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2026年3月21日に放送された『どんど晴れ』第132回。
第132回は、ここ数回続いていた重たい空気がようやく少しほどける回だった。平治が夏美のために作ってきた南部鉄器の風鈴。その懐かしい音色に導かれるようにして、夏美は大女将・カツノの存在をもう一度感じ、自分が一人で悲しみに沈んでいたこと、周囲の心配にも気づけていなかったことをようやく受け止める。そして「強くなる」「笑顔を忘れない」と前を向き、若女将として立ち直る決意を固めていく。一方で、加賀美屋には銀行融資の追い風が吹き始めるが、その裏では伸一の心の隙を狙うように不穏な影も近づいていた。今回は、夏美の再出発と、加賀美屋の次の波乱の予感が同時に描かれた回だった。
※この回は、前日の展開を踏まえて見ると、より重みが増します。
👇 前回(第131回)の感想はこちら

平治の風鈴が呼び戻したもの――懐かしい音の先に現れた大女将
- 平治(長門裕之)が、南部鉄器で作った風鈴を持ってやって来る。
- 夏美(比嘉愛未)はその音を聞いて、前にもどこかで聞いたような気がすると話す。
- 平治は、大女将(草笛光子)もきっと同じことを言うだろうと応じる。
- 平治は、南部鉄器で風鈴を作ろうと思ったのは夏美のおかげだと語る。
- 夏美との会話の中で、人の心を和ませるような、今までとは違う南部鉄器を作ってみたくなったという。
- 平治は、大女将と縁側で話をしていると、どこからともなくこの音が聞こえていたと話す。
- そして、大女将にも聞こえていたはずだから、どうしてもこの音を作りたかったし、大女将にも聞かせてやりたかったのだと打ち明ける。
- その懐かしい音色は、夏美の心を癒やし、悲しみを包み込むように響く。
- 縁側で夏美と平治がたたずむ中、風鈴が鳴った瞬間、夏美にはカツノの姿が見える。
- カツノは夏美に「笑顔を忘れないで。負けないで」と語りかける。
- 平治にはその姿は見えていないが、風鈴が鳴った時に平治もまた大女将の気配を感じたように見える。
- カツノの姿が消え、夏美はその姿を探す。
- 平治はそんな夏美を見て、大丈夫かと心配する。
- 夏美は「大女将、ありがとうございます」と感謝を口にする。
個人的感想
平治が作った南部鉄器の風鈴の音色を聞いて、夏美は前にもどこかで聞いたような気がすると言った。平治もまた、カツノと縁側で話しているとこの音が聞こえていたという。しかも、カツノにも聞こえていたはずだから、どうしてもこの音を作って聞かせてやりたかったと語るのだが、それはもう間に合わなかった。そこがまず切なかった。
ただ、どうして夏美がこの音を「どこかで聞いたことがある」「懐かしい」と感じるのかが気になった。なので、夏美が座敷童に見間違えられる最初の場面を確認してみた。第2回で、カツノが初めて蔵にいる夏美を見間違える場面があるのだが、カツノが蔵へ向かう前に、ちょうどこの南部鉄器の風鈴のような音が鳴る。その音に導かれるように蔵の中を見たカツノが、そこにいた夏美を座敷童と見間違える。そう考えると、やはり夏美はこの加賀美屋にいついている座敷童で、昔からこの音と共に過ごしていたのではないかと思えてくる。だから夏美にもカツノにも、この音は初めて聞く新しい音ではなく、懐かしい音なのだろう。
もしこの風鈴の音が座敷童を呼ぶ音、あるいは現れるきっかけのようなものだとしたら、加賀美屋では今後やたらと座敷童が見えるようになってしまうんじゃないかと少し笑ってしまう。実際、かつては風鈴の音が夏美を座敷童に見せ、今度はその音が亡くなったカツノを呼び出したように見える。これは本当に霊的なものなのか、それとも夏美の心が作り出したものなのかはまだ断言できない。ただ、カツノの姿は平治には見えず、夏美にしか見えていなかった。一方で平治もまたカツノの気配を感じたように見えたし、カツノ側の目線も平治の方へ向いていた。そう考えると、単なるイマジナリーな存在ではなく、やはり霊的な何かとして描いているようにも思える。
