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2026年2月28日放送『どんど晴れ』第114回は、
後継者指名の“その後”を描く回だった。
決断は下された。
だが、決断がすべてを解決するわけではない。
家族は揺れ、立場は揺らぎ、
それぞれが自分なりの正しさを抱えたまま動き始める。
未来を見る女将と、
承認を失った息子。
物語は静かに、しかし確実に緊張を深めている。
※この回は、前日の展開を踏まえて見ると、より重みが増します。
👇 前回(第113回)の感想はこちら

「言い聞かせればいい」父と女将の温度差
・加賀美屋の母屋の寝室で、環(宮本信子)と久則(鈴木正幸)が伸一(東幹久)について話し合う。
・久則は伸一を心配している。
・環は、伸一は自分たちの息子なのだから、自分たちが言い聞かせればよいと述べる。
個人的感想
久則は“のれん分け”という選択肢を提案する。
だが環は即座に却下する。そんな余裕はない、と。
現実的だ。
久則にとっては、伸一を守るための逃げ道だ。
だが環にとっては、経営の問題だ。
またここでも、父と女将の視点の違いが出る。
久則は言う。
伸一を海外のホテルにまで行かせたのは、いずれ加賀美屋を背負う経営者にするためだったはずだ、と。
その言葉は重い。
投資だったのだ。
だが環は、それを加賀美屋で使えばいい、と返す。
理屈としては正しい。
だが問題は「誰の下で」使うのかだ。
柾樹の下で能力を発揮する。
それを伸一のプライドが受け入れられるのか。
久則の心配はそこだ。
環は「自分たちの息子なんだから言い聞かせればいい」と言うが、
それが簡単なら、今ここまでこじれていない。
伸一を説得するのは、正直かなり難しい。
理屈ではなく、承認の問題だからだ。
父と女将の立場の違い
久則は父として伸一を守ろうとする。
環は女将として加賀美屋を守ろうとする。
同じ親でも、優先順位が違う。
これが今回の静かな緊張の正体だ。
投資と回収の論理
海外修業は、後継者への投資だった。
だが後継にならなければ、その投資の意味は変わる。
能力はある。
問題は“立場”だ。
このズレが、伸一の怒りの核心にあると考えられる。
言い聞かせるという発想
環はまだ、家族の内部問題として処理できると考えている。
だが伸一の問題は、
単なるわがままではなく、
承認・立場・将来設計の崩壊に関わる。
「言い聞かせれば済む」段階かどうか。
ここが今後の分岐点になる。
親離れの完成と、レッスンという言葉の違和感
・横浜では、盛岡へ戻る前の夏美(比嘉愛未)が、母・房子(森昌子)の料理をおいしいとおかわりしている。
・智也(神木隆之介)も起きてきて、夏美と会話を交わす。
・啓吾(大杉連)はお菓子を焼き、加賀美家のみんなで食べるようにと夏美に持たせる。
・房子は、夏美が盛岡で苦労するのではないかと心配し、涙ぐむ。
・夏美は「大丈夫」と両親を落ち着かせ、盛岡での出来事一つ一つが、皆と分かり合うための大事なレッスンだったと語る。
・加賀美屋を支えるため、伸一とも力を合わせてやっていけると信じていると話す。
・啓吾と房子は、そんな夏美の様子から成長を感じ、親離れを実感する。
・房子が嬉しさと寂しさを口にすると、啓吾は「夏美は私たちの娘だ。いつまでもな」とつぶやく。
個人的感想
房子は心配性というより、少し過保護だ。
だが、あの状況を見ていれば心配になるのも無理はない。
ただ、私が強く引っかかったのは、夏美の「大事なレッスンだった」という言葉だ。
仕事や人生に失敗はつきものだ。
失敗から学ぶことにも異論はない。
だが、誰かの命を危険にさらすような出来事は、そう頻繁にあるものではない。
翼のアレルギー問題。
あれは単なるミスではなく、命に関わる失敗だった。
それを笑顔で「レッスン」と総括してしまうことに、正直ぞっとした。
成長の言葉としては美しい。
だが、あまりにも前向きすぎる。
過去を肯定しなければ前に進めないのは分かる。
しかし、その肯定の仕方に、少し危うさを感じる。
