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2026年2月3日放送の 『どんど晴れ』第92回は、雑誌に掲載された記事によって、
女将修業対決は一気に夏美優勢の流れへと傾いた。
しかし、それは単なる「勝利」ではなかった。
称賛の裏で浮き彫りになったのは、
老舗旅館・加賀美屋が大切にしてきた
“おもてなし”と“サービス”の決定的な違い、
そして、勝負にすがる人間たちの焦りと矛盾だった。
第92回は、
結果が出たからこそ、
それぞれの立場と本音があらわになる回だった。
※この回は、前日の展開を踏まえて見ると、より重みが増します。
👇 前回(第91回)の感想はこちら

「評価の裏側――夏美自身が一番理解していたこと」
・雑誌に掲載された自分のおもてなしについて、夏美(比嘉愛未)は「柾樹さん(内田朝陽)のおかげ」だと素直に感謝する。
・柾樹の言葉がなければ、田辺(温水洋一)の希望通りにじゃじゃ麺を用意していたかもしれないと夏美は打ち明けるが、柾樹は「夏美は最後には自分で気づいたはずだ」と受け止める。
・柾樹は、ホテルで働いていた経験をもとに、
「ホテルはお客様の要望にできる限り応えるサービス」
「加賀美屋は、しきたりの中でいかに最高のおもてなしをできるか」
という違いを夏美に説明する。
・雪の降る裏庭で、夏美はこれからも柾樹を信じていくと気持ちを伝える。
個人的感想
雑誌で自分が評価されたことを、迷いなく「柾樹さんのおかげ」と言える夏美はやはり素直な人だと思う。
一方で柾樹も、自分の手柄を主張することなく、「夏美は最後には気づいた」と信じている。その距離感はとてもきれいだった。
ただ、雪の降る裏庭で話す必要があるのかという疑問は残る。
おそらく誰にも邪魔されず、二人だけで話せる場所がそこしかなかったのだろう。
横浜育ちの夏美が、窓に積もる雪から見て数日前には雪が降っていると推測できるにも関わらず、「あ、雪」と初雪のように喜ぶのもいかにも彼女らしい。
雪国で暮らす身としては、雪は喜ぶものというより「またか…」という存在だ。現に大雪による連日の雪かきでこのブログの更新すら滞るかもしれない。
柾樹が説明した「ホテルと旅館の違い」はとても分かりやすかった。
ただ、この説明を聞けば聞くほど、夏美は「しきたりの中でのおもてなし」よりも、
お客様の要望に柔軟に応えられるホテルの方が向いているのではないかとも思えてくる。
夏美は大女将や女将のおもてなしに憧れていると言うが、
正直なところ、そのおもてなしが具体的に印象に残る場面はあまり多くない。
理想と適性が、少しずつズレ始めているようにも感じた。
■ ホテル向きの資質と、旅館への憧れのズレ
夏美の行動原理は一貫して
「お客様のために、できることは全部したい」
というサービス志向だ。
一方、加賀美屋が求めているのは
「しきたりの中で時間を味わってもらうおもてなし」。
価値観は美しいが、適性は必ずしも一致していない。
「称賛と沈黙――手のひらを返す人たち、誤解される彩華」
・彩華の母・悦子(二木てるみ)は、加賀美屋が掲載された雑誌を見て、「褒められている20代の仲居は彩華のことではないか」と言い出す。
・彩華(白石美帆)は否定することができず、悦子は娘が評価されたのだと誤解したまま喜ぶ。
・一方、康子・則子・恵の三人は、雑誌に掲載された夏美の言葉を読み、態度を一変させる。
「何があっても彩華の味方」と言っていたにもかかわらず、露骨に彩華を避け始める。
・彩華は、三人が休憩していたテーブルの上に、加賀美屋が掲載された雑誌が置かれているのを目にする。
・その後、夏美は平治のもとへ鉄器を取りに行くため、彩華に声をかけて加賀美屋を出ていく。
個人的感想
