2025年8月19日放送 第110回
ざっくりあらすじ
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退院した加津子(椎野愛)は庭で歩行リハビリの日々。要(世良公則)は仕事へ、蝶子(古村比呂)と加津子が見送り。
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みさ(由紀さおり)は東京での“お礼挨拶”行脚へ。音吉(片岡鶴太郎)・はる(曽川留三子)と再会し、音吉の「なんも」でほっこり。
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要の母・まつ(初井言榮)が訪問。みさと初めて腰を据えて言葉を交わし、「この家は蝶子さんがいるから心配ない」と断言。みさは照れ笑い、蝶子は胸が温かくなる。
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夜、千駄木の野々村家に泊まったみさは滝川へ電話。俊道(佐藤慶)は「一人でごはん食べた」と強がるが、背後の賑わい音がダダ漏れ。
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みさは富子(佐藤オリエ)・泰輔(前田吟)・要・蝶子らに個別に挨拶。「今度は滝川で皆で集まろう」と涙ながらに別れの言葉。
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みさ、上野から帰郷。蝶子は泉に立ち寄り、泰輔から喫茶〈泉〉を閉める決断を聞かされる。物資難と“ご時勢には勝てない”。
今日のグッと来たセリフ&場面
# | セリフ/場面 | ワンポイント |
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1 | みさ「競争だね」―要の練習と加津子の歩行に | 家族の“前向きスイッチ”を軽やかに押す一言。 |
2 | 音吉「なんも」/みさ「上手だ」 | 北海道弁が飛び交い、距離が一気に縮む瞬間。 |
3 | まつ「周りを和ませます」 | “できる人=役に立つ”とは限らない、と見抜く賛辞。 |
4 | 俊道「一人で食べた」→背後はガヤガヤ | バレバレの嘘が、かえって夫婦の情を見せる。 |
5 | みさ→富子「弟が今の弟であるのはあなたのおかげ」 | それぞれの伴走者への労いに、泰輔の涙腺が決壊。 |
6 | 蝶子「そう、終わり…」(泉の客席で) | 青春の居場所にそっと幕を引く、低い独白。 |
私が感じたポイント
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“役に立つ”の再定義(まつの賛辞)
まつが指したのは家事スキルの多寡ではなく、場の空気を和ませる気配の力。みさは缶切りもマッチもおぼつかない。それでも、張りつめた家族の神経をほぐし、笑顔の“間”を作る。看病期こそ必要なのは情緒のケアで、みさはそこを丸ごと引き受けている――という、義母の最高のエンパワメントでした。 -
俊道の“嘘”は帰還の合図
「一人で食べた」という見栄は、みさを安心させつつ急がせるための不器用な愛。受話器越しの喧騒が、実は“あなたの居場所は守られてるよ”という伝言になっていて、夫婦漫才の延長線に長年の運用が見えました。 -
泉の閉店=戦時下が日常を侵食する音
豆がない、客が来ない――現実的な理由の積み重ねで青春の溜まり場が消える。スローガンや配給制の無機質な言葉が、ついに身近な喫茶店を直撃する切なさ。蝶子の「終わり」の一言に、時代の重さが沈みました。 -
歩行リハビリの画が希望の設計図
一歩の積み上げが日常を再起動していく。要の「いってらっしゃい」に重なる子どもたちの通学シーンは、加津子の目標を静かに映す“鏡”でした。 -
ご近所言語=共同体の潤滑油
音吉の「なんも」一発で、外から来た人も輪に入れる。言葉には迎え入れる力がある、とあらためて。
まとめ――別れは終わりじゃない、段取りの更新だ
第110回は、みさとまつという二人の母が、蝶子の現在地を確かめて背中を押す回でした。看病から在宅へ、家族の“並び”は少しずつ変わっていく。泉の閉店という喪失の一方で、庭の一歩は確かに前へ。次は、学校復帰のタイミングと、家計と仕事の折り合い。そして滝川での“再会計画”は実現するのか――。
あなたなら、誰かを送り出す前夜に、どんなひと言を手渡しますか?