朝ドラ『あんぱん』第97回感想と考察 クビ通告と“やさしい嘘”、そして登美子の「あの日」――別々の痛みが交わった回

朝ドラ

2025年8月12日放送(第20週・第97回)


◆ 本記事のポイント

  • のぶ(今田美桜)、薪鉄子(戸田恵子)からクビ通告。「ここでは探しているものは見つからない」—涙の真意は?

  • 嵩(北村匠海)は“黒板スケジュール”で仕事があるフリ、のぶも“早上がり”のやさしい嘘。夫婦の胸の内がすれ違う一日。

  • 八木(妻夫木聡)の店で、薪鉄子に核心を突く一言。「清らかさが怖くなったんじゃないのか?」

  • 登美子(松嶋菜々子)と茶室で本音対話。「逆転しない正義」「あの日に帰ること」、二つの夢が照らし合う。


嵩の“黒板スケジュール”と、のぶへのクビ通告――見栄と現実の板挟み

朝、黒板にびっしり“打ち合わせ・締切”を書き連ねる嵩(北村匠海)。実は空白を埋めるための見栄スケジュールで、大島コオ(七瀬 公)とカフェで時間を潰す始末。一方、のぶ(今田美桜)は薪鉄子事務所へ。薪鉄子(戸田恵子)は「ここにいてもあなたが探しているものは見つからない」と告げ、6年の区切りとしてクビを言い渡します。

私のひとこと感想:見栄は心の防寒具。でも脱がないと前に進めない。薪鉄子の涙は“別れ”というより“これ以上汚させない”という祈りにも見えました。


すれ違う“やさしい嘘”――同じタイミングのため息

時間つぶしから帰宅した嵩。のぶは先に帰り、晩ごはんを用意して待っていました。のぶは「仕事が早く片付いて」と嘘をつき、クビを隠す。嵩も“偽のスケジュールから帰宅”とを重ねる。同じ部屋の中で、同時にこぼれる二人のため息――それは互いを思うがゆえの不器用な優しさでした。

私のひとこと感想:優しさのつもりが“孤独”を育てることってある。早めにほどくのが、いちばんの優しさかも。


八木の店で交差する視線――薪鉄子が怖れた“清らかさ”

八木(妻夫木聡)の「九州コットンセンター」に現れた薪鉄子。のぶをクビにしたと打ち明けると、八木は「彼女といると、自分の清らかな部分を思い出して泥水が飲めなくなるのが怖いんじゃないか」とズバリ。薪鉄子は「もうここには来ない」と店を去ります。

私のひとこと感想:八木の言葉が重い。薪鉄子はこれから汚いこともしていかなきゃいけないこともきっと覚悟しているんだろう。6年経っても清らかなままののぶをこれ以上近くに置いておけない自覚もしているんだろうし、八木もそんなことは瞬時に見抜けてしまったんだろうね。


茶室でほどける誤解――登美子が語った「あの日」と、のぶの“二人の夢”

のぶは登美子(松嶋菜々子)の大きな家を訪ね、素直にクビを報告。茶室で、なぜ嵩を支え続けるのかを問われ「嵩と二人で探しているものがある」と答えます。登美子は胸に空いた“清亡き後の空洞”と、「あの日に帰ること」という叶わぬ夢を吐露。のぶは“お茶を飲むと心が落ち着く”と語り、二人の距離は静かに縮まります。登美子は息子の“見栄っ張り”を見抜き、「そこだけ私に似たのね」と微笑むのでした。

私のひとこと感想:叶わない夢を抱えた人の言葉は重い。だからこそ、のぶの「逆転しない正義」は二人分の願いを背負う光になる。のぶと登美子が分かり合ってくれて良かったよ。これからは登美子も良き理解者としてたくさん出てくるかもしれないね。


まとめ――嘘と涙の一日が、明日の“本音”を呼び込む

  • のぶはクビ通告で6年に区切り。涙の意味は“守りたい清らかさ”。

  • 嵩とのぶはやさしい嘘で自分を守ったが、同時に距離も生んだ。

  • 八木の一言が薪鉄子の胸中を照らした。

  • 登美子との対話で、「逆転しない正義」「あの日」が静かに共鳴。

次回注目ポイント

  1. 夫婦の“嘘”はどのタイミングで本音に変わる?

  2. のぶの次の居場所はどこに。

  3. 嵩、仕事の中身を“黒板ではなく原稿”で埋められるか。

「嘘をほどく勇気」――やさしい嘘の先に、本当の二人が待っている。

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