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2026年1月10日放送の『どんど晴れ』第72回では、長く続いた孤立と混乱の末に、夏美が初めて「助けてもらう」経験をする。
一方で、彩華は浩司との結婚を前提に女将修業を申し出て、加賀美屋の中に新たな緊張感を持ち込んでいく。
この回は、問題が解決した話ではない。
むしろ──助け合いを経て、物語が“競争”へと切り替わった回だった。
※この回は、前日の展開を踏まえて見ると、より重みが増します。
👇 前回(第71回)の感想はこちら

揺れた関係と、戻ってきた日常
イーハトーブの朝。
下宿の面々が朝食を囲み、コーヒーを飲みながらそれぞれの一日を始めている。
夏美(比嘉愛未)と聡(渡邉邦門)も「おはよう」と挨拶を交わすが、そのやり取りにはどこかぎこちなさが残る。
その様子を、佳奈(川村ゆきえ)は黙って見つめている。
加賀美屋に出勤し、着物に着替えながら、佳奈は夏美に対して
「聡さんと何かあったの?」
と、それとなく確認する。
そこへ、休みを終えた清美(中村優子)が復帰し、夏美と佳奈に挨拶をする。
清美の登場に、二人の表情は明らかに明るくなる。
個人的感想
聡と夏美の間に流れる、あの微妙な空気。やっぱり佳奈はすぐに気づいた。
好きな人の異変に一瞬で反応するあたり、さすがだなと思う。しかも、聡が夏美に告白したことを察しても、佳奈は取り乱さない。
もう聡に対しては、気持ちの整理がきちんとついているんだろう。この落ち着き方を見ると、佳奈は本当に前に進めている。
正直、佳奈ならいくらでもいい相手は見つかるだろうし、もし仮に、聡と佳奈が何かの拍子にうまくいくことがあったとしても、それを素直に応援しよう。
そして何より、清美の復帰。
清美が戻ってきただけで、夏美と佳奈の表情が一気に明るくなるのが分かる。
清美は以前、夏美がシフトを代わってくれたことを恩義に感じているようにも見えるが、それ以上に、もともと康子・則子・恵のような「陰口と同調圧力」が中心のグループとは、肌が合わなかったんじゃないかとも思えてくる。
■ 佳奈はもう「恋」ではなく「関係」を見ている
佳奈の反応は、聡をどうこうするためではなく、夏美の状態を気にかけている という点が大きい。
これはもう、恋愛感情というより、「大切な人の異変を見逃さない」という友情の目線だ。
■ 清美の復帰は、夏美にとっての“呼吸できる空間”
加賀美屋の中で、
無条件に夏美を敵視しない
過剰な同調をしない
という存在は、実はかなり貴重だ。
清美が戻ってきたことで、夏美はようやく“普通に話せる相手”を職場に取り戻したとも言える。
恋が判断力を奪うとき
浩司(蟹江一平)は、環(宮本信子)と久則(鈴木正幸)に対し、
「彩華ちゃんを、これからもうちで働かせてくれるんじゃなかったのかよ」
と、怒りをあらわにする。
それに対し環と久則は、浩司は彩華(白石美帆)のことを本当に分かっているのか、彩華の実家がなぜ潰れたのか、その事情を把握しているのかと問いかける。
環はさらに、彩華の父親が借金の保証人になっており、その借金がまだ残っている可能性があるという話を浩司に伝える。
しかし浩司は、借金の有無と、彩華が加賀美屋で働くことは別問題だ
と主張し、たとえ借金が残っていたとしても、自分が返すから問題ないと断言する。
そして浩司は、彩華に対してプロポーズをする。
このやり取りを受けて、久則は
「借金は浩司が何とかするというなら、彩華でもいいのではないか」
という姿勢を見せる。
一方、環は彩華の心が本当に浩司に向いているようには思えないと、不安を口にする。
個人的感想
少し前までは「彩華を正式に雇う」流れだったはずなのに、ここへ来て環と久則は、急に彩華の“背景”を気にし始める。
それ以上に気になるのは浩司の状態だ。
浩司はもう、
「彩華が好き」
という気持ちだけで突っ走っていて、冷静な判断が完全にできなくなっている。
借金があるかもしれない、しかも、額がいくらかも分からない
それでも
「あったとしても俺が払う」
と即答してしまう。
これを
情熱的な愛
と取ることもできなくはないが、
個人的には
彩華のことしか見えていない危うさ
のほうが強く感じられる。
恋は盲目、とはよく言ったものだ。
そして、この場面で一番冷静なのは環だろう。
環はすでに、
「彩華の気持ちは、浩司に向いていないのではないか」
という違和感に気づき始めている。
