朝ドラ再放送「どんど晴れ」第16回感想(ネタバレ) 誠意を尽くす夜、責任を背負う夏美

どんど晴れ

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2025年10月30日(木)放送の『どんど晴れ』第16回。今回は、雨の日に起きた“滑倒事故”をきっかけに、夏美が「責任」と「誠意」の意味を学んでいく回でした。過剰にも見える“おもてなし”の裏にある、環の信念。そして、その背中を見つめながら自分の道を模索する夏美。失敗を通じて、仲居として、そして一人の人間として少しずつ成長していく姿が描かれました。

吉田の転倒と、環の深い謝罪

お客様・吉田(山本圭)が雨で滑り、腰を打ってしまう。駆けつけた環(宮本信子)と仲居の清美はすぐに頭を下げ、「このたびは誠に申し訳ございません」と旅館の落ち度を詫びる。

しかし吉田は「いやいや、年のせいで足を取られただけですから、気にしないでください」と穏やかに応じる。環が「お医者様を呼んだほうがよろしいのでは」と案じるも、「これくらい湿布を貼っておけばよくなります。ひどくなったらその時は頼みます」と吉田は微笑む。

「そうですか、では、すぐに湿布薬をお持ちします。他になにかございましたら、遠慮なくお申し付けくださいませ。本当に申し訳ございませんでした。」

そう言って深々と頭を下げる環。その姿に、吉田も「まあ、大女将のお加減もよくないようですし、細かいところまで行き届かないのもしかたがないでしょう」と言葉を添える。

——「大女将の代わりを務める環にとっては、一番言われたくない言葉でありました」とナレーションが静かに入る。

(個人的感想。雨の日に通路が滑りやすくなっていたなら、仲居個人の責任というより旅館全体の安全管理の問題だと思う。通路の整備を怠った経営側の落ち度は小さくない。それにしても、吉田さんが温厚な方でよかった。今のご時世だったらSNSで“旅館で転倒”なんてすぐ拡散されかねない。環の謝罪には誇りと責任感が滲んでいたけれど、内心では相当堪えていたはずだ。)

時江の叱責と、夏美と佳奈の絆

敷物を敷かなかったことでお客様にケガをさせてしまった夏美(比嘉愛未)は、仲居頭・時江(あき竹城)に厳しく責められていた。

「本当に申し訳ありません」と必死に頭を下げる夏美に、時江は鋭い声で言い放つ。

「仲居の仕事、甘く見てんでねえの?え!?」

夏美は、「そんなことありません。本当に、一日でも早く仲居の仕事を覚えようと……」と答えるが、

「じゃあ、どうして、そういう風になったの?」と原因を問われても言葉が出ない。

部屋の外では、他の仲居たちが様子を伺っていた。そこへ買い物帰りの佳奈(川村ゆきえ)が明るく「ただいまー」と帰ってくる。

「どうかしたの?」と尋ねる佳奈に、康子が「あの子、やらがしたよ」と小声で告げる。則子が「敷物出し忘れて、お客様が転んだんだって」と説明すると、佳奈は「あ……」と表情を曇らせ、自分が夏美に“雨の日の準備”を伝えきれなかったことを思い出す。

時江の叱責が続く中、環が割って入る。

「もうそれくらいで。済んでしまったことはしかたありません」

その一言で場の空気が変わる。環は夏美に向かって「夏美さん、これから気をつけてください」と穏やかに告げ、叱責を止めさせた。続けて清美にも視線を向け、「加賀美屋では、お出迎えからお見送りまで担当の仲居が受け持つことになっています。夏美さんだけの責任ではありません。あなたにも責任があります」と静かに諭す。

その後、時江は「夏美さん、すぐ敷物を敷いてきなさい」と命じ、夏美は雨の中、ずぶ濡れになりながら一人で敷物を敷き始める。

すると、佳奈が駆けつけてきて「ごめん。私が教えるの忘れたばっかりに。女将さんたちにそう言えばよかったのに」と声をかける。

「雨が降れば、石は滑りやすくなる。常識ですよね?そんなことにも気づけなかった私の責任です」と夏美。

その健気な言葉に佳奈は胸を打たれ、二人は微笑み合いながら、一緒に敷物を並べていくのだった。

(個人的感想。夏美と佳奈の友情は本当に尊い。佳奈が教え忘れたことを“自分のせい”と一人で背負い、言い訳もせずに叱責に耐えた夏美。その強さと誠実さは見習いたくなるほどだ。ただ、あの時、佳奈が説明を途中で止めた後に「あの時、何を言おうとしたんですか?」と聞けていれば、この事故は防げたかもしれない。とはいえ、失敗は成長の糧でもある。彼女のような鋼のメンタルを持つ人間でも、何もかも抱え込めばいつか心が壊れてしまう。だからこそ、佳奈の存在は夏美にとって“救い”であり、今後の修業を支える支柱になるのだろう。)

