは伸一の中に残っている。
そこへ秋山は、ただ賛成するだけでなく、
その夢を実現できるだけの金まで用意できる
と言ってくる。
だから秋山が効くのは、金持ちだからではなく、
伸一の願望を「まだ終わっていない話」に戻してくれるからだと思う。
「あなたの考えの方が正しい」が、銀行よりも家族よりも伸一を動かしている
銀行は数字で見る。
家族は現実的な改修案を選ぶ。
その中で秋山だけが、全面建て替えの夢そのものを正しいと言ってくれる。
ここがかなり大きい。
伸一が欲しかったのは、たぶん融資だけではない。
自分の構想が否定されていなかったという確認
の方が、今はもっと欲しかったのだろう。
秋山はそこをぴたりと突いている。
株の譲渡を条件にすることで、秋山の狙いが“提案”ではなく“支配”だとはっきりする
ここまでは、秋山は怪しいが、まだ外部の理解者の顔もしていた。
でも株を譲れと言った時点で、かなりはっきりした。
欲しいのは建て替えの成功ではなく、
加賀美屋に対する支配権、あるいは決定権
なのだと思う。
だから全面建て替え案は手段であって、本命は株なんだろう。
伸一が即座に拒否したのは、まだ“加賀美屋の人間”としての線が残っているから
伸一はかなり揺れている。
それでも、株を譲る話にはすぐ「無理です」と言う。
ここは重要で、まだ完全には壊れていない。
自分は加賀美屋の人間で、今さら身内の決定に逆らえない。
その言葉には、意地もあるし、最後の理性もあると思う。
つまり伸一はこの場面で、
夢に揺れながらも、まだ家そのものは手放していない
状態にいる。
そこが最後の踏ん張りどころなんだろう。
秋山は“銀行の倍の資金”で、理屈ではなく感情を押し切ろうとしている
融資額の倍を出せる。
この言葉は、事業として妥当かどうか以前にかなり強い。
銀行に否定された夢に対して、
「いや、もっと大きくやれる」と言われるわけだからだ。
これは事業計画の話に見えて、実際には
否定された自尊心を一気に回復させる言葉
でもある。
だから伸一は揺れる。
伸一の株がどれほど重いか、秋山はかなり調べた上で来ているはず
株を譲れ、というのは思いつきでは言えない話だ。
しかも相手が加賀美屋の本家筋で、支配人で、株を持っていることも分かっている。
つまり秋山はすでに、
伸一がどれだけの決定権を持ちうる人間か
まで調べた上で話しているのだろう。
ここを見ると、秋山の接近はやはり偶然ではなく、かなり段階的で計画的だ。
「考えさせてください」の時点で、伸一はもう半分入っている
ここで完全に断れればまだ違う。
でも伸一は、考えさせてほしいと言ってしまう。
つまり、可能性としては残した。
この時点で秋山にとっては十分手応えがあったはずだ。
だからこの場面の怖さは、
株を渡したことではなく、
渡すかもしれない選択肢を自分の中で開いてしまったこと
にあると思う。
このシーンは、“伸一が騙される”というより、“伸一の夢と承認欲求が買収の入口にされる”場面だった
全面建て替えは、完全に間違った願望ではない。
加賀美屋に古さの問題があるのも事実だ。
だからこそ厄介で、秋山は嘘だけで動かしているわけではない。
本物の課題に、本物の願望を重ね、そこへ支配の条件を差し込んでいる。
つまり今回の場面は、
伸一の夢そのものが、秋山に利用される入口へ変わった場面
としてかなり重かった。
柾樹案に傾く家族たち――伸一の全面建て替え案が完全に孤立した食卓
- 柾樹は、週末に東京へ行き、横浜時代に付き合いのある業者へリフォームの依頼をしに行くつもりだと環に報告する。
- 伸一は、自分の知っている業者でもいいのではないかと提案する。
- しかし浩司は、その提案を頭ごなしに否定する。
- 浩司は、露天風呂にも入ったことがないイギリス人が設計したのではだめだと言う。
- それに対して伸一は、だからこそ日本人にはない視点で面白いものが作れるのだと反論する。
- 環と久則も、伸一の提案には否定的な反応を示す。
- 浩司は、柾樹に任せておけばいいと話す。
- 伸一はいったん引き下がる。
- 環は、リフォームの内容について柾樹に確認する。
- 柾樹は、中庭に離れを何室か作ってみてはどうかと具体案を説明する。
- さらに柾樹は、離れの客室は掘りごたつにしたいこと、その一角には団らん室のようなものを作りたいことを語る。
- そこに夏美も、自分の考えを伝える。
- 浩司が、旅館本体の方は今までと同じなのかと確認する。
- 柾樹は、傷んでいるところは修理するが、あまり大きく手を加えるつもりはないと説明する。
- すると伸一は、それでは加賀美屋は古い旅館のままではないかと言う。
