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2026年3月5日放送『どんど晴れ』第118回。
大女将・カツノが加賀美家の全員を座敷に集め、家長としての覚悟を示した第118回。
カツノは自らが持つ加賀美屋の株券をすべて伸一に譲ると宣言し、家族の対立は思わぬ形で動き出す。
そして伸一もまた、自分の感情と向き合い、家族の前で大きな決断を下した。
長く続いてきた後継問題に一つの区切りがつき、加賀美屋は新しい体制へと進み始める。
さらに、夏美と柾樹も未来へ向けて新たな決意を固めていた。
※この回は、前日の展開を踏まえて見ると、より重みが増します。
👇 前回(第117回)の感想はこちら

カツノの覚悟――株券を伸一へ託した祖母の決断
・座敷では、カツノ(草笛光子)、平治(長門裕之)、夏美(比嘉愛未)が神妙な面持ちで待っていた。
・そこへ久則(鈴木正幸)、環(宮本信子)、柾樹(内田朝陽)が入室する。環はカツノの体調を気遣い、今は養生することが一番だと声をかけるが、カツノは「黙れ!」と一喝する。
・カツノは、自分は大女将を引退した身だが「加賀美家の家長」として皆に話したいことがあると言い、重要な話のため平治に後見人を頼んだと説明する。
・続いて伸一(東幹久)と恵美子(雛形あきこ)が入り、さらに浩司(蟹江一平)も到着し、加賀美家の全員が座敷に揃う。
・カツノは旅館の経営は環に任せているが、加賀美家の今後について家長として話しておきたいことがあると語る。
・伸一は、どうせ「加賀美家」まで柾樹に継がせるつもりなのだろうと皮肉を言う。
・するとカツノは箱を取り出し、自分が保有している「株式会社加賀美屋旅館」の株券を皆に見せる。
・そして伸一を前に呼び、その株券すべてを伸一に譲ると宣言する。
・久則は、カツノの持ち株は加賀美屋の株の半分にあたると説明する。
・浩司は、それはつまり兄の伸一に実権を渡すことになるのではないかと言う。
・平治は伸一に向かい、「今目の前にいるのは大女将ではなく、お前のおばあちゃんだ」と語りかける。
・カツノは、柾樹に加賀美屋を継がせると決めたのは自分だが、自分の全財産である株券は伸一に受け取ってほしいと話す。
・さらに、柾樹を母親代わりに育ててきたが、初孫の伸一も浩司も大切な孫だと語り、祖母として伸一に辛い思いをさせてしまったことを詫びる。
・そして、加賀美屋には伸一の力も必要なのだと訴え、皆で旅館を支えてほしいと頼む。
・祖母である自分でさえこんなに辛い思いをしたのだから、母である環の気持ちも思いやってほしいと伸一に語りかけた。
個人的感想
おそらくここは感動的な場面として描かれているのだろう。もしブログなど書かずに、ただ毎日流し見しているだけだったら素直に感動していたのかもしれないと思わないでもない。ただ、このドラマはどうしても細かいところが気になってしまい、なかなか純粋に感動だけに浸れないところがある。
まず、加賀美屋が株式会社であること自体は特に驚きではない。ドラマ序盤でも、翼の代理人弁護士から届いた手紙に「株式会社加賀美屋旅館 代表取締役 加賀美久則」と記載されていたので、その点はすでに明らかになっていた。
ただ、どうしても引っかかるのは、カツノが保有する株式会社加賀美屋旅館の株券をすべて伸一に譲るという行為だ。これはその場での生前贈与なのか、それとも死後に渡すという遺言のようなものなのか。どちらにしても、法律的にはなかなか複雑な問題を含んでいそうだ。
劇中に映った株券を見ると、「株式の譲渡には取締役会の承認を要する」といった譲渡制限の記載がある。さらに会社成立日も株券発行日も平成8年4月1日となっていた。この時代はまだ旧商法の時代で、株式会社を設立するには取締役3人と監査役1人、合計4人が必要だったはずだ。つまり久則以外にも取締役が存在することになる。
そうなると、カツノの株券を譲渡するには取締役会の承認が必要になるはずだ。しかし劇中では、当の久則でさえ初めて聞いたような反応を見せていた。もし本当に譲渡するのであれば、事前に何らかの手続きがあってもよさそうだが、そのあたりは完全にスルーされている。
もっとも、この作品を見ていると、カツノはあまり法律や専門家の意見に頼るタイプではなさそうだ。以前、翼のアレルギー問題で訴訟騒ぎになったときも、弁護士はつけないと言い切っていた。おそらくカツノは、外部の専門家よりも自分の判断を優先して加賀美屋を経営してきた人物なのだろう。だからこそ、問題が起きても弁護士に相談するより「誠心誠意」で乗り切ろうとするし、「上の者が責任を取る」というしきたりを重んじて大胆な決断もしてしまう。
カツノを見ていると、「法律なんて守っていたら会社経営なんてできない」と豪語していた昔の経営者たちの姿を思い出してしまう。
