朝ドラ再放送『どんど晴れ』第133回感想(ネタバレ)──賀美屋に追い風、伸一には魔の手 改革の光と不穏が交錯する

どんど晴れ

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2026年3月22日に放送された『どんど晴れ』第133回。

第133回は、夏美の回復と伸一の崩れがくっきり対照的に描かれた回だった。大女将・カツノの死を乗り越えた夏美は、若女将として仲居たちに指示を出し、環とも笑い合えるところまで戻ってくる。一方で銀行では、柾樹の経営改革案が高く評価され、加賀美屋の改修と再建に追い風が吹き始める。だが、その前進は伸一にとっては素直に喜べるものではなく、むしろ自分の立場が削られていく痛みとして積もっていく。そんな心の隙を狙うように秋山が近づき、伸一は酒の席で気持ちよく持ち上げられていく。今回は、加賀美屋が前へ進み始めたからこそ、その裏でこぼれ落ちるものも見えてしまう回だった。

※この回は、前日の展開を踏まえて見ると、より重みが増します。

👇 前回(第132回)の感想はこちら

朝ドラ再放送『どんど晴れ』第132回感想(ネタバレ)──夏美の再出発の裏で伸一に迫る影 希望と不穏が交差する回
2026年3月21日に放送された『どんど晴れ』第132回。第132回は、ここ数回続いていた重たい空気がようやく少しほどける回だった。平治が夏美のために作ってきた南部鉄器の風鈴。その懐かしい音色に導かれるようにして、夏美は大女将・カツノの存在...

 

  1. 夏美が若女将として歩き出す――環と笑い合えるところまで来た回復の朝
    1. 個人的感想
      1. この場面は“夏美の復活”というより、“若女将としての日常復帰”を描いている
      2. 夏美が“自分でやってしまいたくなる”のは、強みでもあり危うさでもある
      3. 時江の厳しさは、監視ではなく“育成”として位置づけ直されている
      4. 環の「女将に終わりはない」は、仕事論というより“生き方の宣言”
      5. 環と夏美が笑い合えるようになったのは、関係性の大きな変化
  2. 銀行が評価したのは柾樹だった――加賀美屋の前進が伸一の立場をさらに苦しくする
    1. 個人的感想
      1. この場面は“融資の前進”である以上に、“評価が誰に集まっているか”を見せる場面
      2. 伸一は“説明する側”ではあるが、“評価される側”ではなくなっている
      3. 返済計画の提示は、柾樹が“夢を語る人”ではなく“数字で語れる人”だと示している
      4. きれいな数字が多いのは、説得力より“見せ方”が優先されている感じもある
      5. 支店長から環への電話は、“銀行評価”を家の中に持ち込む演出
      6. 環が気にしたのは“融資”ではなく“伸一が一緒に帰ってこないこと”
      7. この場面は“加賀美屋の未来が開ける場面”であると同時に、“伸一がさらに外れていく場面”でもある
  3. 伸一の“外の顔”に忍び寄る秋山――家ではかばわれ、外では狙われる夜
    1. 個人的感想
      1. この場面は“伸一の転落”そのものより、“狙われやすい状態”を整える場面
      2. 秋山の名刺の怪しさは、“正体不明のプロ感”を演出している
      3. 家の中では、みんなが伸一を“かばいすぎる”くらいにかばっている
      4. 浩司だけが“空気の裏側”を口にしてしまう役になっている
      5. 久則が浩司を強く止めるのは、“伸一を守る”というより“家の均衡を守る”ため
      6. この場面は“家の中で守られる伸一”と“家の外で食われる伸一”の対比になっている
      7. 子どもたちの“遊園地を楽しみにする顔”が、次の不穏さを強めている
  4. 秋山の甘い言葉に沈む伸一――家で待つ者を置き去りにして始まる“たくらみ事”
    1. 個人的感想
      1. 秋山が見抜いているのは、伸一の“承認不足”だと思う
      2. 伸一は酒に弱いというより、“肯定に飢えた状態”で秋山に会ってしまった
      3. 他の客まで褒め出す流れは、“偶然の盛り上がり”ではなく“舞台装置”に見える
      4. てるてる坊主の場面が入ることで、伸一の転落がただの自業自得では済まなくなる
      5. 伸一が失うかもしれないのは“信用”より先に“家庭の時間”かもしれない
      6. ナレーションが“帰らなかった”と先に言い切るのは、もはや言い逃れ不能にするため
      7. 今回のラストは、“伸一が悪い”だけで終わらず、“伸一は狙われるべくして狙われた”と見せている
  5. まとめ

