朝ドラ再放送『どんど晴れ』第48回感想(ネタバレ) ――すれ違う想いと決断。夏美が選んだのは・・・――

どんど晴れ

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2025年12月6日(土)放送の『どんど晴れ』第48回。

柾樹(内田朝陽)が「加賀美屋を継がない」と宣言したことで、伸一(東幹久)・久則(鈴木正幸)・環(宮本信子)は一気に旅館改革モードへ。

一方その頃、夏美(比嘉愛未)の胸には誰にも言えない“決意”が静かに芽生えていた。

横浜では房子(森昌子)の訪問が夏美の心を一時的に癒やすものの、罪悪感と責任感は消えず、揺れ動く心のまま夜を迎える。

そして盛岡から戻った柾樹に、夏美はついに衝撃の言葉を告げる――。

環一家の“権力移行ムード”と、ひとり冷静な浩司

●環一家は母屋で今後について話し合い。

  • 大女将の引退&夏美退場を受け、伸一・久則・環は“ついに自分たちの時代だ”と喜色満面。

  • そんな中でも浩司(蟹江一平)だけは「夏美がかわいそう」と冷静で中立的な立場。

  • 恵美子(雛形あきこ)と子どもたち(健太・勇太)は一貫して夏美に好意的。

●恵美子が“大女将には夏美が座敷童に見えた”件を共有。

  • 久則は「座敷童がいなくなった家は没落する」と不安を口にするが、伸一は即否定。

●伸一、恵美子に“若女将復帰”を一方的に命令。

  • 恵美子は「子どもが小さいからまだ無理」と説明するが、

    ★伸一「俺が決めたことに口答えするな!」と完全モラハラ発言。

  • 久則と浩司が、過去の“健太&勇太家出事件”を持ち出し、恵美子の意向も尊重するよう諭す。

  • 伸一は「父親として厳しく言い聞かせるから大丈夫」と強引に話を終わらせる。

●伸一が立ち去ったあと…

  • 浩司が「今の様子じゃ、(恵美子さんに)女将は無理だろ」と心から心配する。


(個人的感想)

環一家は“権力を握った”つもりで完全に浮かれていたけど、そんな中でも浩司だけは一貫して常識人。夏美や恵美子の状況を冷静に見られるのはこの家では浩司だけだと思う。もしどうしてもこの一家から後継を出すなら、もう浩司一択。

対して伸一は、もはやハラスメントの権化。「俺が決めたことに口答えするな!」なんて言葉を平気で妻にぶつけられる人間が、旅館のトップに立ってうまくいくわけがない。確実に組織崩壊コースだ。

環の迷いの正体もここだろう。伸一のハラスメント気質、恵美子の消極性、それを押し切って旅館を任せられるのか――不安がないはずがない。

重要なのは、彼らが『何を失ったのか』を全く理解していないこと。

夏美でも柾樹でもなく、

“信頼”が崩れ始めていることこそが、最大の損失なのに。


カツノと柾樹、それぞれの「覚悟」とすれ違う理想

●母屋の縁側で、カツノ(草笛光子)と柾樹が静かに語り合う。

  • 柾樹は「加賀美屋はいい旅館だ」としみじみ語り、自分が継ぐ未来など考えたこともなかったと告白。環や伸一が継ぐと思っていたし、女将の仕事がどれほど重いかも理解していたから。

  • 横浜で夏美と二人で暮らす未来を描き始めていた矢先、カツノに「継いでほしい」と頼まれ、戸惑ったと明かす。

  • 柾樹は「加賀美屋の思い出は捨てられない」「自分はここの人間だ」と本音を語る一方、

    夏美が“女将になりたい”と言ってくれたときは嬉しかったが、今となっては無理をさせてしまったと痛感している。

    -「もう夏美が傷つくのは見たくない。だから、力にはなれない」と謝罪。

  • カツノは「いい夢を見せてもらった。孫が幸せならそれでいい」と穏やかに受け入れ、柾樹を励ます。


(個人的感想)

