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2026年1月26日放送の 『どんど晴れ』第85回は、柾樹が加賀美屋に戻り、日常は少しずつ動き出している。
夏美は仲居として、そして女将修業の身として確実に前進し、一方で柾樹は帳場の仕事を通じて、これまで見えなかった“加賀美屋の内側”に踏み込み始めた。
表向きは穏やかで、誰も声を荒らげることはない。
だがこの回で描かれたのは、立場も役割も異なる二人が、同じ場所にいながら別々の方向へ進み始めているという、静かな不穏さだった。
※この回は、前日の展開を踏まえて見ると、より重みが増します。
👇 前回(第84回)の感想はこちら

パンフレットに表れた「経営観」の違い
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伝票整理を終えた柾樹(内田朝陽)は、伸一(東幹久)に作業完了を報告する
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伸一のもとに、加賀美屋の新しいパンフレットの見本が届く
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久則(鈴木正幸)は「熱心なのはいいが、ほどほどにしておけ」と伸一に釘を刺す
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伸一は華やかなパンフレットの出来に満足する
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柾樹は、見た目重視ではなく加賀美屋の本質を伝えるべきだと異議を唱える
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伸一は柾樹の意見に反論できず、押し切られる形になる
個人的感想
柾樹は、伸一の想定以上に仕事ができる。
そのスピード感を見ていると、これまで伸一がどれだけ“守りの経営”というか、現状維持のまま旅館を回してきたのかが浮かび上がってくる。
パンフレットの話も象徴的だった。
伸一は「見た目が華やか=魅力が伝わる」と考えているが、柾樹はそれに真っ向から異を唱える。
加賀美屋の価値は、豪華さや派手さではなく、長い年月の中で積み重なってきた“何か”にあるのではないか、と。
ただ、柾樹の言い方は少し分かりにくい。
「特別なものがあるわけではない」と否定した直後に、「目には見えない特別な何かが感じられる」と言うのだから、矛盾して聞こえる。
おそらく言いたいのは、物質的・分かりやすい“売り”はないが、空気や時間、積み重ねの中にしかない価値があるということなのだろう。
これまで座敷童というモチーフが何度も出てきたことを考えると、
加賀美屋を「説明できないけれど、なぜか落ち着く場所」「理由は言葉にできないが、感じ取れる場所」として打ち出したいのかもしれない。
■ パンフレット論争は「経営観の違い」の可視化
この場面は単なるデザイン論ではなく、
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伸一:
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分かりやすさ
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即効性
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外からの評価
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-
柾樹:
-
内側の価値
-
蓄積された時間
-
体験して初めて分かるもの
-
という、経営思想の衝突を描いている。
■ 柾樹の言葉が曖昧なのは「言語化できない価値」を扱っているから
柾樹の
「特別なものはないが、特別な何かがある」
という矛盾した表現は、
-
言葉にできない価値
-
マニュアル化できない魅力
を扱おうとしているからこそ出てくる不器用さとも取れる。
これは、
「理屈で説明できる旅館」と
「体験しないと分からない旅館」
の違いでもある。
■ 座敷童モチーフとの連動
これまで繰り返されてきた座敷童の存在は、
-
見える人には見える
-
いないと言えばいない
-
でも“何か”は確かに感じる
という曖昧さを持つ。
柾樹のパンフレット論は、
この座敷童的価値観を 経営戦略に落とし込もうとしている試み とも読める。
■ 伸一が反論できなかった理由
伸一が押し切られたのは、
-
論理で負けた
-
デザインセンスで負けた
というより、
-
「自分が何を守りたいのか」を言語化できなかった