それにしても気になるのが、なぜ平治が後見人として同席しているのかという点だ。平治は地元ではなぜか妙な影響力を持っている人物として描かれている。もしかすると南部鉄器職人という顔のほかに、実は弁護士資格でも持っているのではないか…などと一瞬考えてしまった。もちろん冗談だが、それくらい不思議な立ち位置ではある。
さらに浩司は、「株券を全部渡すということは兄貴に実権を渡すことになる」と言っていた。しかし実際には、経営の実権を握るには通常は過半数の株式が必要になる。カツノの持ち株は50%とのことなので、もし伸一がそれまで株を持っていなかったとすれば、単純に受け取るだけでは過半数にはならないはずだ。逆に、伸一が少しでも株を持っていたのなら話は変わるが、そのあたりは劇中でははっきりしていない。
さらに将来の相続まで考えると、場合によっては法定相続人である、政良や久則が遺留分を主張できる可能性もでてくるんじゃないかとか考えたりもする。
カツノとしては家族の争いを収めるための決断だったのだろうが、見方によっては新たな火種を残したとも言えなくもない。できれば、この相続問題が将来「争族」にならないことを祈るばかりだ。
■ 「家業」と「会社」のズレ
今回のシーンで興味深いのは、加賀美屋が株式会社でもあるという点だ。
本来、株式会社であれば
-
株式
-
経営権
-
取締役会
-
株主構成
といった制度的な枠組みで経営が決まる。
しかし劇中では、それよりも
家長の判断
家族の感情
が優先されている。
つまり加賀美屋は
「会社としての組織」よりも「家としての組織」
として動いている旅館だと言える。
■ カツノの決断の意味
カツノが株券を伸一に渡すと言ったのは、単なる財産の譲渡ではなく、
伸一を家族の中で認める行為でもある。
伸一はずっと
-
母に認められない
-
後継者から外される
という思いを抱えていた。
そこでカツノは
「お前は必要な存在だ」
という形で伸一の立場を回復させようとした。
これは経営判断というより
家族関係の修復
としての意味が大きい。
■ 平治という「第三者」
この場面で平治が後見人として呼ばれたのも象徴的だ。
加賀美家の問題は
-
環 vs 伸一
-
伸一 vs 柾樹
と、内部で感情がこじれている。
そこに
血縁ではない外部の人物
が同席することで、
場の空気を冷静に保つ役割を果たしている。
平治は法律の専門家ではないが、
地域社会の「長老」的存在として描かれている。
■ 家長という最後の権威
カツノはすでに
-
大女将
-
経営者
としては引退している。
それでも今回の場面で発言力を持つのは、
「加賀美家の家長」
という立場があるからだ。
これは現代の会社組織というより、
昔ながらの家制度の権威に近い。
つまり今回のシーンは
株式会社の経営問題を、家制度の権威で解決しようとしている
という構図になっている。
■ カツノの「最後の仲裁」
カツノの行動は
-
伸一を救う
-
環の立場を守る
-
柾樹を後継にする
という三つを同時に成立させようとするものだ。
しかしこれは非常に難しいバランスでもある。
だからこそ今回の決断は
問題の解決であると同時に、新たな火種にもなり得る
という微妙な状態を生んでいる。
カツノが「最後の務め」と言った意味は、
この家族の対立を終わらせるための
最終的な仲裁者としての役割なのかもしれない。
家族の和解――伸一が受け入れた加賀美屋の未来
・すべてを話し終えたカツノは自室へ戻り、これで家族がうまくやっていけるだろうかと不安を口にする。夏美が大丈夫だと励ますと、カツノは「座敷童である夏美が言うなら安心だ」と微笑む。
・一方、座敷では株券を前にして加賀美家の家族が車座になって座っている。
・環は、加賀美屋は10年前に株式会社となり、株式はすべて身内が保有していること、そしてその半分をカツノが持っていると説明する。柾樹に譲られると思っていた株を伸一に渡したことに驚きを隠せない。
・久則は、カツノは伸一の働きをしっかり見ていたからこそ、柾樹に後を継がせる一方で、伸一にも何かを与える必要があると考えたのだろうと説明する。環も、カツノの気持ちは分かるだろうと伸一に語りかける。
・伸一は環に吐いた暴言を思い出し、自分は子どもだったと反省する。そして、女将としても母としても尊敬していると環に伝える。
・場の空気が和らぐ中、伸一は「誰が後を継ぐのかは決めないといけない」と口にする。環は大女将の株をすべて受け取った以上、その実権は伸一にあると語る。
・しかし環は、経営者になるのは柾樹だと明言する。
・伸一は「だからここではっきり決める」と言い、「加賀美屋は柾樹が継ぐ。それはここにいる女将が決めたことだ。俺はそれに従うしかない」と宣言する。
・そして、これからも家族みんなで加賀美屋を盛り立てていこうと語り、家族は一つにまとまる。
・部屋の外で話を聞いていた時江(あき竹城)も、立派な伸一の姿に涙を流す。
・こうしてカツノの采配により、加賀美家の家族はようやく一つの輪となった。
