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2026年1月27日放送の 『どんど晴れ』第86回は、柾樹が盛岡に戻り、加賀美屋の時間は再び大きく動き始めた。
表向きは女将修業の物語でありながら、第86回で描かれたのは、それぞれが胸の内に抱えてきた「本音」と「動機」が、ついに表に噴き出す瞬間だった。
夏美と柾樹の関係、彩華の過去と野心、そして何も知らないまま巻き込まれていく浩司。
この回は、誰が正しく、誰が間違っているかを判断する物語ではない。
ただ、人の気持ちが整理されないまま交差したとき、どれほど残酷な結果が生まれるのかを静かに突きつけてくる回だった。
※この回は、前日の展開を踏まえて見ると、より重みが増します。
👇 前回(第85回)の感想はこちら

彩華の原点――母の入院と背負わされた現実
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彩華(白石美帆)は、入院中の母・悦子(二木てるみ)を見舞うため病院を訪れる。
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母は、老舗旅館・加賀美屋で彩華がきちんとやっていけているのかを心配する。
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これまで彩華に苦労をかけてきたことを母は詫びるが、彩華は「何も気にせず、病気を治すことだけを考えて」と母を気遣う。
個人的感想
これまで疑ってしまって申し訳なかったと思うほど、彩華の母は普通に“いい母親”だった。
入院も事実で、治療費を理由にした虚偽ではなかった。
とはいえ、母が本当に入院しているからといって、
・組合費5万円の横領
・不正行為
が正当化されるわけではない。
病院の様子を見る限り、特別高額な先進医療を受けているようにも見えず、高額療養費制度を使えば彩華の給料でも対応できそうに思える。
それでもなお金に困っているとすれば、
・父の保証人問題による借金がまだ残っている
・給料が極端に低い
など、別の事情がある可能性が高い。
半休をもらって見舞いに来たという言葉も引っかかる。
加賀美屋の労務体制を考えると、そもそも通常の休日がきちんと与えられているのか疑わしい。
母を思いやる彩華の姿は間違いなく「まとも」だった。
それだけに、なぜ彼女がここまで歪んでしまったのか、その背景がより重くのしかかってくる。
■ 彩華の「動機」は虚構ではなかった
母の入院が事実だったことで、
彩華の「金銭的困窮」は少なくとも一部は現実だったと分かる。
これは、
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完全な悪意
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計画的な詐欺
という単純な悪役像を否定する材料になる。
■ それでも越えてはいけない線は越えている
一方で、
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組合費横領
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不正な行為を重ねた事実
は、どんな事情があっても免責されない。
■ 母は「善」、彩華は「歪み」
母・悦子は、
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娘を心配し
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娘に謝り
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自分のことより娘を気遣う
極めてまっとうな人物として描かれている。
つまり彩華の歪みは、
母から受け継がれたものではなく、
別の場所で生まれたことが示唆される。
■ 父の存在が生んだ“断絶”
これまで語られてきた
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父が保証人になり借金を背負わされた過去
が、
彩華の人生を決定的に歪めた起点だった可能性が高い。
善良な母と、問題を残した父。
その間で彩華だけが“後始末”を背負わされた構図が見えてくる。
■ 彩華は「悪女」ではなく「追い詰められた人間」
この場面は、
視聴者に対して
彩華を単純な悪役として断罪していいのか
という問いを投げかけている。
ただしそれは、
「許せ」という話ではなく、
「理解の入口を用意した」段階に過ぎない。
見せつけられる距離――夏美と柾樹、彩華の動揺
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加賀美屋の玄関で、夏美(比嘉愛未)と柾樹(内田朝陽)が親密に話している様子を彩華が目撃する。
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夏美は、彩華の母が入院していることを柾樹に伝える。
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浩司(蟹江一平)は彩華の母の具合を気遣い、声をかける。
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康子・則子・恵の三人は、彩華に対して「何があっても味方だ」と告げる。
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彩華は、その言葉を受け、「皆さんのためにも女将修業を頑張る」と宣言する。
個人的感想
まず、玄関での夏美と柾樹。
あれは完全にアウトだと思う。お客様にも従業員にも見える場所でのいちゃつきは、旅館としても、職場としても緊張感がなさすぎる。
横浜のホテルではもう少し線引きができていたはずの柾樹が、加賀美屋に戻ってきてから急に気が緩んでいるのが気になる。
彩華の母の入院について、柾樹が知らなかったという事実も印象的だった。
料亭が借金のかたに取られたことまでは共有されていたのに、肝心の「現在進行形の事情」は届いていなかった。
このすれ違いが、後の展開をより重くしていきそうだ。
康子・則子・恵の三人が「何があっても彩華の味方だ」と宣言した場面は、かなり不用意に見えた。
もし女将修業対決で夏美が勝った場合、この三人は自分たちの立場をどうするつもりなのだろう。
もっとも、夏美自身はこの言葉を向けられても、彼女たちを嫌うことはなさそうだが、その“嫌わなさ”が逆に後でしんどさを生む気もする。