からではないか。
華やかさを選ぶ理由が
「売れそうだから」
「今風だから」
以上に出てこない時点で、伸一はもう一段深い議論に耐えられなかった。
■ 有能さが生む“別の火種”
柾樹は正しいことを言っているし、仕事もできる。
だが、
-
早すぎる理解
-
遠慮のない正論
-
権限を持たない立場での核心発言
は、組織の中では摩擦を生む。
このパンフレットの一件は、
「柾樹が有能であるがゆえに、周囲を追い詰め始めている最初の兆し」
とも読める。
夏美と彩華、接客の差よりも恐れられるもの
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夏美(比嘉愛未)は客・澤田を接客している
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彩華(白石美帆)は別の客を担当している
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環(宮本信子)と時江(あき竹城)は、二人の接客ぶりについて話し合う
-
時江は、彩華の身のこなしや優雅さを評価し、夏美にはまだそれが足りないと指摘する
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環は、所作や技術は経験で身につくとしつつ、夏美の「不思議な力」を警戒している
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環はその力を認めながらも、女将修業では彩華に勝ってほしいと時江に伝える
個人的感想
加賀美屋にようやく「お客様がいる空気」が戻ってきた。
これまで不自然なほど閑散としていた分、接客シーンが増えたことで、夏美と彩華の差がはっきり可視化される。
時江の評価は一貫していて、
-
所作
-
身のこなし
-
優雅さ
といった技術・様式面では彩華が上だと見る。
一方で、環はそこをあまり問題視していない。
なぜなら、それらは「時間と経験で埋まる差」だからだ。
環が本当に警戒しているのは、
夏美が持つ 「人の心を一瞬でつかんでしまう力」。
本人の努力や訓練ではどうにもならない、天性のもの。
環はその力を否定していない。
むしろはっきりと「明るさは天性」と認めている。
それでもなお、彩華に勝ってほしいと願っている。
ここでふと思う。
この「不思議な力」という言葉は、
さっき柾樹が言っていた
「目には見えない特別な何か」
と重なっているのではないか。
そして、かつて時江自身がその力に引き寄せられかけていたことを、
環はちゃんと見抜いていた。
だからこそ、今の時江の「否定」は、
距離を取り直し、再び環側に立つための防衛反応にも見える。
■ 技術と資質を明確に切り分ける環の視点
環は、
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所作
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身のこなし
-
優雅さ
を 「後天的に獲得できるもの」 として整理している。
一方で、
-
人の心を開かせる力
-
場の空気を変えてしまう明るさ
は 先天的資質 と捉えている。
この切り分けができているからこそ、
環は「彩華を育てれば追いつく」という楽観を持てない。
■ 柾樹の発言との呼応構造
柾樹が語った
「目には見えない特別な何か」
と、
環が警戒する
「人の心を捕らえる不思議な力」
は、ほぼ同一の概念を別の立場から見たものだ。
-
柾樹:価値として守りたい
-
環 :脅威として排除したい
このズレは、今後の経営観・後継争いに直結していくかもしれない。
■ 時江の揺れは「忠誠」ではなく「自己防衛」
時江は、
-
一度は夏美に情を寄せ
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その力に飲み込まれかけ
たことを、環に見抜かれている。
だからこそ今は、
-
夏美を過小評価する
-
彩華を持ち上げる
ことで、自分の立ち位置を守ろうとしている ようにも見える。
これは忠誠というより、
組織内で生き残るためのバランス調整だ。
■ 女将修業は「技術勝負」では終わらないことの示唆
この会話によって、女将修業は
-
所作が美しいか
-
接客が完璧か
といった技術競争ではなく、
-
誰が場の空気を支配するか
-
誰が人の感情を動かしてしまうか
という、より曖昧で残酷な勝負に移行していることが明確になる。
感情が先に気づいてしまった人、気づかれないまま進む人
-
加賀美屋の廊下で、夏美と柾樹が仲睦まじく会話している様子を彩華が目撃する
-
彩華は物憂げな表情で配膳室に入り、様子の変化を浩司(蟹江一平)が気にかける