- 伸一は、新しい設備の導入や、もっと現代的なイメージにするべきではないかと提案する。
- 恵美子と時江も、そうするものだと思っていたと続く。
- 柾樹は、その方が目新しさや便利さはあると思うが、新しいことで勝負していては東京の都市型リゾートには勝てないと話す。
- そして柾樹は、180年続いた加賀美屋の歴史を、これからの加賀美屋の一番のセールスポイントにしたいと語る。
- 代々伝わってきた加賀美屋のおもてなしの心、そして伝統と格式は、他のホテルには絶対にまねのできない、加賀美屋にしかないものだと説明する。
- 夏美も同じ思いだと話す。
- 環もそれに同意する。
- 環は、一時期は建て替えようと思っていたが、柾樹の言う通り、加賀美屋には歴史ある伝統と格式がある限り、時代にこびる必要はないと言う。
- さらに環は、女将としての一番の務めは、その伝統と格式を守り伝えていくことだと語る。
- 久則も、柾樹と夏美の考えに賛成だと言う。
- 浩司も賛成する。
- そのやり取りを、伸一はずっと悲しげな表情で聞いている。
- 環は伸一に、柾樹に任せてみましょうと言う。
- 伸一が「けどさ」と反論しようとすると、浩司は兄貴の全面建て替え案には心配だったと話す。
- 久則も浩司の意見に同調する。
個人的感想
気になることが多すぎて、見ていてなんだか少し気分が悪くなってきた。
前日の流れで、夏美が加賀美屋オリジナルの洋菓子づくりについて啓吾に協力を頼んだのは分かる。あれはたぶん、少なくとも試作や構想段階であり、コストをかけずとも親にアドバイスもらえばいいからだろう。ところが今回は、柾樹が付き合いのある会社にリフォームを頼みに東京へ行くと言い出した。こっちは明らかに費用が発生する話だ。それなら盛岡の会社に発注したっていいんじゃないかと思ってしまう。どうせ東京の業者に頼んだところで、元請けが東京で実際に工事するのは盛岡の下請け業者、みたいな形になるんじゃないのか。まあ、結果的に盛岡の下請けに金が落ちるなら地元経済には多少貢献するのかもしれないが、それでも東京の知り合いの業者ってそんなに都合よく融通が利くものなのかね。
そして環にリフォーム内容を聞かれて柾樹が説明し始めるわけだが、その内容そのものも気になる一方で、何より最初に引っかかったのが、「なんで伸一がここで初めてリフォーム案を聞いたみたいな反応をしてるんだ?」ということだ。柾樹と伸一は銀行の支店長に説明に行く時も一緒だったし、その前の融資担当との話し合いでも同席していた。こういう融資の話って、普通は「こういうリフォームを考えていて、これくらい予算がかかるので、これくらい融資してください」とお願いするものなんじゃないのか。それなのに、伸一は今回初めて柾樹の具体案を聞いたみたいな反応をしている。
やっぱり前から気になっていたんだけど、融資さえ引っ張れば、あとはこっちの展開でどうにでもなるみたいな柾樹の発言は、資金使途違反上等みたいなニュアンスすら感じていた。だって伸一が初耳ってことは、銀行ではおそらく違うリフォーム案を出していたんじゃないかと思えてしまう。もちろん、実際にリフォーム費用として借りてリフォーム工事をするなら、即それが資金使途違反になるわけではないのかもしれないが、どうにも銀行への説明と違うことをやりそうな匂いがするんだよな。もし資金使途違反で一括返済を求められて、今後の取引停止なんてことになったら、今のこの過剰な柾樹上げ・伸一下げの空気が、また一瞬でひっくり返って「やっぱり柾樹じゃダメだ、伸一がいないと」とかなりそうで怖い。
だって環と久則は、前は全面建て替え案に賛成していたはずなのに、今になって反対だとか言い出すのは都合が良すぎないか。浩司にいたっては、今まで建て替え案については特に何も言っていなかったはずだ。彩華のことで頭がいっぱいだっただけだろうに。そんな家族が今になって一斉に柾樹案に乗って、伸一案を危ないものみたいに扱い出すのが、どうしても気持ち悪い。
柾樹が語る中庭に離れを作る、掘りごたつにする、団らん室を作る、という案も、それはそれで悪くないのかもしれないが、銀行から金を借りてまで真っ先にやることなのかとは思ってしまう。伸一が言っていた、新しい設備の導入や現代的なイメージにするという発想だって、今まで賛成していた家族が寄ってたかって否定するほどのことではないと思う。新しさで勝負したって東京の都市型リゾートホテルには勝てないと言うが、そもそも勝負の前提がおかしくないか。盛岡の高級リゾートなら、まず盛岡周辺の宿泊施設と勝負するんじゃないのか。柾樹の想定では、客はみんな海外から来る人たちで、日本中の宿泊施設の中からどこが選ばれるか、という基準で考えているんだろうか。
