2025年9月19日放送 第137回
ざっくりあらすじ
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小屋の改修。 蝶子(古村比呂)は加津子(藤重麻奈美)と俊継(服部賢悟)、喜作(伊奈かっぺい)、良平(中野慎)と共にリンゴ小屋を改修。玄関も備わり仮住まいが完成する。
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母屋との距離感。 夕食は母屋でと思う喜作に対し、蝶子は「明日からは自分たちで」と線を引く。厚意と自立のはざまで揺れるやりとり。
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キャンプの比喩。 蝶子と子供たちはロウソクを囲み、みさ(由紀さおり)に“キャンプ”を説明。小屋暮らしを楽しみに変えようとする工夫が見える。
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荷物と手紙。 先に送ってしまった荷物を嘉市(レオナルド熊)に転送してもらうよう手紙を書く蝶子。
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組合での採用。 喜作に紹介され、諏訪ノ平産業組合を訪問。三上組合長(金井大)が休職中の人の代わりにと、臨時雇いとして採用が決まる。
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親戚・昔馴染からの誘い。 三代治(山本亘)、嘉市から「滝川に来い」と手紙が届くが、蝶子は青森に留まる決断を固める。
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新しい一歩。 翌朝、蝶子は誰よりも早く出社。「初めての仕事の第一日目であります」とナレーションが入り幕を閉じる。
今日のグッと来たセリフ&場面
# | セリフ/場面 | ワンポイント |
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1 | 蝶子「靴を脱いでどうぞ」 | 小屋を“我が家”にする瞬間。 |
2 | 喜作「晩ごはんは母屋でと思ってたんだが…」 | 厚意と自立の微妙な駆け引き。 |
3 | 蝶子「今日からは、キャンプみたいなもんなのよ」 | 苦境を遊びに変える柔らかさ。 |
4 | 蝶子「お父さんだって、ちゃーんと見てるんだから」 | 写真に託す“励まし”の言葉。 |
5 | みさ「雨の日はどうするんさ?」 | のんびり顔に光る現実感。 |
6 | ナレ「何しろ、チョッちゃんは、苦を楽にするのが上手いんです」 | 今日の十五分を象徴するフレーズ。 |
7 | 喜作&三上「女学校出てるのか!」 | 思わぬ学歴評価で道が開ける。 |
8 | 常子(栗田ひとみ)の鋭い視線 | 新しい職場に走る緊張感。 |
私が感じたポイント
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自立と厚意の境界線。 喜作の厚意を断る蝶子の「明日からはこっちでやります」。もてなしたい気持ちを押しとどめるのは気まずさもあるが、疎開生活の長さを考えれば必要な線引き。自立と依存のバランスをどうとるか、戦時下の暮らしの難しさがにじんだ。
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“キャンプ”という比喩の力。 校庭や海岸の思い出を持ち出して、子供たちの小屋暮らしを遊びに変換する。母は重くならないよう努め、子は工夫して受け止める。戦時下でありながら、星空を見上げて「キャンプ」と笑える心が救いになっていた。
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要の不在を埋める家族写真。 小屋の棚に置かれた家族写真は、単なる飾りではなく暮らしをつなぐ心の支え。蝶子の「お父さんが見てる」という言葉は、物理的には遠い父を精神的な拠り所に変えていた。
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みさのユーモアと現実感。 「雨の日はどうするんさ?」と心配するみさ。のんびり屋に見えて、現実の暮らしのリスクにすぐ気づく。場を和ませつつ冷静さも失わない姿が、今回も際立っていた。
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みさの思惑が外れる。 みさは「いざとなったら着物を売ればいい」と考えていたが、田舎では着物の需要は乏しく、米との交換すら断られてしまう。都会の常識が地方では通じず、思惑が外れた姿に戦時下の地域差が浮き彫りになった。
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嘉市と三代治からの手紙の重み。 どちらの厚意も痛いほど伝わるからこそ、断るのは苦しい。ありがたさと申し訳なさの板挟みでため息をつく蝶子とみさの姿は、戦時の人間関係の複雑さをよく表していた。
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新しい職場での緊張。 組合長の一言で採用が決まる高揚と、常子の視線に感じる緊張感。机を撫で回す蝶子の無邪気さと、周囲の冷ややかな視線。その対比が新生活の不安と希望を象徴していた。
用語メモ
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薄べり:イグサで織った畳表の一種。畳より薄く、床に直接敷いたり畳の上に重ねたりして使う敷物。劇中では小屋の床材として敷かれた。
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供出:戦時下に国から命じられ、米や金属類などを政府に差し出すこと。鍋釜も例外ではなく、各家庭に古い道具しか残らなかった。
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郭(くるわ):城や町で特定の区域を囲った場所を指す。特に遊郭を意味する場合も多い。劇中では組合長が「郭の近くか」と尋ねて気まずい空気になった。
住所メモ(手紙の宛先から)
画面を一時停止して確認したけど、もしかしたら誤読してるかもしれません。
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石澤嘉市の住所:「北海道空知郡瀧川町幌呂舎」と記されているが、調べても出てこなかった。実在の地名かどうかは不明。幌岡とか幌倉は空知にはあったけど、確証は持てず、チョッちゃんの実家から近いのかも不明。戦時中の地名や字名が再編され、現在の地図には残っていない?架空の住所?。
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邦子の住所:「北海道空知郡瀧川町字本町一丁目」。現在の本町一丁目にあたるとすれば滝川駅近くで、生活に便利な地域。チョッちゃんの実家の一の坂とは少し距離があるが、行き来できる範囲。
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神谷先生の住所:「北海道札幌市南三十条西五丁目四番地」。現在の札幌市南30条は藻岩山に近い地域だが「西5丁目」は存在しない。架空の設定か、住居表示前の旧町名がベースの可能性。
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坂上清郎の住所:「東京都世田谷区羽根木町一六三一」。現在も「羽根木」の地名は残っており、小田急線や京王井の頭線の駅に近い住宅地。坂上さんは疎開先がなかったのか、あえて東京に留まったのか。
まとめ——“苦を楽に”変える力
リンゴ小屋での新生活は不自由さに満ちているが、キャンプの比喩や家族写真の支えで希望に変わっていく。今日の十五分は、蝶子が持つ“苦を楽にする力”が光った時間だった。