-
板長・篠田(草見潤平)から、浩司の新作料理を近くお客様に出すと告げられ、浩司は喜ぶ
-
彩華は浩司を祝福するが、その裏で柾樹への恋心を自覚してしまう
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夏美は澤田に、岩手の県名の由来と三ツ石神社への道順を手描きの地図で説明し、その地図をそのまま手渡す
-
澤田はその地図を「分かりやすい」と褒め、感謝する
個人的感想
イーハトーブでのほんの短い再会と、加賀美屋の廊下での何気ない会話を目にしただけで、
彩華は再び柾樹への気持ちを自覚してしまった。
もともと学生時代から抱えていた感情だからこそ、
火が消えたのではなく、眠っていただけだったのだろう。
一方で、浩司は自分の仕事が評価され、
新作料理をお客様に出せることを心から喜んでいる。
その姿があまりにも純粋で、見ていて胸が痛くなる。
彩華は浩司を祝福するが、
その祝福はもう誠実さを持てなくなっているように見える。
対照的に、夏美はまったく無自覚なまま、
手描きの地図という“心のこもった行為”でお客様に感謝されている。
この無意識の優しさが、
結果的に彩華の心をさらに追い詰めているようにも感じられた。
■ 彩華は「悪意」ではなく「感情の遅延処理」に苦しんでいる
彩華の問題は、
誰かを蹴落とそうとする野心だけではではない。
-
過去に整理しきれなかった感情
-
再会によって再点火してしまった恋心
この感情の後処理ができていない状態が、
今の行動や表情ににじみ出ている。
■ 夏美の「無自覚な善意」が感情を動かしてしまう構造
夏美は、
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人を惹きつけようとしていない
-
奪おうともしていない
-
評価を意識してもいない
それでも結果として、
-
人の心に残り
-
比較の対象になり
-
誰かの感情を刺激してしまう
この無意識の影響力こそが、
環や時江が警戒している「不思議な力」の正体に近い。
逆転を恐れる側、調べ始めた側
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彩華は、話しかける夏美を明確に冷たく突き放す
-
久則は、柾樹の仕事ぶりを評価しつつ、伸一との立場逆転を心配する
-
環は、柾樹が金の流れを調べ始めていることを警戒する
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久則・環・時江は「よそ者の柾樹には納得できない出金がある」と不安を口にする
-
母屋に戻った伸一に、時江が「立場が逆転するのでは」と心配していることを伝える
-
伸一は「この加賀美屋を仕切ってきたのは俺と父さんだ」と言い切り、大丈夫だと周囲を安心させる
個人的感想
彩華の態度は、もはや“冷たい”を通り越して、
意図的な遮断に近い。
それでも夏美はほとんど気にしていないように見える。
これはメンタルが強いというより、
「相手の悪意を読み取らない」
あるいは
「読み取らないようにしている」
可能性が高い。
一方で帳場側は、完全に別の緊張が走っている。
柾樹が少し仕事をしただけで、
-
立場逆転を恐れ
-
金の流れを見られることを警戒し
-
「よそ者だから分からない」と防衛線を張る
この反応は、
柾樹が“有能だから”という理由だけでは説明しきれない。
「納得できない出金」という曖昧な言い回しが示すのは、
説明可能な経費ではない可能性、
あるいは
説明したくない支出の存在。
伸一は表向きは余裕を装い、
自分たちが仕切ってきたという“過去の実績”にすがる。
だがその言葉は、
現状を掌握しているという自信ではなく、
過去への依存に聞こえる。
■ 夏美の鈍感さは“無敵”でもあり“脆さ”でもある
夏美は、
-
悪意を察知しない
-
距離を取られたことを問題視しない
という点で、
精神的には非常に強い。
だが同時に、
-
危険信号に気づかない
-
水面下の対立を察せない
という脆さも抱えている。
この性質は、
今後「気づいたときには手遅れ」という展開を呼び込みやすい。
■ 立場逆転への恐怖は“能力差”より“露見”への恐れ
久則や環が恐れているのは、
-
柾樹が優秀だから負ける
というより、
-
見られてはいけないものを見られる
という恐怖に近い。
「立場が逆転する」という言葉は、
権限の問題ではなく
秘密が暴かれることの婉曲表現かもしれない。
■ 「納得できない出金」という言葉の危うさ
この言い回しは、
-
不正
-
私的流用
-
不透明な慣習
など、複数の可能性を含んでいる。
重要なのは、
彼らが「説明すればいい」と考えていない点だ。
つまりこれは、
合理的説明が通用しない支出 である可能性が高い。
■ 伸一の自己暗示としての「大丈夫」