そしてカツノは夏美に、笑顔を忘れないで、負けないでと励まして消えていった。平治には見えず、夏美にしか見えない。しかも消えたあとも夏美がカツノの姿を探すのを見て、平治はそれをおかしいとは思わず、ただ心配するだけだった。ここは一般的な常識で考えればかなり不思議な場面なのに、このドラマの中ではそうしたことを疑う感覚そのものがあまりないように見える。座敷童を軸に話が進んできた作品なのだから、カツノが霊のような形で現れたとしても、自分としてはあまり驚かなかった。
風鈴は“新しい作品”ではなく、“昔からそこにあった音”を形にしたもの
平治は風鈴を自分が新しく作ったものとして持ってきている。
でも、この場面で強調されるのは新しさではなく、懐かしさだ。
つまりこの風鈴は、平治の創作というより
前から加賀美屋に流れていた見えない音を、形あるものにした作品
として見るとしっくりくる。
だから夏美もカツノも、初めてではなく「知っている音」として受け取るのだと思う。
この音は“座敷童の気配”と結びついた音として回収されている
第2回の、カツノが夏美を座敷童と見間違えた場面とつなげて考えると、
今回の風鈴の音はかなり意味深い。
あの時も、音に導かれるようにしてカツノは蔵を見た。
今回も、音が鳴った瞬間にカツノの姿が現れる。
そう考えると、この音はただ涼しげな音ではなく、
加賀美屋の不思議な気配を呼び起こす合図
のようにも見える。
座敷童の物語ときれいにつながっているのが面白い。
夏美にだけカツノが見えたのは、“喪失の深さ”と“つながりの強さ”の表れかもしれない
カツノの姿は平治には見えず、夏美にしか見えない。
これは単純に霊が出た、出ないという話だけではなく、
今いちばん強くカツノを求めていたのが夏美だった
ということでもあると思う。
カツノは夏美にとって、優しく受け入れ、背中を押し続けてくれた最大の後ろ盾だった。
だからこそ、その声が届く相手として夏美が選ばれたようにも見える。
平治も“見えてはいないが、感じてはいる”
ここで面白いのは、平治が完全に蚊帳の外ではないことだ。
カツノの姿そのものは見えていない。
でも、風鈴が鳴った時に平治もまた何かを感じたように見える。
つまりこの場面は、
夏美だけの幻想に閉じた場面ではなく、平治も同じ空気の変化を受け取っている場面
として作られている。
だからこそ、単なる心象風景よりも少し霊的な手触りが残る。
カツノが言うのは“悲しまないで”ではなく、“笑顔を忘れないで、負けないで”
ここがかなり大きい。
カツノは夏美に、悲しむこと自体を否定してはいない。
ただ、その悲しみに負けるなと言う。
そして笑顔を忘れるなと言う。
つまりここでは、
悲しみを消せと言っているのではなく、悲しみより大事なものを思い出せと言っている
のだと思う。
大女将らしい励まし方だし、夏美が立ち直るきっかけとしてもきれいだ。
平治は今回も、言葉ではなく“物”で夏美を支えている
平治は説教もしないし、理屈で立ち直らせようともしない。
ただ風鈴を作って持ってくる。
しかもそれは、人の心を和ませるような鉄器だという。
つまり平治は、
職人としてできるやり方でしか人を支えられない人
として描かれている。
でもその不器用さが、かえってまっすぐでいい。
この場面は“悲しみの終わり”ではなく、“悲しみとの付き合い方が変わる瞬間”
カツノが現れたから、これで全部解決というわけではない。
でも少なくとも夏美は、カツノの不在に押しつぶされるだけの状態から、
カツノの言葉を支えにして前に進める状態へ移り始めている。
だからこのシーンは、立ち直りの完成ではなく、
悲しみに包まれていた夏美が、悲しみを抱えたままでも歩き出せるようになる転換点
として見るとかなり大事な場面だった。
風鈴の音とともに立ち直る夏美――“悲しみの中の自分”から抜け出す決意
- 夏美と柾樹(内田朝陽)が縁側で会話をしている。
- 柾樹は、夏美の前にカツノが現れたという話に対して、特に驚いた様子を見せない。
- 夏美は柾樹に、最初に自分が座敷童に見間違えられた時のことや、平治から聞かされたカツノの最期の時のことを話す。
- そして、柾樹や環(宮本信子)たちが自分のことを心配してくれていたのに、それにも気づかず、一人で悲しんで落ち込んでばかりいたことを反省する。
- 夏美は風鈴の音色に引き寄せられるように耳を傾ける。