柾樹が縁側で「加賀美屋はいい旅館」と語る場面、視聴者としては複雑だったのではないか。だって今まで散々、加賀美屋の“負の遺産”を見せられてきたからだ。視聴者目線では「どのへんが……?」と思わざるを得ない。

そして柾樹の「夏美が傷つくのは見たくない」という言葉。たしかに夏美の失態そのものは彼女の責任が大きい。

でも――加賀美屋の新人教育体制、ハラスメント同然の指導方法、“見て覚えろ”で済ませる古い体質、ミス発生後の検証不足……
これらも夏美を追い詰めた原因であることは否めない。

本来なら、

  • なぜミスが起きたのか

  • 再発防止策は何か

  • 当事者をどう支援し育成するか

    こういった“組織として当然の振り返り”をすべきだった。

だが加賀美屋は

「時江の首を切って終了」

「夏美には曖昧な処遇のまま放置」

「同僚から総攻撃」

という最悪の選択をした。

これでは、誰だって壊れる。

夏美は確かに重大インシデントの当事者だが、ミスを一つもリカバリーできない体制もまた致命的だ。このままでは別の従業員が同じ目に遭う未来は容易に想像できる。

だからこそ思う。

「夏美が傷つくのを見たくないから継がない」のではなく、

“夏美のような犠牲者を出さないために、自分が改革する”

という選択肢は本当にないのだろうか?

柾樹は横浜の大規模ホテルで高評価を受ける優秀な人材。組織改善なんてお手の物のはずだ。旅館に必要なのは“座敷童”ではなく、現代的なマネジメントだ。

それでも柾樹は「夏美を守ること」を選んだ。恋人としては満点だが、経営者としては惜しいとも感じてしまう――そんな複雑な余韻が残るシーンだった。


房子の“優しさ”と“踏み込みの弱さ”が浮き彫りになる

  • 盛岡から戻った柾樹は、そのまま横浜の職場へ直行。

    夏美には「帰ってから盛岡の話をする」と電話で伝える。

  • 朝倉家から房子が、啓吾(大杉漣)の作ったケーキを手土産に柾樹の部屋を訪問。

  • 智也(神木隆之介)は房子を鬱陶しがって図書館へ避難し、夏美と房子が二人きりに。

  • 房子は「何があったかは聞かないけれど、修業を辞めて戻ったということは相当のことがあったのだろう」と気遣う。

  • 啓吾も本心では気にかけているが、「大女将に預けた以上、勝手に戻った夏美を家に入れられない」と考えていると伝える。

  • 夏美が「迷惑ばかりかけてごめん」と謝ると、房子は「親子なんだから気にすることはない」と返す。

  • 最後に「これからのことは柾樹さんと二人で相談しなさい」と背中を押す房子。


(個人的感想)

房子の「何があったかは聞かないが」というセリフ、今回ばかりは完全にタイミングが違うと思う。

本来この言葉は、

「事情を聞こうとしたけど、本人が話したくなさそうだから、それ以上は踏み込まない」

という“相手の意志を尊重する”場面で使われるものだと思う。

でも今回は――
一度も事情を聞いていないのに、最初から質問を放棄している。

夏美は「答えたくない」とすら言っていない。むしろ、母になら話したいと思っていても不思議ではない。

それなのに房子は入口から遮断してしまった。

優しさのつもりなのは分かる。「無理に聞き出さない」=寄り添うスタンスを演出しているつもりなのだろう。

でも結果としては、

“娘の本音を受け止めるチャンスをみずから無くしている”