■ 浩司は「問題を解決している」のではなく「押し流している」
浩司は、
借金の有無
彩華の過去
環や久則の懸念
これらを一つひとつ整理して解決しようとはしていない。
すべてを
「俺が何とかする」
という一言で押し流している。
これは覚悟というより、問題を直視しないための自己暗示にも見える。
■ 久則は条件付きで割り切れるタイプ
久則の
「浩司が何とかするならいいんじゃないか」
という判断は、
彩華本人
というより
浩司の責任能力
を見ての発言だ。
これは冷静とも言えるが、同時に「彩華個人」をほとんど見ていない判断でもある。
■ 環だけが「気持ち」を見ている
環の懸念は、
借金
家柄
過去
ではなく、
彩華の心がどこにあるのか
という一点に集約されている。
この時点で環は、
彩華が「守られる側」に立つことはできても、
「一緒に背負う相手」にはなっていない
ということを、直感的に感じ取っているのだと思う。
■ プロポーズは「愛の証明」ではなく「囲い込み」に見える危険性
浩司のプロポーズは、
彩華を守りたい
手放したくない
という感情の延長にある。
だが、
彩華の意思を確かめきらないまま
「俺が全部背負う」
と宣言するのは、
愛
というより
囲い込み
に近い危うさも含んでいる。
静かな宣戦布告か?──彩華が踏み込んだ“女将修業”の領域
清美が休み明けで職場に復帰し、環に挨拶をする。その場に同席していた彩華に対しても、自分が休んでいる間に代わりに働いてくれていたことへの感謝を伝える。
その様子を見た佳奈は、彩華に対して露骨に好戦的な態度を見せるが、環がすぐにその場を制する。
別の場面では、彩華が花を活けている様子を、環が何か思うところがあるような表情で観察している。
一方、夏美は客間の拭き掃除を行い、時江(あき竹城)のチェックを無事に通過する。続いて時江は、夏美に蔵から器を交換する作業の続きを命じる。
ここで夏美は、作業を一人で続けるのではなく、
「手伝ってもらえませんか」
と、時江に直接お願いをする。
思いがけない申し出に、時江は驚き、困惑した表情を見せる。
その後、佳奈が器の交換作業を手伝っているところに彩華が現れ、浩司からプロポーズされたことを夏美に報告する。
さらに彩華は、柾樹が盛岡に帰ってこなかったとしても、女将修業を続けるつもりなのかと、夏美に問いかける。
夏美は、それでも修業を続けるつもりだと答える。
その返答を受けて、彩華は
「夏美さんの女将修業、応援します」
と口にする。
直後、時江が彩華に対して
「女将さんがお呼びです」
と告げる。
個人的感想
夏美があまりにも無垢というか、純粋というか、正直ちょっと鈍感すぎる分、佳奈の存在が本当に頼もしい。
全方位に牙をむいてくれる“番犬役”が一人いるだけで、見ている側の安心感がまるで違う。仲直りできて本当に良かった。
それにしても時江だ。
序盤では、嫌なキャラクターになるのだろうと思っていたが、今となっては、時江が画面に出てくるだけで安心感がある。
自分自身、完全に脚本家の手のひらの上で転がされている自覚はあるが、それでもこの変化は素直に効いている。
そして今回、一番大きかったのは、夏美が自分から時江に「手伝ってほしい」と頼んだことだ。
そもそも時江は、蔵の器替えが夏美一人では荷が重いことを、最初から分かっていた数少ない人物だ。
それでも、環から
「夏美が自分から頼むまでは放っておけ」
と言われていた以上、動けなかっただけ。
仲居頭である自分に、夏美が頭を下げてくるとは思っていなかったのかもしれない。だからこそ、あの一瞬の驚きと戸惑いが出たのだろう。
一方で、彩華だ。
浩司からプロポーズされたことを報告し、
その流れで
「柾樹が戻ってこなくても、修業を続けるのか」
と覚悟を確かめる。
言葉だけ見れば応援だが、
この一連の流れは、どう考えても穏やかではない。
■ 佳奈は「防御役」として完全にポジションを確立した
佳奈の好戦的な態度は感情的にも見えるが、実際には、夏美をこれ以上一人にしないための防御反応だ。
かつて自分が距離を取ってしまった後悔が、今の行動力につながっているように見える。
■ 夏美の「助けを求める行為」は、明確な成長描写
時江に手伝いを頼んだ行動は、
カツノの
「つらい時は誰かに助けを求めなさい」
という助言を、夏美が実践した最初の場面でもある。
我慢をやめた
弱さを見せた
というより、役割としての「女将修業生」から一歩外に出た瞬間だった。