環の胸に残る痛みと、吉田からの手紙

軽い腰の打撲で済んだ吉田の件に、久則(鈴木正幸)と伸一(東幹久)は胸をなでおろしていた。

「救急車を呼ぶようなことになったら、うちの旅館の信用にも関わってくるしね」と伸一。

久則も「のんびりしに来てるのにケガでもしたら台無しだ」と同意する。

しかし、二人の安堵とは裏腹に、環(宮本信子)は一人、沈んだ表情を浮かべていた。

「なした?」と心配そうに声をかける久則。

伸一が「また風水のことでも考えてるんじゃないの?」と茶化すが、環は静かに「そんなんじゃないの」とだけ答え、部屋を出ていく。

環は棚からお客様の手紙を取り出し、一通の手紙を探し当てる。

そこには「毎年妻と二人で、この花を見に、岩手に行くことが何よりの楽しみです。 吉田」と丁寧な字で綴られていた。

その手紙を手に、環はしばし黙り込み、静かに頷いた。

おそらく、吉田が毎年この旅館を訪れる“理由”を思い出していたのだろう。

(個人的感想。吉田さんの手紙に書かれた「毎年妻と二人で」という言葉が胸を打つ。今回の旅には奥様の姿がない──亡くなられたのか、あるいは病気で外出できないのか。その事情を思うと、環が浮かない表情を見せていた理由も分かる気がする。毎年花を見に来るのを楽しみにしていた吉田さんに、旅の初日にケガをさせてしまった。環にとって、それは“おもてなしの失敗”ではなく、“心の傷”として残ったのだろう。女将としての誇りと、人としての優しさ。その両方を背負う環の姿に、重みを感じた。)

吉田の言葉と、“咲くための我慢”

吉田の部屋を訪れ、改めて深く頭を下げる夏美。

「このたびは、本当に申し訳ございませんでした」と誠心誠意謝罪する夏美に、吉田は穏やかに微笑んで言う。

「気にしなくていい。女将にもそう言ってあるよ。」

それでも夏美は、「私にできることは、何なりとお申し付けください」と真摯に申し出る。

そんな夏美の姿に、吉田はふと気づく。

「新顔だね?」

「はい。先日から仲居として働かせていただいております」と夏美が答えると、吉田はゆっくりとうなずき、柔らかく言葉を続けた。

「花は好きかね?」

吉田は穏やかに語り出す。

「この岩手の八幡平にはね、よそではなかなか見られない高山植物がたくさんあるんだ。今の季節だと、ハクサンチドリが咲いている。

ふたつきの間、花を咲かせるために、残りの一年をじっと我慢するんだ。……君も、がんばんなさい。」

優しくも力強い言葉に、夏美は「はい」と笑顔で答え、深々と頭を下げた。

(個人的感想。吉田さん、ただの宿泊客かと思いきや、まるで人生の達人のような深い言葉を残してくれた。ハクサンチドリのたとえが本当に美しい。短い花の季節を迎えるために、長い時間を耐えて生きる──それはまさに今の夏美そのもの。

皮肉なのは、旅館の“上司”ではなく“お客様”のほうが、夏美に寄り添い、励ましてくれること。職場に優しさがないぶん、外からの温かさが沁みる。夏美がこの言葉を糧に、少しでも強く、優しく成長していけますように。)