- そのうえで、「強くなる」と宣言する。
- さらに、どんな時でも笑顔を見せられるようになること、負けないことを誓う。
- そして、自分には柾樹や環たちだけでなく、いつだって大女将がついていてくれるのだと、吹っ切れた様子を見せる。
個人的感想
いつも何か大事なことに気づけなかった夏美が、ついに自分一人の力で、柾樹や環をはじめ周りの人たちもずっと自分のことを心配してくれていたのだという事実に気づいた。これはかなり大きな成長だと思う。やっと、自分が一人で悲しんで落ち込み、半ば悲劇のヒロインのようになっていたことにも気づけたのだろう。
本来なら、ここからは少しずつ前を向いていけばそれで十分な気もする。けれど夏美はここで、「強くなる」「どんな時でも笑顔を見せられるようになる」「負けない」という、かなり大きな言葉を一気に口にする。そこは少し気負いすぎじゃないかと心配にもなった。立ち直りかけの人間が、勢いそのままに理想の自分を掲げすぎると、あとでまた苦しくなることもあるからだ。
ただ、それでも前を向けたこと自体はやはり良かった。ここまでかなり長く落ち込んでいたぶん、この場面でようやく夏美の中の空気が切り替わったのが分かって少しほっとした。
この場面は“慰めてもらう夏美”から“自分で立ち上がる夏美”への転換点
これまでの夏美は、周囲に支えられ、心配され、見守られる側だった。
でもここでは、誰かに言われたからではなく、
夏美自身が自分の状態を言葉にして、自分で立ち直ろうとしている。
だからこの場面は、回復そのものよりも
回復の主体が夏美に戻ってきた場面
として大きいと思う。
柾樹が驚かないのは、座敷童の世界を受け入れているからでもある
普通なら、「カツノが見えた」と聞けばもっと驚いてもよさそうだ。
それでも柾樹が大きく取り乱さないのは、
この家ではもともと座敷童の気配や不思議な出来事が、
完全には否定されていないからだろう。
つまりこの場面は、
夏美が変になったのではなく、
加賀美屋という家の論理の中では十分ありうる出来事
として処理されている。
この自然さが、このドラマらしいところだと思う。
夏美が気づいたのは、“大女将を失った悲しみ”より“自分は一人ではなかった”ということ
ここで夏美が本当に取り戻したのは、
悲しみを消す方法ではない。
そうではなく、
自分を心配してくれる人たちの存在
をちゃんと受け取れる感覚だと思う。
今までは、カツノを失ったことだけに心が向いていた。
でもここで初めて、
自分の周りにも支えてくれる人たちがいたのだと視界が開ける。
立ち直りのきっかけとしては、そこが一番大きいのかもしれない。
「強くなる」は前向きだが、少し危うい宣言でもある
この場面はたしかに感動的だが、
同時に少し気になるのは、夏美が立ち直りの第一声として
「強くなる」「どんな時でも笑顔」「負けない」
と、一気に高い理想を掲げていることだ。
これは大女将らしい教えを受け継ぐ宣言でもある一方で、
悲しみを整理する前に、理想の若女将像を急いで背負おうとしている
ようにも見える。
だから前向きではあるけれど、少し気負いすぎにも見える。
笑顔が“自然に出るもの”から“意志して見せるもの”に変わっている
これまでの夏美の笑顔は、
持ち前の明るさや人懐っこさから自然に出てくるものとして描かれていた。
でもここでは、「笑顔を見せられるようになる」と誓っている。
つまり笑顔が、感情の結果ではなく
役割として身につけるべきもの
に変わっている。
ここは、夏美が若女将として一段階進んだとも言えるし、
逆に“笑顔でいなければならない”重圧を背負い始めたとも読める。
大女将は“失った人”から“ついていてくれる人”へ変わった
これまでの夏美にとってカツノは、
不在を痛感させる存在だった。
でもこの場面では、「いつだってついていてくれる」と言っている。
これはかなり大きな変化だと思う。
つまりカツノはここで、
悲しみの原因から、
前に進むための支えや内なる後ろ盾
へと位置づけが変わった。
喪失の描き方としても、かなりきれいな転換だ。
このシーンは“立ち直り”であると同時に、“若女将としての再出発宣言”でもある
ただ元気を取り戻しただけではない。
強くなる、笑顔を見せる、負けない。
その言葉の中には、