一方で、房子と啓吾はそれを「成長」と受け取る。
親からすれば、娘が覚悟を決めた姿に見えたのだろう。
確かに、夏美は親離れを完成させた。
そして柾樹は、親との和解を成し遂げた。
だが一人だけ、まだ親子の呪縛から抜け出せていない人物がいる。
伸一だ。
成長の言語化の危うさ
夏美の「レッスン」という言葉は、
物語的には成長の証として機能している。
だが現実的に見ると、
重大な失敗をどう総括するかという倫理的な問題も含んでいる。
前向きさと反省のバランス。
そこにわずかな緊張がある。
親離れの完了
啓吾と房子は、
夏美が自分の足で立とうとしていることを理解した。
「いつまでも娘だ」という言葉は、
手放す覚悟と、つながりの確認の両方を含んでいる。
親子関係は再定義された。
対照構造
・夏美=親離れの完成
・柾樹=親との和解
・伸一=親の承認に縛られ続ける
この対比は明確だ。
物語は、家族関係の再編を描いている。
そしてその中で、最も苦しんでいるのは伸一だ。
次に動くのは、間違いなく彼だろう。
朝食の席に漂う沈黙──家事と立場の非対称
・柾樹(内田朝陽)が母屋の居間に朝食を取りに来ると、恵美子(雛形あきこ)はよそよそしく、これから味噌汁を用意すると告げる。
・環、久則、浩司(蟹江一平)も朝食にやってくる。
・環が伸一の不在を尋ねると、恵美子は朝から回るところがあるため早く出かけたと説明する。
・健太と勇太も加わり、朝食が始まる。
・浩司は柾樹と結納や結婚式の話をし、夏美が若女将になれば加賀美屋も万々歳だと語る。
・環は、夏美には若女将になってもらい、結婚式で発表するつもりだと明言する。
・浩司は柾樹に「よかったな」と声をかける。
・恵美子はその場を離れ、カツノの食事を片づけに行く。
個人的感想
恵美子の態度は分かりやすいほど変わっている。
自分の夫である伸一が後継から外れ、
柾樹が指名された。
心穏やかでいられるはずがない。
それでも彼女は朝食を用意し続ける。
全員分の朝ごはん。
病床のカツノの分は別に。
早く出ていった伸一の分もきっと用意したのだろう。
なのに、自分の食事はない。
皆が食べ終わるまで、座ることもできないのかもしれない。
恵美子が担っている家事の量は相当なものだ。
女将の仕事より家のことの方が好きだと以前言っていたが、
それでも負担は小さくない。
彼女は、家を回す側の人間だ。
浩司は屈託なく喜んでいる。
夏美が若女将になる。めでたい話だ、と。
だが、この時点ではまだ
「柾樹が継ぐ」という重みまでは理解していないようにも見える。
家の中で、温度差がはっきりしてきた。
家事労働と立場の非対称
恵美子は制度上の中心人物ではない。
だが実務上、家を支えているのは彼女だ。
その人物が、決定の外側にいる。
これは象徴的だ。
家制度的価値観の中で、
最も働いている人間が、最も発言権を持たない。
表の祝福と裏の沈黙
浩司は祝福する。
環は方針を宣言する。
柾樹は受け止める。
その場から静かに離れる恵美子。
祝福の場面に、沈黙が重なる。
この対比は意図的だろう。
合理性か、関係性か──仕入れ問題の余波
・浩司は柾樹から、環が自分を後継ぎに指名したことを聞かされる。
・浩司は驚いた様子を見せず、夏美が若女将になるのだからそれも当然だ、環も女将として決断したのだろうと受け止める。
・柾樹は嬉しさを感じつつも、伸一が納得しないだろうこと、家の中が再び揉めるのではないかと心配する。
・浩司は、柾樹が卸の上岡との取引を打ち切った件について、伸一が何度も謝罪に行っていることを伝える。地元に敵を作るのは良くないとも語る。
・伸一は卸の上岡に頭を下げているが、上岡は勝手に仕入れ先を変えられたと怒り、追い返そうとする。
・その様子を見ていた平治が、加賀美屋のために再び上岡を諫める。
個人的感想
浩司は、兄である伸一を差し置いて柾樹が継ぐと聞いても、ほとんど動じない。むしろ「夏美が若女将になるんだから当然だ」とまで言う。環も同じ論理だ。
だが正直、その“当然”がいまひとつ腑に落ちない。