夏美が若女将として歩き出す――環と笑い合えるところまで来た回復の朝

  • 大女将・カツノ(草笛光子)の死を乗り越えた夏美(比嘉愛未)は、新たな気持ちで仕事に励んでいる。
  • 夏美は清美(中村優子)と則子(佐藤礼貴)に、それぞれ担当客についての指示を出す。
  • 時江(あき竹城)は夏美に客室のチェックを頼む。
  • そこへ環(宮本信子)がやって来て、夏美は時江が様子を見に来たのだと勘違いして驚く。
  • 夏美は時江の真似をしながら、厳しく指導されていることを環に伝える。
  • 環は、それも時江が一日も早く立派な若女将になってもらいたいと思っているからだと話す。
  • 夏美は、若女将になってみて、女将の仕事の大変さが身にしみて分かってきたと語る。
  • 環は、女将という仕事には終わりがなく、自分もまだまだ修業中の身だと答える。
  • そして、女将としての務めを果たすため、日々邁進するだけだと語る。
  • 夏美も、環に負けないように若女将としてしっかり頑張ると応じる。
  • 環は、伸一(東幹久)と柾樹(内田朝陽)の銀行との打ち合わせがうまくいくように祈る。
  • 夏美は、岩手山がいい顔をしているから大丈夫だと言う。
  • さらに空の様子を見て、夏美と環は「どんど晴れ」と声をそろえて言い、笑い合う。

個人的感想

夏美が若女将として新たな気持ちで頑張っている。仲居たちに指示も出せるようになってきたが、やはり夏美は若女将の仕事だけではなく、仲居の仕事であっても自分でできることはやってしまいたくなるタイプなんだろうなと思う。すぐ終わる業務で、しかも若女将としての本来業務に影響が出ないのであれば、ささっとやってしまってもいいような気はする。けれど、仲居の仕事と若女将の仕事の線引きをどこかでしておかないと、「あの時はやってくれたのに今回はやってくれなかった」という話にもなりかねない。やはり統一的なルールのもとで分担した方がよさそうだ。

夏美の時江の真似は、正直そこまで似ているとは思わなかった。ただ、夏美が環に対してああいうふうにふざけられるくらいの間柄になったという意味では、かなり大きいことなんだろう。以前の環との距離感を思えば、そこは素直に喜ばしい。

そして環が、女将の仕事にはこれで終わりということがない、自分もまだまだ修業の身だと言っていたのが印象的だった。こうなってくると、女将というのは単なる役職や業務ではなく、生き方そのものなんだなと思えてくる。最後に夏美と環が口をそろえて「どんど晴れ」と言って笑い合うところまで来たのを見ると、この二人も本当にずいぶん仲良くなったんだなと感じた。


