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2026年1月6日放送の『どんど晴れ』第68回では、組合費紛失事件の余波で、夏美が完全に職場から孤立していく回だった。
無視、過大な業務、陰口——もはや「風当たりが強い」という言葉では済まされない状況に追い込まれていく夏美。
そんな中で描かれたのが、誰も味方をしない職場で、たった一人、夏美の隣に腰を下ろす時江の姿だった。
一方、横浜では柾樹をめぐる動きも加速し、「守られている人間」と「守られない人間」の対比が、これ以上なく残酷に浮かび上がる。
静かだが、確実に心に刺さる回だった。
※この回は、前日の展開を踏まえて見ると、より重みが増します。
👇 前回(第67回)の感想はこちら

イーハトーブの朝――勘違いと、すれ違いの始まり
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イーハトーブで夏美(比嘉愛未)は朝食をとっているが、表情はどこか沈んでいる。
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裕二郎(吹越満)の娘・咲(兼崎杏優)は、夏美が“三角関係で落ち込んでいる”と早合点し、自分のプチトマトを分けて励ます。
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その様子を見た裕二郎、アキ(鈴木蘭々)、ビリー(ダニエル・カール)は盛大にずっこける。
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朝食に降りてきた聡(渡邉邦門)と夏美の間には、言葉を交わさないまま微妙で重たい空気が流れる。
個人的感想
咲は優しい子なんだろうなと思う。
翼のときもそうだったけれど、「食べ物を分ける=元気になってほしい」という発想が自然に出てくるのが、この子の人柄なんだろう。危うさがあるかどうかは別の話として。
一方で、大人たちのずっこけは朝から元気すぎる。ただ、それを笑っていられるほど、夏美と聡の間の空気は軽くない。
正直、もうこの二人は早く結論を出したほうがいい。夏美は今、仕事の問題だけで手一杯なはずで、三角関係に神経をすり減らしている余裕なんてないはずだから。
咲の行動は「感情の代弁装置」
咲は状況を正確に理解しているわけではないが、「夏美が元気を失っている」という核心だけは外していない。
子どもの勘が、場の空気を可視化している役割を果たしている。
イーハトーブは“癒しの場”でありながら、もう逃げ場ではない
以前のイーハトーブは、夏美にとって一息つける場所だった。しかし今は、聡との気まずさが日常空間にまで侵食し、下宿ですら心が休まらなくなっている。
孤立を深める夏美と、露骨に進む職場の歪み
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加賀美屋では夏美に対する風当たりがさらに強まり、康子(那須佐代子)、則子(佐藤礼貴)、恵(藤井麻衣子)の三人は露骨に夏美を無視する。
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夏美は「食事の器を冬物に替える」という作業を命じられるが、その量は明らかに一人でこなせる範囲を超えている。
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板長・篠田(草見潤平)は彩華(白石美帆)を気に入り、料理の味見までさせる特別扱いを見せる。
- 一方、組合費の封筒をしまう彩華の姿を目撃してしまった浩司(蟹江一平)は、彩華に対してよそよそしい態度を見せる。
個人的感想
これはもう、言い逃れできないレベルでひどい。
無視による孤立、一人では不可能な業務量の押し付け。パワハラの定義の6類型が、これでもかと重ねられている。
特に「器替え」を一人でやらせる場面は悪質だ。失敗すれば「能力不足」、間に合わなければ「やる気がない」と言われる前提で命じられているように見える。
そして篠田。
「女は板場に入るな」と怒鳴っていた男が、彩華には味見までさせる。
これは男尊女卑というより、夏美個人への感情的な排除なんだろう。
理屈でもしきたりでもなく、ただ気に入るか・入らないかで態度が変わる。その身勝手さが際立つ。
これは「教育」ではなく排除プロセス
無視と過重業務を組み合わせるやり方は、相手を辞めさせるための古典的手法だ。
指導や改善を目的としていない以上、もはや育成の体裁すら取っていない。
彩華の特別扱いが「正しさ」を演出している
彩華が評価され、持ち上げられることで、
「彩華=正しい」「夏美=間違っている」
という空気が職場全体に共有されていく。
実際の事実や経緯よりも、“場の空気”が判断基準になっている。
孤立の中で差し出された「おにぎり」という救い
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夏美は誰にも頼れないまま、一人で黙々と仕事を続ける。
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仲居たちの食事の場では、康子・則子・恵が彩華を過剰なまでに持ち上げ、実家の料亭についても称賛する。