柾樹も環も、180年の歴史、伝統、格式を売りにして、時代に媚びる必要はないと言い出した。便利にするより、不便さも含めて受け入れてもらう、それがおもてなしだと言いたいんだろうか。だとしたら個人的にはかなり勘弁してほしい。伸一の言う通り、新しい設備の導入自体は間違っていないと思うんだけどな。
秋山が言った「伝統と古くささは違う」という言葉にも通じるが、現状の加賀美屋の客室には部屋にトイレがついていないはずだ。ハクサンチドリの吉田が怪我をして、夜中にトイレへ行く時に部屋を出て共同トイレまで移動し、その間ずっと環と夏美が付き添っていた描写があったはずだ。リフォームするなら、まずは客室にトイレをつけてくれよと思う。この手のリフォームは、180年の歴史や伝統に反するから受け入れられないのか。便利になるからダメなのか。そこがどうしても納得いかない。
それに既存の常連客は富裕層なのだろうが、今後はどんどん高齢化していくはずだ。だったらバリアフリーにする方が、よほど本当のおもてなしなんじゃないのか。離れを作って若年層の新規客を狙うのも悪くはないが、それって既存客をないがしろにし始めたと取られても仕方ない気がする。伝統は大事だと思う。でも、不便であってもいい、時代に媚びる必要はない、という言い方にはどうしても引っかかる。
まあ結局、それを受け入れるかどうかを決めるのは消費者だ。柾樹案の加賀美屋が支持されれば生き残るし、受け入れられなければ淘汰されるだけだろう。
自分が感じているこのどうしようもない気持ち悪さの正体は、たぶん柾樹を過剰に持ち上げ、これまで伸一案に乗っかっていた人たちまでが、急に手のひらを返して伸一を無能扱いし始めていることなんだと思う。何か話し合えるようになった、対話を覚えた、みたいな空気を出してはいるが、結局伸一が発言しようとすると遮ったり否定したりで、最初から話を聞く気がないんだよな。何事も柾樹ありきで進んでいる。そしてきっと、この加賀美家の人間は柾樹が失敗したらまた手のひらを返すと思う。これが今の自分が感じている一番大きな違和感だ。別に柾樹にも伸一にも特別な思い入れはないんだけど。そして、最後まで伸一の味方でいようとするのは、おそらく恵美子と時江なんだろう。
そしてそもそもの話として、180年の歴史、伝統、格式を誇る建物を、そんな簡単に建て替えたりできるものなのかという疑問もある。ちょっと調べたら沼にハマりそうだったのでやめたが、ざっくり言えば、重要文化財なら建て替えはほぼ不可能で、登録有形文化財なら可能そうではある。加賀美屋がそういう建物なのかどうかは分からない。ただ、伸一が全面建て替えを本気で考えていた以上、少なくとも重要文化財ではないのだろう。
柾樹と環は、やたらと伝統と格式を守ることを強調していたが、大女将が期待していた「新しい風」はどうなったんだ。ここまでくると、柾樹に任せるより、伸一に任せた方がよほど新しい風を吹かせそうな気すらしてきた。暴風かもしれないが。
この場面で起きているのは「経営方針の対立」ではなく「伸一の居場所の喪失」
この場面は表面上は
全面建て替え派の伸一
対
一部リフォーム派の柾樹たち
という構図に見える。
でも実際に見ていて重いのは、
単に案が否定されたことではなく、
伸一の言葉が最初から採用される余地のない空気
が出来上がっていることだと思う。
伸一が何か言おうとすると
- 浩司が先に切る
- 環と久則も乗らない
- 最後は「柾樹に任せましょう」で締める
つまりここでは
話し合って負けたのではなく
話し合いの土俵にすらきちんと乗せてもらえていない。
伸一が悲しそうな顔をしていたのは、
案が通らなかったからというより、
自分がもう家の中心人物ではないと
はっきり突きつけられたからだろう。
柾樹案は「正しい」のかもしれないが、「雑に支持されすぎている」
柾樹の言っていること自体には筋がある。
- 180年の歴史
- 伝統と格式
- 他には真似できないおもてなし
- 東京の都市型ホテルと同じ土俵で戦わない
これは戦略としては十分理解できる。
でもこの場面の嫌さは、
柾樹案が正しいから支持されているというより
柾樹が言うから正しいことになっているように見えることだ。
以前は伸一の全面建て替え案に乗っていた人たちまで、
今は一斉に逆側に回る。
だから見ている側としては
「本当に議論した上での結論なのか」
という気持ち悪さが残る。
この場面の不快感はたぶんそこだと思う。
「伝統を守る」と「不便を放置する」は本来別の話
柾樹や環は
伝統と格式を守ることが加賀美屋の価値だ