これから加賀美屋の若女将としてやっていく覚悟がかなり強く入っている。
だからこの場面は、
悲しみから抜け出すシーンであると同時に、
大女将の遺志を自分の中で引き受け直す場面
として見るとかなり重要だった。
前田夫妻をもう一度迎え直す――夏美が“これからの若女将”として約束を結ぶ場面
- 前田(北見敏之)がカツノに線香をあげて帰る。
- 前田は、大女将は自分たちの命の恩人だからこれくらいは当然だという。
- 環と清美(中村優子)が見送りをしているところへ、夏美も走ってやって来る。
- 夏美は、前田に自分の至らなさを謝罪する。
- 前田は、もういいんですよ、気になさらないでくださいと応じる。
- その言葉を受けて、夏美、環、清美は頭を下げる。
- 夏美は、これに懲りずにまた来てほしいと頼む。
- さらに、「来る者、帰るが如し」の言葉どおりに前田夫妻を迎えられているかどうか、これからの若女将としての自分を見てほしいと願う。
- 前田は、分かりました、そういうことなら必ずまた来させてもらうと約束する。
- 妻の朋子(児島美ゆき)も、夏美にまた会えることを楽しみにしていると言い、夫妻は帰っていく。
個人的感想
常連客とはいえ、カツノに線香をあげるためにお客さんを母屋のカツノの部屋に通したということなんだろうか。これ、希望すれば誰にでもこの対応をするのか、それともどこかで線引きするのかが気になる。前田が面倒な客だからここでも特別対応になっているのだとしたら、それはそれでまた別の問題だし、逆に際限なく母屋に招き入れる運用なら、恵美子がそのしわ寄せでパンクしそうだ。やはり、こういう話を聞くと大きな会場でお別れの場を設けた方がよかったのではないかと思ってしまう。
夏美は自分が至らなかったと前田に謝罪したうえで、さらに自分の成長を見てもらいたいようなことまで言った。ここは少し危うさも感じた。こういう言い方は、前田のようなタイプの客をまたつけ上がらせることにならないだろうか、と少し心配になる。下手をすると、そのうち「あの若女将は俺が育てた」みたいなことを言い出しかねない気もする。
とはいえ、夏美自身が前田に見てもらいたい、また来てほしいと願っているなら、それはそれで一つの覚悟なのだろう。難しい客ではあるが、客単価が高そうな加賀美屋の常連二人を今後もつなぎとめられたのだとすれば、経営的には悪い話ではない。
ただ、やはりどうしても引っかかるのは、大女将を命の恩人だと言う人が、アワビを出されたことや、部屋や仲居がいつもと違ったことにそこまで強く反応するのが、いまひとつ結びつかないところだ。恩は恩、サービスはサービスで、宿泊料を払っている以上いつも通り気持ちよく過ごさせろ、という感覚なのかもしれない。加賀美屋にとっては、これくらいの要求をしてくる客はむしろ普通なのだろうか。だとすると、もっと過大な要求をしてくる常連も他にいそうだなと思ってしまった。
この場面は“謝罪の締め”ではなく、“次の関係を結び直す場面”
前田の怒りが収まり、謝って終わり、ではない。
ここで夏美は、また来てくださいと頼み、
自分を見てほしいとまで言う。
つまりこの場面は、失敗の後始末ではなく、
壊れかけた関係を、夏美が若女将として結び直す場面
として見ると大きい。
夏美は“大女将の代わり”ではなく、“これからの若女将”として立とうとしている
ここで印象的なのは、夏美が単に大女将のようになりたいと言うのではなく、
「これからの若女将としての自分を見てほしい」と差し出していることだ。
これはかなり大事で、
大女将の不在を埋めるのではなく、
大女将の遺志を受け継いだ自分として評価を受けようとしている
ということだと思う。
前田は“許した”というより、“次も見に来る立場”を得た
前田は最終的にはまた来ることを約束する。
これは表向きには和解だが、見方を変えると、
今後も加賀美屋と夏美を見定める立場を手に入れた
とも言える。
そう考えると、少しつけ上がる危うさが残る。
線香をあげさせる対応には、“常連特別扱い”の濃さが出ている
母屋のカツノの部屋まで通しているとすれば、
これはかなり特別な対応に見える。
すべての客に開くわけではないだろうし、
かといって明確な基準が見えるわけでもない。
