朝ドラ再放送「チョッちゃん」第125回感想 品川、向かいホームの合図——“行く人”の背を押す、残る人の手

朝ドラ

2025年9月5日放送 第125回

ざっくりあらすじ

  • 出征当日。 要(世良公則)は家族と近しい面々に見送られ、「出征兵士を送る歌」と「万歳」の渦の中、一人で家を発つ。玄関先で区切りをつけ、「ここでいいよ、駅まで来ることはない」と静かに去っていく。

  • 千駄木の夜。 蝶子(古村比呂)と加津子(藤重麻奈美)・俊継(服部賢悟)は泰輔(前田吟)宅に泊まる。眠れず泣く母を、加津子が「お母さん泣いたら、加津子も泣いちゃう」と抱きとめる。

  • 防火訓練。 音吉(片岡鶴太郎)は「緊張感がない!」と雷を落とす。怖さを見せるのは、守り抜くため。

  • “女子会”の針仕事。 蝶子・邦子(宮崎萬純)・安乃(貝ますみ)が着物を上着・もんぺ・帽子・足袋にリメイク。北海道弁がはじけ、はる(曽川留三子)まで混ざって笑い声に包まれる。音吉が「俺も?」と乗りかけて照れる一幕も。

  • 初面会。 軍服の要に会えた子どもたちは「お父さん、変な格好」と無邪気に突っ込む。要は“しー”の合図で笑いに変え、家の様子を確かめる。

  • 旅立ちの時刻。16日、3時に品川駅」と告げられた通り、当日一行は見送りへ。向かいホームで要の姿を見つける。扇子がひらめき、そしてバイオリンを弾く仕草——言葉の届かない距離を、家族だけの合図が埋めた。

  • 残る家の音。 帰宅後、蝶子は俊継にスパルタで“ファ”の反復。「そんな音出してたらお父さんに叱られるよ」と“要方式”をそのまま受け継いでいく。ナレーションは冷たく告げる——「要さんは既に、日本にいません」


今日のグッと来たセリフ&場面

# セリフ/場面 ワンポイント
1 要「行ってきます」→一人で背を向ける 家族の涙を置いていく覚悟
2 加津子「お母さん泣いたら、加津子も泣いちゃう 子が親を支える順番の反転
3 音吉「緊張感がない! 怒声の裏は守る責任の重さ
4 北海道弁で弾ける裁縫女子会/音吉「俺も?」 暗い時代に差し込む生活の明かり
5 子ども「変な恰好」→要“しー” 無邪気が恐怖をやわらげる
6 バイオリンのジェスチャー 声の届かない距離を、家族の符丁でつなぐ。
7 蝶子「違う、もう一度」と“ファ”の矯正 今日から母が音を守る人に。
8 ナレ「要さんは既に、日本にいません 一行で落とす現実の重み

私が感じたポイント

  • 向かいホームの“無言の演奏”。 バイオリンを弾くジェスチャーは、音の代わりに身体で残した音楽だった。騒然とした駅の雑音を押しのけて、家族だけが聴き取れるサイン。あの数秒に、要の「生きて帰る」誓いと「忘れないで」の祈りが重なって見えた。

  • 残る側の“暮らしを回す術”。 厳しい防火訓練も、わいわいの裁縫も、どれも日常を立ち上げ直す所作。笑い声は贅沢かもしれない。それでも、笑いを途切れさせないことが士気になる。

  • 子が親を支える瞬間の尊さ。 夜の千駄木で、加津子の「泣いたら、加津子も泣いちゃう」。あの小さな言葉が、蝶子の心の骨をもう一度まっすぐにした。

  • “要方式”の継承者は蝶子。 品川のジェスチャーを「教えて」の合図と受け取り、翌日には俊継へ音の基準を叩き込む。叱り方がそっくりなのは、愛の形が同じ根っこから出ているからだ。

  • 怒鳴る音吉=近所の盾。 あの怒号は怖い。でも“火”の前では、優しさより厳しさが命を守る。戦時下のご近所力は、優しく叱るでは足りない時がある。

  • 駅での“誤認→確信”の演出。 まず扇子で「似てる誰か」を見て、次にはっきり要を視認——揺らぎ→確信の二段階が、別れの実感を胸に刻む。


まとめ——離れても、同じ合図で生きていく

声が届かない距離に立たされた日でも、合図は届く。弓を引く仕草、家で繰り返す“ファ”の音——家族の符丁が、離れた場所を結び続ける。

要が担った音は、今日から蝶子と子どもたちの手に。行く人の背を押し、残る人の暮らしを動かすのは、こういう小さな合図の積み重ねだと教えられた。

あなたなら、向かいホームの人に、どんな“合図”を残しますか?

『チョッちゃん』感想まとめはこちら

タイトルとURLをコピーしました