彩華の母・悦子は、雑誌に登場する「20代の仲居」が自分の娘だと信じて疑わなかった。
老舗料亭の娘として、きちんと修業を積み、誇れるおもてなしができる存在だと、今も信じているのだろう。
だからこそ、彩華が否定できずにいた場面は、少し痛々しくも見えた。
一方で、「何があっても彩華の味方」と言っていた康子・則子・恵の三人は、想像以上にあっさりと手のひらを返す。
雑誌という“権威”を前にした途端に態度を変える姿は、もはや薄っぺらいという言葉すら生ぬるい。
この三人の言葉は、その場の空気に合わせて発せられただけのものだったのだと、はっきり分かる。
また、夏美が平治のところへ鉄器を取りに行くため、ストールを出して外出する場面では、
同じ空間に盗難騒ぎがあった人物がいるのだから、せめてロッカーには鍵をかけてほしいと妙に現実的な心配をしてしまった。
■ 母の期待と、彩華が背負い続けてきた像
悦子が信じている「できる娘・彩華」は、
過去の栄光と理想を重ね合わせた像であって、
今の彩華そのものではない。
彩華は、その期待を否定できないまま、
ずっと“期待される娘”を演じ続けてきたのではないか。
■ 雑誌=評価という単純な世界
康子たちが一斉に態度を変えたのは、
夏美を評価したのが「雑誌」だったからだ。
自分の目で見て判断するのではなく、
「どこに評価が載ったか」で立場を決める。
この構造自体が、加賀美屋の人間関係の脆さを表している。
■ 彩華が孤立していく速度
母は誤解したまま、
仲間だったはずの仲居たちは離れ、
真実を知っている人間は誰も寄り添わない。
この回で、彩華は一気に“逃げ場”を失い始めている。
■ 夏美の無防備さは変わらない
一方で夏美は、
雑誌に載ろうが、周囲の空気が変わろうが、
相変わらず自分の行動に集中している。
この無防備さが強さなのか、
それとも今後の火種になるのかは、まだ分からない。
「結果よりも想い――浩司の覚悟と、彩華の未練」
・浩司(蟹江一平)は彩華を裏庭に連れ出し、気落ちしている彩華を励ます。
「大事なのは結果だけじゃない」と伝える浩司に対し、彩華は「結果を出さなきゃダメたった」と言い切る。
・浩司は、彩華が若女将になれなくても、自分との将来を考えてくれているのかを確かめる。
そして、若女将になれるからプロポーズしたのではなく、純粋に好きだから結婚を申し込んだのだと改めて伝える。
・しかし彩華は、はっきりとした返事をせず、「まだ負けたわけじゃない」と、女将修業対決への執着を見せる。
個人的感想
やはり大事な話は、寒かろうが雪が降ろうが裏庭で行われる。
このドラマにおいて裏庭は、二人きりで話したい専用スペースになっているようだ。
彩華は「まだ負けたわけじゃない」と言い張るが、その言葉は前向きというより、
現実を直視することを拒んでいるようにも見える。
浩司は、若女将になれるかどうかとは無関係に彩華を愛していると繰り返し伝えるが、
彩華はその想いを正面から受け取ろうとしない。
彩華にとって今、結婚は“結果の延長線上”にしか存在していないように思える。
そしてふと考えてしまう。
浩司が好きな彩華とは、本当に「今の彩華」なのだろうか。
それとも、高校時代までの、理想化された思い出の中の彩華なのか。
もし若女将になれなかった場合、
その現実を受け入れた彩華と、浩司が一緒に生きていく未来は、
正直あまり想像できない。
■ 二人の価値基準は、もう噛み合っていない
浩司は
「結果より過程」「立場より気持ち」を見ている。
一方、彩華は
「結果がすべて」「勝たなければ意味がない」という世界にいる。
この時点で、二人は同じ未来を見ていない。
■ 浩司の愛は過去に向いている可能性
浩司の言葉は誠実だが、
その誠実さは「今の彩華」に向いているというより、
「昔の彩華を信じ続けている」ようにも見える。
