2025年9月13日放送 第132回
ざっくりあらすじ
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12月10日、みさ(由紀さおり)上京。 要(世良公則)の部屋には畳が敷かれ“みさの部屋”に。畳は向かいの音吉(片岡鶴太郎)の段取り。みさの「いいんかい? 要さんが帰ってきた時」に、蝶子(古村比呂)は「その時はその時」、泰輔(前田吟)は「千駄木に来ればいい」と受け止める。
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“ばあちゃん”命名会議。 「北海道のばあちゃん? 洗足のばあちゃん?」の迷いを、蝶子が「ただのばあちゃんでいい」で着地。
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戦時の暮らしレクチャー。 富子(佐藤オリエ)と邦子(宮崎萬純)が空襲の心構えを伝えるも、みさは「クウシュウっちゅうと?」「飛行機、見れるんかい?」とピンとこない。蝶子が防空頭巾を持ち出すが、かぶり方もおぼつかない。
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夜の布団で。 「お母さん、来てしまったわ」と漏らすみさに、蝶子「東京は嫌かい?」——「…なんも」。滝川の見送りには嘉市(レオナルド熊)・品子(大滝久美)・たみ(立原ちえみ)、さらに町長や警察署長、お産の時に取り上げられた本人まで来たと聞き、蝶子は胸を熱くする。
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道ならしの一日。 加津子(藤重麻奈美)と俊継(服部賢悟)が掲示板と電柱を目印に近所を教え、富子は駅、安乃(貝ますみ)は教会への道を案内。張り切りすぎて、みさはダウン。
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昭和20年3月。 戦況悪化、疎開の二文字が現実味を帯びる。蝶子は「先月16日は関東に一日1000機だって」と顔を曇らせるが、みさは「あん時のキラキラ、きれいだったねえ」。
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空襲警報。 みさが見当たらず、蝶子と音吉(片岡鶴太郎)が探すと、空から落ちる銀色の紙に見入っているみさ。「このキラキラ光るもん、なんだべ?」——二人は抱えるように防空壕へ。
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締めのナレーション。 3月、米軍機が幾度も飛来し、東京・江東地区は大空襲。蝶子たちの暮らしも次第に緊迫していく——で幕。
今日のグッと来たセリフ&場面
# | セリフ/場面 | ワンポイント |
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1 | みさ「いいんかい? 要さんが帰ってきた時」→蝶子「その時はその時」 | “いまを決める”しかない現実と、にじむ不安。 |
2 | 加津子&俊継の道案内「掲示板と電柱ね!」 | 子どもが祖母のナビになる微笑ましさ。 |
3 | みさ「クウシュウっちゅうと?」「飛行機、見れるんかい?」 | 危機の言葉が生活語に変わるまでの距離。 |
4 | 夜の一言「お母さん、来てしまったわ」→蝶子「東京は嫌かい?」→「…なんも」 | 滝川を捨ててしまった後悔とも取れる“移動の重み”の吐露。 |
5 | 蝶子「先月の16日は1000機」→みさ「きれいだったねえ」 | 数字と感想の危ういズレにヒヤッ。 |
6 | 銀紙に見入るみさ「このキラキラ光るもん、なんだべ?」 | 美しさと死の近さが同居する瞬間。 |
私が感じたポイント
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「その時はその時」の違和感。 要が帰ってくる未来を軽んじているわけではないのは分かる。けれど、言い方ひとつで“不在が前提”にも聞こえる。戦時の言葉の選び方の難しさを改めて思った。
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“ただのばあちゃん”の力。 北海道でも洗足でもなく「ただの」。家系や地名から自由にする名づけは、子どもにとって安心の合図だ。呼び名ひとつで、家族の空気が柔らかくなる。
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みさの“のんびり”は、処方箋でありリスクでもある。 「心持ちだけはのんびり」は正しい。が、防空頭巾の昼寝や「飛行機見れる?」は、のんびりが防災の穴になる怖さも映した。笑いとヒヤリの紙一重。
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見送りの人数が語る“北山医院の総勘定”。 町長、警察署長、「取り上げてもらった」本人たち——職能としての善意がどれだけ町に蓄積されていたかが数字でなく顔の数で分かる。滝川での時間は、ちゃんと東京まで届いている。
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道案内は“共同体の再編”。 子ども(掲示板・電柱)→富子(駅)→安乃(教会)。役割で街を分担して教えるリレーが、みさの生活圏に輪郭を与えた。倒れるまで連れ回した反省ごと、家のチームはアップデート中。
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美しいものは、時に罠。 銀紙(※劇中の“キラキラ”)に目を奪われるみさの背中が忘れられない。日常の好奇心と死の装置が隣り合う不条理を突きつけられた。
- みさの上京、急がなくてもよかったのでは…と考えかけて、足を止めました。滝川での独居を試す時間があれば、北山医院の承継は揺らぎ、地域医療への影響も出たはず。戦時の“のんびり”は魅力でもありリスクでもある。家族の安全と土地に残す役目、その両立に正解はない——だからこそ私は今も逡巡しています。
まとめ——“のんびり”と“警戒”の二刀流で
畳の匂い、孫の道案内、夜の小声——暮らしの手ざわりが戻ってきた一方で、空には銀紙が舞い、防空壕へ走る日々が始まった。今日の十五分が示したのは、心はのんびり/体はいつでも動けるようにという身構え。次回、洗足の家は疎開を含めた次の配置換えにどう踏み出すのか。みさの“のんびり”を守るために、どんな緊張を家に置くのか——そこが見どころだ。