という残念な構図に。

夏美は、加賀美屋の過酷な環境で心がズタズタにされた直後。本来は親にこそ寄りかかりたかったはずだ。

房子が聞く姿勢を見せれば、夏美はきっと胸の内を少しでも吐き出せただろう。それだけで救われる部分もあったかもしれない。

「親子だから気にするな」よりも、まずは 「話してごらん」 だろう。

そしてもし夏美が言い渋ったなら、そこで初めて「詳しいことは聞かないけど、あなたは私の娘だから受け入れるよ」という本来あるべき“母の包容力”が発揮できたはず。

房子は根は優しいし、守ろうとしている。でも今回は、

一歩踏み込むべき場面で踏み込まなかった
そのもどかしさが強く残るシーンだった。


柾樹の“決断”が引き金となり、夏美が下した苦渋の選択

  • 柾樹の部屋で、夏美はカツノと環への手紙を書いていた。

  • その最中にチャイムが鳴り、柾樹が帰宅。

  • 晩ごはんの準備ができていると告げる夏美。

  • 柾樹は智也が外出していることに気づき、夏美と二人きりで話し始める。

  • 柾樹は盛岡で環たちに伝えた内容を報告。「夏美が戻らないなら女将修業を続ける必要はない」と説明。

  • さらに「自分も旅館を継がない」と告げる。

  • 夏美は大きな衝撃を受ける。

  • 柾樹は「今一番大事なのは加賀美屋ではなく夏美だ」と伝え、二人の未来を優先したいと語る。

  • その言葉を聞いた夏美は、柾樹の夢を断たせてしまった責任を感じ、婚約解消を申し出る。


(個人的感想)

まず、柾樹が自分の部屋のチャイムを鳴らす問題。これは地味に気になるポイントだ。

  • 「おかえり」を夏美に言ってほしい新婚気分的演出なのか。

  • あるいは、突然鍵を開けて入りたくないという気遣いなのか。

どちらにせよ、細やかな性格が出ていて微笑ましい。

しかし問題はここからだ。

柾樹は盛岡へ向かう前、

夏美と“何をどう伝えるか”について具体的に話し合っていない。

「オレがうまく話してくるから、心配するな」という男らしい気遣いはあったが、結果的には 重大な案件を一人で背負って判断してきた ことになる。

しかもその判断は――

「旅館を継がない」という一族の歴史を揺るがすレベルの決断。

これを一言も相談せずに決めてしまったのは、柾樹の優しさでもあり、危うさでもある。

一方で、夏美。

香織(相沢紗世)に揺さぶられ、加賀美屋でも追い詰められ、「柾樹の夢だけは壊したくない」という思いが夏美の中で膨らみ続けていたのだろう。

だからこそ――

柾樹が旅館を継がないと聞いた瞬間、“自分のせいで夢を潰した” と解釈してしまった。

そして極端な答えに走る。

「婚約を解消してください。」

これぞ夏美らしい“全責任を背負い込む癖”。悪い意味での一直線さだ。

本当なら二人で落ち着いて話し合い、

「旅館は継ぐのか・継がないのか」

「どこに住むのか」

「今後どう歩むのか」

未来設計を共有してから盛岡へ行くべきだった。

でもこのドラマは、

“話し合えば解決する問題を話し合わずに悪化させる”

という構造が多すぎる。

だから今回も例外ではなかった。

柾樹は夏美を守りたい。

夏美は柾樹の夢を守りたい。

その“気遣い合い”が、

かえって二人の心の距離を広げてしまう。

なんとも切ないすれ違いだ。


まとめ

今回の48回は、「相手を思いやるがゆえに、話し合えない二人」の関係が一気に崩れ始めた回だった。

  • 柾樹は「夏美を守りたい」という優しさから旅館を手放す決断をした。

  • 夏美は「柾樹の夢を壊したくない」という責任感から、婚約解消を申し出た。

どちらも相手を想っての行動なのに、その想いが噛み合わないという切なさ。

夏美の決断は軽率ではなく、むしろ“自分を責め続けてきた結果の苦渋の選択”。柾樹は夏美を救いたいのに、夏美は“柾樹の未来を守りたい”という別方向へ走り出してしまう。

優しさの方向がずれたとき、恋人同士はこんなにも脆くなるのか。

次回、二人がこのすれ違いをどう乗り越えるのか――それとも、乗り越えられないのか。物語はいよいよ大きな転換点に向かって動き出した。

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