と言う。
その考え方自体は分かる。
ただ問題は、
どこまでが守るべき伝統で、どこからが改善すべき不便なのか
の整理がこの場面では全然されていないことだ。
たとえば
- 客室にトイレがない
- 高齢客への配慮が弱い
- バリアフリーが不十分
- 設備面の古さが負担になる
こういうものまで
「伝統だから」と丸ごと抱え込むなら、
それはおもてなしではなく、ただの我慢の押し付けにもなりかねない。
つまりこの場面で本来必要なのは
残すべきもの
と
直すべきもの
を分ける議論なのに、
それが十分されないまま
伸一案=危ない
柾樹案=正しい
で進んでしまっている。
そこに雑さがある。
伸一は「古い家を壊したい人」ではなく「変化を形で示したい人」
この回を見ていると、
伸一は単に派手な建て替えをしたいだけの人ではなく、
変わったことが誰の目にも分かる形にしたい人
なんだと思う。
逆に柾樹は
本質は残したまま、見せ方と使い方を変えたい人
だ。
つまり二人の違いは
- 伸一:変化を“外観・設備”で示したい
- 柾樹:変化を“価値の再定義”で示したい
ということでもある。
だから本来は
どちらかが100%間違いというより、
両方に必要な要素があるはずなんだよな。
それなのにこの場面では、
伸一の側の論点がほとんど拾われない。
そこがもったいない。
この場面は「秋山に付け込まれる理由」を家族が自分たちで作っている
家族は伸一の全面建て替え案に反対している。
その判断自体は間違っていないのかもしれない。
でも問題はその反対の仕方で、
伸一の考えの中にある一理まで一緒に切り捨ててしまっている
ように見えることだ。
だから伸一は、
- 自分の案を肯定してくれる
- 自分の夢を理解してくれる
- 自分の味方だと言ってくれる
秋山の方へ流れていく。
つまりこの場面は、
秋山が悪いのはもちろんとして、同時に
加賀美家の側も、伸一を外へ押し出している
場面なんだと思う。
まとめ
今回の第137回は、表向きには「全面建て替えか、一部リフォームか」という経営方針の対立に見えるが、実際にはそれだけではなかったと思う。見ていて苦しかったのは、伸一の案が否定されたこと以上に、伸一の言葉そのものが最初からまともに検討される空気ではなくなっていたことだ。浩司が先に切り、環と久則も乗らず、最後は「柾樹に任せましょう」で締める。話し合って負けたというより、話し合いの土俵そのものから外されているように見えた。だから伸一の悲しそうな表情が余計に重かった。
一方で、柾樹の言っていることにも筋はある。180年続いてきた加賀美屋の伝統、格式、おもてなしの心を一番の武器にするという考え方は十分理解できるし、新しさで東京の都市型リゾートと真正面から勝負しても厳しいというのもその通りだろう。ただ、それでも引っかかるのは、「伝統を守る」と「不便さを放置する」がかなり曖昧に混ざっていることだ。部屋にトイレがない、といった問題まで“歴史ある旅館だから”で済ませるなら、それは本当のおもてなしなのかという疑問は残る。だから今回の違和感は、柾樹案が間違っているというより、残すべきものと直すべきものの仕分けをきちんと議論しないまま、柾樹案だけが正しいことになっている雑さから来ているのだと思う。
その一方で、秋山の怖さもかなりはっきりした。単に怪しい提案をする人ではなく、レナとの件を処理してくれる理解者の顔をしながら、伸一がいちばん欲しがっている言葉――「あなたの考えの方が正しい」「いつでも私は味方です」――を与えてくる。しかも全面建て替え案そのものは、伸一がもともと抱いていた夢でもある。だから秋山は、外から無理に変な話を押しつけているのではなく、伸一の中にあった願望と承認欲求にぴたりと入り込んでいる。その上で株を譲れという条件まで出してくるのだから、狙いが支配にあるのも明らかだ。それでも伸一が揺れてしまうのは、加賀美家の中で誰も彼の夢や考えを正面から受け止めてくれないからだろう。
そして最後の時江との場面で、伸一が単なる浅はかな人間としては描かれていないのも、この回をややこしくしていた。権力や株の話よりも、加賀美屋にとって本当に何がいいのかを悩んでいる。その意味では伸一もちゃんと加賀美屋のことを考えている。ただ、その迷いを向ける相手が秋山である以上、もうかなり危ないところまで来てしまっている。第137回は、加賀美屋の未来の話をしているようでいて、実は家の中で誰が中心で、誰が外へ押し出されていくのかをかなり残酷に見せた回だったと思う。
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