朝ドラ再放送「どんど晴れ」第20回感想(ネタバレ) ― “二人の女将候補”が動き出す日、それぞれの不安と覚悟 ―

どんど晴れ

本記事にはアフィリエイト広告を利用しています。

2025年11月4日(火)放送の『どんど晴れ』第20回。

前回、恵美子(雛形あきこ)が女将修業を始めることが決まり、今回はその初日。加賀美屋の空気は一気に張り詰め、夏美(比嘉愛未)の周囲も大きく変わり始めた。


恵美子、女将修業スタート。夏美の笑顔の裏に隠された影

恵美子は旅館の娘として育っており、初日から接客を担当することになった。夏美は「よかった!」と明るく声を上げ、「旅館の娘ならいろいろ教えてもらえると思って」と言う。だが、笑顔の奥にはわずかな不安が滲む。

一方、リネン室では仲居たちが二人の女将候補の話で盛り上がる。多くは恵美子派だったが、清美(中村優子)だけが「まだどっちが女将になるかわからない」と夏美をかばう。

(個人的感想)
夏美の「よかった」というセリフ、言葉とは裏腹に“焦り”が滲んでいた。清美だけが味方という構図は、典型的な新人孤立状態。この状況をポジティブに受け止めようとする夏美の強さは、同時に“危ういほどの無理”にも見える。


 仲居ではなく“家政婦”?母屋の家事を命じられる夏美

下足室で靴磨きをしていた夏美に、時江(あき竹城)が新しい指示を出す。「今日から母屋の家事も手伝ってもらうから」と突然の命令。洗濯、掃除、夕飯の支度、後片づけ――仲居の仕事とは関係のない内容だった。

夏美は「はい、わかりました!」と笑顔で受け入れるが、その表情はどこかぎこちない。

一方で、恵美子はお花の師範級の腕前を披露。環(宮本信子)と伸一(東幹久)と時江は感心し、「夏美なんかに負けやしない」と伸一は強気な言葉を放つ。環は、時江が夏美に家事を命じたことを聞き、「さて、大女将(カツノ)がどう出るか」と意味深に微笑む。

(個人的感想)
時江が夏美に命じた“母屋の家事”は、明らかに仲居の業務外のように思う。洗濯・掃除・炊事といった私的作業が仲居の業務として定められており、労働条件明示書の仕事の内容に“母屋の家事”も含まれているのであれば、業務として“母屋の家事”を行わせることができる可能性はあると思うが・・・
労働条件の明示で職務の変更の範囲を義務化されたのが令和6年4月からとはいえ、20年近く前であっても、仲居業務から母屋の家事に業務を変更するのはかなり無茶をしたんじゃないかな。夏美はまだ婚約者の立場であり、加賀美家の一員でもない。

そんな彼女に私的労働を課すのは、ハラスメントの温床以外の何物でもない。それを経営側の環(宮本信子)と伸一(東幹久)が黙認している点がより問題だ。
“指導”や“家族の一員”という言葉で誤魔化されがちだが、実態はただのタダ働きの押しつけ。職場に「無償奉仕が美徳」という価値観が根強く残る限り、労働環境の改善は進まない。この場面、現代の労務管理の観点から見てもゾッとした。


カツノの“静観”と夏美の決意

洗濯物を干す夏美を見つけた大女将・カツノ(草笛光子)は、「旅館の仕事は?」と問いかける。

夏美は「今日から母屋の家事を手伝うように言われたんです」と説明。カツノは「恵美子も女将候補の一人」と釘を刺すが、夏美は「仲良く頑張ります。恵美子さんに負けないように早く仕事を覚えます」と前向きに答える。ナレーションでは、「夏美は不安を抱えながらも、喜ぶことにした」と語られた。

(個人的感想)
“喜ぶことにした”というナレーションが心に刺さる。本当は嫌なのに、笑顔で「大丈夫」と言う――それは我慢の最終形。

こうした“ポジティブを強制される空気”が職場を壊していくということもある。夏美が無理やり”喜ぶことにした”のではなく、本当の家族の一員となって自発的に本音で喜べる日が来ることを願う。柾樹、早く盛岡に戻ってきてやれよ。


横浜・啓吾の頑なさ、房子の怒り

一方、横浜のケーキ店では、柾樹(内田朝陽)が再び啓吾(大杉漣)を訪ねる。しかし啓吾は「会うつもりはない」と拒絶。房子(森昌子)はそんな夫の頑固さに呆れる。柾樹を責める保(与座嘉秋)は、結婚をやめると言ったくせにまた会いに来る柾樹が気に入らない。それでも柾樹は「夏美が気にしているから、また来ます」と房子に頭を下げる。

(個人的感想)
啓吾は、典型的な“不器用な父親”タイプ。許したいけど許せない、そんなジレンマが顔に出ている。一方の保は職場の同僚にしては踏み込みすぎ。この人間関係はどこで決着がつくのか。


カツノと平治、“座敷童”の再確認

南部鉄器職人の平治(長門裕之)が加賀美屋を訪れ、カツノと茶を飲みながら語る。夏美が夕飯の準備を楽しそうにしてたと報告する平治。カツノも同意し、普通ならすねるところなのに、頑張り続ける夏美に感心する二人。

そして二人は、初めて夏美を見た時「座敷童かと思った」という話を再び持ち出し、「やっぱり座敷童かもしれん」と結論づける。

(個人的感想)
平治とカツノが、夏美を“座敷童のようだ”と称える場面がある。だが実際の夏美は、笑顔の裏で労働と感情をすり減らす“見えない労働者”だ。「頑張り屋」「健気」と言われるたびに、彼女の孤立は深まっていってる気がしないでもない。


夏美、子供たちとの温かい時間

夏美は母屋で健太(鈴木宗太郎)と勇太(小室優太)のためにハンバーグを作る。顔の形をしたハンバーグに二人は大喜び。だが、一度母屋に戻ってきた母・恵美子が旅館の仕事で戻らなければならず、寂しそうに「また行くの?」とつぶやく。

「ごめんね」と謝る恵美子。その背中を見送る健太と勇太を、夏美はそっと見つめる。

(個人的感想)
このシーンは本当に切ない。子どもの“待つ時間”ほど残酷なものはない。夏美はその隙間を埋める存在になっているが、それがまた家庭内のバランスを揺るがす。ここから“事件”が起きる予感が強く漂う。


まとめ

第20回は、表面上は“二人の女将修業”だが、実際には“職場の力関係と家庭のバランス崩壊”を描いた回だった。夏美の頑張りは美徳として描かれながらも、今の視点で見ると明らかに過重労働。それでも「笑顔で受け入れる」彼女の姿に、視聴者は自分自身の“働く苦しさ”を重ねてしまうかもしれない。

『どんど晴れ』感想まとめはこちら

広告

懐かしい朝ドラをもう一度見たい方はこちら → NHKオンデマンドでは見られないけどTSUTAYA DISCASで楽しめる朝ドラ5選

タイトルとURLをコピーしました