2025年8月27日放送 第117回
ざっくりあらすじ
-
雅紀(相原千興)の毎日レッスンは継続。要(世良公則)は珍しく音色を褒める。
-
居間では蝶子(古村比呂)と安乃(貝ますみ)が裁縫。供出でミシンまで取り上げられないかと怯える。
-
邦子(宮崎萬純)が蒼い顔で来訪。夫・大川(丹波義隆)に召集令状が届いたと告げ、「要さんや神谷(役所広司)にも来るかも」と現実を突きつける。安乃は初めて、夫を「容さん」と呼び、覚悟を口にする。
-
そこへ看護婦のたま(もたいまさこ)。連平(春風亭小朝)と急ぎ連絡を取りたいと、蝶子に取り次ぎを依頼。
-
翌日の夕刻、連平が砂糖や紅茶、缶詰を抱えて来宅。盗んできたと冗談を飛ばして場を凍らせつつ、真相は営業停止で余った実家の在庫。
-
たまが連平を探す理由——従軍看護婦として南方へ行くことを伝えたいから。3年越しの金銭トラブルも含め、別れをどう切り出すか逡巡していた連平は、たまの危険を思い、急に落ち着かない。
-
その頃、千駄木では夢助(金原亭小駒)の出征を「万歳」で見送る。人がひとり、またひとりと町から消える。
-
空いた下宿に、神谷&安乃が間借りする話がまとまる(家賃・月20円)。
-
夜、要はぽつり。「俺にも、いつ召集令状が来るのかね?」——そして無言でバイオリンを取る。
今日のグッと来たセリフ&場面
# | セリフ/場面 | ワンポイント |
---|---|---|
1 | 要、雅紀を初めて素直に褒める | “鬼”の中の優しさが、戦時の硬さを一瞬緩める。 |
2 | 安乃、夫を初めて「容さん」呼び | 生活の絆が“先生/看病”から“夫婦”へ移行した合図。 |
3 | 邦子「うちだけは、なんて思わないで」 | 家庭の壁を越えて迫る戦争の距離感。 |
4 | たま「急いでいるって伝えて」 | 別れを前にしても段取りはブレない“現場の人”。 |
5 | 連平「たまちゃんと一緒になるくらいなら、戦地へ…」→蝶子が一喝 | 口の悪さが地雷を踏む。言葉の責任を映す場面。 |
6 | 「太田黒平七君、万歳」 | 夢助の本名は、太田黒平七だったのか。 |
7 | 神谷&安乃、月20円で下宿決定 | 蓄音機の買取が50円、家賃が20円。家賃は相当安い!? |
8 | 要「俺にもいつ、召集が」→無言のバイオリン | 祈りの代わりに弾く。音でしか置き場のない不安。 |
私が感じたポイント
-
“容さん”が生まれた日。 安乃の呼び方が“先生”から“容さん”へ——関係の名付けは、生活の重心の移動。徴用で工場に行く夫と、仕立てで支える妻。戦時の夫婦の形が静かに立ち上がった瞬間でした。
-
召集令状の“距離”が0になる。 邦子の一言が、観念だった戦争を玄関先の現実に変える。誰の家も“例外ではない”と突きつけられた。
-
たまの南方行き=ケアの人が前線へ。 口の悪さと段取り力、そして情の厚さ。そんな人がいちばん遠くへ行く。「居てくれる人」がいなくなる恐さを、連平の狼狽が代弁していました。
-
“いなくなって気づく”の心理。 連平の軽口は、別れを前にしてほどけた本音の裏返し。——この半歩のもどかしさが、人間的で好きです。
-
下宿=共同体の再編。 夢助が抜け、神谷&安乃が入る。人の出入りが続く戦時下で、空いた席を温め合う知恵が描かれました。月20円という家賃は、富子(佐藤オリエ)・泰輔(前田吟)の「余裕の分配」のかたちでもある。
-
要の不安の置き場所は“音”。 言葉で強がらず、ただ弾く。演奏会の場が奪われた男に残るのは練習という祈り。第116回の“休むと戻るのに3倍”のロジックが、今日は心の均衡のために鳴っていました。
用語メモ(さっとおさらい)
-
供出(きょうしゅつ):戦時下、金属・ゴム・繊維などの物資を国へ差し出す制度。家庭の鍋やミシンまで対象になることも。
-
召集令状(しょうしゅうれいじょう):兵役に就くために出頭を命じる公文書。俗に「赤紙」。届いたら原則拒否できない。
-
従軍看護婦:軍属として前線・後方で傷病者の看護に従事した看護職。危険と過酷さは兵士と地続き。
まとめ——“行く人・残る人”の段取り
南方へ向かう人、町から消える人、戸口で待つ人。戦争は家庭の段取りを毎日更新させる。そんな中でも、呼び方が変わり、住まいが決まり、音が鳴る——小さな“生活の継続”が、今日の希望でした。
次回、連平はたまに何を伝えられるのか。要の“鬼”は父としてどこまで行くのか。そして、誰がどの席を温める番になるのか。
あなたなら、誰かを見送る前夜に、どんな言葉と段取りを手渡しますか?