■ 彩華の「応援」は、中立ではなく宣言に近い
彩華の行動を時系列で並べると、
プロポーズされた事実を伝える
↓
柾樹が戻らない可能性を示す
↓
それでも修業を続けるか確認する
↓
「応援する」と告げる
これは、
立場を整理した上での“確認と宣言”
に近い。
つまり、
自分は前に進む
あなたも覚悟を決めているか
というメッセージだ。
■ 静かな宣戦布告と読むほうが自然
言葉自体は穏やかだが、
この場面で彩華がやっているのは、
比較
立場の可視化
覚悟の確認
であり、
夏美にとってはプレッシャー以外の何ものでもない。
「応援します」は、
共闘ではなく、
同じ舞台に立つ覚悟があるなら、こちらも遠慮しない
という合図にも見える。
女将の疑念、女将の論理
環に呼び出された彩華は、環がたてたお茶を前に静かに座る。
二人の間には、表立った怒号や感情的なやり取りはなく、張り詰めた空気の中で、環と彩華の“静かな対決”が始まる。
環は、彩華の過去についてはどうでもいいと切り出し、
「今、あなたは何をしようとしているのか」
を知りたいのだと語る。
彩華は「何のことでしょうか」と、とぼけた態度を崩さない。
それに対し環は、この加賀美屋に入り込み、浩司と結婚する気になったのは何のためかと、核心に踏み込む。
本心を語ろうとしない彩華に対し、環は
「私が気づかないとでも思っているの?」
と問いかける。
その言葉を受け、彩華は環を
「さすが加賀美屋の女将ですね」
と認めた上で、
浩司との結婚を前提として、加賀美屋で女将修業をさせてほしい
と正式に願い出る。
個人的感想
正直に言うと、この場面の彩華は、悪役(おそらくだが)でありながら、かなり“かっこよく”見えてしまった。
女将に呼び出されても動揺せず、背筋を伸ばし、一点を見つめて受け答えをする姿は、相当な胆力がないとできない。
環と彩華のやり取りには、これまでのドロドロした職場描写とは違う緊張感があり、純粋に「見ごたえのあるシーン」だったと思う。
ただし――
どうしても引っかかる点が一つある。
環は以前、
「女将として、この加賀美屋で働いている人間を疑うようなことだけは許さない」
と、かなり強い言葉で断言していた。
しかし今回の環の態度は、どう見ても
彩華に対する“疑念”を前提にした問いかけ
に見える。
ここをどう整理すればいいのか、正直かなり悩む。
考えられる解釈はいくつかある。
-
加賀美屋で働いている人を疑ってはいけないのは窃盗事件に関してだけ。
-
加賀美屋で働いている人を疑ってはいけないというルールは女将には適用されない。
-
本心を明かさない彩華に対して言った「私が気がつかないとでも思っているの?」という言葉はかまをかけたわけではなく、本当に何らかの確証を得ており、「疑い」ではなく「事実の伝達」である。
-
加賀美屋で働いている女将が加賀美屋で働いている人を疑っているわけではなく、次男浩司の「母親である環」が「彩華」という人間に対し、結婚相手としてふさわしくないということを疑っている。
どれも一理あるとは思うが、
いずれにしても、夏美だけが一方的に「疑った」と断罪され、
加賀美屋で働いている環が加賀美屋で働いている人を疑っているような状況が正当化されているように見える構図には、どうしても違和感が残る。
自分自身が考えすぎなのも、いろんな意見があることも承知しているが、疑うこと(事実確認すること)が断罪される世界が描かれた以上はどうしても気になってしまう。
もしここで彩華が、
お地蔵さんの前で泣き、
「女将さんに結婚のことで疑われた」
と浩司に訴えたら、
この組織は一体どうやって収拾をつけるつもりなのだろう。
そんな想像までしてしまった。
■ 環の言う「疑うな」は、絶対原則ではなかった
これまで描かれてきた流れを見る限り、
「疑うな」というルールは、
誰にでも
いつでも
適用される
ものではなかったように思える。
少なくとも、
新人の夏美 → 適用される
女将の環 → 適用されない
という非対称性が存在している。
■ 「疑い」と「事情確認」の線引きが極端に恣意的
夏美が行ったのは、
「誰か見なかったか」という状況確認だった。
一方、環が行っているのは、
「なぜここに入り込み、何をしようとしているのか」
という、動機そのものへの踏み込みだ。
冷静に見れば、
後者のほうが、よほど踏み込んだ“疑念”に近い。
それでも問題視されないのは、立場の違いがすべてを正当化しているからだろうか。
■ 環はすでに確証を掴んでいる?
