2025年8月22日放送 第113回
ざっくりあらすじ
-
昭和16年11月。邦子(宮崎萬純)は大川信吾(丹波義隆)と挙式。帰宅した蝶子(古村比呂)・要(世良公則)・神谷容(役所広司)は、文金高島田の話で盛り上がるも、結婚写真が無い事実に苦笑い。
-
見送りに出た安乃(貝ますみ)へ、神谷が不器用すぎる段取りで映画デートをお誘い。うれし涙の安乃、待ち合わせは“泉”跡地に決定。
-
千駄木では“くっつけ会議”が開催。令和目線ならやや強引だが、当時の“お節介力”が全開。連平は看護婦のたまからの猛アプローチに戦々恐々。これも令和目線ならストーカー行為になってしまうか。
-
その後、邦子&夫の大川が挨拶に来訪。数日を置いて、蝶子・邦子は神谷宅へ押しかけ、安乃との結婚をストレートに説得。「10年後の先生を想像して」と言葉で追い詰める二人に、神谷はついに首肯。
-
神谷は最後の筋を通しに頼介(杉本哲太)のもとへ。兄は「よろしくお願いします」と正式に快諾。
-
秋の夕暮れ、縁側でまどろむ蝶子と要。子どもたちが焼き芋の準備をする平和な時間の背後で、ナレーションは“思いもかけないこと”の到来をほのめかす。
今日のグッと来たセリフ&場面
# | セリフ/場面 | ワンポイント |
---|---|---|
1 | 神谷(役所広司)「式は挙げんでも、写真は残しときたいもね」 | 生活者の実感。次の会話へのトス。 |
2 | 玄関先での誘い:神谷「映画でも……行くかい?」→安乃(貝ますみ)の“うれし涙” | 39歳の初々しさと解放の涙。 |
3 | 蝶子(古村比呂)「10年後の先生、想像してみて」 | 未来を可視化して動かす“第68回方式”。 |
4 | 邦子(宮崎萬純)「そういうことを安乃ちゃんさえ承知なら」 | 本人の意思を軸にした決定打。 |
5 | 頼介(杉本哲太)「よろしくお願いします」 | 硬派な兄の最上級の受諾表明。空気がやわらぐ。 |
6 | 縁側の焼き芋タイム | 現代の忙しさと対照的な“余白”。不穏の前ぶれとして効く。 |
7 | 邦子のツッコミ「亀の甲より年の劫」 | ことわざ誤用を即リカバリー、会話のテンポが小気味よい。 |
8 | 音吉(片岡鶴太郎)夫妻の覗き見 | コミカルな近所力が、物語を温める。 |
私が感じたポイント
-
“したら”の照れと、言葉の押し出し。 玄関先での神谷(役所広司)の不器用な誘いは、安乃(貝ますみ)にとっての報い。そこから一気に縁談モードへ切り替える蝶子(古村比呂)&邦子(宮崎萬純)の“言葉で追い詰めて合意を引き出す”手さばきは、第68回で要(世良公則)を説得した時の既視感そのもの。言葉の力で未来を動かすのが、やっぱりこの主人公の真骨頂。
-
昭和の“お節介ネットワーク”。 令和目線だと強引に映る“くっつけ会議”も、当時は生活の共同体が婚姻も支えるという常識。人の人生に踏み込み合う距離感が、良くも悪くも共同体の温度でした。
-
年の差も生活力も“合意”で越える。 神谷の「年が離れている」「生活力が…」という逡巡は真っ当。でも最終的に鍵を回したのは、“安乃本人が承知しているか”。本人の意思で超えていく描き方が清々しい。
-
縁側の時間=現代の対義語。 秋の薄光、落ち葉、焼き芋。スマホも通知も無い世界の時間のゆとりに、猛烈に羨ましさを覚えた視聴者は多いはず。だからこそ、ナレーションの“不穏”がより冷たく響く。
-
役者の妙。 安乃の「嬉しいのに言葉にならない」涙、神谷の目線泳ぎ、頼介の一拍置いてからの受諾——表情の呼吸が物語を進めた回でした。
まとめ——“言葉”で未来は動く
プロポーズも写真も段取りも下手な大人たちが、最後は言葉で合意を作り、家族になろうと決めた一話。秋の縁側は静かでも、外の時代は荒れていく。その対比が胸に残る。
次は、縁談が“段取り”になるプロセス。そしてナレーションが示唆した“思いもかけないこと”とは何か。忙しい今の私たちこそ、縁側の一呼吸を取り戻したい——そう思わせる締めでした。
あなたなら、誰かを動かすとき——未来像をどう描いて手渡しますか?