2025年10月6日放送 第151回
ざっくりあらすじ
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行商デビュー。食堂の営業が難しくなったチョッちゃん(古村比呂)は、山のものを海に、海のものを山に運ぶ「行商」を始める決意をする。よね(根岸明美)の助言を受け、リンゴを八戸の漁港に持っていき魚と交換。商才を発揮しながらも、体力的には限界に達していた。
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母としての背中。疲れ果てても「大丈夫」と笑顔を見せるチョッちゃん。その姿に、富子(佐藤オリエ)は手伝いたいと申し出るが、チョッちゃんは優しく断り、一人で家族を支えようとする覚悟をにじませる。
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加津子との時間。翌日、娘の加津子(藤重麻奈美)を連れて行商に出発。砂浜で休む二人は、海を見ながら要(世良公則)について語り合い、「ユーモレスク」をハミングする。
――中国はこの海の向こうではない。けれど、その言葉の裏に、「遠い家族への祈り」が滲んでいた。 -
商いの現実。行商仲間の縄張りに誤って踏み込み、よねから注意を受けるチョッちゃん。誤解だと分かっても、自らを責める律儀な姿勢は彼女らしい。「商いは勝ち負けだ」と言うよねと、「みんなと仲良くやりたい」と言うチョッちゃん。その価値観の違いが、戦後の“生きるリアル”を描き出していた。
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東京行きを決意。「東京では食べ物がなんでも高く売れる」という噂を聞き、チョッちゃんは東京行商を決意。泰輔(前田吟)も同行を申し出る。昭和21年6月、チョッちゃんは再び東京へ――。
今日のグッと来たセリフ&場面
# | セリフ/場面 | ワンポイント |
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1 | チョッちゃん「私は明日から行商を始めるわ」 | 苦境の中でも新しい道を見つける決意。彼女の行動力はやっぱりすごい。 |
2 | 富子「私も行商、やってみようかね?」 | 心配と優しさが入り混じる富子の母性が滲んだ瞬間。 |
3 | よね「商いっちゅうのは、そったらもんだ」 | 生き抜くための強さを持つよねの一言。戦後の逞しい女性像を象徴。 |
4 | 加津子「中国って、この海の向こう?」 | 純粋な子どもの問いが、戦争の距離を一気に近づけた。 |
5 | チョッちゃん「東京の様子、見てみたいの」 | ただの好奇心じゃない。“希望の残り火”を確かめに行く旅の始まり。 |
私が感じたポイント
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生きるための再出発。食堂を閉めても落ち込まず、次の道を自分で探すチョッちゃんの姿に、戦後を生きた女性たちのたくましさを見た。誰かに頼るのではなく、「自分が動けば道は開ける」と信じるその姿勢は、今を生きる私たちにも響く。
- 加津子のひと言がつなぐ物語。「海のものと山のものなんて、杉山学園のお弁当のおかずみたい」――以前のお弁当指導のエピソードが、最終週の行商につながるとは驚き。長い物語が静かに円を描いていく瞬間だった。
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富子とみさの“優しさの違い”。富子は心配して動きたいタイプ、みさは危険を止めるタイプ。どちらも正しいけれど、チョッちゃんが動くときは、必ず二人のバランスが必要なんだと改めて感じた。
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戦地の父と娘の対話。砂浜の場面は静かでありながら胸を打った。海の向こうに父がいるという幻想と、現実の距離。その間を繋ぐ「ユーモレスク」の旋律が、二人の心を優しく包んでいた。
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商売の厳しさと人情。よねが「人より売れた方が勝ち」と言う現実的な言葉をかけた一方で、チョッちゃんは「みんなと仲良くやりたい」と応じる。この対比が、彼女の“優しすぎる商人像”を際立たせた。
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再び東京へ――。チョッちゃんが行商という形で東京へ向かう展開は、戦争で失われたものを取り戻すための“第二の旅”の始まり。今度は生きるために、そして希望を確かめるために。
時代背景メモ
昭和21年の「行商」と戦後経済のリアル
終戦後の日本では、食料不足と流通の混乱により、物々交換や行商が一般的な生活手段になっていたようだ。特に女性が行商に立ち上がるケースが増え、「山の物を海へ」「海の物を山へ」という形で地域経済が支えられていた。
それは、チョッちゃんたちが「生きるために働く」姿を象徴するものであり、戦後復興の原点でもあった。やがて経済が安定し、物流インフラが整備されるにつれて、行商の役割は徐々に薄れていく。
まとめ
第151回は、チョッちゃんの新たな挑戦「行商編」が本格的に始まった回だった。
食堂を閉めても、立ち止まらずに次の一歩を踏み出す。その姿は、戦後の混乱を生き抜く女性たちの象徴そのものだ。リンゴを魚やスルメに――。
小さな商いの中に、「生きる力」と「希望の連鎖」が描かれていた。
よねとのやり取りから垣間見える商売の厳しさも、チョッちゃんにとっては“人とのつながりを学ぶ場”だったのだろう。そして、物語の終盤に見せた“東京行き”の決意。
それは単なる行商ではなく、「失われたものを探しに行く旅」でもある。
夫・要の消息を確かめたいという思いと、戦後の東京をこの目で見たいという強い好奇心。
この二つが交錯することで、チョッちゃんの心には再び「生きる炎」が灯った。
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