「私が気づかないとでも思っているの?」
という台詞は、
疑っている
ではなく
見抜いている
というニュアンスにも取れる。
もしそうだとすれば、
環の行動は“疑い”ではなく、“事実を知った上での牽制”
という整理もできる。
■ 母親としてか、女将としてか――線引きの曖昧さ
感情的に一番しっくりくるのは、
母親として、息子の結婚相手を警戒している
という解釈だ。
しかし環の言葉は、
「加賀美屋に入り込み」
「何をしようとしているのか」
と、明らかに“家”ではなく“組織”を主語にしている。
これは母親の心配というより、女将としての警戒に近い。
■ 人事権という最もシンプルな選択肢
もし本当に疑念があるなら、
理由を述べずに採用しない
正式に雇用を見送る
という人事権の行使もできるはずだ。
それをせず、
対話と牽制を選んでいるあたり、
環自身もまた、彩華を“使える存在”として見ている可能性は高い。
助け合いの光と、その先に待つ競争
蔵での器の入れ替え作業に、時江、佳奈、清美、則子、康子、恵を含め、仲居たち全員が加わる。
則子・康子・恵は、
「時江が手伝っている以上、仕方なく」
というスタンスではあるものの、作業には参加している。
作業の最中、光に照らされた夏美を見て、時江は一瞬、夏美を座敷童と見間違える。
この出来事を通じて夏美は、
人に信じてもらうことの難しさ
素直な気持ちで助けを求め、助けてもらうことの大切さ
を学んだと描写される。
しかし同時に、
この日を境に「女将修業をめぐる競い合い」が始まっていくことが示唆され、
今週の放送は幕を閉じる。
個人的感想
時江が動いたことで、結果的に仲居全員が夏美の仕事を手伝う流れになった。
つまりこれは、
「夏美が認められたから」ではなく、
「時江が動いたから空気が変わった」
というのが正直なところだろう。
時江が夏美を座敷童と見間違える場面は、象徴的でありつつ、今後の関係性を示す重要な描写だった。
これで時江は、明確に夏美を“守る側”に回ったと見ていいだろう。
ただ、それ以上に気になったのは、
仕事量の異常さ だ。
これだけの人数が必要な作業を、これまで夏美一人にやらせていたという事実。
過酷という言葉では足りない。
しかも、仲居全員が集まって同じ作業をしている間、他の仕事はどう回っているのか、という疑問も浮かぶ。
仲居から半分、板場から半分出せばもっと効率的にできたのでは……
と、つい現実的な心配までしてしまった。
そして何より、この場面が「救済」で終わらないところが、このドラマらしい。
助け合いの後に待っているのは、安堵ではなく「競争」だ。
彩華が来週、この流れにどう割って入ってくるのか。それを思うと、正直かなり楽しみでもある。
■ 夏美が救われたのは「評価」ではなく「力関係」
今回の助け合いは、仲居たちが自発的に夏美を認めた結果ではない。
仲居頭である時江が手伝った
↓
逆らえない空気が生まれた
↓
全員が手伝わざるを得なくなった
という、非常に現実的な力学だ。
■ 座敷童の錯覚=「守られる存在」への転換
時江が夏美を座敷童と見間違えたのは、単なる演出ではなく、
夏美=守るべき存在
加賀美屋にとって失ってはいけない存在
へと認識が変わった象徴だろう。
これは、これまで「鍛えられる側」「耐える側」だった夏美が、初めて“庇護される側”に入った瞬間でもある。
■ 次に来るのは「協力」ではなく「競争」
この回のラストが重要なのは、
助け合いの余韻をすぐに断ち切り、
「女将修業の競い合い」を示唆して終わった点だ。
つまり、
今までは
夏美 vs 組織
だった構図が、
これからは
夏美 vs 彩華(+周囲)
へと明確に移行する。
■ 彩華は“競争”の舞台に最適化された存在
女将を前にしても動じず、堂々とした態度を崩さない彩華。
善悪は別として、この競争において最も厄介なタイプなのは間違いない。
まとめ
第72回は、
夏美がようやく「一人で耐える段階」から抜け出した回だった。
時江が動き、仲居たちが手を貸し、夏美は初めて“助けてもらうこと”を経験する。
しかし、それは救済のゴールではない。
むしろこの回が示したのは、
助け合いの時代の終わりと、
女将修業をめぐる競争の始まりだった。
彩華は、結婚と修業を結びつけることで、
正面から夏美のいる場所に踏み込んできた。
善悪はまだ確定していない。
だが、舞台は完全に整った。
第72回は、
「孤立からの回復」ではなく、
本当の意味での“女将修業編”が始まった合図として、
非常に重要な回だったと思う。
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