この場面は“夏美の復活”というより、“若女将としての日常復帰”を描いている

前回までの夏美は、立ち直るかどうかが大きなテーマだった。

でも今回はもう、悲しみを克服したと宣言する場面ではなく、

若女将として現場に戻り、指示を出し、動き始めている夏美

が描かれている。

つまり回復のドラマというより、

回復した人がどう日常に戻るかの段階に入ったのだと思う。

夏美が“自分でやってしまいたくなる”のは、強みでもあり危うさでもある

夏美はもともと、気づいたことを自分で動いて埋めようとする人だ。

それは現場感覚としては強みだし、

仲居時代にはむしろ魅力として機能していた。

ただ若女将になると、それがそのまま長所では済まない。

今度は

自分が動くことより、全体を見て人を動かすこと

が求められるからだ。

ここは夏美がこれから本当にぶつかる課題だと思う。

時江の厳しさは、監視ではなく“育成”として位置づけ直されている

夏美は時江を少し怖がっているようにも見えるが、

環はその厳しさを

「一日も早く立派な若女将になってほしいから」と言い換える。

ここで時江の役割が、単なるうるさい先輩ではなく、

若女将を仕込む現場教育係

として整理されているのが大きい。

厳しいが、敵ではない。

この認識が夏美の中でも固まりつつあるのだと思う。

環の「女将に終わりはない」は、仕事論というより“生き方の宣言”

普通の職業なら、覚えるべきことを覚えたら一人前という区切りがある。

でも環の言い方はそうではない。

女将とは、完成する職ではなく、

死ぬまで修業が続く生き方

のように語られている。

ここには旅館の女将という存在の特殊さがよく出ているし、

夏美がこれから受け継ぐものの重さもにじんでいる。

環と夏美が笑い合えるようになったのは、関係性の大きな変化

以前の二人なら、同じ言葉を口にして笑い合うような空気はなかった。

それが今は、「どんど晴れ」と声をそろえて笑える。

これは単に仲良くなったというだけでなく、

環が夏美を本当に若女将として受け入れ、夏美も環を恐れるだけではなくなった

ことの表れだと思う。

かなり静かな場面だけど、関係性の変化としては大きい。


 

銀行が評価したのは柾樹だった――加賀美屋の前進が伸一の立場をさらに苦しくする

  • 銀行では、伸一と柾樹が支店長と面談している。
  • 伸一は、柾樹が加賀美屋の正式な後継者だと支店長に説明する。
  • 融資担当が支店長に、柾樹の横浜時代の実績を伝える。
  • その実績はすでに支店長の耳にも入っていた。
  • 支店長は、柾樹が作った経営改革案を評価する。
  • 融資担当が、融資した場合の返済計画について尋ねる。
  • 柾樹は、10年で返済可能だと答え、返済計画を説明する。
  • 柾樹が加賀美屋に戻ると、環が銀行の支店長から電話を受けている。
  • 環は、支店長から柾樹が加賀美屋の良い跡取りになると褒められ、上機嫌になる。
  • 柾樹から、融資もうまくいきそうだと聞き、環と久則(鈴木正幸)は安堵する。
  • 一方で環は、伸一が一緒に帰ってきていないことを気にかける。
  • 柾樹は、伸一は組合の方に顔を出すと言って、一緒に帰って来なかったと説明する。

個人的感想

柾樹が企画した横浜のホテル時代の仕事は雑誌にも載るくらいで、経営改革案は支店長に気に入られ、融資の返済も10年で完了すると計画まで立てられる。いや、仕事できすぎだろうと思ってしまう。ここまで来ると、いくら融資を希望しているのかが逆に気になってくる。

返済計画の話でも10年という数字が出てきたが、この作品はやたらと5年とか10年とか、区切りのいい数字が好きだなと思ってしまう。あまりにもきれいな数字が続くから、何か意味でもあるのかと勘ぐりたくなるが、今のところはまだ何もない。リフォームと新しい宣伝方法で集客率が15%上がり、年間収支が10%上がるというのも、またきれいな数字だなと思ってしまった。少し大雑把に置いてないかと感じなくもないが、柾樹の目論み通りにいくならそれはそれで良い話だ。

しかも、思ったように集客が伸びなかった場合の返済プランまで考えてきているらしい。予想するにおそらくこれは「15年」で完済できるパターンなんじゃないかと思ってしまう。10年で返せなかったら15年。なぜならこのドラマは5、10、15の数字が好きそうだからだ。

