朝ドラ再放送「どんど晴れ」第23回感想(ネタバレ) ― “母の愛と職の責任”が揺れた夜 ―

どんど晴れ

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2025年11月7日(金)放送の『どんど晴れ』第23回。

加賀美屋の女将修業は続く中、今回は「母であること」と「働くこと」の間で揺れる恵美子(雛形あきこ)の姿が描かれた。

そして、横浜では啓吾(大杉漣)がようやく“頑なな父親”から“見守る父親”へと変わり始める。


啓吾の“見守る覚悟” ― 頑固な父の心に風が吹く

浅倉家の朝。

いつもは穏やかな朝食の時間だが、啓吾(大杉漣)は箸が進まない。智也(神木隆之介)は、「昨日、柾樹(内田朝陽)と飲み過ぎたせいじゃ?」と笑いながらも、父が彼と和解できたことを心から喜んでいる。啓吾は、許すとか許さないじゃない、あの二人を信じて見ていくと心に決めたようだ。頑なに反対していた男の顔に、ようやく“父親の優しさ”が戻った瞬間だった。

(個人的感想)
この場面、短いけれど象徴的だ。“見守る”というのは“許す”よりも深い。干渉をやめ、子どもの決断を信じるということ。啓吾がその境地にたどり着いたことで、物語はようやく“対立”から“信頼”へと転換した。


夏美の不安と、母屋に広がる夕暮れの静けさ

加賀美屋の台所では、夏美(比嘉愛未)がカレーらしき夕食を準備していた。だが、健太(鈴木宗太郎)と勇太(小室優太)の帰りが遅い。番頭の中本(高橋元太郎)から、まだ帰ってきていないことを聞いた瞬間、夏美の表情は一気に緊張に変わり、心は不安で満たされていく。

そのころ旅館では、恵美子(雛形あきこ)が丁寧な接客を続けていた。久則(鈴木正幸)と時江(あき竹城)はその接客態度を見て、「いい嫁をもらった」と伸一(東幹久)に報告し、伸一は照れ笑いを浮かべる。しかしその笑顔の裏で、家族の危機は静かに進行していた。

(個人的感想)
“仕事が順調なときほど家庭で何かが崩れる”という皮肉な構図。恵美子の完璧な接客が、そのまま“母としての空白”を象徴していたように感じる。そして、周囲の「いい嫁だな」という言葉が、かえって痛々しく響く。


女将の前で声を上げられない恵美子

廊下で雑巾がけをしている恵(藤井麻衣子)が、「客室の仕事に戻りたいから女将に頼んでほしい」と恵美子に懇願する。恵美子は「機会を見て話してみる」と約束するが、いざ本人を前にすると、言葉が喉に詰まる。そんな中、久則から「健太と勇太が帰っていない」と報告を受ける。動揺を隠せない恵美子に、環は冷静に「夕食の準備を」と指示を出す。

(個人的感想)
恵美子が何も言えないのは、性格の他にも“構造”の問題もある。息子が行方不明になっても、仕事を優先しろという理不尽。“プロ意識”という言葉で片づけるには、あまりに酷な現実だ。


恵美子の決断、環の静かな試練

夏美が「子どもたちはお母さんを待っている気がする」と訴え、恵美子はついに旅館を飛び出す。

環は「あなたにはまだ仕事があるでしょう」と恵美子を止めるが、久則の「事故かもしれない」という言葉に、ついに伸一も動く。夏美、恵美子、伸一、久則――それぞれが懸命に街を探し回る。

その姿に、“家族としての絆”がようやく見えてきた。

(個人的感想)
この場面、まさに“職務と母性の衝突”の象徴だった。環や伸一が冷たく見えるのは、加賀美屋という老舗の看板を背負っているからだろうか。彼らにとって“家族”よりも“仕事”を優先するのは、理性というより“宿命”なのかも。

だが、母親の恵美子がその理性を超えて動いたことで、この家に久しぶりに“人間らしい温度”が戻ったように思えた。環は、母親として動こうとする恵美子を制止した。「お客様の夕食が先」と。

一見すると非情な言葉だが、そこには女将としての“伝統の覚悟”がある。環の「私は行っても仕方ない」という言葉にも、“行きたいけれど行けない”という抑えきれない葛藤がにじんでいたと見ることもできる。

女将という職は、家族を守るために家族から離れる――そんな矛盾を抱えた、孤高の仕事なのかもしれない。家族が行方不明で心配しているところに神隠しのオカルト話を挟んでくる時江については特にいうこともない。


再会の涙、そして親子の温もり

夜。健太と勇太を見つけたのは、偶然通りがかった裕二郎(吹越満)がだった。

夏美に連絡を入れ、「イーハトーブ」で食事をさせる。到着した恵美子は、我が子を見つけるなり大声で叱りつけ、そしてそのまま抱きしめた。

「どれだけ心配したか分かってるの!」

涙が頬を伝う。健太と勇太は「ごめんなさい」と小さくつぶやいた。

(個人的感想)
この抱擁の瞬間、母と子のすべての誤解が溶けたように見えた。“叱ること”と“愛すること”が同時に存在する場面。それは“教育”でも“演技”でもなく、純粋な“母性の衝動”だ。環も伸一も、胸の奥でようやく安堵したはずだ。
何歳までお母さんと寝るつもりなんだろうと若干気にはなったが、それは各家庭の事情もあるのだろうと気にしないことにした。裕二郎と伸一が小学校からの同級生ということが今後物語にどう関係してくるのかも気になる。


まとめ

第23回は、“母親としての本能”と“女将としての責務”が衝突する回だった。環が象徴するのは“伝統の重さ”、恵美子が見せたのは“人間らしさ”。そして、夏美はその橋渡しをする存在として輝いていた。

仕事も家族も、どちらも大切にしたい――その当たり前の願いが、いまだに難しい社会の縮図を映し出す。だが、恵美子が涙で抱きしめた瞬間、「女将である前に一人の人間である」という真理が

確かにこの物語の中心に据えられたのだ。

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