若女将と経営者が夫婦であることが、なぜそこまで自然で、都合がいいのか。家制度的価値観の延長線上にある発想なのは分かるが、経営の合理性とは別の話のようにも思える。
柾樹自身は、指名されたことを喜びつつも、家が揉めてまでなりたいという姿勢は見せない。これは遠野で父・政良と向き合った経験が大きいのだろう。遠野以前の柾樹なら、多少衝突しても後継の座を取りにいったかもしれない。
一方で伸一は、いまも卸の上岡に頭を下げ続けている。
ここで引っかかるのが浩司の態度だ。つい先日までは、柾樹の新しい仕入れ先を評価し、「地元との関係を気にしすぎて臆病だ」と伸一に食ってかかっていたはずだ。それが今回は「地元に敵を作るのは良くない」と言う。
どっちなんだよ、と言いたくなる。
人間の意見が揺れること自体は自然だ。だが物語上の時間で見れば、変化があまりに早い。少し整理が追いつかない。
柾樹は合理性を重視し、上岡との取引を断ち、若手漁師のネット卸へ切り替えた。新しい挑戦に全ベットした形だ。しかし以前も書いたが、リスクはある。もし通信障害が起きたら?イレギュラーが発生したら?
そのとき効いてくるのが、伸一がしつこく頭を下げ続けている“関係性”かもしれない。
上岡の気持ちも理解できる。勝手に契約を切られたのは事実だ。「もう帰ってくれ」というのは正直な感情だろう。
現実のビジネスでも、コスト重視で取引先を変え、新しい取引先では解決できないトラブルが起きたら元の業者に平気で連絡するケースは珍しくない。通常業務ならどこでも同じ結果を出せるが、イレギュラー対応は違う。そこで初めて、関係性の重みが出る。
もし柾樹が困ったときに上岡へ連絡したとして、協力する義理は上岡にはない。ただ、何度も頭を下げられていれば、感情が動く可能性はある。
合理性と関係性。
数字と人情。
どちらが正しいという話ではない。
だが、切られた側の感情をどう扱うかは、経営において軽視できない。
伸一の謝罪は、非合理に見えて、実は“保険”かもしれない。
人間なんて、結局はそこなのだと思う。
夫婦経営という前提
浩司や環の反応からは、
若女将=後継者の妻、という暗黙の前提が見える。
だがこれは家制度的な論理であって、
経営上の必然とは限らない。
ここに構造的な曖昧さが残る。
合理性と関係性の対立
柾樹=合理・コスト削減・新規開拓
伸一=関係維持・地元重視・保守
単純な新旧対立ではない。
どちらも経営としては正しい側面を持つ。
問題はバランスだ。
伸一の粘り
後継を外されても、
伸一は上岡との関係をつなぎ続けている。
これは未練か、責任感か、
あるいは自分の存在意義の証明か。
いずれにせよ、
彼はまだ加賀美屋を諦めていない。
それが今後どう転ぶか。
物語はそこに種をまいているように見える。
覚悟を問う女将──恵美子の限界
・カツノ(草笛光子)の部屋で、環は結納の席で柾樹を後継ぎに指名したことを報告する。
・カツノは、環が伸一に継がせたい気持ちを持っていたことに気づいていたとし、母としてつらい決断を口にしてくれたと感謝する。
・伸一の落ち込みを気にするカツノに対し、環は加賀美屋のことは女将である自分に任せてほしいと告げ、体調を気遣う。
・部屋を出た環を恵美子が待っている。
・恵美子は、伸一は環が何があっても味方だと思っていたのにかわいそうだと訴え、今日も加賀美屋のために謝りに行っていることを伝える。
・環が「ではどうすればいいのか」と問い返すと、恵美子は自分が若女将になりたくないと言ったからかと尋ね、若女将になる覚悟も辞さない様子を見せる。
・しかし環は、恵美子のその覚悟では加賀美屋の女将は務まらないと告げる。
・ナレーションで、柾樹を選んだ理由は、これからの加賀美屋の未来が女将としての環に見え始めたからだと説明され、今週の放送は終了する。
個人的感想
カツノの言葉が、どうしても白々しく聞こえてしまう。
ずっと柾樹に継がせたいと願ってきたはずだ。
そのカツノが、環に「母としてつらいことを言わせてしまった」と言う。
伸一を心配する姿も、どこか芝居がかって見えてしまう。