ここには加賀美屋らしい情の深さもあるが、同時に
どこまでを特別対応にするのかが曖昧な家業の危うさ
もにじんでいる。
前田夫妻は“命の恩人への感謝”と“常連としての要求”を同時に持っている
前田がややこしく見えるのはここだと思う。
大女将への恩は本物なのだろう。
でもそれと同時に、常連として特別に扱われたい気持ちも強い。
だから今回の不満は、恩知らずというより
感謝と甘えが同居した常連客の姿
として見るとしっくりくる。
佳奈ではなく清美に戻すことで、“常連対応は属人的”という現実がはっきりする
今回、最終的に清美が前面に出ることで、
前田対応はやはり「誰でもできる標準接客」ではなく、
特定の担当者との関係性込みで成り立っている接客
だと分かる。
これは旅館らしい強みでもあるが、
同時に担当固定や休みづらさ、若手の育ちにくさにもつながる。
かなり属人的な仕組みだと思う。
この場面は、夏美が“失敗した人”から“加賀美屋の顔になる人”へ戻る場面でもある
前回までの夏美は、確認ミスをして謝る側だった。
でもここでは、自分の言葉でまた来てほしいと頼み、
次はきちんと迎えたいと伝えている。
つまり夏美はここで、
単なる失敗者から、
もう一度加賀美屋を代表して客に向き合う若女将
へと戻っている。
その意味で、この見送りの場面はかなり大きな再出発だったと思う。
若女将として仲居たちを動かす夏美――仲間だった相手に指示を出す立場への転換
- 夏美は、則子(佐藤礼貴)、康子(那須佐代子)、恵(藤井麻衣子)、佳奈(川村ゆきえ)の順に、若女将として指示や命令を出している。
- 佳奈は夏美に対して「申し訳ありませんでした」と謝る。
- 夏美は、今後は少しでも気になることがあれば、何でも遠慮せずに伝えるよう佳奈に注意する。
- 佳奈もそれを理解して受け止める。
- 佳奈が時江(あき竹城)に、夏美が今までと違うと話す。
- それに対して時江は、「当然です。若女将ですから」と答える。
個人的感想
仲居としては一番下っ端だった夏美が、一気にごぼう抜きでみんなの上司になったわけで、これからは若女将として仲居たちを指揮命令していかなければならない。かなりやりづらい立場だと思うのだが、今のところ仲居たちの側から露骨な反発が見られないのは少し意外でもある。
ただ、今回どうしても引っかかったのは佳奈への対応だ。佳奈は夏美に「申し訳ありませんでした」と謝っていたが、そこまで佳奈が夏美に謝らなければならないことをしただろうか。佳奈は基本的には、夏美から受けた指示に従って接客していただけだと思う。もちろん、違和感を覚えながら「ま、いっか」と確認を後回しにしてしまったのは問題だったのかもしれない。だがそれでも、佳奈が夏美に謝るというより、まず夏美の方が「間違った指示を出してしまって申し訳なかった」と佳奈に伝えるべきではないかと思ってしまう。
その上で「これからは気になることがあれば遠慮なく言ってください」と言うならまだ分かるのだが、今の見え方だと、夏美が自分のミスを棚に上げて佳奈に注意しているようにも見えてしまう。前田にはちゃんと謝っていたのに、佳奈や清美にはどうなんだろう、と少し気になった。夏美の中では、お客様に対する謝罪と、現場で巻き込んだ仲居たちへの謝罪がまだ分かれているのかもしれない。(そもそも、下の者のミスは上の者が責任を取るという”しきたり”はどこいった…。このミスの原因は誰のせいで、責任を取る上の者は誰になるんだよ。)
この場面は“立ち直った夏美”を見せる場面であると同時に、“立場が変わった夏美”を見せる場面でもある
前田の件を経て、夏美は落ち込むだけの状態から抜け出した。
でも本当に大きいのはそこだけではなく、
仲居として動く側ではなく、仲居を動かす側に回った
ことだと思う。
この場面は、気持ちの回復だけでなく、
若女将としての立ち位置がはっきり可視化される場面になっている。
時江の「当然です。若女将ですから」は、夏美個人ではなく“役職”を見ろという言葉
佳奈は「夏美が変わった」と感じている。
でも時江は、それを個人の変化としてではなく、
「若女将だから当然」と言う。
つまりここでは、
夏美という人間より、若女将という役割が優先される世界
がはっきり出ている。
家業らしい厳しさがよく出ている一言だと思う。
