朝ドラ再放送「チョッちゃん」第121回感想 病室のバイオリン——敗血症と“持っていかないで”の揺れ

朝ドラ

2025年9月1日放送 第121回


ざっくりあらすじ

  • 入院2日目の雅紀(相原千興)は、食欲も力も落ち、日に日に衰弱。泰輔(前田吟)や神谷(役所広司)も見舞いに来て、病室は張りつめた空気に。

  • 黒木医師(大門正明)が診察し、「敗血症」と説明。要(世良公則)が「治るのか」と問うも歯切れは悪く、「細菌性心内膜炎さえ起こさなければ…。もちろん全力を尽くします」とだけ告げる。

  • 病室に戻った蝶子(古村比呂)と要。泰輔・神谷に状況を伝えつつ、どうしてうちばかりという嘆きが漏れる。はる(曽川留三子)らご近所は食事や家のことを支えてくれている。

  • 千駄木の泰輔が滝川のみさ(由紀さおり)へ電話。その話を聞いた俊道(佐藤慶)は医学書を開き、敗血症の項を追いながら表情を固くする。「大事にならんきゃいいが…」。

  • 雅紀は「僕のバイオリン、持ってきて。そばに置いときたい」と要に頼む。要はうなずくが、蝶子は「今は持ってこないで」と制止。「お父さんの期待を一身に受けてるって、マーちゃん知ってるもの。今そばに置いたら、余計に心が痛む」と訴える。

  • 夕刻。看護婦・横山(吉田やすこ)が血圧を測ると60台まで急降下、不整も出て黒木医師が処置。「お母さんは外へ」。ちょうどバイオリンを抱えた要が駆け込み、動揺する蝶子の顔で場面が落ちる。


今日のグッと来たセリフ&場面

# セリフ/場面 ワンポイント
1 黒木医師「細菌性心内膜炎さえ起こさなければ…」「全力を尽くします 希望の濁点と、現場の矜持。
2 要「治るんですか?」→医師の沈黙 欲しいのはYes/No。でも答えは揺れる現実。
3 俊道、医学書を開く手が止まる 滝川で顔色が変わる“遠距離診療”。
4 雅紀「バイオリン、そばに置いときたい それは道具ではなく“お守り”。
5 蝶子「今は持ってこないで。今置いたら、余計に心が痛む 期待の重さから子を守る、母の盾。
6 黒木医師「お母さんは外へ」→扉が閉まる 親の不安と医療の線引き。

私が感じたポイント

  • 言えない医療、言わねばならない家族。 「治るのか」に即答できない医師の現実と、「今は持ってこないで」と言い切る蝶子の責任。曖昧さと断言が同じ病室に同居する緊張が、今日の温度でした。

  • “練習の理屈”の行方。 これまでの「休むと戻るのに三倍」の算術は、子の身体が赤信号になった瞬間に棚上げされる。ロジックよりも鼓動と血圧を優先する転換点。

  • バイオリン=祈り。 要にとっては“遺せるもの”、雅紀にとっては“近くにあってほしいもの”。同じ楽器でも、父の遺言と子の御守りという二重の意味が立ち上がりました。

  • 遠くの滝川も“戦線”に。 俊道が医学書を開くショットだけで、距離を越えた緊張が伝わる。電話一本で家族の体温が変わる時代の手触りが生々しい。

  • 俊道の体調、不穏の予感。 滝川で「体がだるい」「腹が張る」とこぼす俊道にヒヤッとしたのは私だけじゃないはず。俊道さんの体、どうか無事で…――と画面の前で手を合わせた。


まとめ——扉の外で手を握る

扉の内側は医療の領分、外側は家族の領分。答えの出ない言葉と、答えを出すしかない決断。その狭間で、持っていくか、持っていかないかの一本をめぐる心の綱引きが続く。今はただ、数字が上向き、再び“音”が病室に帰ってくることを祈りたい。

『チョッちゃん』感想まとめはこちら

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