2025年8月20日放送 第111回
ざっくりあらすじ
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加津子(椎野愛)は学校復帰。黒木医師(大門正明)のフォロー外来で問題なし。蝶子(古村比呂)は29日の〈泉〉の締め会&退院祝いに医師と看護師・たま(もたいまさこ)を招待。
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洗足の家に邦子(宮崎萬純)。「神谷(役所広司)先生に会いたい」——安乃(貝ますみ)も居合わせ、室内に微妙な緊張が走る。
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数日後、泉で三人会(蝶子・邦子・神谷)。邦子は結婚を決めたと報告。神谷は「気になっていたが、よかった」と受け止め、邦子も「わたしも先生のことを考えていた」と応じる。
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「それは未練?」の問いに邦子は即座に否定。独りで生きる難しさ、互いの安否を案じ続けた“仲間意識”だったと確認し合う。
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蝶子は神谷の自己管理の甘さをチクリ。そこへ邦子も「それは安乃がいるから大丈夫なんでない」と援護射撃——二人がかりで生活面をフォローする構図に。
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蝶子は恩師へ宿題:「私たちの生き方で、先生の教育が正しかったかが決まる。だからこれからも見守るのが先生の役目」。神谷は静かに頷く。
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帰宅すると要(世良公則)の演奏会が軍の集会で中止に。家族の歓談に、時代の“横槍”が容赦なく割り込んでくる——で幕。
今日のグッと来たセリフ&場面
# | セリフ/場面 | ワンポイント |
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1 | 神谷「決めたんかい。いやー、大したよかったな」 | 祝福の第一声が、10年越しのわだかまりを溶かす。 |
2 | 邦子「わたしも先生のことを考えていた」 | “未練”ではなく“安否”と“尊重”。言葉の精度が胸に落ちる。 |
3 | 神谷「独りで生きるちゅうんは、いやー大したゆるくない」 | 北海道弁で届く、生活の実感。 |
4 | 蝶子「人のこと言う前に、自分のこと考えて」 | 倒れたばかりの恩師に、愛ある釘さし。 |
5 | 神谷「私の教育が間違っていたとは思えん。」 | チョッちゃんも邦ちゃんも視聴者も安心させる力強い一言。 |
6 | 蝶子「先生の“役目”は、これからも私たちを見守ること」 | 教育の時間軸を10年単位に引き延ばす名フレーズ。 |
7 | 要の演奏会、会場を軍が接収 | 110回の〈泉〉閉店に続く“ご時勢”の第二波。 |
私が感じたポイント
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“気になる”の正体——未練ではなく互いの承認。 邦子の「気になる」は、過去への固執ではなく、独り者同士がこの10年、互いの暮らしを案じ続けた仲間の視線。美化も後悔も超えて、ただ「無事でいてほしい」に尽きるのだと腑に落ちました。
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恩師の役目、アップデート。 神谷先生の“5年後・10年後の教え子を見たい”宣言が、ここで継続監督契約に。学校を卒業しても“見守る”責任が残る——教育を人生の長いスパンで捉えるこのドラマの骨太さが好きです。
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安乃×邦子の静かな緊張。 安乃の「週一で神谷にご飯」は実務の愛。その事実確認だけで空気が張るのは、三角形の辺が一本、確かに太くなったから。押しも引きもしない視線の交差に、成熟した距離感を見ました。
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〈泉〉という“第三の場所”の役目。 閉店前の店が、清算と出発の場をもう一度提供してくれた。ここで会えてよかった——そう思わせる灯りの温度。ラストの「ご時勢」は、その灯りを一つずつ消していく現実の音でした。
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時代の風が、ついに音楽を直撃。 演奏会中止は、要の生業に直接の損失。第110回の〈泉〉閉店と響き合い、文化の居場所が急速に削られていく恐さを実感します。
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(個人的余韻)高女を実際に見てきたからこそ、今日は沁みた。 先日、ドラマの舞台となった高女の校舎を見に行ったばかり(記事はこちら)だから、三人の“恩師と教え子”の線が今も続いていることが格別に胸に来た。会話が熱を帯びると北海道弁へスッと戻るあの瞬間も、道産子として無条件に嬉しい。方言は、記憶と関係性の母語なのだとあらためて。
まとめ——過去を“未練”でなく“連帯”に変える作法
第111回は、かつての共同生活の重さを“未練”ではなく“互いの無事を願う連帯”へと組み替えました。恩師の役目は続行、〈泉〉は最後の調停役を果たし、外からは“ご時勢”の冷たい風——。
次は29日の〈泉〉最終営業の夜。誰が集い、どんな言葉で灯りを消すのか。そして要の音楽は、どこに居場所を見つけるのか。
あなたなら、かつての大切な人に“気になっていた”をどんな言い方で手渡しますか?