それにしても、銀行の支店長って、柾樹を褒めるためだけにわざわざ環へ電話してくるものなんだな。現実感はともかく、ドラマとしてはもう「柾樹はできる男です」とかなり念入りに押してきている感じがした。


この場面は“融資の前進”である以上に、“評価が誰に集まっているか”を見せる場面

銀行との話が前向きに進んでいること自体は、加賀美屋にとって大きな前進だ。

ただ、この場面で本当に強調されているのは、

銀行が評価しているのが明確に柾樹である

ということだと思う。

後継者として紹介され、過去の実績も知られていて、改革案も褒められる。

加賀美屋の未来に対する信用が、柾樹個人に集まり始めている。

伸一は“説明する側”ではあるが、“評価される側”ではなくなっている

面談の場に伸一もいる。

しかも、自分の口で柾樹を正式な後継者だと説明している。

これは前向きな協力にも見えるが、かなりきつい役回りでもある。

つまり伸一はここで、

主役として評価を受ける人ではなく、柾樹を紹介する人

になっている。

加賀美屋の中心が自分から移っていく瞬間を、自分で言葉にしているわけで、かなり苦い立場だと思う。

返済計画の提示は、柾樹が“夢を語る人”ではなく“数字で語れる人”だと示している

支店長が評価したのは、発想の新しさだけではないはずだ。

返済計画まで含めて説明できるからこそ、銀行は動ける。

つまり柾樹はここで、

理想を語る人ではなく、理想を数字に落とせる人

として描かれている。

これが、伸一とのいちばん大きな差として見えてしまう。

きれいな数字が多いのは、説得力より“見せ方”が優先されている感じもある

10年返済、集客率15%増、収支10%増。

たしかに区切りのいい数字が並びすぎていて、少し出来すぎにも見える。

現実の事業計画なら、もう少し根拠や幅がほしくなるところだ。

だからこの数字は、厳密なリアリティというより、

「柾樹はちゃんと見通しを立てている人です」と視聴者に分かりやすく示すための数字

として置かれているのかもしれない。

支店長から環への電話は、“銀行評価”を家の中に持ち込む演出

支店長がわざわざ環に電話して、柾樹を褒める。

現実的かどうかはともかく、物語としてはかなり分かりやすい。

銀行の中だけで評価されて終わるのではなく、

その評価が加賀美屋の家の中に直接持ち込まれる

ことで、柾樹の株がさらに上がる構造になっている。

そしてその分、伸一の居場所はまた少し狭くなる。

環が気にしたのは“融資”ではなく“伸一が一緒に帰ってこないこと”

