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2025年11月6日(木)放送の『どんど晴れ』第22回。
女将修業を続ける恵美子(雛形あきこ)と、仲居兼家事手伝いとして奮闘する夏美(比嘉愛未)。
そして横浜では、柾樹(内田朝陽)がようやく啓吾(大杉漣)との直接対話に臨む。
家族を思うがゆえにすれ違う――それぞれの「親子愛」と「覚悟」が描かれた一話だった。
平治とカツノ、そして“座敷童”の気配
朝の岩手。南部鉄器職人の平治(長門裕之)が渓流でヤマメを釣り上げ、加賀美屋へ届けにやって来る。大女将・カツノ(草笛光子)に「早く元気になってほしい」と声をかけ、その帰り際に、布団を干している夏美の姿を見かける。
干されていたのは、健太(鈴木宗太郎)と勇太(小室優太)のおねしょ布団。夏美は気づくと、平治に「内緒にしていてくださいね」と頭を下げた。
(個人的感想)
平治は、何かにつけてカツノに会いに来る――その頻度からも、彼の中で“想い人”としてのカツノの存在がどれほど大きいかが分かる。そして座敷童=夏美の様子を気にかけるあたり、“彼女が加賀美家にもたらす幸運”を感じ取っているのかもしれない。今日の小さな出来事もまた、夏美が“家族の秘密を守る存在”であることを印象づけた。
恵美子の苦悩 ― 子を想う母と、宿命に縛られた妻
旅館では、伸一(東幹久)がパソコンで仕事をしている。恵美子(雛形あきこ)は静かに部屋へ入り、「子どもたちが起きている時間に一緒にいたい」と女将修業の一時中断を願い出る。しかし伸一は、「今やらなければ、柾樹が旅館を継ぎ、夏美が女将になる」と不安を露わにする。
「お前と結婚したのは、女将になれる女だからだ」と言い放つ伸一。
恵美子は黙って頭を下げ、その背中に伸一はわずかな後悔をにじませる。
(個人的感想)
まず、第一に驚いたのは伸一もちゃんと仕事をしていたのね。パソコンも使いこなしてるじゃん!ってこと。それはさておき、伸一の言葉はあまりにも冷たく響くが、その奥には“立場を守る焦り”と“家を背負う責任”がある。
とはいえ、「女将になれるから結婚した」という発言は致命的だ。恵美子の心が離れても仕方ない。彼女の「母として子の側にいたい」という願いは、働く母親が抱える普遍的なジレンマそのものだった。
令和の今、育児・介護休業法や働き方改革関連法の改正によって、「家庭と仕事の両立支援」はようやく形になりつつある。
だが当時(2007年前後)は、まだ“両立”は個人の努力に委ねられていた部分も大きいのではないかと思う。恵美子は経営側であり、労働者という身分ではないかもしれないが、「もう少し子どもと過ごしたい」と言うこと自体が、“わがまま”と捉えられてしまう社会。伸一の言葉は、その時代背景の中での“制度の不在”を痛烈に浮き彫りにしていたように感じる。
子どもの描く“お母さんの絵” ― 夏美が見つめる家族のかたち
健太と勇太の部屋を片付けていた夏美は、二人が描いた「お母さんの絵」を見つけて立ち止まる。
そこには、笑顔の恵美子の姿が描かれていた。
「イーハトーブ」では、佳奈(川村ゆきえ)が仕事の負担増にぼやく。夏美が母屋を手伝うようになってから仲居の仕事が増えたという。
そこに裕二郎(吹越満)の娘・咲(兼崎杏優)が現れ、「おやすみなさい」とあいさつ。父が“おねしょ防止のおまじない”をしてやる微笑ましい時間。佳奈は、咲が母親不在で寂しさを抱えていると指摘し、夏美は健太と勇太を思い出して表情を曇らせる。
(個人的感想)
おねしょの描写は単なる子どもの失敗ではなく、「環境の変化に対する心のSOS」として描かれている。咲、健太、勇太――いずれも“母との距離”に心が反応している。それを理解し、受け止めようとする夏美の優しさが、今回の物語の静かな核になっていた。
横浜の浅倉家 ― 頑固な父と、待ち続ける青年
横浜では、柾樹(内田朝陽)がケーキ店を訪ねる。今日こそ話を聞いてもらうと決意し、「帰りません」と外で待ち続ける。その様子を、2階のリビングで見ている啓吾(大杉漣)。
房子(森昌子)と智也(神木隆之介)は、「お父さんが話を聞かないなら仕方ないね」と、あえて知らん顔を貫く。
その無関心なふりが、逆に啓吾の心を揺さぶっていく。やがて降り出した雨の中、啓吾は「ちょっと出かけてくる」と家を出た。
(個人的感想)
房子と智也の“逆心理作戦”が見事だった。説得ではなく“沈黙による刺激”で啓吾を動かす――まさに長年連れ添った家族だからできる技。柾樹の一途さ、そして啓吾の心のほころび。どちらも“誠意が通じる瞬間”を待っていたのだろう。
父と未来の婿、“桃華軒”での本音
啓吾は外で待つ柾樹に傘を差し出し、「来るか」と声をかける。二人が向かったのは、行きつけの町中華「桃華軒」。温かな湯気と油の香りが漂う中で、柾樹は深く頭を下げ、
これまで夏美の家族に心配をかけたことを詫びる。そして、結婚を一度取りやめた理由を正直に話す。
――叔父一家が旅館を高級ホテルに建て替えようとしており、カツノ(草笛光子)を悲しませたくない一心で旅館を継ぐ決意をしたこと。その決意が、夏美を苦しめる結果になると分かっていたこと。だが夏美自身が「女将になる」と宣言したことで、もう逃げないと決めたこと。
啓吾は黙ってビールを注ぎ、「飲みなさい」と促す。やがて柾樹は力強く言う――「夏美さんを、必ず幸せにします!」。その言葉で、二人の距離は少しずつ近づいていった。
(個人的感想)
ようやく腹を割って語り合うことができた二人。柾樹の真摯な言葉が、啓吾の頑なな心を解きほぐした。“本音”をさらけ出すことは勇気がいるが、そこからしか信頼は始まらない。柾樹が示したのは、恋人への誠実さだけでなく、“家族になる覚悟”だった。
まとめ
第22回は、「家族を想うことの難しさ」と「誠意の力」を描いた回だった。恵美子は“母としての葛藤”に揺れ、夏美は“他人の痛みを受け止める力”を見せた。そして柾樹と啓吾の和解は、“親子の不器用な愛”の象徴そのもの。
誰かを想うことは、時にすれ違いを生む。けれども、その不器用さの中にこそ、本当の優しさが宿る。今日の『どんど晴れ』は、そんな家族の温度を丁寧に描き出していた。
『どんど晴れ』感想まとめはこちら
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