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その流れの中で佳奈(川村ゆきえ)だけが、「その料亭も潰れて、今は仲居をしているなんて残念ね」と彩華に嫌味をぶつける。
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仕事を終えた夏美が休憩室に入ろうとすると、康子・則子・恵が夏美の陰口を叩いている声が聞こえ、入室をやめる。
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外で洗濯物を干している夏美のもとに、時江(あき竹城)がおにぎりを持って現れる。
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二人は並んでおにぎりを食べながら他愛のない会話を交わし、時江は自分が長年加賀美屋で働いてきたことなどを語る。
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夏美は少しずつ表情を取り戻し、久しぶりに穏やかな時間を過ごす。
個人的感想
佳奈、ついに彩華に嫌味をぶつけた。
ただ、その場に一緒にいた康子・則子・恵・彩華と食事をしていて、本当に楽しいんだろうか。人の悪口や値踏みを聞きながらする食事が、美味しいわけがない。
そして、ここで一気に時江の評価が跳ね上がる。
失意のどん底にいる夏美に対して、
「頑張れ」
「負けるな」
といった言葉を投げるのではなく、ただおにぎりを差し出し、隣に座って一緒に食べる。
説教もしない。
励ましすぎもしない。
いじめの是非を裁こうともしない。
ただ、日常の会話をする。
この距離感が、とてもいい。
「加賀美屋が好きで、もう30年以上ここで働いている」という言葉も、無理に希望を押しつけるのではなく、「それでも続けている人間がいる」という事実をそっと見せるだけ。
久しぶりに、自然にこぼれた夏美の笑顔を見て、こちらまで少し救われた気持ちになった。それと同時に、時江が「おいしいねぇ」とおにぎりを食べている姿を見て、無性におにぎりが食べたくなったのも正直なところだ。
支援は「言葉」より「行為」で示される
時江がしたのは、評価でも擁護でもなく、「一緒に食べる」という行為だけ。
孤立している人間にとって、これは何よりも強い支援になる。
時江は“組織側”から“人側”へ完全に軸足を移している
以前は環の命令を実行する立場だった時江が、今は夏美の隣に座っている。
これは裏切りでも寝返りでもなく、「現場で人を見続けてきた人間」の自然な選択に見える。
佳奈の嫌味は、彩華ではなく“自分自身”に向いている可能性
彩華を貶した言葉は、彩華を傷つけるためというより、自分が置かれている立場や選択への苛立ちが漏れ出たものにも見える。佳奈もまた、この閉鎖的な空間の被害者なのかもしれない。
このシーンでは、
全員が敵に見える世界の中で、たった一人が隣に座るだけで人は立ち直れる
ということを、静かに、しかし強く描いた場面だったと思う。
柾樹の「引っ越し」と、誰にも共有されない境界線
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横浜では、柾樹(内田朝陽)が啓吾(大杉漣)の家に引っ越してくる。
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柾樹は「夏美の部屋を使う」形で荷物を運び込み、啓吾は嬉しそうに引っ越し作業を手伝う。
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智也(神木隆之介)は柾樹に「夏美に電話しろ」と促し、房子(森昌子)と啓吾もそれに同調する。
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昼休憩中の夏美に智也が電話をかけ、途中から柾樹に代わる。
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柾樹が引っ越しの経緯を説明している途中で、夏美は時江に呼ばれ仕事へ戻る。
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同時に柾樹の携帯も鳴り、柾樹も仕事に呼び出される。
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その電話の相手が「元カノ」だと智也が口にし、房子と啓吾は不安な表情を見せる。
個人的感想
いや、これはさすがにおかしい。
夏美に事前の了承もなく「夏美の部屋を使う」前提で引っ越すって、
いくら元恋人とはいえ、相当なホラー案件だと思う。
ここで一番の問題は、
夏美と柾樹が「別れたのか・別れていないのか」が、作中でも視聴者にも共有されていないことだ。
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夏美は「別れた」と言っている
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啓吾や柾樹は「形式的に距離を置いているだけ」くらいの認識
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周囲はまだ「元に戻る前提」で動いている
もし本当に別れているなら、別れた男が自分の部屋に勝手に住むなんて、感情的にもプライバシー的にも完全アウトだ。