伸一の
「この加賀美屋を仕切ってきたのは俺とと父さんだ」
という言葉は、
周囲に向けた説明というより、
自分自身への言い聞かせに近い。
現在進行形の掌握ではなく、
過去の実績を根拠にしている点が、
すでに揺らぎを示している。
■ 帳場と現場、二つの戦場が完全に分離した瞬間
このセクションで、
-
女将修業(感情・関係性の戦場)
-
帳場・経営(金と権限の戦場)
が明確に分離した。
そして柾樹は、
無自覚のまま
後者の地雷原に足を踏み入れている。
生け花の合格と、共有されない未来
-
夏美はカツノ(草笛光子)から生け花に合格点をもらう
-
次の段階として「お点前」の勉強を提案され、夏美は喜ぶ
-
一方、柾樹は険しい表情でパソコンと書類を見つめている
-
夏美はその様子を見ても声をかけられない
-
ナレーションで「夏美は、柾樹がこれからやろうとしていることをまだ何も知らされていなかった」と語られ、放送終了
個人的感想
夏美は、生け花について「形にはなってきたが、まだ自己主張が強い」と指摘される。
これは技術的な評価というより、
-
人としての在り方
-
女将としての姿勢
に踏み込み始めた指導だと感じる。
一方で柾樹は、横浜では見せなかった険しい表情を浮かべている。
これは、
-
分からなくて困っている顔
ではなく -
分かってしまったからこその顔
に見える。
そして決定的なのは、
夏美が「何も知らされていない」というナレーション。
ここで、二人の間に
再び「情報の非対称」が生まれている。
■ 生け花の評価は「技術」ではなく「人格」への踏み込み
カツノの言葉は、
-
上手い/下手
ではなく -
まだ自分を出す段階ではない
という指摘だった。
これは、
-
基礎を身につける前に自己表現をするな
-
女将は“自分”より“場”を優先せよ
という、
加賀美屋的価値観の刷り込みでもある。
夏美にとっては前進だが、
同時に「型にはめられていく入口」でもある。
■ 夏美の成長と、柾樹の孤立は同時進行している
この場面は、
-
夏美は指導を受け、認められ、前に進む
-
柾樹は一人で書類と向き合い、顔を曇らせる
という対照構造になっている。
二人とも前に進んでいるが、
-
夏美は“内側”へ
-
柾樹は“外側から切り込む方向”へ
進んでいる。
■ 声をかけられない夏美が示す「無意識の距離」
夏美が声をかけなかったのは、
-
忙しそうだから
-
邪魔してはいけないと思ったから
という表面的理由だけではない。
ここには、
-
何か大きなものに踏み込もうとしている
-
自分が触れてはいけない領域に入っている
という直感的な察知がある。
夏美は鈍感に見えて、
重大な場面では距離を取る本能を持っているのかもしれない。
■ 「知らされていない」という言葉の重さ
ナレーションでわざわざ
夏美は、柾樹がこれからやろうとしていることをまだ何も知らされてなかった
と強調されたのは重要。
これは単なる説明不足ではなく、
-
柾樹が意図的に話していない
-
話すべきか迷っている
-
共有すると夏美を巻き込んでしまう
という葛藤の結果だと読める。
つまり柾樹は、
守ろうとして黙っている可能性もある。
■ 柾樹の険しい表情=「違和感」ではなく「確信」
前セクションまでの流れを踏まえると、
-
納得できない出金
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収支の異常
-
帳場の不透明さ
これらが線でつながり始めた可能性が高い。
この表情は、
-
何かを疑っている段階
ではなく -
「これはおかしい」と確信した段階
に近い。
■ 再び生まれた“話し合わない二人”という構図
皮肉なのは、
-
物理的距離は一番近い
-
心理的距離は再び離れ始めている
という点。
これはこれまで何度も繰り返されてきた、
「大事なことほど共有されない関係性」の再演でもある。
まとめ
柾樹が加賀美屋の仕事に本格的に関わり始め、帳場や経営面での存在感を強めていく一方、環たちはその動きを警戒し始める。
柾樹はパンフレットや金の流れなど、旅館の内情を把握しようと動き出し、伸一との立場の逆転を懸念する声も出てきた。
夏美は仲居として着実に成長し、カツノから次の段階へ進む許可を得るが、その一方で彩華からは距離を置かれるようになる。
彩華は夏美と柾樹の関係を目の当たりにし、自分の中に残っていた柾樹への思いに気づき始める。
物語の終盤では、柾樹が帳場で険しい表情のまま書類と向き合う姿が描かれ、
彼が何かに気づき、次の行動を起こそうとしていることが示唆された。
女将修業、恋愛、経営――
それぞれの思惑が交錯し、加賀美屋の内部に新たな緊張が生まれつつある回だった。
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