本音は別のところにあるのではないか、と疑ってしまう。
一方で恵美子。
彼女は若女将をこなせる技量はある。
だが、心が追いついていない。
できることと、やりたいことは違う。
その典型だ。
だからこそ、夏美の女将修業を応援していたのだろう。
だが、その先に「伸一が後継から外れる」という構図までは想像できていなかった。
日々の家事に追われ、そこまで考える余裕がなかったのかもしれない。
ここで考える。
もし恵美子が、やりたくもない若女将を続けていたらどうなっていたか。
俊江のようにすり減るか。
政良のように家を出るか。
どちらにしても、幸せな結末は見えない。
だから環は「覚悟」を問うたのだろう。
そして恵美子は、「伸一のために?」と問われたとき、言葉に詰まった。
自分のためではない。
やりたいからでもない。
伸一の立場を守るため。
そこに、自分の意思はない。
それでは女将は務まらない。
最後に一つ、どうしても言いたい。
この物語は序盤から、加賀美屋の組織体系や人事構造をほとんど説明してこなかった。女将と経営者の関係、権限の所在、意思決定のプロセス。視聴者がその都度整理しようとしても、明確な答えは提示されない。それが混乱の一因になっているのは間違いない。
女将分業制は可能か。
女将と経営者は夫婦でなければならないのか。
何度も考えてきたが、もはや劇中では整理されないまま終盤まで来ている。
ならば、いっそこうしてはどうか。
加賀美屋は株式会社だ。代表取締役は一人である必要はない。
久則を代表取締役会長にし、伸一を代表取締役社長、柾樹を代表取締役副社長とする。
代表権は複数持てる。
上下ではなく水平関係にすればいい。
経営の代表権は三人に与え、水平関係で合議制に近い形をとる。
一方で女将の序列は、大女将・女将・若女将と整理し、労働者のトップである現場責任者としては「執行役員女将」「執行役員板長」という形にして、経営と現場を切り分ける。
経営は帳場の三人。
現場は女将と板長。
夏美は経営権を欲しているわけではない。女将として働ければいい。
ならば権限構造を整理すれば、無用な後継争いはかなり減るはずだ。
複数代表の会社は現実にも存在する。特別珍しい形ではない。
未来永劫「誰が継ぐのか」で揉め続けるより、制度で整理してしまった方がよほど健全ではないか。
物語的には混沌の方が面白いのだろうが、経営目線で見ると、そろそろガバナンスを整えたくなってくる。
だが、どんど晴れはたぶんそうしない。
揉め続ける物語だからだ。
覚悟の質
環が問うたのは、能力ではなく覚悟だった。
技量はあっても、
自分の意思で立てない者は女将にはなれない。
これは家制度的価値観の厳しさでもあり、
自己決定の重要性でもある。
家制度的価値観と企業制度の混在
加賀美屋は株式会社でありながら、
後継は家の論理で決まる。
この二重構造が、混乱の根源だ。
物語はあえて曖昧にしているが、
そこに視聴者の違和感が生まれる。
未来を見る女将
環が言う「未来が見えた」という言葉。
それは経営数字なのか、
家族の関係性なのか、
あるいは両方か。
少なくとも彼女は、
感情ではなく“先”を見て決断したつもりでいる。
その先に、本当に安定があるのか。
今週は決断の週だった。
来週は、その代償の週になるかもしれない。
まとめ
今週の物語は、
環の「未来が見えた」という確信で締めくくられた。
だが、その未来はまだ誰にも見えていない。
柾樹は成長し、家を壊したくないと願う。
夏美は親離れを果たし、家を支えようとする。
恵美子は覚悟を問われ、立ち尽くす。
そして伸一は、まだ承認の場所を探している。
家制度的価値観と企業制度が混在する加賀美屋。
制度で整理できる問題なのか、
それとも感情の物語なのか。
少なくとも一つ確かなのは、
決断は終わりではなく、始まりだということ。
嵐はまだ来ていない。
だが、風向きは確実に変わっている。
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