電話のタイミングについても少し違和感がある。
夏美は昼休憩中だから電話に出るのは問題ないが、
柾樹は「半休を取っている」と言っている以上、午後から出社予定だったはず。
それを「急に呼び出された」ような演出にするのは、やや無理がある。
「夏美の部屋」を使うという象徴性
柾樹は物理的にも、心理的にも、まだ夏美の領域から完全に出ていない。
それを周囲(啓吾・房子・智也)が後押ししている構図は、夏美の意思が軽視されていることの象徴でもある。
柾樹は“戻れる場所”を確保している
家族の家
夏美の部屋
職場
香織
どこかがダメでも別の場所がある。
この「逃げ場の多さ」は、次のセクションで描かれる“引き止め”とも直結する。
夏美との電話が途中で切れる演出の意味
夏美は仕事に呼ばれ、柾樹も別件で呼び出される。二人とも「話し合う時間」を持てないまま、日常に引き戻される。これは意図的に“すれ違いを固定化する”演出だろう。
退職は認めない――柾樹を引き止める“力”の正体
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柾樹の職場でトラブルが発生し、対応のため柾樹と香織が一緒に外出する。
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副総支配人(ささきいさお)が現れ、山室部長(中原丈雄)に対して「柾樹の退職は認めない」という方針を示す。
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山室部長は啓吾に電話を入れ、「本格的な引き止めが始まりそうで厄介な状況になった」と伝える。
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智也・房子・啓吾は、夏美に代わって何とかしなければならないと気をもむ。
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一方その頃、夏美はそれどころではない状況に置かれており、その姿が映されて放送は終了する。
個人的感想
副総支配人がどれだけ強気に出ようと、柾樹が本気で辞めたいのであれば、民法627条の原則からして退職自体は可能だ。
だから「退職を認めない」という言葉そのものには、法的な強制力はない。
ただ、ここで引っかかるのは、
柾樹本人に、本当に退職の意思があるのかどうかが、もはやよく分からなくなっている
という点だ。
当初は、ブライダルのプロジェクトが一段落したら辞める、という流れだったはずだが、
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加賀美屋を継ぐことへの迷い
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夏美との関係の変化
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香織との距離の再接近
これらが絡み合い、柾樹自身の軸が揺れているように見える。
もし柾樹の中で「辞めたい」という気持ちが薄れているのであれば、会社側が雇用を継続してくれるのは、むしろありがたい話になる。
副総支配人が柾樹を手元に置きたい理由は、十中八九、姪である香織の存在だろう。
だが、結果として柾樹自身にもメリットがあるなら、少なくとも現時点ではwin-winの形には見える。
それにしても、「それどころではない夏美」を映して終わる構成は、あまりにも残酷だ。柾樹の進路を巡って、大人たちが頭を悩ませている一方で、夏美はその土俵にすら立てていない。
「退職を認めない」は法ではなく“関係性”の圧力
副総支配人の発言は、法的拘束ではなく、
・期待
・人間関係
こうした無形の圧力によって柾樹を縛ろうとするものに近い。
柾樹は「選ばれる側」で居続けている
会社にも、家族にも、香織にも「必要とされる」。
その状態が続く限り、柾樹は自分で決断しなくても物事が進んでしまう。
対照的に、夏美は「誰にも守られていない」
啓吾たちは心配しているが、現場で夏美を守れる人はいない。
柾樹が引き止められる構図と、夏美が孤立する構図が、ここではっきりと対比されている。
物語の重心は完全に夏美側へ移った
柾樹の進路問題は“調整可能な問題”。
一方、夏美の状況は、放置すれば壊れるレベルにまで来ている。
このラストは、
「柾樹の人生は周囲が何とかしてくれるが、夏美の人生は誰も止めてくれない」
という残酷な現実を、静かに突きつけて終わった回だったと思う。
まとめ
第68回は、大きな事件が起きた回ではない。
だが、人が壊れていく一歩手前の空気が、これでもかというほど丁寧に描かれた回だった。
誰も話を聞かない。
誰も助けない。
それでも、夏美は逃げない。
そんな中で描かれた、
時江とおにぎりを食べる、ほんの短い時間が、
この回で唯一「人間らしさ」を感じさせる救いだった。
一方で、
守られ、選択肢を持ち続ける柾樹との対比はあまりにも残酷だ。
この物語は今、
「努力すれば報われる話」から、「構造に飲み込まれる話」へ
明確にフェーズを変えた。
それでも見続けたくなるのは、
この理不尽な世界が、どこまで描かれるのかを確かめたいからだ。
『どんど晴れ』感想まとめはこちら
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