■ 公私混同が生む「火種」
玄関での夏美と柾樹の振る舞いは、
恋愛の問題というより、
職場倫理の欠如として描かれている。
これは後に、
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従業員の反感
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彩華の感情の揺れ
を正当化するための布石にも見える。
「女将になりたい」その一点に集約された告白
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伝票整理を終えた柾樹は、居残りでハサミを磨いている彩華を見つけ、声をかける。
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彩華は、盛岡を離れてからの経緯を柾樹に語り始める。
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母の実家である新潟の料亭では、母の妹が女将を務め、将来はその娘が女将になるため、自分が女将になる余地はなかったこと。
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高校の同窓会で浩司と再会し、加賀美屋の内情を聞いたことで、「うまくいけば女将になれるかもしれない」と考えたこと。
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環(宮本信子)はその思惑に気づきながらも、夏美を女将にしたくないため女将修業を認めたのだろうと彩華は語る。
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彩華は「女将になろうとする自分は、柾樹にとって敵だ」と口にするが、柾樹は「よく頑張ったな」と声をかける。
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その優しさに感情を崩した彩華は柾樹に抱きつき、柾樹も抱き返してしまう。
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一方、浩司は新作料理を持って彩華を探しており、二人が抱き合う姿を目撃する。
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呆然と立ち尽くす浩司の姿とともに主題歌が流れ、物語は幕を閉じる。
個人的感想
正直、この回は真面目に考えるほどしんどくなる。
深読みすればするほど肩透かしを食らう構造で、
「こちらが勝手に意味を積み上げすぎていただけだった」
という感覚が強く残った。
彩華の動機は、復讐でも正義でもなく、
突き詰めると「ただ女将になりたかった」だけだった。
これは初期の夏美とほぼ同じ動機であり、
特別な理由があったわけではない。
困っている人がいれば必ず手を差し伸べてきた父が、いざ自分たちが困ったときには「誰も力を貸してくれなかった」という言葉。
この「誰も」の中に加賀美屋まで含めてしまえば、復讐という解釈も成り立たなくはない。
だが、ここまで描かれてきた彩華の動機を見る限り、そこまで計算された怨恨があったとは考えにくい。
この言葉は、怒りの宣言ではなく、行き場のない失望の表明だったのだろう。
新潟の料亭の事情も、冷静に見れば理不尽ではない。
それでも彩華が「どんなに頑張っても女将になれない」と感じたことが、
彼女を加賀美屋へと向かわせた。
理解できないのは、
その不純な動機をあっさり受け止めてしまう柾樹と、
それに乗っかる環、
そして一切説明されないまま増殖していく
「負けたら退場」という前提である。
組合費の窃盗、備品損壊の隠蔽――
どれも「女将になりたい」という理由では到底正当化できない。
それでも物語は、それらを深く裁くことなく先へ進んでいく。
意味深な演出や台詞に期待してしまったが、
ここまでを見てきて思うことは「一番単純な解釈」が正解に近いのだろう。
そう割り切らないと、見ていられない。
■ 彩華の動機は「野心」ではなく「固執」
彩華の行動原理は、
-
加賀美屋への復讐
-
夏美への敵意
ではなく、
「女将という肩書への執着」に集約される。
それゆえ行動は浅く、倫理は崩れ、
結果として誰も救われない。
■ 柾樹の優しさは「理解」ではなく「免罪」
柾樹の
「よく頑張ったな」
という言葉は、
-
共感
ではなく -
行為を相対化し、責任を曖昧にする免罪
として機能してしまっている。
この無条件の優しさこそが、
人を最も深く傷つける場合がある。
■ 環は“不正を黙認する側”に回った
環は彩華の思惑に気づきながら、
-
夏美排除
という目的のために -
不純な動機を利用した
立場にある。
これは経営判断ではなく、
感情による選別であり、
旅館の衰退を示す兆候でもある。
■ 浩司は唯一の「現実的被害者」
この場面で最も残酷なのは、
-
浩司だけが
-
何も知らされず
-
誠実に振る舞っていた
という点。
彼は争いの外にいたが、
最も直接的な形で傷を負う。
■ 「負けたら退場」という暗黙のルール
これまで一度も明示されていない
「女将修業に負けたら居場所を失う」
という前提が、
ここに来て当然のように扱われ始めている。
これは、
-
登場人物の思い込み
-
物語上の強引な緊張演出
のどちらか、あるいは両方だろう。
■ 主題歌演出が示す“割り切りの要請”
最後に主題歌を被せる演出は、
-
深刻さを和らげる
-
感情を強制的にまとめる
ための手法か。
制作側からの
「深く考えすぎるな」
というメッセージとして見ていくことにした。
まとめ
この回は、
物語の粗さが露呈した回であり、
同時に
「どの距離感で見るべき作品なのか」
を視聴者に突きつけた回のような気がする。
自分自身はあれこれ考えずもっとお気楽に見ようと結論づけた。
彩華は、自分が女将になれないと悟った過去と、
「女将になりたい」という思いだけを抱えたまま加賀美屋に来ていた。
その動機は復讐でも正義でもなく、ただ一つの執着だった。
柾樹はその思いを受け止め、理解しようとした。
だが、その優しさは結果として誰も守らず、
最も弱い立場の浩司の心を深く傷つけることになる。
第86回は、女将修業の勝敗を描いた回ではない。
整理されない感情が積み重なり、
避けられたはずの悲劇が起きてしまった――
その瞬間を描いた回だった。
次回、崩れ始めた関係はどこへ向かうのか。
静かな波紋は、確実に加賀美屋全体へ広がっていく。
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