仲間外れと、夏美の優しさ

板場では今日も怒号が飛び交い、忙しさの中に張り詰めた空気が漂っていた。

仲居たちは相変わらず夏美を仲間外れにし、仕事を任せることもなく、頼るのはいつも佳奈ばかり。

どれだけ頑張っても輪の中に入れない──夏美の孤独は深まるばかりだった。

ロッカールームに戻ると、清美が今夜は旅館に泊まると話していた。

「本当なら早番で帰れるのに、担当のお客さんが、誰かさんのせいでけがしたから」と、同僚が嫌味を言う。

その“誰かさん”とは、言うまでもなく夏美のことだった。

「今日は、本当に申し訳ありませんでした。私のせいで、清美さんにまで迷惑をかけてしまって」と頭を下げる夏美に、清美は「もういいわ」と短く答える。

その時、清美の携帯電話が鳴った。母親からの連絡で、小学生の娘が高熱を出しているという。

「だったら、すぐに帰ってあげてください!」と夏美が思わず声を上げる。

「そんなこと、できるわけないでしょ。担当のお客様がけがしてるのに。呼ばれたら、すぐに行けるようにここにいないと」と清美は言うが、夏美は迷わず言った。

「私が代わりますから。娘さんが心細く思ってるはずです。早く帰ってあげてください。」

その真っ直ぐな言葉に清美も心を動かされ、夏美の申し出を受け入れる。

夏美は雨の日の失敗を自分の責任と受け止めながらも、他人を気遣う優しさを決して失わなかった。

(個人的感想。仲間外し──これは典型的な「パワハラの6類型」の一つ、“人間関係からの切り離し”にあたるだろう。この朝ドラを、企業のハラスメント研修で流すべき教材にしたらいいんじゃないかとも思えてしまう。

しかも、担当のお客様から呼ばれたらすぐに行けるように“旅館に泊まり込み”ってのは、理論上は担当客が泊ってる日は担当している仲居さんはいつでも対応できるように泊まって待機してないといけないってことになる?それとも、今回はケガをさせてしまったから特別な事情?担当制の宿泊接客の厳しさは理解できるけど、これでは従業員が持たないかもしれない。

そんな環境の中で、夏美だけが“人を思いやる心”を保ち続けている──それがどれだけ尊く、どれだけ難しいことか。彼女の優しさは、加賀美屋の空気を変える最初の小さな光かもしれない。)

一夜の“おもてなし”と、夏美の信念

夜更けの廊下。吉田の客室の前で、環は静かに座っていた。腰を打った吉田がトイレに立ち上がろうとする気配を察すると、すかさず駆け寄って支える。その一連の動きを、廊下の影から見つめていたのは夏美だった。

環は夏美に気づき、少し驚いた表情を見せる。「夕食の際に伺ったとき、立ったり座ったりする時に痛むご様子だったの。夜中のトイレに起きられるのもご不便だろうと思ってね。おけがをさせたのはこちらのせい。精いっぱい誠意を尽くさないと。」

静かにそう言って再び客室の前に腰を下ろす環。夏美が「清美さんに無理を言って代わってもらいました。また、私の勝手にしたことです」と説明すると、環は「じゃあ、あなた、もうお帰りなさい」と言い放ち、再び吉田の部屋の方を向く。

それでも夏美は引き下がらない。「私にもおつきあいさせてください。お客様にけがをさせたのは私です。責任は私にあります。」

環は「好きにしなさい」とだけ答える。「はい、そうします」と夏美。二人は並んで廊下に座った。

ナレーションが入る——「自分の責任だと分かっているだけに、こうだと思ったら信念を曲げられなかったのであります。」

しばらくして、夏美の足がしびれ、やがて居眠りを始める。環の肩にもたれかかる夏美。

「もっとも夏美は、まだまだ未熟でありまして……」ナレーションが優しく締めくくる中、「あんや、まんず……」という方言の響きとともに、夜は静かに更けていった。

(個人的感想。これは“おもてなし”を超えた“責任の形”のように見えた。ケガをさせたお客様のために、廊下で一晩中待機するというのは、今の時代から見れば過剰なサービスかもしれない。自分だったら逆に落ち着かないし、気を遣って眠れなくなると思う。

けれど、環の「誠意を尽くす」という姿勢は、この旅館が180年も信頼を積み上げてきた理由でもあるのだろう。そして、その“誠意の在り方”を、夏美はしっかりと見て、感じ取った。

時代とはそぐわないかもしれないが、おもてなしとは、マニュアルでできることではなく、人の心を尽くすこと──そう教えてくれたシーンでもあった。)

『どんど晴れ』感想まとめはこちら

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