朝ドラ再放送「チョッちゃん」第133回感想 食卓の苛立ちと親子の半分こ——台所から響く生存の知恵

朝ドラ

2025年9月15日放送 第133回


ざっくりあらすじ

  • 米櫃ゼロ。 大空襲後の東京、台所は逼迫。蝶子(古村比呂)はお向かいのはる(曾川留三子)に頭を下げ、一合だけ米を分けてもらう。

  • 芋でかさ増し。 俊継(服部賢悟)が食卓で「また、これだ」と漏らし、蝶子の堪忍袋が切れる。みさ(由紀さおり)が間に入り、火を弱める。

  • “子どもだけ疎開”の噂。 加津子(藤重麻奈美)が不安を口にすると、蝶子は「疎開するならみんな一緒」と家の方針を示す。

  • 包みのやり取り。 みさが滝川から持ってきたお金を差し出し、逡巡の末に“半分こ”で決着。買い出し資金が立つ。

  • 邦子(宮崎萬純)、滝川へ。無理しないで逃げるのよ」と言い残し、洗足の家は見送りに回る。

  • 千駄木の夜。 富子(佐藤オリエ)・泰輔(前田吟)・神谷先生(役所広司)・安乃(貝ますみ)らで情勢を共有。工場の被災、けが、本土決戦の噂——どこに身を置くかが議題の中心に。


今日のグッと来たセリフ&場面

# セリフ/場面 ワンポイント
1 蝶子「疎開するなら、みんな一緒よ 効率より結束。家の背骨が一本通る。
2 みさ「全部」→蝶子「半分もらっていいかい? 自尊心と現実の温度管理が“半分こ”。
3 邦子「いよいよってときは、無理しないで逃げるのよ 勇ましさより生存。別れの実務書。
4 俊継「また、これだ 子の正直と台所の疲労がぶつかる地点。
5 加津子「『欲しがりません、勝つまでは。』って言うのよ 標語が食卓に降りる瞬間の苦味
6 みさ「いやいや~、俊ちゃん、上手だね~ 音楽が家に作る一時避難所
7 神谷先生「軍人だから死ぬのが当然は好かん」 神谷先生の揺るがぬ信念。

私が感じたポイント

  • 叱り方の矢印。 不在の父を引き合いに出して叱るやり方は、子には確かに響く。けれど要が本当に同じことを思ったかは分からない。そのもどかしさが少し残った。正直言うと、同じものを出し続けたら、要も「また、これだ」って言うんじゃないかと思ってしまった…

  • “半分こ”という政治。 受け取りすぎない・返しすぎない。体面と実需の折り合いが家族の政治として機能した。お金の分配は、そのまま心の分配でもある。

  • 芋の食卓のレッスン。 目的は“味”より満腹。子の正直さと大人の現実が衝突する場が、結局いちばんの価値観の教室になる。

  • 疎開=地図ではなく関係の再配置。 「子どもだけ」を拒み「一緒」を選ぶ決断は、安全より孤立の回避を優先するリアル。生き延びても壊れるものはある。壊さないために何を抱えて動くか。

  • 見送りの言葉の設計。 邦子の「無理しないで逃げる」は祈りの行動翻訳。情緒の代わりに手順を置く強さに救われた。

  • 千駄木の“会議”は避難所。 包帯、爆風、工場の崩壊——重い情報も、同じ卓で共有すれば人心は平常へ少し戻る。会議は生活の免震装置。

  • 滝川の恩が今を押す。 包みの金は、移動で生まれた縁の二次効果。関係資本が現金以上に家を温める。

  • みさの“のんびり”の火加減。 癒やしにも罠にもなる気質。今日は“半分こ”でちょうど良い湯加減に落としたのが良かった。


歴史の窓(さっと補助)

  • 標語の侵入:「欲しがりません、勝つまでは。」が家庭内へ。標語は戦時の共通言語だが、食卓では実際の空腹と正面衝突する


まとめ——“無事”を選び直す

米を分けてもらい、お金を半分こし、言葉を現実に寄せる。勇ましさより無事、効率より一緒。今日の十五分は、家族が生き延びるために言葉の位置を置き直す時間だった。次に揺れるのは、家の場所か、家の形か。どちらにせよ、この家は離れず動くはずだ。

『チョッちゃん』感想まとめはこちら

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