夏美の注意は間違ってはいないが、少し順番が気になる
違和感があったら遠慮せず言ってほしい、という指示自体は正しい。
今回のような事故を防ぐには、現場の小さな違和感を吸い上げることが重要だからだ。
ただ、今回の件では
誤った前提を与えたのは夏美の側でもある。
だから、まず「巻き込んでしまってごめん」が先にあって、
その後で「次からは遠慮なく言って」と続く方が、
現場の納得感としては強かった気がする。
佳奈が謝る構図には、家業特有の上下関係がにじんでいる
佳奈にも確認不足はあった。
でも、根本の誤認は夏美の側から始まっている。
それでもまず佳奈が謝るのは、
この現場がフラットなチームではなく、
上位者の判断を受けて動く縦の関係
でできているからだろう。
仲居たちの反発が今のところ表に出ないのも、少し興味深い
本来なら、一番下から一気に上に立った夏美に対して、
もっとやりにくさや反発が出てもおかしくない。
それが表立って出ていないのは、
夏美の人柄もあるだろうし、
環や大女将の後ろ盾が強かったことも大きいのだと思う。
ただ逆に言えば、
今はまだ表面化していないだけで、
指示を出す側と出される側のぎこちなさ
はこれから少しずつ出てくる可能性もある。
この場面で夏美が学ぶべきなのは、“強く指示すること”だけではない
若女将として必要なのは、指示を出すことだけではないはずだ。
今回の件で本当に大事なのは、
現場を動かしながら、
自分の判断ミスで誰を巻き込んだのかまで見渡せること
だと思う。
お客様に謝るだけでなく、
部下や同僚にどう向き合うか。
そこまでできて初めて、若女将としての指揮命令が信頼につながる。
今回の場面は、その入り口としては大事だが、まだ少し粗さも残っているように見えた。
銀行の追い風と忍び寄る不穏――改革が動き出した加賀美屋に新たな火種
- 帳場では久則(鈴木正幸)が銀行からの電話を受けている。
- 銀行は融資に前向きで、柾樹の経営改革案に支店長が興味を持ったらしく、明日にでも相談に来てほしいという連絡だった。
- その話を聞いて、伸一(東幹久)と柾樹も喜ぶ。
- 二人は、今日中に資料を揃えるぞと張り切る。
- しかしナレーションは、世の中には邪魔をしようとする者もいると語る。
- そこにレナ(野波麻帆)と秋山(石原良純)が登場し、何やら怪しげな相談をしている様子が映る。
- 一方、加賀美屋には今までとは客層が違いそうな若い女の子三人組が泊まりに来る。
- その客を、環、夏美、康子が出迎える。
- 新しく変わろうとしていた加賀美屋に、不気味な影が忍び寄っていたというナレーションで、今週の放送は終わる。
個人的感想
銀行から融資がおりそうなこのタイミングで、うさんくさい男・秋山がいよいよ本格的に忍び寄ってきた。来週はこの秋山が確実に波乱を起こすんだろうなという予感しかしない。せっかく持ち直してきた伸一だったが、周囲が散々伸一を無能扱いするような空気を作ってきたからこそ、こういう人間には簡単につけ込まれてしまいそうだ。秋山がどんな仕掛け方をしてくるのか、かなり楽しみでもある。
それと同時に、明らかに今までとは違う若い客層を取り込めたように見えたのも印象的だった。ああいう若い女の子三人組が加賀美屋に来るとなると、やはり宣伝の仕方や見せ方が変わり始めているのかもしれない。ただ、その一方で少し気になるのは、宿泊料でも下げたのかなという点だ。新しい若い客層を取り込むのはもちろんいいことだが、その結果として、今まで「老舗旅館加賀美屋」というブランドに高い宿泊料を払ってきた常連客が離れていってしまったら意味がない。新規客を増やすことと、既存の上客をつなぎとめること。その両方をちゃんとやらないと、改革は途中で失敗する気がする。
この場面は“希望の終わり方”ではなく、“希望と不穏を同時に置く終わり方”
銀行が前向き、支店長が興味を持つ、資料を揃える。
ここだけ見ればかなり明るい流れだ。
でもナレーションはすぐに、邪魔をしようとする者がいると差し込んでくる。
つまりこのラストは、
改革が動き出す希望と
それを壊す火種
を同時に並べて終わらせている。
かなり分かりやすい“次週への引き”になっている。
秋山が狙うのは加賀美屋そのものより、伸一の心の隙だと思う