環と久則は融資の前進に安心している。

でも環はそこで終わらず、伸一が戻っていないことを気にしている。

ここがやはり環らしいと思う。

環は結果だけではなく、

その結果が誰の心にどう響くか

まで見ている。

今回の前進が、伸一にとって素直に喜べるものではないと、環はちゃんと分かっているのだろう。

この場面は“加賀美屋の未来が開ける場面”であると同時に、“伸一がさらに外れていく場面”でもある

融資が前に進む。

改革案も評価される。

後継者としての柾樹の位置も固まる。

表面だけ見れば明るい話だ。

でも物語としては同時に、

加賀美屋の未来が開けるほど、伸一の現在が苦しくなる

構図になっている。

だからこの銀行シーンは、成功の場面でありながら、かなり苦い成功でもあると思う。


伸一の“外の顔”に忍び寄る秋山――家ではかばわれ、外では狙われる夜

  • 伸一がスナックで酒を飲んでいる。
  • 帰ろうとする伸一を、ホステスのレナ(野波麻帆)が引き止める。
  • その様子を店の入口で確認していた秋山(石原良純)が、店内に入ってくる。
  • 秋山は「経営コンサルタント」と書かれた名刺を伸一に渡し、挨拶をする。
  • 一方、加賀美屋の母屋では、健太(鈴木宗太郎)と勇太(小室優太)が明日伸一が遊園地に連れて行ってくれることを楽しみにしている。
  • 恵美子(雛形あきこ)は、伸一が休みを取ることについて環たちに感謝している。
  • 柾樹は伸一に相談があって待っていたが、まだ帰ってきていないことを知る。
  • 久則は、飲みにでも行ったのではないかと話し、健太と勇太は心配そうな表情を見せる。
  • 浩司(蟹江一平)が伸一について余計な一言を言うと、久則がたしなめる。
  • 時江は伸一の肩を持ち、恵美子は柾樹を持ち上げる。
  • 柾樹は伸一を立て、夏美も地元との付き合いは伸一がいてくれないと困ると話す。
  • そのやりとりを見て、恵美子も笑みをこぼす。
  • 環は、伸一なら大丈夫だと太鼓判を押す。
  • 久則は浩司に、二度と余計なことを言うなと釘を刺す。
  • 浩司が弱々しく「はい…」と返事をすると、その場のみんなが笑う。

個人的感想

いつ見ても、これがスナックなのかと思わせる店だ。そして伸一は何時からこの店で飲んでいるんだ。気分転換に少し寄っただけと言っていたが、周りに他の客もいなさそうだし、レナ以外のホステスはテーブルを拭いていた。まだ準備中なんじゃないのか。銀行での面談が終わって、真っ先に一番乗りでやってきたようにしか見えない。

これはもう分かりやすいレナのハニートラップだろうなと思ってしまう。伸一はこういうのにかなりコロッと騙されそうだ。そして秋山が差し出した名刺もかなりうさんくさい。屋号も何もなく、ただ「経営コンサルタント」としか書かれていない。メールアドレスは co.jp ドメインだから法人ではあるのかもしれないが、肝心の会社名は載せない。本当にある会社なのか、メールアドレスも本物なのか、疑いたくなる名刺だった。

一方で、健太と勇太が遊園地を楽しみにしているのは少し切なかった。父の伸一が連れて行ってくれて、母の恵美子も一緒に行く。小さい子どもにとってはそれだけで嬉しいんだろう。ただ、こういうふうに楽しみにしている時に限って、きっと伸一のせいで話がダメになるんだろうなという嫌な予感もしてしまう。

時江が加賀美家の夕食の席にいることは、もう今さら驚かない。ただ、今日は環の肩を揉んでいた。これが環に言われてやっているのだとしたらあまり気持ちのいいものではないし、時江の方からやっているのだとしても、なんだか変な力関係を感じてしまって少し嫌だった。

浩司はすっかり「余計な一言が多いキャラ」になってしまった。この間はあれだけ兄の伸一をバカにしていたのに、今日は、柾樹の持って行った融資の話がとんとん拍子で決まっていくから兄としては面白くないんだろうと言い出し、恵美子や柾樹、夏美を心配させる。余計なことを言った自覚はあるようで、しゅんとしていたが、何というか、ここまで来ると浩司の方がむしろ素直に見えてくる。

時江が伸一を擁護し、恵美子は柾樹を褒め、柾樹は伸一を立て、夏美は伸一がいないと地元との付き合いで困ると言う。この流れを見ていると、だんだん伸一が腫れ物扱いされているようにも見えてしまう。お互いを褒め合っているようで、少し見ていて気恥ずかしい感じもあった。そういう中で浩司だけが空気を読まずに本音を言ってしまう。怒られる役ではあるのだが、ある意味では一番自然に生きているのかもしれない。

それにしても、久則が今日はいつもよりずいぶん強く浩司をたしなめていたのが印象的だった。普段はへらへらしているように見える分、ああいうふうに本気で釘を刺すと、逆にかなり効いて見える。