個人的感想
まず気になるのは、夏美がすっかり「座敷童」という扱いを受け入れているように見えることだ。カツノにそう言われても否定する様子はなく、もはや加賀美屋の中では公認の存在になっているのかもしれない。
今回の決着で整理すると、柾樹は後継ぎ、伸一は株券を受け取る立場になった。一方で、もう一人の孫である浩司には特に何も与えられていないように見える。ただ、浩司本人が不満を持っている様子はないので、そこは問題にはならないのだろう。
とはいえ、少し意地悪な見方をすると、伸一は「働きを見ていたから株券をもらえた」という話になっている。そうなると、何ももらっていない浩司の立場が微妙に見えてしまう気もする。もちろん劇中ではそんな意図はないのだろうが、ちょっと気になった。
今回の構図を整理すると、伸一が株式を持つオーナーで、柾樹が経営者という形になったようだ。いわばオーナーと社長の関係だ。みんなが納得しているなら、これでうまく回るのだろう。
細かい手続きや税金の問題は一旦置いておくとして、劇中では環も「伸一が実権を握った」と言っている。つまり、もともと伸一も少し株を持っていて、カツノの50%と合わせて過半数になったと解釈するのが自然なのかもしれない。
それにしても、株券を受け取った途端に伸一の怒りが落ち着いたようにも見える。オーナーの立場になれば、社長よりも影響力があるとも言えるので、精神的な余裕が生まれたのかもしれない。
ただ興味深いのは、実権を持ったはずの伸一が「女将が決めたことに従う」と言っている点だ。結局この家では、経営権や株式とは別に「女将」という存在が強い権威を持ち続けているように感じる。
いろいろと制度的にはツッコミどころの多い株式会社加賀美屋旅館だが、とりあえず家族の争いは丸く収まった…と思いたいところだ。ただ、あのうさんくさい男・秋山(石原良純)がこの後何か仕掛けてきそうな気配もある。
そしてもう一つ気になるのが、「10年前」というキーワードだ。
環が二日酔いで仕事にならなかったのも10年前、政良が里親を始めたのも10年前、そして加賀美屋が株式会社化したのも10年前。
これだけ重なると、何か大きな出来事があったのではないかと勘ぐってしまう。しかし今のところ特に伏線らしいものは出てこない。どうやら単純に「10年前」という区切りの良い数字が多用されているだけなのかもしれない。
株式会社化した10年前に政良にも株が与えられ、政良はその株の配当金で里親を始めたとか、ストーリーを妄想してみたが、10年前に政良の居場所は知らないはずだからそんなことはないな。全部偶然の一致だ。
■ 「オーナー」と「経営者」の分離
今回の決着で生まれた構図は
-
伸一 → 株主(オーナー)
-
柾樹 → 経営者
という役割分担だ。
これは現実の企業でもよく見られる形で、
所有と経営の分離と呼ばれる構造に近い。
■ 女将という「見えない権力」
ただしこの家では、もう一つ大きな権力がある。
それが
女将
という存在だ。
株主でも社長でもないが、
家業としての旅館では大きな影響力を持つ。
つまり加賀美屋の実際の権力構造は
-
株主(伸一)
-
経営者(柾樹)
-
女将(環)
という三層構造になっている。
■ カツノの采配
カツノの判断は
-
伸一 → 名誉と実権を与える
-
柾樹 → 経営を任せる
-
環 → 女将としての権威を維持
という、三者の立場をすべて残す形だった。
これは非常に政治的な調整と言える。
■ 家族ドラマとしての決着
今回の決着は法律や制度ではなく
家族の感情の整理
によって成立している。
つまり
会社の問題を
家族ドラマとして解決した
という構造になっている。
■ 次の火種
ただし問題が完全に消えたわけではない。
-
外部の存在(秋山)
-
経営改革
-
オーナーと社長の関係
など、新しい対立の種は残っている。
つまり今回の回は
家族内の争いの終結と、新しい物語の始まり
を示す回だったと言える。
「新しい風」へ――夏美と柾樹の未来への決意
まとめ
第118回は、長く続いてきた加賀美屋の後継問題がついに決着する重要な回となった。
カツノは祖母としての思いを込めて株券を伸一に託し、家族の対立を収めようとする。そして伸一も、自分の感情を乗り越え、女将である環の決断を受け入れることを選んだ。
その結果、加賀美屋は
-
経営者:柾樹
-
株主:伸一
という新しい体制で進んでいくことになる。
家族の関係もようやく落ち着きを取り戻し、加賀美家は再び一つの輪となった。
そして最後には、夏美と柾樹が「新しい風」となり、加賀美屋をより良い旅館にしていくことを誓う場面も描かれた。
結婚式も間近に迫る中、二人がどんな未来を作っていくのか。
新しい加賀美屋の物語が、いよいよ始まろうとしている。
『どんど晴れ』感想まとめはこちら
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