変わってしまった相手を、
変わっていない前提で愛そうとする苦しさが、ここにある。
■ 「まだ負けていない」は、希望ではなく執着
彩華の「まだ負けたわけじゃない」は、
可能性を信じる言葉ではなく、
現実から目を背けるための呪文になりつつある。
この執着が続く限り、
浩司の想いが届く余地は、ますます狭くなっていく。
「疑わないという選択――夏美が守ろうとしたもの」
・夏美は、平治(長門裕之)のもとへ鉄器を取りに訪れる。
せっかく来たのだからと茶に誘われ、そこへ聡(渡邉邦門)も顔を出す。
・その頃、旅館には彩華宛てに感じの悪い電話がかかってくる。
電話を受けた久則(鈴木正幸)の様子から、ただならぬ内容だったことがうかがえ、柾樹も不安そうな反応を見せる。
・平治は夏美に、彩華について良くない噂を耳にしたと正直に伝え、
やっかいなことを起こさなければいいが、と忠告する。
・しかし夏美は、彩華に限ってそんなことはないと強く否定する。
その様子を見て、平治は疑うようなことを言って悪かったと素直に謝罪し、
夏美も感情的になったことを詫びる。
・夏美は、大女将から
「一緒に働く人を疑うようでは、真のおもてなしはできない」
と教えられてきたことを伝え、平治はその言葉に夏美の成長を感じ、喜ぶ。
個人的感想
彩華宛てにかかってきた電話は、どう見ても今後の火種になるタイプのものだ。
「感じの悪い電話だった」という久則の一言だけで、十分に不穏さが伝わってくる。
平治が夏美に伝えた彩華の噂は、確証のない、いわば噂話の域を出ないものだろう。
それでも平治が黙っていられず忠告したのは、夏美を思っての善意だったはずだ。
それに対して夏美は、「一緒に働いている人だから」という理由だけで、
彩華が疑われることを強く否定した。
正直なところ、彩華が夏美にそこまで擁護されるようなことをしてきたかといえば、
そうは思えない。
ただし、夏美の根拠は個人的な好悪ではなく、
「一緒に働く人を疑ってはいけない」という大女将からの教えにあった。
これは、加賀美屋において非常に重い価値観なのだろう。
ここでふと考えてしまう。
詐欺や犯罪が身近な現代では、疑いの目を持つことは自分を守る手段でもある。
一方で、夏美のように誰も疑わず、悪意を前提にしない生き方もある。
この二つを比べたとき、
どちらが「楽に生きられる」のだろうか。
疑い続ける人生と、信じ切る人生――
疑り深い自分としては、どうしても考え込んでしまう。
そして平治は、噂話で人を疑ったことを「悪かった」と素直に認め、すぐに謝罪した。
頑固そうに見えて、過ちを訂正できる人物なのだと、ここで印象が少し変わった。
著名な南部鉄器職人として多くの人と関わり、情報も集まりやすい立場だからこそ、
その扱い方には自覚があるのかもしれない。
■ 夏美の「信じる姿勢」は思想であって感情ではない
夏美は彩華を「好きだから」擁護しているのではない。
「疑ってはいけない」という価値観を、思想として選び取っている。
だからこそ、揺らがないし、強い。
■ 大女将の教えが、ここで明確に言語化される
「一緒に働く人を疑うな」という教えは、
単なる精神論ではなく、
加賀美屋という共同体を成立させるための根幹ルールだと分かる。
これは効率や安全よりも、信頼を優先する思想。
自分としては理解が難しいが。
■ 平治は“忠告役”から“見守る役”へ移行した
噂を伝えたあと、謝罪できた平治は、
指導者ではなく、成長を見守る立場に一歩引いた。
この距離感の取り方ができるのは、大人の余裕だ。
■ 「疑わない生き方」は、実は最も覚悟が要る
疑わないという選択は、
裏切られたときのダメージを全て引き受ける覚悟でもある。
夏美はその覚悟を、無自覚のまま背負い始めている。