この場面は“伸一の転落”そのものより、“狙われやすい状態”を整える場面

まだこの時点では、伸一が何か大きな失敗をしたわけではない。

ただ、酒場にいて、レナに引き止められ、秋山に声をかけられる。

つまりここで描かれているのは、転落の結果ではなく、

伸一が外から入り込まれやすい状態にあること

だと思う。

銀行での面談がうまくいった直後なのに、真っ先に帰宅せず酒場に流れる時点で、かなり危うい。

秋山の名刺の怪しさは、“正体不明のプロ感”を演出している

屋号もなく、「経営コンサルタント」とだけ書かれた名刺。

かなり雑で、いかにも怪しい。

でも逆に言えば、だからこそ

何者か分からないが、何か知っていそうな人間

に見える。

伸一のように、自分の経営者としての立場が揺らいでいる人間には、

こういう“正体不明だけど分かってくれそうな外部者”が危ないのだと思う。

家の中では、みんなが伸一を“かばいすぎる”くらいにかばっている

母屋の場面では、

時江は伸一を擁護し、

恵美子は柾樹を褒めつつ空気を和らげ、

柾樹は伸一を立て、

夏美も必要な存在だと言う。

表面だけ見れば優しい家族だ。

でもここまで来ると、

励ましというより腫れ物扱いに近い空気

にも見えてくる。

それだけみんな、今の伸一の危うさを分かっているのだろう。

浩司だけが“空気の裏側”を口にしてしまう役になっている

浩司は毎回余計なことを言う。

でも、その余計なことはだいたい、

みんながうすうす感じていても言葉にしないことだったりする。

今回でいえば、

伸一は面白くないんだろう、という見立ては、

たぶんかなり核心に近い。

だから浩司は嫌われ役ではあるが、

場の本音を無自覚に言語化する役

としてかなり重要だと思う。

久則が浩司を強く止めるのは、“伸一を守る”というより“家の均衡を守る”ため

久則がいつもより強く浩司を止めたのは印象的だった。

これは単に兄をかばったというだけではなく、

今ここでその話を続けると、家の空気そのものが壊れると分かっていたからだろう。

つまり久則はこの場面で、

伸一個人より、家全体のバランスを守る役

をしている。

普段へらへらして見える人ほど、こういう時に本気の調整役になると効く。

この場面は“家の中で守られる伸一”と“家の外で食われる伸一”の対比になっている

家の中では、みんなが気を使い、持ち上げ、守ろうとしている。

一方、家の外では、レナと秋山が伸一の隙に近づいてくる。

この対比がかなり分かりやすい。

つまり伸一は今、

内側では過剰に守られ、外側では格好の標的になっている

状態だ。

そのどちらも、本人を本当の意味では立ち直らせていないのが苦い。

子どもたちの“遊園地を楽しみにする顔”が、次の不穏さを強めている

健太と勇太が明日を楽しみにしている。

これは本来、伸一にとって救いになるはずの場面だ。

でもドラマとしてはむしろ逆で、

失われそうな約束があるからこそ不穏さが強まる

構造になっている。

家族サービスの約束があるのに、父はまだ帰ってこない。

この小さなズレが、今後の波乱をかなり濃く予感させていた。


秋山の甘い言葉に沈む伸一――家で待つ者を置き去りにして始まる“たくらみ事”

  • スナックでは秋山が伸一に対し、「大した人だ」「立派な人だ」「これほど器の大きい人を見たことがない」と持ち上げる。
  • 秋山は、今夜は自分のおごりで、伸一ととことん語り合いたいと距離を詰める。
  • 伸一も、そんなふうに言ってもらえるなんて今までやってきた甲斐があったと言い、秋山と乾杯する。
  • 一方、加賀美屋の母屋では、健太と勇太が明日を楽しみにしているため、夏美がてるてる坊主を作っている。
  • そこへ柾樹が来て、伸一はまだ帰ってきていないようだと夏美に伝える。
  • 夏美は、もうすぐ帰ってくると信じている。
  • しかし伸一は泥酔している。
  • ナレーションは、伸一はその夜帰ってこなかったのだと説明する。
  • さらに、それはあるたくらみ事の始まりでもあったと語られ、その日の放送は終わる。

