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2025年11月5日(水)放送の『どんど晴れ』第21回。
夏美(比嘉愛未)が母屋の家事を担い、恵美子(雛形あきこ)が女将修業に挑む一方で、柾樹(内田朝陽)は横浜からその様子を気にかける。
「仕事」と「家庭」、「支える人」と「支えられる人」。
今回の物語は、立場の違う二人の女性がそれぞれの場所で“自分の役割”を見つめ直す回となった。
恵美子の奮闘、そして夏美の前向きな受け止め方
恵美子(雛形あきこ)が旅館で女将修業を始め、夏美(比嘉愛未)は母屋の家事を引き受けることに。
柾樹(内田朝陽)は電話越しに「旅館の仕事に加えて家事までなんて」と心配するが、夏美は「役に立てるなら幸せだと思うことにした」と笑う。
彼女にとって、家事を任されることは“家族の一員として信頼される証”であり、重労働でさえも心を磨く機会と捉えている。
(個人的感想)
夏美の底抜けのポジティブさが際立った、印象的な電話シーンだった。彼女は、家事の手伝いを「押しつけられた仕事」とは見なさず、「家族の一員として認めてもらうための機会」として前向きに受け止めている。その発想の転換力には本当に感心する。嫌な出来事に目を奪われず、同じ状況でも見方を変えることで意味を見出す――この姿勢こそ、夏美の強さだろう。
彼女にとって「女将になること」よりも「柾樹と共に生きること」が優先されている今、家事を任されることは単なる雑務ではなく、“未来の家族の一員として歩み寄る第一歩”なのかもしれない。
横浜・浅倉家の静寂 啓吾の揺れる心
横浜の浅倉家では、啓吾(大杉漣)と房子(森昌子)、智也(神木隆之介)が穏やかに過ごしていた。「姉ちゃんがいないと静かだな」とつぶやく智也、房子は「よくもまあ意地を張るわね」と啓吾を軽く責める。
そして、「本当に夏美と縁を切るつもりなの?」と詰め寄られた啓吾は、言葉を失う。智也は「話も聞かないままじゃ、柾樹さんも来なくなる」と冷静に突く。啓吾の頑なさがほころび始めた瞬間だった。
(個人的感想)
この場面は“沈黙が語る”名シーン。啓吾の静かな動揺、智也の冷静な挑発、そして房子の母としての焦り。それぞれの立場が異なるからこそ生まれる“家族の不器用な愛”が丁寧に描かれていた。特に智也の発言は、頑固な父親の防波堤を壊す「理性的な愛情」だと感じる。
啓吾は「守る」という名のもとに、娘や家族との距離を自ら広げてしまった。社会が男性に求め続けてきた「強さ」や「威厳」が、いまや“関係性を築く力”を奪っているという現実。それをこの物語は静かに批判しているようにも見える。
加賀美屋での混乱 ― 仲居たちの動揺と恵美子の苦悩
加賀美屋では、恵美子が客の好みを細かくメモして仲居たちに指示を出すが、段取りが悪く、周囲が先に動いてしまう。
同時に、母屋では夏美が掃除や洗濯をこなし、久則(鈴木正幸)が「そんなことまでさせて悪いね」と声をかける。
夏美は柾樹の家族は自分にとっても家族になる人なんだから「お世話させていただくのは当然です」と笑顔で返すが、伸一(東幹久)だけはその様子を冷ややかに見ていた。
そこへ恵美子が走ってきて「教材費を渡し忘れたの!」と慌て、夏美が代わりに走り出す。
(個人的感想)
ここで夏美が“家族の穴埋め”をしている構図が見える。家事をすることで家庭の歯車を動かし、結果的に加賀美家の信頼を得ていく。これを“労働搾取”と取るか、“信頼関係の構築”と見るかは紙一重だが、夏美の中ではすでに答えが出ているように感じる。
旅館のトラブル ― 「責任」と「立場」の間で
仲居の恵(藤井麻衣子)が、お客様にアレルギー食材を出してしまうというミスを犯す。
環(宮本信子)は厳しく叱責し、「当分、客室担当から外す」と通告。
仲居たちが休憩所で恵を励ます声を、廊下の外で聞く恵美子。
その中で「小さい子もいるし、恵美子さんも頑張ってるし」と気遣う仲居たちの言葉に、かえって胸を締め付けられる。
(個人的感想)
ここで問われているのは“責任とは何か”というテーマ。恵美子もミスに関わっていたのに、恵だけが処分を受ける。「立場が上だからこそ自分の非を認める勇気」――これを見せられなかった恵美子の苦悩が痛いほど伝わる。上に立つ者の沈黙は、時に最も重い過失になる。
恵美子の弱音と、夏美の励まし
母屋に戻った恵美子は、夏美と並んで茶を飲む。
「家事は好き。でも旅館の仕事は向いてないのかも」とつぶやく恵美子。
夏美は「優しいから、この家が丸く収まってるんですよ」と穏やかに返す。
「女将なんて、私には務まらない」と恵美子が言うと、夏美はきっぱりと答える。
「そんな風に思えるのは、女将の仕事をよく分かってるからです。だから自信持ってください」
(個人的感想)
このやり取りが今日一番印象的だった。夏美は、相手を否定せず、そっと支える。
“励まし”ではなく“共感”から始まる言葉。人を変える力は、強い説得ではなく、優しい受容にある――それを体現していた。
「私には女将は務まらない」と口にする。この言葉を、単なる“弱音”として流してはいけない。
それは「自分が何を大切にしたいのか」を正直に見つめる勇気の言葉でもある。仕事と家庭、どちらが大事か――その二択を迫られる女性たちにとって、「できない」と言えることは、敗北ではなく“自己尊重”の第一歩だ。「母である自分」を否定せず、「仕事に向いていない」と言える勇気が、彼女の人間的な成熟を物語っていた。
夜の静けさの中で ― “母親”としての恵美子
夜、健太(鈴木宗太郎)と勇太(小室優太)に絵本を読み聞かせる夏美。二人は母・恵美子を待ちながら眠りにつく。遅れて戻った恵美子は、寝顔を見て不安げな表情で、静かに布団をかけ直す。
その表情は、女将候補ではなく、ただの“母親”そのものだった。
(個人的感想)
仕事に追われる母親像のリアリティが胸を打つ。「働く母」と「家を守る母」。どちらかを選ばざるを得ない現実に対して、この作品は“どちらも正しい”と語りかけているようだった。
まとめ
第21回は、“支える者たち”の静かな闘いを描いた回だった。
夏美は「家族の一員として認められたい」と願い、恵美子は「女将としての自信を失いかけながらも、母としての強さ」を見せた。
環の厳しさも、啓吾の頑なさも、すべては「大切なものを守りたい」という愛情の裏返し。
そして夏美の明るさは、その愛情の循環を繋ぐ“媒介者”として光っていた。
働くとは、支え合うこと。家庭も職場も、その本質は同じ。
今日の『どんど晴れ』は、その普遍的なテーマを静かに、しかし確実に伝えてくれた一話だった。
次回(第22回)は、恵美子の迷いがさらなる波紋を呼びそうだ。
夏美の「支える力」がどこまで届くのか、見守りたい。
『どんど晴れ』感想まとめはこちら
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