秋山が怪しいのはもちろんだが、
本当に入り込みやすいのは加賀美屋の帳簿ではなく、
今の伸一の心理状態だろう。
融資の話は前に進いた。
でもそれは、柾樹の案が評価されたからでもある。
つまり伸一は、希望と屈辱を同時に抱えたままの状態だ。
秋山が付け込むなら、まさにそこだと思う。
伸一は“持ち直した”のではなく、“まだ不安定なまま前向きになろうとしている”
今回、伸一も柾樹と一緒に喜んでいる。
それ自体はいいことだ。
でも前回までの流れを踏まえると、
これで完全に吹っ切れたと見るのはまだ早い気がする。
むしろ今は、
前向きに振る舞えているが、芯のところはまだ揺れている状態
に見える。
だからこそ、外から来る怪しい人間が危ない。
若い女の子三人組の登場は、“改革の成果”を見える形にした演出
これまでの加賀美屋の客層とは明らかに違う若い三人組が来る。
これは単に新しい客が来たというだけでなく、
柾樹の改革が、実際に客層の変化として表れ始めた
ことを見せる演出だろう。
専門誌、予約サイト、口コミ、そういった話が、
ようやく現場の景色に反映され始めたとも読める。
ただし、新規客の獲得は“成功”ではなく“入口”にすぎない
若い客が来たこと自体は前進だ。
でも本当に大事なのは、その人たちが満足して帰ること、
そして加賀美屋のブランド全体が崩れないことだと思う。
つまり改革の難しさは、
新しい客を呼ぶことより
新しい客を入れても老舗としての価値を失わないこと
にある。
ここを間違えると、ただの安売り旅館になりかねない。
このラストは、“改革には必ず副作用がある”ことを予感させてもいる
若い客層が入る。
銀行も前向き。
一見すると理想的だ。
でもその直後に不気味な影を入れることで、
ドラマは「変わることには必ず摩擦が出る」と示しているように見える。
内部では伸一、外部では秋山、顧客面では新旧の客層。
加賀美屋はこれから、
変化そのものが新しいトラブルを呼ぶ段階
に入っていくのだと思う。
今週の締めとしては、“夏美の再起”と“次の波乱の予告”をうまく接続している
今週は、夏美が立ち直って若女将として戻ってくる流れが大きかった。
そのうえで最後に、今度は加賀美屋全体の危機を予告して終える。
つまり物語の重心が、
夏美個人の再起から
加賀美屋全体を揺らす次の波乱
へ移っていくわけだ。
週またぎの終わり方としてかなりうまいと思った。
まとめ
今回の第132回は、夏美がようやく悲しみの底から顔を上げることができた回だったと思う。平治の風鈴はただの贈り物ではなく、言葉では届かないものを音で届けるような、不器用だけれど平治らしい支え方だった。そしてその音に呼ばれるように現れたカツノは、もう悲しみの対象ではなく、夏美を前に進ませる存在へと変わっていた。ここで夏美が取り戻したのは、単なる元気ではなく、「自分は一人ではない」という感覚だったのだろう。
ただ、その立ち直り方には少し気になるところもあった。夏美は「強くなる」「どんな時でも笑顔を見せられるようになる」「負けない」とかなり大きな言葉を一気に口にした。前を向けたのは間違いなく良いことだが、少し気負いすぎにも見える。自然に笑えるようになるというより、若女将として“笑顔でいなければならない”と自分を追い込んでしまわないか、そこは少し心配でもある。
それでも、前田夫妻との一件を経て、若女将として仲居たちに指示を出し始めた夏美の姿を見ると、たしかにここが再出発の節目なのだと感じる。大女将の代わりになることはできなくても、大女将の遺志を継いで、自分なりの若女将になろうとしている。今回の回はその第一歩としてかなり大きかった。
そしてその一方で、銀行融資の話は前進し、若い客層も入り始め、加賀美屋の改革は少しずつ形になってきた。だが、そんな追い風が吹くほど、伸一の立場や心の揺れが危うくなっていくのも見逃せない。最後に秋山とレナが出てきたことで、来週はまた別の方向から加賀美屋が揺さぶられることになりそうだ。第132回は、夏美にとっては再起の回でありながら、物語全体としては次の波乱へ向かう橋渡しの回でもあった。
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