個人的感想

秋山が今日は酒を奢ると言い、伸一をおだてまくる。あなたのような素晴らしい人には会ったことがない、今まで加賀美屋を背負ってきたのに、従兄弟の柾樹が帰ってきたからといって跡を譲るなんて普通できない、と持ち上げまくる。どこでそんな話を聞いたのかと不思議がる伸一に、盛岡では知らない人はいないと言って、他のテーブルの客にも同意を求める。しかも他のテーブルの客まで伸一を持ち上げ、秋山はその客たちにもボトルを奢る。ここまで来ると、他の客も他のホステスも、店全体で伸一を罠にはめにかかっているようにすら見えてくる。

秋山が伸一に「これほど器の大きな人に会ったのは初めてです」と言うと、伸一はあっさり笑みを浮かべる。ああ、伸一、こんなに簡単に落ちるのかと思ってしまった。老舗旅館加賀美屋のボンボンとして育ってきたから、周りにちやほやされるのには慣れているのかと思っていたが、案外こういうふうに真正面から褒められることには飢えていたのかもしれない。秋山の言葉に心なんてこもっていないのは、少し落ち着けば分かりそうなものなのに、もうすっかり信じ切ってしまっている。

「今夜はあなたととことん飲みたいんです」と言われて気持ちよくなった伸一は、「そんな風に言ってもらえるなんて、今までやってきた甲斐がありました」とまで答え、明日健太と勇太を遊園地に連れて行くことなど、もう頭から抜け落ちてしまったようにがぶ飲みし始める。夏美は健太と勇太のためにてるてる坊主まで作って、伸一はもうすぐ帰ってくると信じているのに、当の伸一はレナに寄りかかって泥酔し、その夜は帰ってこなかったということまでナレーションではっきり明かされる。そして、それがあるたくらみ事の始まりだということまで、もう全部ばらされてしまう。

朝ドラだから、さすがに伸一がレナと本当に一線を越えるところまでは行かないのだろうが、肉体関係があったように見せかけて脅すとか、そういう方向で話が進むんだろうなという予感しかしない。せっかく柾樹とうまくやれるようになって、加賀美屋一丸で頑張ろうという流れになり、大女将も最後の仕事として伸一に株の生前贈与までしたのに、こんなことをしていたら大女将が泣くぞと思ってしまう。

そして何より嫌なのは、楽しみにしている健太と勇太を傷つけそうなことだし、いつまでも伸一の味方でいてくれた恵美子に対しても、また秘密を抱えることになることだ。これはまだまだ新たな「たくらみ事」のスタートに過ぎないんだよなと思うと、嫌な話ではあるのに、この先の展開が気になってしまう。


