2025年9月17日放送 第135回
ざっくりあらすじ
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強制疎開の決定。 蝶子(古村比呂)は滝川へ、泰輔(前田吟)・富子(佐藤オリエ)は茨城へ。音吉(片岡鶴太郎)・はる(曽川留三子)は信州へと散り散りになる。
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みさ(由紀さおり)の進言。 かつての北山家ではなく石沢嘉市(レオナルド熊)の牧場を選ぶよう蝶子に勧める。思い出が多すぎて辛いから、と。
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泰輔の未練。 東京に残りたいと粘るが、富子の説得で茨城行きに決着。
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音吉の餞別。 加津子(藤重麻奈美)にのこぎりと鉋を渡し「やれるよ」と背中を押す。
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着物の受け渡し。 みさが富子に着物を分け「いざという時に」と促す。富子は涙ぐみながら受け取る。
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別れの挨拶。 17年の東京を振り返る言葉が飛び交い、それぞれの感謝が交錯する。
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要への立札。 「瀧川の石澤牧場にいます」と看板を打ち付け、夜行列車で北へ向かう。
今日のグッと来たセリフ&場面
# | セリフ/場面 | ワンポイント |
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1 | みさ「三代治さんのとこは、思い出がありすぎるもね」 | 記憶が多い場所ほど、居づらくなる。 |
2 | 富子「しかたないだろ」 | 理屈よりも現実が先に来る瞬間。 |
3 | 音吉「やれるよ」(のこぎりと鉋を渡して) | 技術と自信を子に託す。 |
4 | みさ「いざっちゅう時、お金になるんでない?」 | 着物に込めた実用の知恵。 |
5 | 泰輔「楽しかったよな」 | 感謝を隠しきれない、不器用な一言。 |
6 | 富子「まさか、こんなことでバラバラになるなんて…」 | 戦争が壊すのは家族の配置。 |
7 | 看板「瀧川の石澤牧場にいます」 | 要への伝言が、残された家の看板に。 |
私が感じたポイント
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みさの冷静さ。 東京に来た当初は不安ばかりだったみさが、今回は誰よりも落ち着いていた。「思い出が多い家は避けよう」「着物はお金になる」——悲しみを直視しながらも前へ進む助言は、単なる“のんびり”ではなく、生き延びるための知恵に変わっていた。視聴者はここで、みさが“ただの癒やし”ではなく、家族を導く柱の一人になっていることを知る。
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音吉の餞別=道具と記憶。 のこぎりと鉋を手渡し「やれるよ」と言った音吉。かつて加津子が学校に大工道具を持ち込み、釘を打ちまくった場面を思い出す視聴者も多かったはず。道具は単なるモノではなく、記憶の継承でもある。戦争は人をバラバラにするが、道具に宿った時間は加津子の手に残った。
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俊継のおもちゃと立札。 荷造りの場面で、俊継が木製の戦車を持ち出そうとする姿が印象的だった。大きくて持ち運べないそれは、音吉が作ってくれたものだと視聴者は察する。他の木製のおもちゃも、きっと音吉の手作りだろう。そして最後に家に掲げられた立札もまた、音吉の手によるものに違いない。木の道具や玩具、看板にまで、音吉の“手”が家族の未来を支えていたのだと思う。
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別れの夜の対話。 富子が「こんなことでバラバラになるなんて」と笑い飛ばし、泰輔が「楽しかったよな」と不器用に感謝を告げる。17年の暮らしが、一瞬で総括される。それは戦争という外部の暴力が、日常を強制的に切断してしまう光景だった。
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立札に託された希望。 「瀧川の石澤牧場にいます」という立札は、要が戻ってきたときのための唯一の手がかり。通信網が絶たれても、木の看板が家族の座標を示す。その前に立つ家族の姿に、戦時の不確かさと、それでもつなごうとする意思が重なった。
まとめ——“最後かもしれない夜”に残したもの
のこぎりと鉋、着物と立札——それぞれが未来を生き抜くための記憶と知恵だった。戦争は人をばらばらにし、居場所を奪う。けれど、別れの夜に交わした言葉や手渡した品々は、確かに次へとつながる。今日の十五分は、“別れ”を強いられた人々が、未来の再会を信じて残した印を描いていた。