「何もしなければ勝てた――環が突きつけた真実」
・環に呼び出された彩華は、
「何もしなければ夏美に勝てたのに残念だ」と告げられる。
・環は、老舗旅館・加賀美屋における「おもてなし」は
一般的なサービスとは違うのだと語り、
彩華のこれまでの行動を悔やむ。
・それでも彩華は引き下がらず、
「まだ負けたわけじゃない」「決めるのは女将さんだ」
「ここで負けを認めたら女将さんも困るはずだ」と環に迫る。
・一方、夜遅くまで帳場でパソコン作業を続ける柾樹のもとへ、
夏美がお茶を差し入れ、先に帰ることを伝える。
・ナレーションは、
夏美と柾樹が一回り成長し、新たな段階に踏み出した
と語り、物語は締めくくられる。
個人的感想
環(宮本信子)の言葉を整理すると、
彩華は「何もしなければ勝てた」のに、
自分から動いて負けを招いたという評価なのだろう。
環が言う「おもてなしはサービスとは違う」という言葉を
彩華の行動に当てはめると、
-
他の客にはしない好みの料理の聞き取り
-
特定の客だけに用意されたふかふかの布団
-
付きっきりの過剰な接客
こうした「特別扱い」が思い浮かぶ。
もしこれらが「おもてなし」ではなく「サービス」だというのなら、
問題は「他のお客様との差を作ったこと」にあるのだろう。
つまり彩華は、
老舗旅館の中で“公平に存在するべき空気”を壊してしまった、
という評価なのだと思う。
ただし、これを彩華一人の責任にするのは酷だ。
この流れを主導したのは、どう考えても伸一(東幹久)であり、
彩華はその駒として動いた側でもある。
それでも彩華は、
「悪いのは私じゃない、伸一さんです」とは言わず、
自分の立場で環に食い下がった。
腹黒さを強調されがちなキャラクターだが、
ここで他人を売らなかった点は、正直少し見直した。
最後に、
「夏美と柾樹が一回り成長し、新たな段階へ」というナレーション。
これまで散々足踏みしてきた二人だからこそ、
ようやくここから話が動くのかもしれないという期待はある。
■ 「何もしなければ勝てた」の本当の意味
環の言葉は、
彩華の技量や所作は最初から評価対象として十分だった
という前提に立っている。
つまり敗因は能力不足ではなく、
“余計なことをしたこと”。
■ 老舗旅館における「公平性」という価値観
加賀美屋のおもてなしは、
一人ひとりに合わせることではなく、
同じ時間・同じ空気を、全ての客に差し出すこと。
彩華は「良かれと思って」
その均衡を崩してしまった。
■ 伸一の責任が語られない“歪み”
環は彩華を叱るが、
この場面でも伸一の責任は正面から問われない。
組織の歪みは、
いつも末端や弱い立場にしわ寄せされる。
■ 夏美と柾樹は「勝敗」から一段外に出た
彩華と環が勝ち負けの話をしている一方で、
夏美と柾樹は、
評価や競争とは別の地点に立ち始めている。
この対比が、
物語の次のフェーズを示している。
まとめ
雑誌の評価によって、
女将修業対決は表向きには夏美の勝利となった。
だが、この回で描かれたのは、
勝ち負け以上に重い問いだった。
老舗旅館における「おもてなし」とは何か。
誰かだけを特別扱いすることは、本当に正解なのか。
そして、結果にしがみつく人間は、
どこで道を踏み外してしまうのか。
夏美は評価を得たが、
それは柾樹の言葉と、
加賀美屋の思想を受け止めた結果でもあった。
一方で彩華は、
勝てたはずの勝負を、自ら壊してしまった。
第92回は、
「勝った人」よりも「勝負に執着した人」たちの姿が
強く印象に残る回だったと言える。
そして物語は、
女将修業対決という枠そのものを
問い直す段階へと進み始めている。
『どんど晴れ』感想まとめはこちら
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