秋山が見抜いているのは、伸一の“承認不足”だと思う

秋山は伸一の金や立場だけを見ているわけではない。

まず狙っているのは、今の伸一がいちばん欲しがっている言葉だ。

「器が大きい」「立派だ」「あなたじゃなきゃできない」。

つまり秋山は、

伸一が評価されたい、分かってほしいという欲求に一直線に入り込んでいる

のだと思う。

だから効いてしまう。

伸一は酒に弱いというより、“肯定に飢えた状態”で秋山に会ってしまった

もし伸一が安定していれば、ここまであっさりは落ちなかったかもしれない。

でも今の伸一は、家の中では腫れ物のように気を使われ、

銀行では柾樹が評価され、

自分の立場の揺らぎをずっと抱えている。

そんな時に、真正面から

「あなたこそすごい」と言われる。

これは酒のせいだけではなく、

心の空白にぴったりはまる言葉をもらってしまった

ということなんだろう。

他の客まで褒め出す流れは、“偶然の盛り上がり”ではなく“舞台装置”に見える

秋山が他のテーブルにも同意を求め、

その客たちまで伸一を持ち上げる。

しかもボトルまで奢る。

ここまで来ると、

店全体が伸一を気持ちよくさせるための舞台に見えてくる。

つまりこの場面は、

秋山一人が口説いているのではなく、伸一が逃げにくい空気を作っている

のが怖い。

てるてる坊主の場面が入ることで、伸一の転落がただの自業自得では済まなくなる

もしスナックの場面だけなら、

伸一がまたやらかしそうだ、で終わる。

でもそこに、

夏美がてるてる坊主を作り、

子どもたちが遊園地を楽しみにしていて、

まだ帰ってくると信じている、

という場面が挟まる。

これによって伸一の問題は、

単なる酔っ払いではなく

家で待っている人間を裏切る話

になる。

ここがかなり重い。

伸一が失うかもしれないのは“信用”より先に“家庭の時間”かもしれない

加賀美屋の中での立場や、仕事上の信用ももちろん危ない。

でも今この時点でいちばん傷つきやすいのは、

明日を楽しみにしている子どもたちと、

それを支えようとしている恵美子の側だと思う。

つまりこの場面は、

伸一が経営者として危ないだけではなく、

父親として、夫としての約束も壊し始めている

ことを見せている。

ナレーションが“帰らなかった”と先に言い切るのは、もはや言い逃れ不能にするため

「その夜、帰ってこなかったのです」とナレーションが断定してしまう。

これはかなりきつい。

視聴者に想像させる余地を残すのではなく、

もう完全に一線を越えたと思わせている。

しかも、それがあるたくらみ事の始まりでもあると言う。

つまりここでは、

伸一の弱さが、他人の悪意と接続された瞬間

が描かれているのだと思う。

今回のラストは、“伸一が悪い”だけで終わらず、“伸一は狙われるべくして狙われた”と見せている

もちろん、飲んで帰らない伸一が悪い。

でもドラマはそれだけで済ませていない。

家の中で居場所を失い、

評価されず、

褒められず、

そこに秋山が入ってくる。

つまりこのラストは、

伸一の自業自得であると同時に、

周囲との関係の中で生まれた隙に外部が入り込む話

としても描かれている。

だから見ていて、ただ呆れるだけでは終わらず、かなり嫌な後味が残るんだと思う。


まとめ

今回の第133回は、同じ加賀美屋の中にいながら、夏美と伸一がまったく逆の方向へ進み始めた回だったと思う。夏美は若女将としてようやく日常に戻り、環とも自然に言葉を交わし、仲居たちに指示を出す側へと立場を移していった。前回までの悲しみに沈んだ姿を思うと、ここまで来たこと自体がかなり大きい。もちろん、まだ気負いすぎや立場の難しさは残るにしても、少なくとも前を向いて動けるところまでは戻ってきたのだろう。

一方で伸一は、銀行との話が前進すればするほど、自分ではなく柾樹が評価される現実を突きつけられていた。家の中ではみんなが気を使い、かばい、持ち上げてくれる。けれど、それは本当の意味で伸一を立ち直らせるものにはなっておらず、むしろ腫れ物扱いのような空気さえ生んでいた。その状態の伸一に対して、秋山はまさに欲しい言葉だけを与えて入り込んでくる。大した人だ、立派な人だ、器が大きい。そう言われた伸一があっさり落ちていく姿は、情けないというより危うかった。

そして何よりきついのは、その裏で健太と勇太が遊園地を楽しみにしていて、夏美がてるてる坊主まで作っていたことだ。伸一の問題はもう、旅館の中の立場や男のプライドだけでは済まない。父親として、夫として待っている人たちを裏切り始めている。今回のラストは、伸一が酒に飲まれたというだけではなく、その弱さが秋山の“たくらみ事”と結びついてしまった瞬間としてかなり嫌な終わり方だった。

第133回は、夏美にとっては再出発が日常へ根づいていく回であり、伸一にとっては転落の入口に足を踏み入れてしまった回だった。加賀美屋そのものは前へ進いているのに、その内部では人によって進み方がまるで違う。そのねじれがかなりはっきり出た回だったと思う。

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